怪物と英雄の狭間で 作:伝説の一般元ブロリスト
みなさん岩盤のこと好きすぎませんか?
期待を裏切ってしまったら申し訳ありません
(っ!! 戦闘が始まった…! …僕も動かないと)
一階からビル全体を揺らすほどの激しい爆音が響き渡り、緑谷出久は息を呑みながら階段を駆け上がっていった。
(ブロリー君がかっちゃんを引き止めてくれている…だったら僕は、僕の役割を絶対に果たさなきゃ!!)
爆破の振動に足元を揺らされながらも、緑谷は全速力で上核兵器が設置されている最上階の部屋を目指す。そして核保管室に到達した緑谷は勢いよく扉を開く。
「来たな、ヒーロー!!」
そんな緑谷を待っていたのは、腕を組み、仁王立ちで立ち塞がる飯田天哉の姿だった。
部屋の中央には張り子の『核兵器』。その周囲はゴミ一つない綺麗な場所――飯田があらかじめ床の物をすべて撤去し、緑谷が利用できる障害物や身を隠す場所を完全に無くした状態であり、同時に飯田自身も動きやすい状態でもあった。
「フッ…フハハハハ! 俺は邪悪なるヴィラン! この核兵器はすでに俺たちの手に落ちた! 奪い返したくば俺を倒してみせるがいい!!」
真面目ゆえに完璧にヴィラン役を演じきる飯田。緑谷は緊張感で汗を流しながらも、頭の中で思考を巡らせる。
(飯田君……『ヴィラン役』を徹底してる…!なら僕も、全力でヒーロー役を徹底しないと……。相手が本物のヴィランだとしたら……まずは会話で相手の状況を探らないと)
緑谷はまっすぐ飯田の方を見ながら口を開く。
「今すぐ核から離れて、降伏してください!!」
「降伏だと? バカな事を! 我は悪ーい悪ーいヴィランだ!! ヒーローの言うことなんて聞かない!!」
「このままだと貴方も命を落としてしまいますよ!」
「そんなの知ったことじゃないな! ……さあ、もう無駄な話はやめにしよう! ……ここら一帯を消し飛ばす前に」
飯田は前傾姿勢を取り、ふくらはぎのエンジンを急加熱させる。そして人差し指を緑谷の方に向けて、ヴィランっぽく汚い口調で宣言してみせた。
「ヒーロー……まずお前から血祭りにあげてやる!」
爆音とともに、飯田が一瞬で視界から消える。障害物のない広々とした室内は、飯田の『エンジン』による超高速移動にとって最高の独壇場だった。
「っ……!? 速い……!!」
直後、横合いから襲いかかる鋭い蹴り。緑谷は咄嗟に腕を交差させてガードするが、その圧倒的な重さと速度に弾き飛ばされ、壁際まで後退を余儀なくされる。
(強い……! 飯田君は自分の個性を完璧に活かせる環境を作ったんだ。僕一人でこの俊足をかいくぐって核に触れるのは、容易じゃない……!)
「俺を止めてみろぉヒーロー…!!!(ヴィランの悪い言葉というのはこれであっているのだろうか…いや、今はそれよりも戦いに集中せねば!!緑谷君を相手に油断はできない!!)」
二人の知恵と身体能力が激突する緊迫の5階。
「―貴方を止めます!ヴィラン!」
「こいヒーロー!!!」
ブロリーと爆豪が戦闘を行っているように、ここでも一つの戦いが起きたのであった。
爆豪勝己
彼は幼少期から挫折を知らずに育った、いわば早熟型の天才であり、基本的に天性のセンスだけで状況を切り抜ける力を持っていた。
成績はいつでもNo. 1、そのほかありとあらゆることに関して彼は常に誰よりも優れており、敗北をしたことなんて一度も無かった。
故に、彼の自尊心は天を突くほどに肥大化していた。誰も自分を見下すことはできず、自分はオールマイト以外なら誰にだって負けていないという確固たる自信があった。
――しかし、その揺るぎない自信を、跡形もなく叩き壊す理不尽な存在が現れてしまった。
「―クソがァァァッ!!!」
「!!」
それが――目の前で静かに佇む男、八木蕗利。
己が努力の果てに磨き上げた爆破も、天性の戦闘のセンスも、この男の圧倒的な『規格外』の前では一切通用しない。
自分がこれまで積み上げてきたすべての価値観と自尊心が、目の前の怪物を前にして音を立てて崩れ去っていく。
己の「一番」を脅かす不倶戴天の存在。
爆豪勝己の肥大した誇りを、その圧倒的な存在感だけで無情にも粉砕してみせた男が――いま、彼の目の前に立ちはだかっていた。
(至近距離で何度も爆破したが喰らってる気配が一つもねえ!!攻撃も…どんどん防いでいきやがる…!!)
戦闘を開始してから爆豪は遠慮なしの本気でブロリーに向かって攻撃を繰り出していた、だがブロリーがケガを負うことはなく、顔や体が煤で汚れる程度。
それ程までにブロリーの体は硬い、むしろこれくらいの強度が無ければ、個性の莫大なエネルギーを耐えきれないのだ。
(――だったら!!)
そこで爆豪は小さな爆破を利用したアクロバットな動きでブロリーの飛び回り、視界を目まぐるしく交錯させながら、ブロリーの死角へと回り込む。コンクリートの壁や天井を足場にし、連続する爆破の推進力で縦横無尽に空間を跳び回る——爆豪が得意とする、天性のセンスが生み出す立体機動。
「オラァァッ!!」
側面、後方、頭上。死角から容赦なく叩き込まれる爆破の嵐。
だが、攻撃を叩き込めば叩き込むほど、爆豪の脳裏を支配していくのは「理不尽」という三文字だった。
(……おかしい……! なんだ……この違和感は……!!)
正面からの素直な殴り合いなら硬度で凌がれるのも理解できる。だが、いま自分が見せているアクロバットな動きは、並の人間なら視線すら追いつかないはずだ。
それなのに、最初はわずかに反応が遅れていたブロリーの視線が、首の動きが、身体の角度が——リアルタイムで自分をとらえ始めていた。
(見切られてる……!? いや、違う……!! こいつ……俺の動きを『覚えて』やがる……!!この…たった、たった数秒間の間にこいつは……成長してやがる!!!)
そう、ブロリーの強さは個性や肉体の強さもあるが……1番大きいのはこの『成長速度』。相手の動きを少し見た、当たっただけで相手の次の動きに対応できるようになる…ブロリーが持つ強さの中でも飛び抜けて凄い力である。
さっきまであったわずかな動作の無駄が削ぎ落とされ、間合いの取り方が洗練されていく。
戦えば戦うほど、秒単位で底知れず強くなっていく悪夢。
「……ッ、ハハッ!!」
爆豪の口から、引きつったような笑みが漏れる。
己が血の滲むような努力と天性のセンスで磨き上げた戦闘技術すら、この怪物の前ではただの「成長の糧」に過ぎないというのか……そんな絶望が込み上げてくる。
爆豪はブロリーに向けて放った爆発の勢いで距離を取り、廊下の真ん中に降り立った爆豪。右手に装備してある籠手を確認……そして少しの笑みを見せながら、ブロリーに向かって口を開く。
「俺の個性は掌の汗腺からニトロのみてぇな汗を出して、それを爆発させる『爆破』…!!そして要望通りの設計なら、この籠手はそのニトロを内部に溜めて…!!!!!」
それは彼にとって今できる最大の攻撃。ブロリーは瞬時にその攻撃が生半可ではないと感じ取り、両手で顔を覆う。
爆豪は右手の籠手にあるピンを容赦なく引き抜いた…その瞬間。
ドバババァァァァァンッッ!!!!
ビル全体が激しく揺れ動くほどの凄まじい大爆発が発生。炎の濁流が、狭い廊下を破壊し尽くしながらブロリーの巨体を完全に包み込んだ。
「ハッ…ハハハッ…!スッゲェ…!―どうだ……どうだクソッタレェェェェェェェ!!!」
爆豪の最後の希望。全力の攻撃も効かない、素早い動きで翻弄したとしてもすぐに対応してしまう正真正銘の規格外に唯一効くかもしれないと希望を持った一撃。
——しかし。
「…………は?」
爆豪は『そんなはずない』と強く思いながら、しっかりとその目で前を見る……そこにいたのは倒れているブロリーでは無く。
「…………」
顔を両手で覆いながらその場に立っているブロリーの姿だった。
(――そんなはずねぇ、あの一撃だぞ。壁に穴が開くレベルの攻撃……それを、それをあんな状態のまま…)
「……爆豪。お前は…緑谷の悪口を言う嫌な奴だ……でも、強い。これまで会ってきた人達の中で、三番目に強い。お前の戦い方は…とっても、勉強になった」
ブロリーの悪気のないその言葉は、爆豪にとってトドメの一撃に近いものだった。
「……三番目……だと……!?」
爆豪の血走った両目が、激しい錯乱と屈辱で大きく見開かれた。
これまで誰にも負けたことがなく、常に絶対的な「一番」であり続けた自分。
自分を超越した存在から『三番目』などという中途半端な順位で評価された。しかも相手には煽る色すら一切なく、ただどこまでも純粋でまっすぐな本心が語られている。
お前の戦い方は勉強になった。
それは、本気すら出していない強者が、見下ろす弱者に対して向けるあまりにも無邪気で残酷な『格付け』だった。
「勉強になった……だと……!?―ギッ……グッッ……!!!!!!――ちくしょぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!!!!」
プライドの全てを叩き壊された爆豪の口から、血を吐くような咆哮が漏れる。
全身の血管を浮かび上がらせ、爆豪は残ったニトロと全圧力を両手にかき集めた。
「俺は一番だ……! 一番なんだよぉぉぉっ!!」
半狂乱のまま、壊れかけた理性を振り絞って突き出された魂の全開爆破。
――しかし。
「……っ!?」
振り抜かれた爆豪の顔面を、ブロリーの巨大な手が正面から容赦なく覆い去った。
視界が真っ黒に染まり、頭部を万力のような力で掴み取られる。反撃する隙すら与えず、恐ろしいほどの圧力が爆豪の全身を襲った。
「―ッッッアアア!!!?」
一瞬だった。
ブロリーは爆豪の顔を掴みながら、爆豪の背後にある壁に向かって飛び出し壁へと激突させた。激しい爆音とともに壁がクモの巣状に亀裂を入り、そのまま壁は砕け散ってしまった。
「ぐ……っ、はあぁ……っ……!?(見え――無かった――何にも……何にも……!!!!)」
衝撃で肺の空気を力任せに吐き出し、ブロリーの手によって完全に動けなくなる爆豪。
「……オレの、勝ちだ」
頭部を掴んでいたブロリーの手がそっと離れる。
「クソッ――タレ……が………―――」
そして爆豪は、そのまま気を失ってしまった。ブロリーはすぐさま彼の体を地面に寝ころばせた後脈を確認。
「…大丈夫」
息がある事を確認し、ブロリーは彼を事前に配られてあた捕縛用のテープで彼を拘束し、担ぎ上げる。
(――ただの嫌な奴じゃ……無かったな)
ブロリーはそう思いながら、次の行動へと移る。
(緑谷のところへ行かないと……階段を上がるより、外から行った方が早いかな)
一方、5階の核保管室。
「ハッハッハ! どうしたヒーロー! 悪のヴィランであるこの私を倒し、核を奪い返してみろ!!」
ヴィラン役の飯田天哉が、超高速の旋回運動を描きながら緑谷出久を追い詰めていた。緑谷は避けるもしくは防ぐので限界であり、反撃のチャンスを掴めていなかった。
(強い……っ! 飯田君のスピードに僕の目がついていかない……! でも、諦めちゃ駄目だ! ブロリー君が下で頑張ってくれているんだから!!)
緑谷は汗を撒き散らしながら絶え間なく襲いかかる飯田の蹴りを辛うじてガードし、反撃の隙を窺う。
「無駄だ緑谷君! 障害物のないこの空間こそ、俺のエンジンの独壇場! 諦めて降伏するがいい!!」
飯田がエンジンを全開に叩きつけ、とどめの突進へと移行しようとした――まさに、その時だった。
ガシャァァァァァンッッ!!!!
『!!?』
突如として、5階のガラスの窓が、内側へ向かって豪快に粉々に砕け散った!
「―な、何事だ!?」
衝撃音と大量のガラス片が室内に舞い散り、飯田は思わず足をとめて大困惑の声を上げる。
その粉塵と光の渦の中から躍り込んできたのは――ビルの外壁をひと跳びで蹴り上がってきた、巨躯の男。
「……待たせてごめん、緑谷」
着地と同時に軽く腰を落とし、着ていたマントをふわりと揺らすブロリーの姿だった。
「ブ、ブロリー君!? 窓から入ってきたの!?」
「うん。階段を探すより、外から登った方が早かったから」
「さ、流石は――って、ブロリー君…!か、肩に乗ってるのって…!」
「――爆豪君が…捕縛されてしまったのか!!」
ブロリーに担がれている爆豪を見て、かなりの動揺をしてしまった飯田。その瞬間を緑谷は見逃さなかった。
「ふぅぅぅぅ……っ!!」
緑谷は飯田の元へと走りながら、彼の懐へ向けて拳を繰り出した。
「飯田君……ごめんっ!!」
「なっ……緑谷く――」
「スゥマァァァッシュ!!!!!!」
個性を使用していない普通の拳、だが飯田は確実にダメージを喰らっており、体を宙に浮かせながら後方へと飛ばされた。
「―捕まえた」
「っぐ……完敗だ」
飛ばされた先にブロリーが回り込み、そのまま彼の手を掴む。これによって爆豪、飯田ともに行動不能―――よって。
『ヒーローチーム!!ウィィィィィン!!!!』
ブロリーと緑谷は大勝利を掴み取る事となった。
みなさん
岩盤はこれから続々出てきますので、お楽しみに。