怪物と英雄の狭間で 作:伝説の一般元ブロリスト
騎馬で死ぬほどやりなおしてました……お待たせいたしました。
(―――――なんだ……なんだ……あの、学生は……何だあのパワーは…!)
燃え盛る炎の下で、オールマイトに続くNo.2ヒーロー・エンデヴァー――轟炎司の碧眼は、信じがたい光景を前に見開かれたまま硬直していた。
己が血と情熱、そして執念のすべてを注ぎ込んで創り上げた「最高傑作」――轟焦凍。
その焦凍が放った渾身の氷結が、まるで薄氷のように一瞬で粉砕された。
(個性による身体強化……? 違う、そんな生易しい領域ではない……! 飛行、衝撃波、そしてあの異常なまでの耐久力……アレではまるで……!!)
桁違いのパワー・スピード・頑丈さ……まるで理不尽そのものと言っても過言ではないその強さ、その姿を見たエンデヴァーは。
(―――
ブロリーに対して、オールマイトの姿を合わせていた。エンデヴァーは拳を強く握りしめ刃を噛み砕かんとばかりの力で噛み締める。
(まさか…奴の子か…⁉︎ だが、そんな情報は……いや……そうか………隠し子か!)
様々な感情が渦巻きまともな思考回路ができなくなっているエンデヴァーは、ブロリーがオールマイトの隠し子ではないかと思い始める。
(自分を継ぐ後継として……! No.1……『平和の象徴』という名の絶対的王座を譲り渡すために、手元で囲い込んでいたとでもいうのか……!!!)
エンデヴァーの体が、とてつもない怒気のオーラが出始め、握り潰された手の熱でジュウジュウと赤熱し、歪んでいく。
己が生涯のすべてを捧げ、どんな手段を使ってでも届かなかった『オールマイト』という高み。
その背中を超えるためだけに、育て上げた最高傑作――焦凍。
だが、その焦凍の前に立ち塞がったのは、またしても「オールマイト」の影……それどころか、規格外の暴力性を秘めた底知れぬ巨躯の少年だった。
(認めん……断じて認めんぞ……! オールマイト、貴様の思い通りになどさせてたまるか……!!)
エンデヴァーは焦凍の背中を、血走った眼光で射抜く。
(焦凍……! 貴様は奴を超えるために生まれたのだ! 奴の息子を…叩き潰し、お前こそが最高傑作であることを、この俺に見せてみろ……!!!)
燃え盛る炎の巨人が放つ凄まじい殺気と熱気が、観覧席の一角を息苦しいほどに支配していた。
一方、スタジアムのグラウンド。
障害物競走の上位陣が次々とゲートをくぐり抜け、泥だらけ、煤だらけの生徒たちが荒い息を吐きながらグラウンドへと倒れ込んでいた。
「ハァ……ハァ……! クソが……ッ!」
「…………」
悔しさに顔を歪める爆豪と、凍りついた右半身から冷気を立ち上らせながらブロリーを鋭く見つめる轟。ブロリーだけではなく緑谷にも負けた……その事実が、彼らを焦らせる。
そしてゴールした生徒たちの上位42名が巨大モニターにずらりと表示されていく。少しの休憩の後、ミッドナイトから次の種目の発表が入る。
「落ちちゃった人もまだ見せ場はあるから安心しなさい!――それよりもここからが本選! 第二種目・『騎馬戦』よ!!―参加者は2名から4名の騎馬を自由に組み、敵のハチマキを奪い合うポイント制! そして……各自に与えられるポイントは、さっきの障害物競走の順位によって決まります!」
つまり、全員のポイントを合わせた鉢巻を取り合い、守り合うバトルロワイヤル。逃げるもよし戦うもよし、個性に使って勝利する、それがこの種目だ。
「実質、高ポイントの取り合いか…」
「その通りよ!!ポイントは下から5ずつ増えていくわ!――――1000万Pよ!!!」
その単語が出た瞬間、第二種目へと進んだ生徒達の顔が一気に変化する。…1000万ポイント、つまりそれを取れば実質一位になり最終種目へと進める大きな切符となる――問題は…。
(……よりにもよって…!!)
(逆転のチャンスを持っているのが…!!!)
(ブロリーかよぉぉぉぉっっ!!!)
その切符を持っているのが、ブロリーという事。
今の状況を例えるのなら、空腹の小鳥達が一匹の凶暴な肉食獣の餌を狙っているような感じ。
「騎馬戦の制限時間は15分! 各自、自由に交渉してチームを組みなさい! 制限時間は15分よ、スタート!!」
ミッドナイトの号令とともに、勝ち進んだ生徒達が動き始め、勿論ほとんどが我先にとブロリーの方へと駆け寄る。
A組もB組も関係ない……ブロリーを敵に回す=ブロリーと戦うなので、なんとしてでも同じチームになりたいと願っていた。だがルールは最大四人まで、ブロリーが選んでもいいが、とても選びきれない……つまり決め方は一つ。
『―最初はグー!!ジャンケン―ポン!!』
古より伝わりし儀式―ジャンケンだ。
数十人が一斉に拳を突き出し、勝ち残りが絞られていく中、勝ち名乗りを上げたのは――。
「やったあぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!! 勝ち残りましたぁぁぁぁッ!!」
両手を高々と突き上げて飛び跳ねたのは、サポート科の発目明。
「我が運命、ここに結実せり……」
低く呟いたのは1年A組の常闇踏陰。
「―よしっ」
小さくガッツポーズを決めるているのは一年の普通科心操人使。以上3名がブロリーと一緒のチームになる生徒達であり、ブロリーと対峙すると言う危機を打破した生徒達だ。
「うぐぅぅぉぉぉ一気に勝率がぁぁぁ!!」
「でもやるしかねえ!!」
そして危機を脱せなかった生徒達は更に緊張感を募らせ、慎重にメンバーを選び揃えていく。既にチームが決まっているブロリー達はこの時間を利用し作戦を立てていく―が、その前に軽い自己紹介。
「1年A組、常闇踏陰だ。俺の個性は『
『ヨロシクナ!』
「続いて私! サポート科1年の発目明です!! 個性は『ズーム』! ピントを合わせれば5キロ先までくっきり見えちゃいます! ですが私の真骨頂は個性ではなく、この日のために血と汗と爆発を重ねて作り上げた、愛しのベイビーたちです!!」
常闇と発目の自己紹介が終わり、次は心操の自己紹介の時間。『―また、この時間か』と小さく呟き、彼は暗い顔のまま自己紹介を始める。
「…普通科1年C組、心操人使。個性は『洗脳』、洗脳する意志を持ってした問いかけに返事をした者を操ることができる」
「洗脳……それって――」
『ヴィラン向きの個性』『悪さし放題』―そんな言葉が心操の中で予想される……これまで何度も何度も言われてきたゆえの結論。今回も同じだろう――
「相手を傷つけずに、無力化できるってこと……?」
「――まぁ、そうなる…な。あんまり難しい動きはさせられないけど」
「おぉ…!」
「力でねじ伏せることのみが強さではない。無益な流血を避け、一言のもとに敵を無力化せしめるその力……見事な術理だ」
腕を組み、常闇が深く頷きながら静かに言葉を重ねる。
『ソウダソウダ! オレタチニハ出来ネェコトダゼ!』
ダークシャドウも、うんうんと首を縦に振って同調した。
さらに、発目のスコープのような瞳がカチカチと音を立てて激しく輝き出す。
「問いかけへの返答が発動トリガーなんですか!? ということは、相手に確実に声を届かせる指向性音響スピーカーや、声を変える装置、騒音の中でも声をクリアに通す音声変調ベイビーがあれば百発百中じゃないですか!! ぜひ! ぜひ私に心操さん専用のベイビーを作らせてください!!」
「ちょ、ちょっと待て……お前ら、気味悪がらないのかよ……?」
心操は予想だにしなかった3人の反応に、完全に気圧されて後ずさった。
これまで向けられてきたのは、腫れ物に触るような怯えか、陰湿な嘲笑ばかりだった。それが、この場にいる者たちは誰一人として自分の力を否定しないどころか、心から認め、活用しようとしてくれている。
戸惑いを隠せない心操は、眉根を寄せながら、ひときわ巨大な身体で自分をまっすぐに見つめるブロリーへと視線を向けた。
「……ところで、八木。……いや、ブロリーの方がいいか?」
「好きに、呼んでくれ」
「じゃあ、ブロリー。お前の個性は何なんだ? さっきの障害物競走…流石にレベルが違いすぎて言葉も出なかったんだが」
「オレは……」
ブロリーは少し困ったように頭を掻き、首元の濃紺のチョーカーにそっと指先を触れた。
「オレの個性は……『無限臨界』っていうんだ。身体の中に……どんどんエネルギーが湧いてきちゃって、勝手に力が大きくなりすぎるんだ」
「力が……湧きすぎる?」
「うん。……昔から、自分の力をうまくコントロールできなくて。ちょっと触っただけで色んな物を壊しちゃったり、怒ったり興奮すると、頭が真っ白になって周りが見えなくなっちゃって……そのまま暴走してしまうんだ。だから、あんまり力は…強く出せない」
ブロリーの大きな瞳に、どこか寂しげで、痛ましそうな影が差す。
「…あっ、でも今は発目が作ってくれたこの装置のおかげで、安心して動けるんだ。だから、足は引っ張らないと思う」
「………」
心操は息を呑み、ブロリーのその優しい顔と、首についてあるアイテムをじっと見つめた。
自分は『ヴィランっぽい個性』だと周囲に疎まれ、恐れられてきた。その辛さを知っている者は、きっとヒーロー科にはいない、そう思っていた。
だが、目の前にいるヒーロー科の生徒は――誰よりも強大な力を持ちながら、その力に怯え、人を傷つけないために孤独に苦しみ抜いてきたのだ。
形は違えど、己の『個性』という呪縛に抗い続けてきた者同士。
心操の胸の奥にあったトゲが、すっと溶けていくのを感じていた。
「……そうか。お前も……苦労してきたんだな」
ポツリと、心操の口から飾らない本音が零れ落ちる。
「……心操くん?」
「なんでもないよ」
心操はフッと自嘲気味に、だが先ほどまでの刺々しさを消した穏やかな笑みを浮かべ、仲間の方に顔を向けて言った。
「この種目はバトルロワイヤル…つまり生き残れば勝ちだ。だから極力戦闘は避けたいんだが……いいか?」
「勿論ですとも!!」
「異論は無い」
「オレもだ」
「じゃあその方向で行こう……他に意見はあるか?」
「はいはい!!私はですね〜」
心操は最初、洗脳で仲間を増やすつもりだった。だがブロリーという存在の圧に圧倒され何もできず、結局はジャンケンで仲間を決めたが――今はそれで良かったと、本気で思っている。
心を開け本音の意見を言い合い、そして四人は作戦の陣形を決め……動き出す。
『さあさあさあ!!騎馬も揃って――おおっと!?今までに見たこと無い形の騎馬があるぞぉぉ!?』
心操チームの騎馬の形は他とは異質の物……そう。
「――た……高いな」
「新感覚…」
「ブロリーさん、苦しく無いですか?」
「全然余裕だ」
騎手である心操がブロリーに肩車をされていて、左腕はブロリーが曲げた左腕の上腕二頭筋にチョコンと座り、常闇は右腕の方へと座っているという、世にも珍しい陣形。
ブロリーは腕を常に上げている状態になるが、全然苦でも無く、落ちそうになっても常闇のダークシャドウが支えたり、発目の隠されたベイビーにおかげでリカバリできる。
「……アリね!!」
ミッドナイトからもあり判定されたので、アリ。
ブロリーは、胸いっぱいに広がる温かな勇気を感じながら、力強く頷いた。
「みんなで、勝とう!!」
『おう!!』
科の垣根を越え、それぞれの想いを乗せた最強の騎馬が、今まさしく、出撃しようとしていた。
次回
ギュピギュピギュピギュピ!!!(迫り来るブロリー戦車)
まーじで……この個性を持っているからアイツはヴィランっぼい!!
みたいなことを言う奴らの神経が信じられない。変化は止めようゼェ……そんなことを言う奴らはみんな岩盤風呂か血祭りにあげてやる