噴火まで十七年、ポンペイの水道技師に転生しました ~街は救えないので、逃げ道と習慣を作ります~
オリジナル:歴史/冒険・バトル
タグ:転生 古代ローマ 歴史 ポンペイ 内政 お仕事もの 災害
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定年の朝、感謝状の一枚ももらえずに倒れた男が目を覚ますと、そこは大地震の直後のポンペイだった。西暦六二年――ヴェスヴィオ噴火の、十七年前。
俺は、知っている。この街が灰と軽石に呑まれることを。逃げ遅れた者から死ぬことを。
だが、二万人の街に「山が火を噴くから逃げろ」と叫んだところで、狂人の説教が一つ増えるだけだ。信じてもらえなければ、水道を触らせてもらえなくなる。逃げ道を敷く手立ても、そこで消える。
だから、俺は説教をしない。
水道を直す。浴場を直す。噴水の水圧で街の人気者になり、井戸の水位と匂いを毎日書き付ける「水帳」をつける。祭りの日に「街道を歩いて隣街まで行く」行事を根付かせ、一里塚ごとに水甕と松明を据える。
やることは、全部ただの土木と、近所付き合い。
それが十七年後、避難路と、避難訓練と、避難先に化ける。
噴火は止められない。歴史も、変えられないかもしれない。それでも、配管工には配管工の戦い方がある。
――「逃げろ」と叫ぶ代わりに、逃げ道を、舗装しておくのだ。
街は救えない。それでも、歩ける者は、歩かせる。
無双もチートもない、古代ローマの防災お仕事もの。あるのは、水道と、祭りと、指折り数える十七年だけ。
| 1. 水は、まず辻へ | |
| 2. 弁の値段 | |
| 3. 山の息 | |
| 4. 湯気の戻る日 | |
| 5. 竈と指輪 | |
| 6. 盗み水 | |
| 7. 川の道 | |
| 8. ヌケリアの粉 | |
| 9. 泉の祭 | |
| 10. 一里塚の水甕 | |
| 11. 皇帝の歌う夜 | |
| 12. 敷石の理由 | |
| 13. 悪い水 | |
| 14. 子供綱 | |
| 15. 解放の署名 | |
| 16. 客人の家 | |
| 17. 涸れ井戸の夏 | |
| 18. 山腹の畑 | |
| 19. 署名の日 | |
| 20. 提督の客 | |
| 21. 旗が立つ | |
| 22. 八月の空振り | |
| 23. 水は嘘をつかない | |
| 24. 断水のお知らせ | |
| 25. 松の木の雲 | |
| 26. 灰の道 | |
| 27. 松明の列 | |
| 28. 朝の黒い雲 | |
| 29. 水道屋の膝 | |
| 30. 山の頁 | |
| 31. 定年 |