アイズさんの脳を年上お兄さんでこんがり焼こう! 作:脳でバーベキュー
オラリオの一角、さびれたカフェで一組の男女がお茶をしていた。いや、男女というのは性別を言っただけで、男女の関係という意味ではない。というか、あってはならない。なぜなら、二人とも男女と呼ぶには幼すぎるからだ。
かたや現アストレア・ファミリア団長の弟、かたや最速レベルアップを達成したレコードホルダー。
そして、それを茂みから見張る不届き者も二人。かたやロキ・ファミリア団長、かたや副団長である。
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「なあ、リヴェリア。僕たちは本当にこんなことをしていていいのかい?」
「黙ってろ。あのアイズが顔を赤らめておすすめのカフェを聞いてきたんだぞ! これは一大事だろうが!」
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フィンは頼れる副団長の意外な一面を知り、ため息をこぼす。
ただ、フィンとて気になってはいるのだ。隣のエルフの熱量がすごすぎて、一周回って冷静になっているだけである。
しばらく待っていると、アイズが顔を赤らめて何かを言った後、カフェを後にした。
少年は頼んだ紅茶を飲んでおり、店を出る気配はない。
そんな隙を、かのロキ・ファミリアのツートップが見逃すわけもなく――
二人は自分の出せる最高速度でカフェに入店し、先ほどまでアイズが座っていた席、すなわち少年の正面の席に座った。
そして、
「「どういうことだ、レオ!!」」
と、机をドンと叩きながら、前に座る少年――アストレア・ファミリア現団長アリーゼ・ローヴェルの弟、レオ・ローヴェル――に向かって言い放った。
当の本人といえば、余裕たっぷりに上品な紅茶を飲んでいる――わけもなく。
「ど、どういうことなんですかね? フィンさん、リヴェリアさん」
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このオラリオでレオ・ローヴェルの印象を聞けば、百人中百人が「好青年」と答えるだろう。
彼と戦闘をともにした者を除いて。
彼と戦闘をともにした者は皆、口をそろえてこう言う。
彼は獅子のようだ、と。
これが彼の二つ名である『炎獅子』の由来にもなっている。
話が脱線してしまったが、彼は基本的には良い人なのである。
そんな人にアイズが好意を寄せているのは、二人にとって大変喜ばしいことだろう。
アイズが普通の少女ならば、という注釈がつくが。
反対に、アイズの印象をオラリオの住人に問えば、まず間違いなく『戦姫』という名が挙がるだろう。
『戦姫』とはアイズが巷で呼ばれている呼び名で、二つ名とはまた別のものなのだが、とにかくアイズは普通とはかけ離れた少女だということは理解できるだろう。
だからこそ、アイズがこんな、言ってしまえば普通の好青年に惹かれるとは到底思えないのだ。
「何か、アイズに好かれるきっかけみたいなものはあったのかい?」
フィンも同じことを考えていたのか、誰もが気になっているであろう質問を投げかける。
「うーん、そうですねえ。ヴァレンシュタインさんとは、お互い似たような階層でソロ活動をしていることが多いので、その時にちょくちょく協力するぐらいですかね?
……あ! そういえば三か月ほど前、大量のモンスターに囲まれていたヴァレンシュタインさんを助けましたね。
僕はてっきりエクセリアを取られて怒られるかと思ってたんですが、お礼だけ言って大慌てで去っていきましたよ」
フィンはそれを聞いてもなお、納得できずにいた。
隣のリヴェリアは、アイズが自分の知らないところで危険な目に遭っていたことにショックを受けている。
そして、レオとフィンがともに思っていることは同じだろう。
『あのアイズ・ヴァレンシュタインが、こんなことで恋に落ちるか?』と。
こんな冷めた男子二人だけだったら、この議論は長いこと続いていたかもしれない。
ただ、この場にはロキ・ファミリアのママことリヴェリアがいる。
彼女が導き出した結論は、
「そもそも、アイズ自身、助けてもらった経験が初めてなんだろう。それにアイズはまだ十一歳だ。この頃の娘は、年頃の近い男子に惹かれるものだ」
というものだった。
それに加えて、レオはアイズがダンジョンに潜る前から、ソロで危険ともいえる鍛錬を行っている。
姉がオラリオに来てそれが減ったとはいえ、その頻度は異常である。
今考えてみれば、アイズがソロで危険なレベルアップを始めたのは、この子が原因の一つかもしれない。
つまり、アイズにとってレオは近所のお兄さん、もしくは幼馴染のような存在なのだ。
アイズぐらいの年頃なら、レオに惹かれるのも納得できるだろう。
あらかた議論を終え、三人でお茶をしばいていると、リヴェリアがレオに質問を投げかけた。
「そういえば、レオも無茶なレベルアップをしていることで有名だが、何か理由があるの
か?」
質問を言い終わるのと同時に、リヴェリアは後悔した。
ここオラリオにおいて、事情の詮索はご法度なのだ。
だが、レオはそれを気にした様子もなく答えた。
「フィンさんには前に話しましたが、まあ簡単に言ってしまえば姉に追いつくためです。
僕は昔から、それこそ生まれた時から姉と比較されてきました。
それが嫌で家を飛び出してオラリオに来たんですが、姉もなぜか後からオラリオに来て。
気づいたらレベルも姉に並ばれていて。
……はあ」
レオは最初は明るく話し始めていたが、話の後半になるにつれて勢いを失い、最後には目尻に涙までためてため息をついてしまった。
リヴェリアは大いに焦った。
自分のような年長者が子どもを泣かせてしまうようなことは、絶対にあってはならないからだ。
「そ、そうか。す、すまない、変なことを聞いて! それより、君たちの噂をよく耳にするぞ! オラリオの守護、いつも頭が上がらない」
「いえいえ、こちらこそ。最大派閥としてダンジョンの踏破記録にはいつも驚かされますよ。
あぁ、そういえばダンジョンで思い出しました。これからダンジョンに潜るんでした。
それでは僕はこれで失礼しますね。代金はここに置いておきますよ」
そう言ってレオは店を去っていく。
なお、店を出る際、フィンとリヴェリアが頑なにレオのお金を受け取らなかったため、レオは諦めて奢られることになった。
大人組の大勝利である。
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その後はフィン、リヴェリアともにホームへ帰り、仕事を終わらせ、少しでもアイズの話を聞こうとホームのコモンスペースで待機していた。
主神であるロキや団員たちとだべっていると、ホームの扉が開いた。
扉を開けたのは予想どおりアイズであったが、様子がおかしかった。
顔を真っ赤にしながらリヴェリアの手をつかみ、自室へと連行したのだ。
自室のベッドに腰掛け、口を魚のようにパクパクとさせているアイズを見かねてリヴェリアが声をかけると、アイズが話し始めた。
「さっき、ダンジョンでレ、レオに会って……! それで、その、朝言ったことを思い出しちゃって、すごく恥ずかしくなっちゃって。向こうが挨拶してくれたのに、無視して逃げてきちゃった」
そもそもリヴェリアは朝のレオとアイズの会話を知らないので、状況を何一つ理解できないのだが、アイズがかわいいからまあいいか、と半ば思考を放棄していた。
アイズはそれを言い終わると、顔を枕にうずめて唸っていた。
そしてリヴェリアが部屋を後にし、フィンのもとへ戻ると、ファミリアの末っ子の成長にほっこりする大人組であった。
アストレアファミリアの団員には平等に死を!!
初恋の人が死ぬアイズさんの心境やいかに。楽しみですね