怪物と英雄の狭間で 作:伝説の一般元ブロリスト
めちゃくちゃ短いです。
「……そんな……バカな――脳無だぞ。オールマイト専用のヴィランだぞ……それが……それが…! こんな…!!!」
穴が空いたドームの天井を見ながら、死柄木弔は両膝を着きながら絶望していた。
信じられない。信じたくない。
オールマイトの100%の力に対抗し、確実に息の根を止めるためだけに造り出された最高傑作の『改人』。
ショック吸収と超再生を持ち、どんなプロヒーローですら敵うはずのない怪物が、名も知らぬ学生のたった一撃――いや、数秒間の児戯のような暴力によって、文字通り塵芥のように粉砕されたのだ。
「あり得ない……あり得ないだろ……! クソが……チートだろこんなの……! クソッ! クソッ! クソがぁぁぁッッ!!」
死柄木は両手で自らの首元を狂ったように掻きむしり、皮膚から滲み出た血が指先を赤く染めていく。
だが、そんな絶望に浸る暇すら与えられなかった。
ズシン……ッ。
重く、大地を軋ませる足音が一つ。
濛々たる白煙を掻き分け、姿を現したブロリーの爛々と輝く金色の瞳が――ゆっくりと、死柄木を真っ直ぐに捉えた。
「ぐる"る"る"…ァ……ッ……!!」
収まるどころか、より凶暴さを増したエネルギーが、ブロリーの周囲の大気をバチバチと歪ませる。
獲物を屠るためだけに前進する野獣のような足取りで、一歩、また一歩と死柄木たちへ向かって距離を詰めていく。
その一歩ごとに、地面に穴が空いていく。
「死柄木弔! 撤退しましょう! あの少年は常軌を逸しています……! これ以上の交戦は危険すぎます!!」
黒霧が焦燥を滲ませた声を上げ、死柄木を呑み込んで退路を開こうとモヤを広げた。
しかし、死柄木はその場から一歩も動かない。
「……お前だ……」
首を掻く手を止め、死柄木は顔を覆う『手』の隙間から、血走った赤い瞳を限界まで見開いた。
「お前が……俺のゲームを……全部台無しにした……ッ!!」
綿密に練り上げた計画も、オールマイトを壊すと言うゲームも、全てを理不尽な暴力で叩き潰された。
「…脳無はオールマイト用に…改造された最強のヴィランだったんだぞ!!!それをなんでお前みたいな…奴に!!!」
(改造…⁉︎)
改造されたヴィランという事に対して、重傷の相澤を連れて下がっていた緑谷が驚愕を顔を浮かべる。
脳無の情報を感情のまま話してしまった死柄木は黒霧の制止すら耳に入らぬまま、死神のような狂気に満ちた眼光で、迫り来るブロリーをじっと睨みつけ続けた。
ブロリーの右拳が、死柄木を跡後ろへと大きく引かれた――その刹那。
ドゴォォォォォォォッ!!!!
USJの正面入口の巨大な扉が、凄まじい衝撃とともに木っ端微塵に吹き飛んだ。
爆ぜる粉塵、切り裂かれる大気。
雷鳴のような突風とともに、一筋の金色の閃光が広場へと一直線に駆け抜けた。
死柄木が反応する間すらなく、ブロリーの振り下ろされかけた拳の前に、巨大な影が滑り込む。
「が……ぁ"ぁ"ッ!?」
反射的に腕を振るおうとしたブロリーの身体を――その影は、攻撃を弾くでもなく、ねじ伏せるでもなく、両腕を大きく広げて正面から強く、優しく包み込んだ。
「もういい。もう大丈夫だ、蕗利」
ブロリーの耳元に届いたのは、世界で一番聞き慣れた、低く温かい声だった。
「……っ……!?」
「よく耐えた、よくみんなを守ってくれた。…遅れてしまって、本当にすまない」
一切の怒気も威圧もない、ただ深い慈愛に満ちた温もり。ブロリーの気は徐々に収まっていき、次第に力が抜けていった。
「もう大丈夫…何故って――
(――おとう……さん……)
掠れた声とともに、ブロリーの瞳からポロポロと大粒の涙が零れ落ちる。暴走の反動による激しい疲労で力が抜け、ブロリーの巨体が、温もりの張本人――オールマイトの肩へと預けられ……ブロリーはそのまま眠りについた。
「死柄木弔!今のうちに!!―死柄木弔!!」
「ラスボスがやっと姿を現したんだぞ!!なのにこんな所で終われるか!!」
(ッ…!今すぐにでも彼らを捕らえたいが……活動限界…!!この姿を維持するのでやっと…!)
「死柄木弔!!」
「離せ黒霧! 俺はまだ……ッ!!」
「これ以上の深追いは全滅を意味します! 退くのです!!」
黒霧のモヤが無理やり死柄木の身体を包み込んでいく。死柄木は血走った瞳を限界まで見開き、平和の象徴と、その腕の中で眠るブロリーを、骨の髄まで呪うような眼光で睨みつけながら叫んだ。
「バケモン……! オールマイト……! 次は必ず……必ずお前らを殺してやる……ッ!!」
捨て台詞とともに、黒いモヤが空間の裂け目へと完全に吸い込まれ、霧散した。
二人の気配が完全に消え去ったのを確認したオールマイトは、小さく息を吐き、ブロリーの巨体を抱き直す。
(私も………限界だ……。だが、よく持ちこたえてくれた、蕗利……)
その直後、飯田の引率によって駆けつけたプロヒーローたちの声と足音が響き渡り――悪夢のようなUSJ襲撃事件は、ようやく幕を下ろしたのだった。
白く、清潔な匂い。
カーテンの隙間から差し込む柔らかな光が、まぶたを優しく刺激していた。
「……ん……っ……」
重い頭を揺らしながら、ブロリーはゆっくりと目を開けた。――そこは雄英高校の保健室のベッドの上。
「……気がついたかい?」
ベッドの脇から、聞き慣れたしゃがれ声が届く。
視線を向けると、そこにはパイプ椅子に腰掛け、やつれた姿のまま温かな笑みを浮かべる痩身の男――父である八木俊典の姿があった。
「お……父さん……」
ブロリーはのそりと上半身を起こし、父親の姿をじっと見る。
「オレ……」
意識がはっきりするにつれて、USJでの記憶が濁流のように脳裏を駆け巡る。破壊された天井、吹き飛んだ広場、怒りに任せて怪物を蹂躙し、死柄木を跡形もなく消し去ろうとしていた、怪物じみた自分の姿。
「……相澤先生は……っ!? クラスのみんなは!?……オレは……オレは…!」
ブロリーは青ざめた顔で父の手を握りしめた。
自分が暴走したせいで、大切な仲間たちを巻き込んで傷つけてしまったのではないか。その恐怖が、胸を激しく締め付ける。
「大丈夫だよ蕗利。全員無事だ」
俊典はブロリーの大きな手を、両手でしっかりと包み込みながら、穏やかに頷いた。
「相澤君も重傷ではあるが、一命を取り留めて治療を受けている。緑谷少年も、上鳴少年も……生徒たちは全員、命に別状はない」
「――良かった…本当に……!…で、でも、オレ…脳無ってヴィランを…」
「それも大丈夫。君がとてつもない威力で放ったエネルギー波に当たって、あの脳無と言うヴィランは確かに消し飛ばされた……でも、生きていたんだ。運良く頭だけが残っていたらしくてね――再生したんだ、その状態で」
「……………人……なの?」
「…詳しいことはまだわかっていないけど、君があのヴィランを殺めてしまったわけではないよ」
張り詰めていた心の糸が、音を立ててほどけていく。
人を助けるヒーローになりたいのに、怒りに呑まれて誰かの命を奪ってしまったのではないか。取り返しのつかない化け物になってしまったのではないか――心臓をギリギリと締め付けていた暗い恐怖と罪悪感が、父の温かい言葉によって溶かされていく。
「よ……よかった……っ、本当に……よかった……っ!!」
ブロリーの瞳から、大粒の涙がぼろぼろと溢れ出し、白いシーツを濡らしていく。
大きな身体を丸め、声を上げて泣きじゃくる息子の姿に、俊典はそっと椅子から立ち上がり、その広い背中に優しく腕を回した。
「怖かったな。苦しかったな、蕗利。……だが、君はちゃんと自分の手でみんなを護り抜いて、誰の命も奪わずに帰ってきたんだ。……君は怪物なんかじゃない。今日も立派に、仲間を救った私の誇らしい息子だよ」
「お父さん……っ……うぁぁぁぁ……っ……!」
父の胸の中で、ブロリーは子供のように涙を流し続けた。
差し込む陽光が、互いを強く抱きしめ合う心優しい親子の姿を、温かく包み込んでいた。
『―ブロリー…?……へぇ、脳無を倒した生徒はそう呼ばれていたんだね?………フッフフフフ、成る程』
『―――次の継承者は……その子なんだね? オールマイト』
Q脳無の体が残ってたのは無理あるくなぁい?
A.奇跡的に!今回限りの奇跡……と言うことで!!
つまりこれから先こう言った奇跡は二度とないです。
緑谷君!!ヘイトはブロリーに任せて、君はもっと強くなるんだ!!!!