魔法具
「ヴェイル!!よかった・・・間に合いました!!」
「全く結構ここまでくるのに苦労したぜ・・・」
「リュール・・・!え・・・?なんで・・・?それに蒼也、その姿は・・・?」
ふぅ、うまいことリトスの神竜城に入ることができた俺たちは先に来ていたヴェイルと四狗に会えたぜ。
あのあとモーヴがグリ達がどこに向かっているかを教えてくれたおかげでなんとかなったわ。
後ろからは俺達の援軍が押し寄せてくる。
「・・・おいおいどうすんだ?流石に厳しいぜ?」
「でもヴェイル様に会いに来たというんなら・・・すぐに『支度』を始めましょう」
セピアの手が怪しく光ったかと思うと、ヴェイルが黒い炎に包まれた。
「・・・っ!嫌・・・・!」
「・・・さぁヴェイル様、お目覚め遊ばせ」
その場に強い風が巻き起こる。俺は辛かったが、あえて止めなかった。
この展開を踏まえない限り、リュールは『あれ』になれないからだ。
・・・え?なんで『様』をつけるのを途中でやめたかって?
実はここにくる際にリュールから『まずは友としてお互い呼び捨てにしません?その方がそのうち硬い姿勢も解れると思うのですが』と言われたからなのだ。
・・・実際にまだ本人の前では慣れていないのだが。
そんな解説をしているうちに、ヴェイルの姿は変わっていた。
大きな角のような魔道具が頭に備え付けられていて、白かったドレスも黒色一択に染まっている。
「・・・ようやく忌々しい縛りから解放されました」
「ヴェイルに一体何を・・・!?」
「ソンブル様から賜った魔法具で術をかけたのよ・・・・これで・・・あの人格は死んだわ!!」
「「「し・・・死んだ・・・?」」」
リュールとマロンとカービィが声を揃えてそう言った。
「ええ、あの魔法具があるかぎり・・・永遠にね」
・・・魔法具がある限りってことはやっぱりあれをぶっ壊せばいいわけだ。
「今すぐその魔法具を壊して・・・ヴェイルの洗脳を解きます!!」
リュールがヴェイルに愛用の剣を持って駆け寄る。
しかし、当の本人であるヴェイルは余裕な笑みを浮かべていた。
「ふふっ・・・私が出てきた以上・・・そう簡単にはいきませんよ!!」
ヴェイルが腕を思いっきり振ると強い電撃を纏ったレーザーが放たれた。
なるほど、『トロン』か。
俺はフォックスイリュージョンでその間に入ってリフレクターですぐさま反射してやった。
トロンは威力とスピードを増してヴェイルに返っていく。
「・・・チッ!相変わらず面倒な道具ですね!」
ヴェイルが紙一重で避けたことでそのトロンは外れてしまった。惜しい!魔法具に当たりそうだったのに!!
その拍子に、ヴェイルのドレスから何かが落ちた。
なんだありゃ・・・・もしかして『竜石』?
「あ、ヴェイルのお姉ちゃんの竜石・・・・」
カービィがつぶやいたことから察するに、どうやらあれはリュールのものらしい。
しかし今出ているヴェイルの人格は邪竜そのもの。生き別れた姉のことなんて1ミリも思っていないらしい。
すぐその竜石を踏んづけてマロンに言い放った。
「・・・何ぼーっとしているのですか、マロン?私たちのために犠牲になるのが前衛の役目でしょう?あの邪魔者達を排除しなさい」
「承知しましたヴェイル様・・・!マロンはいい子だもの、できるわね?」
マロンはくるっと俺たちに向き合った。やろう、戦う気か!
「・・・っ!!」
「リュールは下がってろ!お前の相手は俺がする!かかってこい!!」
いつものファイティングポーズを取る俺だったが、その真横をマロンは通り過ぎていく。
「・・・!?」
「・・・あのねセピア。ボク・・・褒めてくれるセピアが好きだった・・・でも、もうこれ以上はついていけない。誰にも褒めてもらえなくたって・・・ボクはボクの正しいと思ったことをする!」
そう言って今度はヴェイルに向かっていった。
「何を・・・やめなさいマロン!!」
そうセピアが言ってもマロンの耳には届いていない。
ガァン!!
と、斧と魔法具がぶつかり合った音がすぐに聞こえた。
マロンはその振動が体に響いて膝をついているらしい。
ヴェイルの動きが止まった。
「マロ・・・ン・・・」
「ヴェイル様・・・!」
・・・がっかりですね・・・利用価値もないなんて
しかし、そのヴェイルの言葉から、ダメージが少しも入っていないことがすぐわかった。
「そんな・・・」
「だからやめなさいと言ったのに・・・・いけない子」
「・・・・え?」
セピアのいつの間にか握っていた短剣がマロンの腹に突き刺さった。
・・・そう、確かに突き刺さったのだが・・・・・
ゴォォォ!!!
「!?」
マロンの体は大きな風に煽られて後ろに倒れるような体制をしていた。
・・・あれ?なんだこりゃ?原作にない展開になってしもうたぞ!?
そしてそのまま後ろに吹っ飛んでいく。
その先にいたのは・・・・大きく口を開けたカービィ!?
カービィはマロンが自分にぶつかりそうになると吸い込みを止めて、マロンを受け止めた。
「だいじょーぶ!?」
「ゴホッ・・・・!」
当の彼女は口から血は出ているものの、致命傷ではなさそうだった。
・・・まじかよ、死亡フラグ回避しやがったぞ、こいつ・・・・・
「なんで・・・・ボクは・・・お前の・・・・・」
マロンが汗をかきながら苦しそうにカービィに問う。
そして、カービィからの返答は、こうだった。
「・・・助けるのに理由なんていらなくない?それに、僕と同じヴェイルの友達なら、君が死んだらヴェイルが悲しむじゃん?僕ね、誰かが死ぬのをみるのと悲しむところを見るのが嫌いなんだ」
それを聞いた途端、マロンの目が少し見開かれたように、俺には見えた。
つまり、カービィは『友の友も自分にとっては友だから助けたかった』って言いたかったのか?
「誰か!!はやくこの子の手当して!!」
その様子を見ていたヴェイルは嘲笑うかのように言い放った。
「無様ですねぇマロン・・・!もうあなたは必要ありません」
モーヴが急いでマロンの元に来た。
「しっかりしろマロン・・・!致命傷ではなさそうだ、今傷を・・・!」
「モーヴ、ごめん・・・ヴェイル様、助けられなかった・・・」
マロンの目には涙が溜めっていた。
・・・わかるぜ。とても悔しいのはな・・・!
「・・・マロン、あなたはヴェイルのために・・・・」
リュールも駆け寄った。
そしてマロンはカービィを見て、語り始めた。
「・・・ずんぐり・・・・ピンク・・・・・ヴェイル様は言ってた・・・・お前に会えたことが・・・・一番嬉しかったって・・・・・友達になれたことが嬉しかって・・・いつか、ボクに紹介したいって・・・言ってた・・・」
「マロン・・・・」
「お願い・・・・・神竜・・・ずんぐり・・・ヴェイル・・・様・・・・を・・・」
そして、眠るように動かなくなった。
「マロン・・・しっかりしろ!マロン!」
「大丈夫だ、生体反応をまだキャッチできる・・・!彼女は死んでいない・・・!」
「テメェら!何ぼさっとしてやがる!手遅れになる前にさっさと応急手当てしろ!急げ!!」
ファルコの怒鳴り声で奥から少数の兵士とモンクであるフランが現れてマロンを連れて出て行った。
「・・・・・貴様らぁぁぁ!!!!」
俺たちをすり抜けてモーヴがセピアに突進する。
しかし、その槍は結界に阻まれてしまった。
「人の心を持たぬ化け物が・・・!俺は二度とお前らの元になど戻らん!!」
「・・・そう・・・裏切るのね・・・・」
そして『エルファイアー』でモーヴを吹っ飛ばしてしまった。
まじかよ、あんな大巨漢が一瞬であの様とは・・・・確かにバケモンだな。
ダウンしたモーヴの様子を見に、リュールが向かった。
「馬鹿馬鹿しい・・・・茶番は終わりましたか?無駄な犠牲が出ただけで・・・どうせここで全員死ぬのに・・・ねぇ、マルス!!」
背後からマルスが現れる。
「・・・マロンのためにもヴェイルを・・・返してもらいます」
「言ったでしょう・・・私こそがヴェイル!!一瞬で全員殺してこの場で
証明して見せます!!」
「・・・・フォックス!ファルコ!ウルフ!」
「任せておけ!」
「返り討ちにしてやるぜ!」
「俺に命令するな!」
3人揃ってリフレクターを展開しようとしたその途端・・・・
ポロ・・・
・・・ヴェイルの目に、涙が溢れた。
続く
完全な原作改変。マロンが悲しすぎたので…ね?