GOD EATER 〜アラガミの少女の放浪記〜(仮題) 作:クローサー
あれから数週間後。
いつも通り寝ぼけながら目を覚ました少女は、1時間程ボーッとした後、天気を確認。
天気は快晴の為、外に出る準備を始める。
いつも使ってるポーチにビニール袋を入れ、背中に背負う。そして、今日は何となく拾っていた鉄パイプを手に取る。
これで準備は完了。人類からしたら準備の”じ”にも入らない準備なのだろうが、少女にとってはこれが普通なのだ。
そして、少女は隣の部屋の穴に飛び降りる。そして外に通じるもう一つの穴から外へと出て行った。
外に出た少女はまず最初に近くにある、倒壊していないビルをよじ登って屋上に行き、そして景色を見ながら今日は何処に行こうか適当に考える。
とは言っても、大体は少女の気分と気まぐれなのだが。少女にとっては興味がある物を探し続けているだけだ。
「…あっち、行こう」
どうやら今日の散歩の目的地は決まったらしい。少女はある一点を見続けている。
早速目的地に向かう為、少女は屋上から飛び降りた。
そして落下すると同時に右腕を刀に変形。
ビルの半分近くの高さまで降りた瞬間、刀をビル壁に突き刺し、ガリガリという音を立てながら落下速度にブレーキを掛ける。
そして、殆ど落下速度が10km/h未満になる時には既に地面とは目と鼻の先。
地面に着地と同時に膝を曲げ、衝撃を地面に吸収。そして壁から刀を抜いて右腕に戻す。
無事にビルを飛び降りた少女は、いつも通り目的地に向かって歩き出す。
「ガァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」
…その前に、先にヴァジュラをなんとかする必要がありそうだが。
どうやら落下中の姿をヴァジュラに見られてたらしく、完璧に少女をターゲットにしている。
「…」
少女は嫌そうな顔をしながら、右腕を刀に変形。戦闘体勢に入る。
実を言うと、少女は大型アラガミとの戦闘を苦手としている。
少女は主な手数が素手と刀しか無く、大型アラガミに対して決定力に欠ける。倒せなくも無いが、殆どの場合時間が掛かってしまう。少女自身もどうするか悩んではいるのだが、今だ妙案は思いついていない。
少女がどうするか考えてるとヴァジュラが全速力で走り出し、7mからジャンプ。4mの高さまで身体が飛ぶ。
「ッ!!」
少女はすぐさま右に全力疾走。辛うじて回避し、目潰しに左手に持ってた鉄パイプを振り向きざまに投擲。投擲と言っても、銃弾と何ら変わりのない速度での投擲だが。
「グァァァァッ!!?」
投擲された鉄パイプはヴァジュラの右目に命中。突然右目に走る痛みと異物感にヴァジュラは悶える。
その隙に少女は逃走を開始。大型アラガミとの戦闘は可能な限りせず、逃走するのば現在の少女のポリシーであり、戦闘するのはやむを得ない時のみだ。
「ッ!!?」
少女は、第六感の指示に反射的に飛ぶ。そしてその下を雷球が通り過ぎた。
後ろを見ると、右目を失ってるもののヴァジュラが既に立て直しており、少女に向けて雷球を発射した後の体勢だった。そして、そのまま突進を開始。口を開き、少女を捕食しようとする。
それに対し、少女はギリギリまで引きつけ、再度ジャンプする事で回避。そしてそのまま左手でヴァジュラの尻尾を掴み、地面に着地。
尻尾に掴まれたヴァジュラはそのまま振り落とそうと勢いを殺さない為、素足が地面に擦られるが、気にする事なく少女は左腕を使って自身を尻尾に近づけ、尻尾に刀を一振り。
全体の1割にも満たないが、尻尾の先端部分が切り取られ、ヴァジュラは苦悶の声を挙げ、急停止する。
尻尾を切り取った事で少女はバランスを崩して地面を転がるが、すぐに立て直し、切り取った尻尾を素早く食べる。
今度は少女から接近し、ヴァジュラが左前足を少女に向かって振り下ろすと同時にスライディング。同時に刀を垂直に立て、左手を添える。
ヴァジュラの攻撃は外れ、斜めからヴァジュラの胸部、腹部を切り裂き、そして勢いが無くなる直前で振り下ろし、より切り裂く。そして少女は起き上がると同時に、今度はヴァジュラの首を切り落とそうとする。
しかし、ヴァジュラの身体が右前足を起点に突然回転。左後ろ足が少女に直撃し、吹き飛ばされてビルの壁に衝突する。
「っ…」
左後ろ足の直撃で左肘の骨が砕けるが、戦闘には一切問題は無い為、起き上がろうとするが────
「え…っ!!!?」
刀が剥き出しになっていた鉄筋コンクリートに異常な形でめり込み、上手く抜けない。更に左腕も使えない為、無理やり刀身を抜く事も出来ない。
ヴァジュラを見ると、雷球のチャージを始めている。痺れさせてから捕食しようとする魂胆なのだろうか。それはわからないが、確かにある事は、更なる追撃の危険が目の前にある事だ。
「く…!!」
もう時間が無い。そう判断した少女は強硬手段に入る。
「ぐぅぅぅぅぅ…!!!」
刀身がめり込んだ鉄筋コンクリート”ごと”無理やり引き抜く。鉄筋コンクリートの長さは約3m。
それと同時にヴァジュラから雷球が発射。
少女は刀に刺さった鉄筋コンクリートを盾に使い、雷球を凌ぐ。
ヴァジュラがそれを見て、再度突進を開始。そして、少女も走り出す。鉄筋コンクリートがあるせいで速度は遅いが、今回は問題ではない。
距離9mになった瞬間、少女は両足をしっかりと地面に踏み込み。
「りゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
普段の少女なら絶対に出さないであろう雄叫びを挙げながら、鉄筋コンクリートを右下から腕力と走った勢いも追加させて、全力で振るう。
鉄筋コンクリートではアラガミに致命傷は与えられないだろうが、衝撃は別だ。
鉄筋コンクリートを左上半身で食らったヴァジュラは斜め右へと、走っていた勢いをそのままに吹き飛び、地面を激しく転がる。
鉄筋コンクリートは砕け、刀が鉄筋コンクリートから解放されると同時に少女はヴァジュラへと走る。
ヴァジュラは脳震盪を起こし、上手く立ち上がる事もままならず、攻撃のチャンス。これを見逃す少女ではない。
少女が振った刀の刃は的確にヴァジュラの首を切り取って、頭部と身体を分け、ヴァジュラの身体がゆっくりと地面に沈んだ。
「…ふぅ」
ヴァジュラを倒した少女は、刀を右腕に戻し、ヴァジュラの横腹の肉を喰らい、戦闘のダメージので負った傷の再生を開始。
数秒経てば、砕けていた左肘の骨は再生し、元に戻っていた。
「…頂きます」
その言葉を境に、少女は食事を始めた。
同時刻。
元アメリカ領地、アラスカ地方。
自然豊かであった森林は、今ではもう影もなく枯れ果て、アラガミが住まう死の森と化していた。
しかし。
「アラスカ支部。こちらクロウ隊、任務目標を撃破。エリアK6Aにヘリを頼む、どうぞ」
『こちらアラスカ支部。了解しました。ヘリの到着は15分後です、どうぞ』
「了解した、それまで待機する。オーバー」
本来ならいない筈の男2人、女2人、計4人の人間の姿が、そこにいた。
4人の手には違いこそあるものの、対アラガミ兵器である”神機”を持っている。
彼等はアラスカ支部所属のゴットイーター。
彼等のすぐそばには、第二種接触禁忌アラガミである”ウロヴォロス”の死骸があった。
ウロヴォロスは超弩級の体格を持つアラガミであり、無数の触手を用いた攻撃に加え、体格を活かした攻撃、更には大口径のビームを放つ。
あまりの危険性を持つ為、通常のゴットイーターは接触を禁じられている。
それを討ち取った彼等の実力は、正に折り紙付きである。
「いや〜…さっきのは危なかった。ありがとな」
「全く…貴方はいっつも前に出過ぎなんです。フォローする私達の身にもなって下さいよ」
「悪りい悪りい。まあ、お前等を信用してるから俺は安心して突っ込めるしな…ついつい」
「ついついで済まさないで下さいよ…大体──」
1人の女性は、1人の男性を叱り。
「なあ、ちょっとした噂を聞いたんだが、聞いていいか?」
「何?」
「お前、誰かと付き合ってんのか?」
「えっ…はぁ!?」
「おっ。この反応の仕方は…いるんだな?」
「い、居ないに決まってるでしょ!何言って──」
「おっと、兄に嘘は通じると思ってるのか?」
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
「で、どの位進んでんだ?キスか?ベッドか?アブノーマルか?」
「途中の選択肢がおかしい!! …まだキスもしてないし告白もしてない」
「え、告白もか?」
「うん…あいつ鈍感だしなぁ…」
「マジかよ…」
1組の兄妹は、家族話を始め、それぞれ時間を潰している。
「聞いてます?」
「はいはい、聞いてる聞いてる」
「はぁ…貴方もあの兄妹を見直して────?」
女性が兄妹に視線を向ける。
そして、気が付いた。
「2人とも、上よ!!!!!」
しかし、気付くのが遅かった。
「え──」
兄が上に視線を向けた瞬間。
真上にいた”黒い影”の拳によって頭から叩き潰され、一瞬で身体はミンチとなり、手に持っていたロングブレードの神機は宙を舞う。
そして”黒い影”は宙を舞う神機の柄を掴み、すぐ近くにいた妹に投擲。
ロングブレードの刃は正確に妹も腹部を貫き、吹き飛ぶ。
この間、僅か2秒。
「「っ!!」」
男性と女性はすぐに神機を構える。
「──消えろ」
しかし次の瞬間、”黒い影”から高出力のレーザーが発射。
レーザーは2人の足元に着弾し、爆発。しかし、その爆発はサリエルが放つそれとは比べ物にもならない規模だ。
その爆発は2人を一切の容赦無く飲み込み、2人の存在を消し飛ばした。
「はっ…はぁ……っあ…」
先ほど神機によって腹部を貫かれた妹は、まだ息があった。
しかし、腹部を貫かれたダメージに加え、自身の身体にあるオラクル細胞と神機のオラクル細胞による拒絶反応の痛みが走り、まともに身体が動かない。もし動けたとしても、吹き飛ばされた時に神機を手放してしまった為、どうする事も出来ないが。
なんとか腹部に刺さっている神機を抜こうとしていると、重い足音が遠くなっていた妹の耳に入る。
それに気付き、視線を上げると。
「…え」
そこにいたのは。
体長は約2m、背に黒い二対の翼、独特の形状をした尾、顔を覆う一つ目の様な紋様をした仮面、剥き出しになった背骨、そして刺々しく禍々しい、黒色の肌をした、”人型”の異形がそこにいた。
妹の目の前に来た異形は、右手で妹の腹部を貫いている神機の柄を掴み、引き抜く。
「─────ッ!!!!?」
引き抜かれた事でより出血が増し、手で出血を可能な限り止めようとするが、意味をなさない。
異形の手に渡った神機は、突然捕食形態へと移行。
そして、捕食形態となった神機が妹の身体に向き────
妹の身体を、捕食する。
一噛みでふくらはぎより上の部位を喰らい、二噛み目で完全に妹の身体を喰らい尽くした。
「何処だ、”器”…」
10分後、ヘリが到着した頃には。
二つの血だまりと、僅かに残ったウロヴォロスの肉片と巨大な血だまりのみしか残されていなかった。