怪物と英雄の狭間で 作:伝説の一般元ブロリスト
盆休みが終わりましたね…………もっと続いて欲しいと思う今日この頃……。
もういっそのことドラゴンボールで盆休みの期間を伸ばしてもらおうな……
マスコミの起こした騒動から数日後。A組はヒーロー基礎学の時間であり、教室で相澤から内容が話された。
「今日のヒーロー基礎学はオールマイトと俺ともう一人も含めての三人体制で教えることになった。内容は『人命救助』訓練だ。――今回は色々と場所が制限されるだろう。ゆえにコスチュームは各々の判断で着るか考える様に」
人命救助、それは戦闘力よりも判断力・迅速な対応を求められる人によっては戦闘よりも苦手とされている物ではあるが、初めての人命救助と言うことでクラスメイト達はドキドキワクワクしていた。
特に救助ヒーローを目指すブロリーにとっては、何よりも楽しみにしていたことだった。
ブロリーはコスチュームを着込み訓練へと臨むこととなり、素早く身支度を整えて校内バスへ向かった。飯田が『みんな!バスの席順はスムーズに出席番号でいこう!2列に並ぶんだ!』と意気込んでいたが、対面式の座席だったため、指示がほとんど無駄になってしまったりもした。ブロリーは緑谷の右隣りに座っている。
「私何でも言っちゃうの緑谷ちゃん」
「あ!?はい!?蛙吹さん!」
「梅雨ちゃんと呼んで……あなたの個性、オールマイトに似てる」
「えっ!!? そ、そうかな……どこにでもある様な個性な気も……」
蛙吹に突然そう言われ、緑谷が思わずブロリーに目を送るがブロリーもなんと答えてたらいいか分からずあたふたとしてしまう。
「待てよ梅雨ちゃん。オールマイトは怪我なんかしねぇ。緑谷のとは似て非なるものだぜ?」
挙動不審な緑谷だったが、会話に切島が交ざった事で冷静を取り戻し、ブロリーもホッとする。
「でも増強系の個性ってのは良いな。鍛えれば、やれる事が増えるだろ?――俺の『硬化』なんて対人戦は強いけど地味だからな……」
「そ、そうかな? プロにも通用するカッコイイ個性だと思うけど?」
「けどよ……プロってやっぱ人気商売だろ? そう思うと地味なのは致命傷なのかもな?」
「なら僕のネビルレーザーこそプロ並み」
「お腹壊すのは致命傷だけどね?」
「プロとして派手で強くて、人気出そうっつったら……やっぱ轟と爆豪、それにブロリーだな!」
切島が親指を立てて言うと、車内の視線が後部座席の轟と爆豪、そして緑谷の隣にいるブロリーへと集まった。
「とんでもないパワーにスピード、頑丈さ。それから空も飛べる、とっても優しい、人気でないわけないねー!」
「男らしさもこの中じゃダントツだしな!!」
「だろ?だろ!?やっぱみんなそう思うよなー!」
「反対に爆豪ちゃんはすぐキレるから人気は出なさそう」
「――ハァッ!?出すわゴラァ!!コイツよりも何倍も!何千倍も出すわ!!!」
「ほらキレる」
カエルの個性を持つ蛙吹梅雨の鋭い指摘に逆ギレする爆豪、人気という話は、ヒーローを目指す者達にとってはとても大事なことだという。
しかし人気などは彼にとって問題ではなく、彼の目指すヒーローは『人を助け続けるヒーロー』であるので、いわゆる人気商売には全く興味がない、というかヒーローを商売とは思っていない。
「もう着くぞ、いい加減にしとけ」
相澤の言葉でその場は静まり返り、いよいよ目的地である場所へと辿り着く。
「皆さん、待ってましたよ。」
そこで待っていたのは、宇宙服に身を包むヒーロー・13号。
「スペースヒーロー 13号だ!災害救助で目覚ましい活躍をしている紳士的なヒーロー!」
「わぁ~!私好きなの13号!」
「早速中に入りましょう!」
13号の案内によりブロリー達は訓練会場であるドームの中に入っていく。内部にはさらに複数のドームがあったり、崩れたビルがいくつもあるエリアがあったりと災害救助を想定したと思われる明らかに危なそうなエリアがちらほら見受けられる。
「おぉ~!」
「すっげぇ!USJかよ!?」
「水難事故、土砂災害、火災、暴風、エトセトラ。
あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です!その名もウソの災害や事故ルーム――略してUSJ!!」
『(本当にUSJだった!!!?)』
(USJ……昔…お父さんに連れて行ってもらったこと…あったな)
テーマパークの方のUSJを思い出し、ブロリーがどこか懐かしそうに目を細めていると、相澤が周囲を見回しながら13号へと歩み寄った。
「13号、オールマイトはどこだ? ここで合流する手筈だったはずだが」
「相澤さん、それがですね……」
13号は相澤に顔を近づけ、指を三本立てて小声で事情を説明し始めた。通勤途中にヒーロー活動を行いすぎて活動限界を迎え、現在は控室で休んでいるのだという。
「……まったく、不合理の極みだな。仕方ない、俺たちだけで始めるぞ」
相澤がため息をつきながら振り返ると、13号が生徒たちに向き直り、両手を広げて静かに語り始めた。
「始める前にお小言を一つ、二つ……三つ、四つ……」
「増えていく……」
緑谷が小さくツッコミを入れる中、13号の言葉は真剣さを帯びていく。
「皆さんご存知の通り、私の個性は『ブラックホール』。どんなものでも吸い込み、塵にしてしまう力です。……この力を使って、数多くの災害から人々を救い出してきました。しかし――この力は、簡単に人を殺せる力でもあります」
13号の言葉に、場内の空気が一気に引き締まる。
「皆さんの中にも、似たような力を持つ方がいるはずです。超常社会において、個性は厳しく資格付けされ、一見安全に見えるよう管理されています。しかし、一歩使い方を誤れば……個性は容易く人を殺める凶器へと変貌してしまうのです」
(人を……殺めてしまう、力……)
ブロリーは自らの大きく分厚い手のひらをじっと見つめた。
気を抜けばすべてを吹き飛ばし、壊してしまう自分の莫大な力。その恐怖と向き合い続けてきたブロリーにとって、13号の言葉は誰よりも深く胸に突き刺さっていた。
「今回の授業で学んでほしいのは、個性の強さや優劣ではありません。『人の命を救うために、己の力をどう行使するか』――その心得を、しっかりと学んで持ち帰ってください。以上! ご清聴ありがとうございました!」
深々とお辞儀をする13号に、生徒たちから拍手が沸き起こる。
「素晴らしいお話でした!」
「よーし! 気合い入ってきたぜ!」
「ブラボー!!ブルルァァーーボ!!」
「よし、それじゃあまずは――」
相澤が指示を出そうとした、まさにその瞬間――ブロリーは何かの気配をキャッチした。それはブロリーがこの世で1番嫌悪している存在の気配…。
(――この…感じは…!!)
「一箇所に固まれ! 動くな!!」
相澤の鋭く張り詰めた怒号が響き渡る。
いつも気だるげな担任の目が、かつてないほどの警戒と殺気を帯びていた。
「13号! 生徒を守れ!!」
「え……? なになに、これ……!?」
「もう訓練始まってんのか!?」
ざわつく生徒たちの中、黒いモヤの中心から、無数の不気味な人影が次々と姿を現す。
その先頭に立つのは、全身に無数の『切り落とされた人間の手』を纏い、爛爛と血走った赤い瞳をギラつかせる異形の男。
「動くな……ッ!」
相澤が首元の捕縛布を引き抜き、ゴーグルを装着しながら低く言い放った。
「あれは、本物のヴィランだ」
「本物の……ヴィラン……!?」
その言葉が落ちた瞬間、一年A組の空気は完全に凍りついた。
「侵入警報は!? センサーはどうなってんだ!?」
「当然あるはずだが……鳴らないということは、妨害できる『個性』の持ち主がいるということだ」
「校舎から離れた隔離空間に、時間割を把握した上での襲撃……バカだがアホじゃない。これは、明確な悪意を持って計画された奇襲だ」
轟の冷静な分析に、生徒たちの顔から血の気が引いていく。電波も遮断され、外部との連絡は完全に断たれていた。
「13号! お前は生徒を避難させろ。上鳴は学校へ連絡を試みろ!」
「相澤先生! 先生一人で戦う気ですか!? あの人数相手に、正面からなんて……!」
飛び出そうとする相澤の背中に、緑谷が悲痛な声を上げる。
「一芸だけじゃヒーローは務まらん……! 13号、避難誘導を頼む!」
相澤はそれだけ言い残すと、首の捕縛布を両手に構え、階段を一気に駆け下りていった。
「相澤先生……ッ!」
ブロリーは思わず一歩前に踏み出し、先生の背中を追おうとした。
だが、その大きな肩を13号の手が制止する。
「ダメです、八木君! あなたの力は強力ですが、今は生徒全員の安全確保が最優先です! 速やかに退避口へ!!」
「……っ……はい……!」
ブロリーはぐっと拳を握りしめ、歯を食いしばりながら踵を返した。下を見れば、相澤が凄まじい体術と『抹消』を駆使し、群がるヴィランたちを次々と薙ぎ倒している。しかし、奥に控える手だらけの男と、黒いモヤ、そして異様な気配は、到底それだけで片付く相手には見えなかった。
(嫌な気配が……あいつらから、溢れてる……。みんなを……みんなを守らなきゃ……!)
ブロリーの全身の筋肉が緊張で張り詰める中、クラスメイトたちは13号の誘導に従い、出口の扉へ向かって全力で走り出す。
――だが。
『させませんよ?』
13号を先頭に避難しようと矢先、ブロリー達の前に現れたのは黒いモヤのヴィランだった。
『はじめまして……我々は
「オールマイトを……殺す……!?」
緑谷が息を呑み、生徒たちの間に絶望的な戦慄が走る。
そして――
(お父さんを……!?)
ドクンッ、とブロリーの心臓が激しく跳ね上がった。自分の大切な家族を、理不尽な悪意で奪おうとする言葉。ブロリーの瞳の奥に、かつてないほどの鋭く深い光が灯り、全身の血が一気に沸騰し始める。
「まあ、私のお役目は変わりません。あなた方を……散らし、殺す」
黒いモヤが一気に膨れ上がり、生徒たちを丸ごと呑み込もうと巨大なドーム状に広がり始めた。
「させませんッ!!」
13号が指先のキャップを外し、個性『ブラックホール』を発動しようと身構えた――その瞬間。
「死ねぇぇぇぇッ!!!」
「ウラァァァ!!!」
爆豪と切島が、電光石火の勢いで黒いモヤのヴィランの眼前へと跳びかかり、至近距離から渾身の爆破と拳を叩き込んだ。しかし、黒いモヤのヴィランは無傷。
「おっと、危ないところでした……。生徒とはいえ、実に優秀な金の卵ですね」
「ッチ!!」
「しかし――私の役目は、あなた方を散り散りにすること」
黒いモヤが暴風のような突風とともに爆発的に広がり、クラスメイトたち全員の視界を真っ暗に覆い尽くしていく。ブロリーは迎撃よりも仲間達を守ることを最優先にし、咄嗟に近くにいた仲間たちを引き寄せようと手を伸ばす。
耳郎・八百万・上鳴は捕まえて体で守ることができたが、A組全員を守ることはできず、黒いモヤに一気に包まれてしまった。
黒いモヤによってブロリー達は――山岳ゾーンと呼ばれるUSJの施設内へと運ばれた。
「ここは……っ、三人共、無事か!」
「ああ!ブロリーのおかげだぜ」
「助かった……けど、ここ…何処?」
「USJの施設内にはいる様ですが…」
状況を確認し合っていた四人の耳に、無数の下卑た笑い声が届いた。
「へへっ……運がいいぜ。ガキが四匹、それも女が二人混ざってやがる」
「おいおい、あのデカいのはなんだ? 本当に学生かよ」
岩山の上や物陰から、刃物や鈍器を手にした数十人ものヴィランたちが姿を現し、ブロリーたちを完全に包囲していた。
「っ……! 囲まれた……!?」
「数が多いですわね……!」
耳郎と八百万が咄嗟に身構える。
だが、そんな二人よりも早く、前に踏み出したのはブロリーだった。
「………………」
その顔には、いつもの穏やかで申し訳なさそうな表情は微塵もなかった。
眉間には深いシワが刻まれ、瞳の奥にはギラリとした鋭い光が宿っている。全身の筋肉が鋼のように軋み、ただ立っているだけで周囲の空気がビリビリと重く震え始めていた。
(……お父さんを、みんなを、殺す、って言った……!!)
大切な家族と、守りたい仲間たちへ向けられた理不尽な殺意。
ブロリーの胸の奥底で、普段は必死に押し込めている『怒りの熱源』が、ドクンと激しく脈打つ。
その異様な空気の変化を、誰よりも早く察知したのは上鳴だった。
「ブロリー、落ち着け」
上鳴はブロリーの手を握り、彼を落ち着かせようとする。今までずっと隣にいたからこそ、上鳴は知っている……普段は誰よりも優しいこの男が、理性を焼き切るほどの怒りに呑まれた時、どれほど手がつけられない怪物に変貌してしまうかを。
「深呼吸だ、深呼吸。あんな奴らに本気で怒ることなんてない、だろ?」
上鳴は優しく、本気でブロリーを諭す。
しかし、周囲を取り囲むヴィランたちには、そのやり取りの本当の恐ろしさがまるで理解できていなかった。
「なんだなんだ?そんな図体してビビってんのか?」
「なあ、餓鬼どもは好きにしていいんだよな?」
「ああ、そう聞いてるぜ」
「ならよ……へへへっ、先に男どもをやっちまおうぜ。そのあとは女子二人を……うへへへへっ」
「じゃああの図体がでかいやつは譲ってやるよ、俺はあの弱そうなチャラを殺す」
故に、そんな下衆な言葉を口から発してしまった。流石の上鳴もそんな言葉に怒り顔を顰めるが……そんな顔も一瞬で青ざめてしまった……なぜなら。
「うぅうぅ…!!」
ブロリーの顔が…完全に怒っている時の顔になっていたからだ。それだけではない、彼の体からはエネルギーが漏れ出ていた…上鳴は咄嗟に手を離してしまう――そう、離してしまった。
「う"ぅ"ぅ"…!!―ぐがぁぁぁぁっっ!!!」
「な…なんだ…⁉︎」
「ビビってんじゃねえ!相手はガキだろうが!ただ叫んでるだけのやt」
次の瞬間、まだ喋っている途中のヴィランが勢いよく後方へと吹き飛び壁に激突。そのままヴィランを中心にクレーターの様なものが出来上がってしまった。
「―は?」
「い、いまなn」
すると今度は唖然としている二人のヴィランの顔が、突然地面へと叩きつけられた。ほんの一瞬、瞬きをした一瞬だった。
「――こ、このくそっ」
「がぁ"!!」
「てめ」
「ゔゔぁ!!!」
一撃、たった一回の攻撃を当てるだけでヴィラン達は吹き飛びそのまま倒れてしまう。死んではいない、だが再起はしばらくできないほどのダメージは負っていた。
「―ブ、ブロリーさ『近づくな八百万!!!』っ上鳴さん…?」
「今のブロリーには絶対近づいちゃダメだ!耳郎、勿論お前も!」
「で、でもブロリーは一人で戦って」
「だからだよ!!…だから、ダメなんだ」
ブロリーに加勢しようとする二人を上鳴は全力で止める。今のブロリーは完全に怒っていた、黒いモヤの『オールマイトを殺す発言』に『友人を殺す発言』、そして『女子二人を弄ぶ発言』……これら全てに我慢の限界を迎えていた。
「―がみ…なり…!!!二人を、連れて……下がってろ…!!!!!!」
「わ……わかった…!!!!」
従うしかなかった、今のブロリーはなんとか理性を保っている状態。上鳴は二人の手を引き物陰に隠れる。ブロリーはそれを確認すると
「お前達…なんかに…!上鳴も、八百万も、耳郎にも手を出させない……!!!う"ぅ"ぅ"ぅ"がぁぁぁぁぁ!!!!!!」
雄叫びを上げながら、ヴィラン達に向かって飛び出した。
暴力を嫌い、戦いを嫌っているブロリー。
だが、一度怒りのスイッチが入ってしまうと……彼は優しい男から一変。
ヴィランを蹂躙する男へと、変貌する。
次回
ブロリー・パワー25%解放