怪物と英雄の狭間で 作:伝説の一般元ブロリスト
体育祭編スタートです……あぁ、緊張する……!!!!
『――説明していただけますか、オールマイト』
「……」
USJ襲撃事件が起きた日の翌日。
オールマイトこと八木俊典は、自宅の部屋の中で手元の端末から響く冷徹な声にじっと耳を傾けていた。
電話の主は、ヒーロー公安委員会の会長。
超常社会の秩序を司る最高責任者の声には、一切の雑味が混じっていなかった。
『事件の報告書を確認しました。……USJの天井に穴、施設中心部の壊滅的な陥没。それだけではありません。同時刻、雄英高校を中心とした周辺地域一帯で、局所的な強い揺れ――震度4相当の震動が観測されています。それと同時に……まばゆい緑色の光と、爆発もです』
電話越しに、端末を指先で叩く乾いた音が小さく響いた。
「…………」
『その揺れを起こしたのは……貴方の息子である八木蕗利。そこは間違いありませんか?』
「……間違いありません」
『緑色の光とその爆発も、間違いありませんね?』
「はい」
『そして、これが彼の持つ個性のパワー…25%と言うのは?』
「…それも、間違いありません」
会長はゆっくりと息をつき、淡々と言葉を続けていく。
『あの危険な力を人目につく雄英に入学させ、一般の生徒たちと同じ場に置いた結果がこれです。手加減した四分の一の出力で地域一帯を揺るがすなど、社会の治安維持を担う公安として看過できる物ではありません。あの緑色の光と爆発は、多くの人に見られてしまいましたし……ここまで軽率に暴走をされては、此方も動くほかありませんよ』
息子の存在そのものを『危険因子』として断じかねない言葉に対し、俊典は痩せ細った胸に手を当て、低く、力強い声で返した。
「……彼の暴走は、決して無軌道な破壊衝動などではありません」
『……聞きましょう』
「蕗利にとって、雄英への入学は初めて経験する外の世界でした。これまで極力避けて生きてきた『他者との戦闘訓練』、そして数日前に起きたマスコミの校内不法侵入による理不尽な騒動……。あの目立つ容姿と強すぎる力のせいで、彼は人一倍『周囲を怖がらせてはならない、力を抑え込まなければならない』という凄まじいプレッシャーとストレスを抱え続けていたのです」
俊典の青い瞳に、苦悩と、それ以上に息子への深い理解と情が灯る。
「その極限まで張り詰めていた心の糸へ、今回のヴィランによる急襲が重なりました。瀕死の重傷を負わされた相澤君の姿、命を奪われかけた大切なクラスメイトたち……。理不尽な悪意を前に、仲間を護りたいという純粋な心が追い詰められ、堰を切るように爆発してしまったのです」
『今回の暴走は、致し方なかったと』
「…ええ。そして何より――彼は最後まで誰の命も奪わず、仲間の言葉と自らの意志で踏みとどまりました。彼は化け物などではありません。誰よりも優しく、人を救うために苦悩している一人の雄英の生徒で……私の息子です」
俊典は息を吸い込み、毅然と言い切った。
「彼がその巨大な力と正しく向き合えるよう導くこと、それこそが父親であり、彼をこの世界へ連れ出した私の責任です。彼を危険視して隔離する必要はありません」
『もしも今後、彼が完全に力を暴走させた場合、どう責任をとるおつもりで?』
「会長、私は彼を引き取ったその日にこう宣言したはずです。『そうならない様に私が命をかけて止める』と」
『……貴方の程の存在がそうおっしゃるのならば信じる――そう言ったのは私でしたね』
しばしの沈黙の後、受話器の向こうから、小さく息を吐く気配が漏れ聞こえた。
『ただし、釘を刺しておきます。今回の件で、ヴィラン連合と名乗る組織の標的があなただけでなく、あの少年にも向く可能性が極めて高くなりました。……間もなく開催される『雄英体育祭』。全国民、そして裏社会の視線が彼に注がれることになります』
「……ええ、分かっています」
『彼が真に人々を安心させる『光』となるか、それとも破滅を呼ぶ『災厄』となるか……公安としても、注視させてもらいますよ』
通話が切れた画面を見つめながら、俊典は深く息を吐き出し、遠くの青空を見上げながら端末をポケットに収めると、静まり返った部屋の中に、吹き抜ける風の音だけが微かに響いた。
(災厄、か……)
会長の残した冷徹な言葉を、俊典は静かに反芻する。
かつてあの暗闇の底から引き上げた時、誰よりも怯え、誰よりも傷ついていた小さな少年。
人並み外れた巨躯と規格外の力を持ちながら、アリを踏むことすら恐れ、他人の痛みに誰よりも敏感で、心優しい息子。
世間はその力の一端だけを見て、畏怖し、あるいは『バケモノ』と呼ぶかもしれない。
悪意を持つ者たちは、その破壊力を利用しようとしてくるだろう。
だが――どれほど理不尽な視線や試練が待ち受けていようと、歩みを止めるわけにはいかない。
(君はもう、恐れられ続けるだけの存在じゃない。……堂々と胸を張って、自分の足で前を向いて歩いていけるはずだ)
やがて訪れる『雄英体育祭』。
日本中、いや世界中が注目する巨大な舞台。
そこは、蕗利が抱える力の凄まじさを世に知らしめる場になると同時に、彼がただの脅威などではなく、誰かを救うために戦う『一人のヒーロー』であることを証明する試練の場でもある。
決して平坦な道ではない。
それでも、迷い苦しみながらも仲間を護ろうとした息子の背中を、誰よりも信じている。
「君がどんな壁にぶつかろうと、どんな悪意に晒されようと……私は君の父親として、最後までその隣で支え続けるさ」
俊典の瞳に、揺るぎない覚悟の光が宿る。青く澄み渡る大空へ向けて、俊典はいつものように、力強く微笑んでみせるのだった。
翌日。
「ブロリー君!!良かった……!!あんなことがあったから、今日は学校に来ないかもって思ってー!!」
「ブロリー!!俺は、俺たちは何があってもお前の味方だからな!!な!!」
「むしろオイラは超感謝してるんだぜ!!?」
「あっ、えっ…えっと」
「あ、あの時はあたしもビビっちゃったけどさ……助けてくれたのは事実だし、ありがとね、ブロリー」
「ええ、本当に感謝しておりますわ。ブロリーさんがいらっしゃらなければ、私たちはどうなっていたか……」
耳郎が少し照れくさそうに指先で頬を掻き、八百万も穏やかな笑みを浮かべて頭を下げる。
登校する直前まで「みんなに怖がられて、嫌われてしまったんじゃないか」と縮こまっていたブロリーは、クラスメイトたちの温かい言葉の数々に、大きな体をさらに縮めるようにして目を白黒させていた。
「み、みんな……オレのこと、怖くないの……? あんなに……暴れちゃって、周りも壊しちゃったのに……」
「何言ってんだよ! この前も言ったけど、仲間を守るために体を張ってくれたんだ、怖がるわけねぇだろ!」
切島が屈託のない笑顔でブロリーの太い腕をバシバシと叩く。
「俺なんてよ、あんなデケェ音と光見せつけられて、すげぇ! カッケェ! って男気感じちまったぜ!」
「そうだぜブロリー! お前が優しい奴だってのは、俺たちが一番よく知ってっからよ!」
上鳴もいつもの調子でニッと歯を見せてサムズアップを作った。
化け物扱いするどころか、誰一人として自分を拒絶しない。むしろ仲間として温かく迎え入れてくれている事実に、ブロリーの胸の奥がじんわりと熱くなる。
(よかった……本当に、よかった……)
ブロリーがホッと安堵の息を漏らした、その時、教室のドアが開いた。
「おはよ……」
『相澤先生!?復帰早!!?』
教室中にA組生徒全員の絶叫が木霊した。
教室の中へと入ってきたのは、全身を隙間なく包帯でぐるぐる巻きにされ、まるでミイラ男のような痛々しい姿となった担任・相澤消太だった。
「せ、先生……! 大丈夫なんですか、その怪我……!」
「プロ過ぎるだろ……!」
心配と驚愕の声を上げるクラスメイトたちの中、ブロリーもまた「相澤先生……!」と立ち上がりそうになりながら、痛ましそうに眉を下げた。自分の目の前であり得ない方向に折られていた腕や、頭部の重傷を思い出し、申し訳なさで胸が痛む。
だが、相澤は包帯の隙間から覗く鋭い瞳で生徒たちを見渡し、いつも通りの気だるげで冷徹な声で告げた。
「俺の安否はどうでもいい。それより、お前たちの戦いはまだ終わってない」
「戦い……!?」
「まさか……」
「ヴィランがまた……!?」
身構える生徒たち。ブロリーも緊張に身体を硬くする。
だが、相澤の口から続いたのは、誰もが予想していなかった言葉だった。
「――雄英体育祭が迫ってる」
『クソ学校行事っぽいのキタァァァァァァァッッ!』
一瞬の静寂の後、教室が歓喜の嵐で爆発した。
「きたぜ!!やっと学校っぽいのが!!」
「イエイ!!」
「待ってくださいよ! ヴィランに襲撃された直後なのに、体育祭なんてやって大丈夫なんですか!?」
「逆にやることで、雄英の危機管理体制が磐石だと世に示す狙いがあるのさ。警備も例年の5倍に強化されるらしい」
相澤はざわつく教室を静め、淡々と言葉を重ねる。
「何より……雄英体育祭は、年に3回しかない最大のチャンスだ。日本中のプロヒーロー、サイドキックをスカウトしに来る事務所の関係者が全員見ている。トッププロへの道が、ここから拓ける」
相澤の言葉に、教室の空気が一気に引き締まる。
緑谷が拳を強く握りしめ、爆豪はギラリと好戦的な光を目に宿し、轟もまた静かに闘志を滾らせていた。
そして、相澤の視線が、教室の後方に座るひときわ巨大な生徒――ブロリーへと向けられる。
「八木。お前もだ」
「……っ、オレ……?」
「あの場でのお前の力は、いずれ嫌でも世間に知れ渡る。だが、ただの危険な力じゃないってことを、お前自身がヒーローとして証明してみせろ」
「…………!」
相澤の不器用ながらも温かい期待の込められた言葉に、ブロリーはハッと目を見張り、それから力強く頷いた。
「はい……! 頑張ります……!!」
かつて世界を恐れ、力を恐れていた少年が、初めて自らの意志で踏み出す大きな一歩。
日本中が熱狂する巨大な祭典――『雄英体育祭』の幕開けが、すぐそこまで迫っていた。
――そして、放課後。
ブロリーは相澤先生にある場所へ来る様に言われていて、早速そこへ向かっていた。
ここへ来る途中色々(野次馬・謎の生徒からの宣戦布告と、爆豪のいろんな発言に対してのヘイト・ブロリーを事を見てビビる野次馬)あったが、とりあえずは気を取り直しやってきた。
(確か……このあたり……)
静まり返った放課後の校舎、普段はあまり足を踏み入れないエリアをブロリーは周囲をキョロキョロと見回しながら歩いていた。
「あ、いたいた八木君」
廊下の曲がり角から、よく通る艶やかな声が響いた。ブロリーが振り返ると、ヒラヒラと手を振りながら歩いてくるのは18禁ヒーロー・ミッドナイトこと香山先生だった。
「ミッドナイト先生……?どうして、ここに?」
「八木くんを『サポート科の開発工房』まで案内してあげてくれって頼まれちゃってね」
「あっ、ありがとうございます……! お手数おかけしてしまって……」
ブロリーが申し訳なさそうにペコリと大きな頭を下げると、ミッドナイトはくすくすと楽しそうに笑いながら、彼の逞しい腕をポンポンと叩いた。
「いいのいいの! これぐらいなんて事ないわ、それにしても、サポート科に迎えだなんて…どういうことかしら」
「えっと……相澤先生からは『行けば分かる』としか言われてなくて……」
「んもう、相澤は相変わらず言葉が足りないんだから…」
そんな話をしながら廊下の突き当たりまで進むと、頑丈そうな鋼鉄の扉が見えてきた。『開発工房』とプレートが掲げられたその部屋の前で、二人は足を止める。
「ここよ。ノックして入ってちょうだい」
「はい……失礼しま――」
ブロリーが返事をし、大きな手を伸ばして鋼鉄の扉をノックしようとした――まさにその瞬間。
ドッカァァァァァァァンッッッ!!!!!!
扉の先で大爆発、ブロリーはその爆発をモロに喰らってしまうが、勿論無傷であり、少しびっくりした程度で済んでいた。
「―アイダッ!!?…きゅ、急に…目の前に…壁が……」
「た、大丈夫ですか!?一体、何が…」
「ちょっと、八木君大丈夫!?」
「俺は平気です、でも、部屋が…」
「イッッッッ……ああ、気にしないでください!いつものことなので!」
「いつものこと…!?」
そして爆発と共に飛んできた一人の生徒が、ブロリーの胸に飛び込んできた様で、ブロリーはその生徒をゆっくりと自分から離す。
「……おや?…おやおやおや…!?貴方はもしや、八木蕗利さんでは!?」
「そ、そう、です」
「やっぱり!――お待ちしておりました!ようこそサポート課へ!!あっ私、発目明と言いまして……
―――今回、貴方専用のサポートアイテムの開発を手伝っている者の一人です!!」
「――サポート……アイテム……⁇」
謎の少女・発目明――彼女との出会いと、その発明が……ブロリーの全てを変えるきっかけとなる。
公安の会長さんは一応オールマイトの現状は知っているけれど、何故そうなったのか、誰にやられたのかは知りませんし、個性のことも知りませんのでご了承ください。
次回・爆発する首輪
なんかめちゃくちゃ光る冠
ものすごい電流が流れる首輪
変な煙を発する首輪
お楽しみに。