皆様の貴重なお時間をいただいて読んでもらえるだけでなく、評価までやってくださる方がいて感謝の気持ちでいっぱいです!
そんな皆様のおかげで、25日の土曜日は一日中パソコンの前で第三話を書き続けることができました。(一人でずっと書いてると、ついお休みしたくなります……)
皆様がもっと楽しんでいただけるようレベルアップしていきます!
それに……ま、また10点が増えてない⁉ やったー!
あっ、あれ、点数じゃなくて星なの?
2026/7/24、23時に第一話と二話の修正版を反映しました。
だいぶ面白くなったはずです! 作者のレベルが上がって3になったからね!
デロデロデロデロデーデン
おきのどくですが
れんとのたましいのさいのうは
きえてしまいました。
ということで、主人公レントの魂が見える設定が面白くなかったので、消しました!
書いているうちに、私のレベルが上がって気づいた気がします。
あ、無理に見返さなくても大丈夫です。
2回目を見てくださる方がもっと楽しめるように本文も全体的に修正しましたが、
設定を一つだけ変えて、文章力がレベルアップしたくらいなので、話の流れはあまり変わってないと思います。ほんとだよ。噓じゃないヨ?
試験当日の朝は、よく晴れていた。
レントは小部屋の前で、初老の職員と向かい合っていた。
「行ってくるのか」
「はい。受かったら学生寮に移るので、この部屋は引き払います」
「……そうか」
レントが頭を下げて歩き出したところで、背中に声が投げかけられた。
「受かっても、たまには顔を見せに来い」
「いいですよ」
レントはそれに振り返ることなく答えた。相変わらず素直になれない人である。
図書館の入り口で、レントは顔馴染みの司書に捕まった。
「ついに受けるんだね。あなたが学生になったら、仕事が滞りそうなのよ……いっそ落ちてくれないかしら?」
「受かると思ってますが、落ちたらしばらく働かせてください」
「それは朗報ね! 応援してるわ!」
……合格と不合格、どちらを応援してるのだろうか。
ともあれ、激励なのか就職の案内なのか分からない見送りを、ありがたく受け取っておいた。
試験会場は、魔塔の教室棟一階、大講義室だった。
外部の人間が図書館棟以外に入れる、年に一度の機会である。
レントは試験会場まで行く途中、天井の高さと長く伸びる廊下に目を奪われた。
これは……空間拡張魔法か?
この目で見るのは初めてだった。外から見た建物の幅より、内側の廊下の方が明らかに長い。
どういう理屈なのか、今の力量ではさっぱりわからなかった。
合格してランク二になれば図書館の二階に行くつもりだが、そこなら何かわかるかもしれない。
受験のことをすっかり忘れてしまったレントが、意識を別のことへ向けているうちに人波が見えてきた。試験会場が近いのだろう。
大講義室の前は、受験生で埋め尽くされていた。
あまりに人が多すぎてレントは思わず足を止めてしまった。
人だかりがまばらになるまで待っていたレントが受付で名前を告げると、試験補助係の学生が名簿をなぞり、ふと手を止めた。
「レント……ああ、図書館の。ノート、世話になったよ」
「ありがとうございます」
「いや、礼を言うのはこっちで……えっ? 君が受験? 学生か教員だと思っていたよ。……受験、頑張れよ」
微妙な顔で励まされたレントは、何でそんな勘違いしてるのと言いたげな表情を浮かべていた。
気を取り直して、会場を見渡す。
すると、受験生の違いが一目で分かった。
絹らしき光沢のあるローブに、装飾つきの短杖を提げた一団。あれが噂に聞く特進科志望の貴族や名家の子女だろう。高額な授業料と引き換えに、教員の授業を優先して受けられる学科である。
一方、レントと似たような着古した粗末な服の一団は、普通科志望だ。学費は無料でも、代わりに雑用を頼まれたり、受講制限等があったりする。
なおレントは後者である。後者の中には無一文の者もいたが、自分で学費を稼いだレントの装備の質は中の上といったところだ。
同じ試験を受けて天道魔塔に入るのに、両者の間に見えない線が引いてあるかのように交わることがない。
特進科の中心では、赤い髪の少年が取り巻きに囲まれていた。
「ジーク様なら首席は確実ですよ」
「当然だろ」
自信に満ちた声だった。腰の短杖も、見るからに上物である。
なるほど、あれが貴族か。
レントは特に感想もなく視線を外した。首席を取りに来たわけではない。合格さえすれば、図書館の上階に入る目的は達成できる。
筆記試験も実技試験も難なく終わるだろう。
――この判断が甘かったことを、レントは知るよしもなかった。
レントが席に着くと、隣の受験生の少年が必死の形相でノートの最終確認をしていた。
それは見覚えのあるノートだった。といっても筆跡は自分のものではない。内容がそっくりの偽物だ。 つまりレントのノートを写した海賊版である。
だが、ちらっと見えた部分が間違って写されていた。
……落とすぞ、その問題。
レントは少年にノートの誤りを教えるか、しばらく悩んでいた。相手は海賊版の被害者で、将来レントの客になってくれるかもしれない。
でも話しかけるのも面倒くさいしな、ってあれこれ考えていると試験の開始時刻が来てしまった。さっさと教えてあげればいいのに。
筆記試験が始まる。
配られた問題用紙に目を落とし、レントは眉を動かした。
……どこかで見たな。
既視感の正体は、すぐに分かった。過去の試験問題とほぼ同じなのである。
レントはノートを作る際、手に入る限りの過去問を調べ上げ、頻出の傾向をまとめていた。その本人が、傾向通りの問題を前にしているのだから、既視感しかないのは当然だ。
過去問を使い回す教員が多いと感じていたが、まさかこの入学試験まで過去問を使いまわすとは思わなかった。
おかげで問題を解くというより、書き写す作業に近い。
そして最後までペンを走らせたレントは試験の残り時間を大幅に余らせて誤りがないか何度も見直していた。
気づけば教室を満たしていたペン先の音もすっかり途絶えていた。
……あれ?
周囲の受験生も、すでに解き終わったのだろうか。
嫌な予感がした。
レントの嫌な予感は、的中していた。
控室に試験官たちが集まり、答案用紙を採点するが――
「今年の筆記試験、平均点が高すぎるな。合格者が定員数を上回るぞ」
「また例のノートだろう。受験生の多くが持っているようだ」
「昨年の試験問題を変えなかったのか?」
「いや。担当教員には問題を差し替えるように伝えたはず」
「どうせ自分の研究を優先して、サボったんだろ」
実のところ、入試直前に試験問題の作成を半ば強引に押しつけられた教員が不満を抱いて指示を聞き入れなかっただけに過ぎない。変更するなら早く言えってことである。
「まぁ、合格ラインを上げるしかないな。二十点くらいでいいか」
試験官達は仕方なさげに頷いた。
案の定、廊下のあちこちで受験生たちの悲鳴が上がっていた。試験の一週間後のことだ。
「合格点が上がってる!? 二十点も!? そんなの聞いてないよ……」
「例年の合格ラインを狙って勉強してきたのに……」
「……あと8点足りないんだけど」
目も当てられない有様から、レントはそっと目を逸らした。
おそらく犯人は私です、とは口が裂けても言えない状況だった。
レントが売ったノートが受験生の平均点を吊り上げ、合格ラインも上がったのだろう。
自分で試験を難しくしたようなものだが、そこまで影響があるとは……。
普通に過去問を差し替えたら何事もなく済んだはずだ。あの試験の作成者はいったい何を考えていたのだろうか。上司への不満である。
……いや、落ち着け。筆記は満点に近い。合格点が二十点上がったところで、自分に影響はない。
しかし何だろう、この居心地の悪さは。
周囲で頭を抱えている受験生の何割かは、レントの客だったのかもしれない。
筆記試験の合格者は次の実技試験のため演習場に通された。
受験生には二つの課題がある。ランクの測定と、魔力操作の実演だ。
「今からランクを測定する。名前を呼ばれた者は不合格だ」
試験官が魔力感知でランク一に達していない者を選別し、不合格を告げていく。
事前にランク一以上しか合格できないと掲示板に公開されていたはずなのだが、それを知らなかった受験生が数名いたようだ。
もちろん、特進科志望ではなく普通科志望の受験生である。
二つ目の課題は、魔力操作だった。
試験官が指し示した先には、宙に浮かんだ大小の輪が五つ。加えてその手前の台に白い羽根が一枚だけ存在していた。
「この羽根は魔力に反応して動く魔道具だ。魔力で羽根を持ち上げ、輪をくぐらせていく。この実技試験ではそのくぐった輪の数と、動きの正確さを見る。一つでも羽根を輪に通せれば合格だ」
手本として試験官が羽根を動かしながら、そう話す合格基準の低さに、この課題の難しさが表れていた。
体外に出た魔力は感知も操作も一気に難しくなる。
ましてやランク一の駆け出し魔法使いが、見えない魔力を感知し操作しながら軽い羽根を意のままに動かすなど、本来は無茶な話なのだ。
実際、レントの前の受験生たちは羽根を浮かせるだけで顔を真っ赤にし、一つ目の輪に届けば歓声が上がっていた。
特進科のジークという赤髪の少年は四つもくぐらせて、会場をどよめかせていた。なるほど、筆記一位は伊達ではないらしい。
レントの一つ前に並んでいた青髪の少女クラリスは、羽根を二つ目の輪までくぐらせて測定を終えた。現状、この少女が実技試験二位である。
少女は自慢する様子も見せずに歩いていったが――顔の前を虫が横切っただけで、びくりと飛び上がり、十歩も後ずさった。……そんなに虫が嫌いなのか。
そして、レントの番になった。
目標は三つ。ジークより下の二位である。余計な注目を集めるのは避けたいところだが、今の自分がどこまで通用するのか知りたくもあった。
レントは台の上にある羽根に魔力を込めて、ふわりと持ち上げた。
その羽根を動かして一つ目の輪をするりとくぐらせ、ほんの少し小さくなった二つ目の輪を通って、さらに小さくなった三つ目の輪を抜けた。
よし、ここまでにしよう。
レントは羽根を減速させ、四つ目の輪の外側をわずかにかすめさせて地面に落ちてしまったかのように見せることが狙い通りにできた。
――しかし、ここで誤算があった。
レントの魔力操作は、幼い頃から遊び半分ではあったが今までずっと取り組んできた。そのうえ魔力量を増やさずに精度だけを異常に磨き続けていたのを忘れてしまっていた。
試験官が、レントのもとへ近づいてくる。
「……レント君。わざと三つ目でやめなかった?」
「いえ、そ、そんなことは……」
「謙遜はいい。あの滑らかな羽根の動きはあらかじめそこで止めようと決めていたね。一位になって目立ちたくなかったのかな? でも長年魔力操作を教えているから分かるよ。君の師はとても優れた人だね。誰なんだい?」
「……です。図書館……で、勉強しました」
「……ああ、噂の図書館に住んでる教授にでも教えてもらったのかな?」
レントの声が聞き取りづらかったのか、試験官は予想を冗談めかして口にした。
――本です。図書館の本で勉強しました。
ざわざわと会場の空気が揺れ、どこかで誰かが囁く。
「図書館って……例の、教授か?」
「弟子がいたのか……」
「道理で……」
違う。弟子ではない。強いて言えば本人である。そもそも図書館に教授なんていないのわかってるよね?
訂正したい。訂正したいが……もう面倒だしこのままでいいや。
諦観を抱きながら、レントは無言で列に戻った。
視線が痛い。特に、赤髪のジークがこちらを射抜くように睨んでいた。
「ジーク様、お気になさらず。あんなの小手先の芸です」
「黙ってろ」
取り巻きを一喝して、ジークはレントから視線を外した。プライドが高いのか、実は真面目なのか、判断に迷う人だ。
できれば、関わりたくない相手である。
……けど、悪目立ちしてしまったな。
とはいえ、人はいつまでも他人を気にかけてるわけではないし、すぐに忘れられるだろう。
でも根に持つ人もいるよね。
合格発表までの二日間、レントの姿は図書館にあった。ブレないものである。
レントも試験中は緊張していたが、試験が終わったので今は引きずっていなかった。今更祈っても点数は増えないと割り切っていたのだ。
代わりに、試験で見つけた宿題を片付けることにした。
空間拡張魔法の理屈。魔力で動く羽根の仕組み。宙に浮く輪の術式。
それらを図書館で片っ端から調べた結果、三つとも同じ結論に行き着いた。
――図書館棟の二階以上にある専門書を読むしかないと。
「……また二階か」
魔法使いに関する本が一階には入門編しかない。つまり、ランク一までの魔法使い向けというわけだ。
だが二階以上の本は、天道魔塔でランク二以上にならないと閲覧できない。
知りたいことが増えるたびに、二階へ進む道が遠のいていくように感じる。
とはいえ天道魔塔の入学試験に合格したらランク二になりさえすればいいので、むしろ近づいてるのだが。
そして二日後、合格発表の日が来た。
掲示板の前は人だかりで、歓声と悲鳴が入り混じっている。
人垣のあちこちで、明暗が分かれていた。
番号を見つけて跳び上がる者。何度も指でなぞって確かめる者。黙って踵を返す者。
彼らの中には、今年が最後の機会だった者もいる。自身の魔法使いとしての才能に見切りをつけたり、家庭の事情で断念せざるを得なかったりするのだ。
合格ラインを引き上げた身としては、胃の痛む光景である。
……それでも、ノートを売らなければ合格できなかった人もいるはずだ。そう思い込むしかなかった。
レントは人混みに飲み込まれないよう離れた場所からどうにか自分の受験番号を探していく。
――あった。
筆記、実技ともに通って、合格である。
ほっと息を吐いたところで、横から肩を掴まれた。
そちらを見ると、どうやら受験生のようだが……見覚えはある。誰だったか……。
「あった! 俺の番号あった! お前のノートのおかげだ!」
「……おめでとうございます。ノートのおかげではなく、あなたが努力されたからだと思いますよ」
「それでも礼を言わせてくれ! あのノートがなかったら、俺は……」
――合格ラインが上がった原因も、そのノートですけど。
「……何か言ったか?」
「いえ、何も……」
言えない。言えるわけがない。
この秘密は墓まで持っていくしかない。といっても寿命を千年延ばすので、墓までは当分先だと思うが。
合格者は後日、入学手続きを行う。
その窓口に来たレントは係の職員に呼び止められた。職員の手元にある書類には、レントのこれまでの評価が記されている。
「君は、筆記と実技の総合成績二位の子か。特進科を志望する気はないかね。君なら、特進科でやっていけるだろ?」
「特進科の学費は、いくらですか」
「年間で、金貨三百枚だ」
「普通科でお願いします」
「即答か……」
金貨三百枚。
それには図書館の仕事と写本やノート売りで貯めた二年間の全財産でも手が届かない金額だった。
またそれだけでなく、学費のかからない普通科のデメリットである受講制限には抜け道があることをレントは知っていた。教室の外での立ち聞きは、禁止されていないのだ。以前、図書館に来た普通科の学生達が特進科の愚痴をこぼしながら教えてくれたことがあった。
夕方、レントは南東側の隅にある普段座っている席にいた。
隣の席では、エリシアがいつものように本を読んでいる。
「天道魔塔に合格した」
「ええ、それなら知ってますよ」
「……早いな」
「レントが受験すると聞いていたので掲示板を見てきましたから。おめでとうございます」
エリシアは本を閉じ、レントに向き直って丁寧に頭を下げた。
……祝われているというより、何かの儀式に立ち会っているような気分になる。
教会で祈りでも捧げられているのかな?
「これで、来年からは二階でもご一緒できますね」
「ああ。……ようやく、続きが読める」
「続きですか?」
「一階の本は、ランク一までの内容しかないから」
エリシアは少しだけ首を傾げ、それから口元をわずかに緩めた。
「二階の蔵書は、一階より多いですよ」
「知ってる」
「魔法書だけでなく魔導書も読み切れないほどありますよ」
「望むところだ」
読み切れないほど、大いに結構。こちとら本を読むために寿命を延ばしてる男である。
「二階に入ったら、何から読むんですか」
エリシアに聞かれて、レントは考え込んだ。
様々な魔法を使うための魔法書か。いやまずはランク二になるため魔力量育成に関する魔導書か。それとも――。
候補が多すぎる。順番を決めるだけで、日が暮れそうだ。
「……決まったら教えてください」
その声でレントが我に返ると、窓の外が茜色になっていた。どうやら、しばらく固まっていたらしい。
エリシアは呆れるでもなく、机の端に一冊の本を置いた。『魔力育成学 学生編』という魔導書だ。
「では、決まるまでは、これをどうぞ。私が書き写したものですが」
「……ありがとう」
レントがランク一からランク二にランクアップするには、この魔導書が必要だった。
まさに至れり尽くせりである。
司書より優秀な読書仲間には今度お返しを考えないとな。
それに――二階には、確かめたいこともある。
脳裏に浮かぶのは、あの古びた本だ。目次だけ残して、刃物で丁寧に切り取られていた「第七章 魂への干渉について」。
一階の本が魔法使いの入り口の知識なら、二階のどこかに切り取られた部分に関係する本があるかもしれない。
誰が切り取ったのかは、知らないが。まったく、迷惑なことをするやつもいるものだ。
まあ、二階に行けるようになってから考えればいい。
窓の外では、頂上の見えない白い塔が夕日を浴び、赤く染まりながらそびえ立っていた。
二年前、家を追い出されてたどり着いたときに見上げた塔である。あの日は塔の外から眺めるだけだったが、来月からは学生としてその中に入っていく。
「……当分、読む物に困らないな」
二年前と同じ台詞を、レントはもう一度呟いていた。
だがあの日よりできることが少しだけ増えていた。
明日の26日(日曜)は投稿した第三話までの誤字脱字やプロット設定との整合性チェックかなー。
特に第三話は書いてすぐに投稿したので、よく見ないと……。
第四話は下書きが限界かもれません。