怪物と英雄の狭間で 作:伝説の一般元ブロリスト
盛り上がり前の大事な話と思っていただければ……。
さぁて、コレからどんどんAFOさんの勘違いが加速していくぞー?
第2種目の騎馬戦を終えた会場は未だその熱は冷め切っておらず、今も熱し続けている。
その一方で……誰の目も届かない場所で静かに火花を散らしている者達がいる。
「話って……何……?」
「……」
冷たい空気が漂う中、轟は二人――緑谷とブロリーを背にして立ち止まり、静かに振り返った。
「圧倒された。……障害物競走の時も、さっきの騎馬戦の時もだ」
オッドアイの瞳が、射抜くような鋭さで二人を捉える。
「緑谷、お前の一瞬見せるあの力……そして八木。お前のあの理不尽なまでのパワー、頑丈さ、そして立ち振る舞い……間近で見て確信した」
「な……何を…?」
緑谷が冷や汗を流しながら問い返す。
轟は右半身から微かに冷気を立ち上らせながら、極めて真剣な面持ちでその言葉を口にした。
「お前ら……オールマイトの隠し子か何かか?」
「ぶっっっっ!?!?!?」
緑谷の喉から変な悲鳴が飛び出した。
ワン・フォー・オールの秘密を抱えている緑谷は、図星に近い勘違いを突きつけられ、両手をブンブンと振り回しながら顔を真っ青にして激しく取り乱す。
「ち、違うよ全然違うよ!? な、なんでそうなるの!? 隠し子なんてそんなマンガみたいな話あるわけないじゃないか!」
動揺のあまり墓穴を掘りかける緑谷の横で、もう一人――ブロリーは心臓を鷲掴みにされたように肩を跳ね上がらせていた。
(――バレ…てる…?……えっと、誤魔化さないと………………どう…しよう)
嘘を吐くのが壊滅的に下手なブロリーは、腰に巻いているをギュッと握りしめ、視線を泳がせながら必死に口を開いた。
「えっと、その、あの、ほら……えっと」
「……違うと言うなら、なぜそこまで激しく動揺するんだ?。『関係ない』と言い切れない何かがある……そう受け取っていいんだな」
「うぐっ……!」
「うぅ……」
緑谷が言葉に詰まり、ブロリーが眉を八の字にしてしょんぼりと肩を落とす。
轟は静かに息を吐き出すと、己の左半身――憎悪すべき父親から受け継いだ『炎』の側へと視線を落とした。
「……まあいい。お前らが本当の息子だろうが、弟子だろうが、隠したい事情があるならこれ以上は問い詰めねぇ。だが……俺には、お前たち二人を絶対に叩き潰さなきゃならない理由がある」
轟の瞳に、暗く冷たい炎のような執念が宿り始めた。
「――『個性婚』って言葉……知ってるか?」
「…………?」
「…ブロリーは知らないか、緑谷はどうだ?」
「い、一応は……」
轟は、いつもの氷の様な静けさを持つ雰囲気から一変―メラメラと、負の炎を纏っているかの様な雰囲気になり、口を次々と開いていった。
「個性の第2、第3世代の頃に問題視された代物だ。己の個性をより強固なものとして子に継がせるためだけに、配偶者を選び、無理強いして婚姻を結ぶ……前時代的な倫理観の遺物さ」
轟は自らの左手を胸元に当て、冷ややかに言葉を紡ぎ続ける。
「親父――エンデヴァー……万年2位のヒーローは、己の力だけじゃオールマイトという高みへ届かなかった。だからこそ、金の力と名声で母の親族を言いくるめ、母の『氷』の個性を手に入れた。すべては……オールマイトを超える『最高傑作』を創り出すためだけにな」
「そんな……」
緑谷の顔から血の気が引いていく。
ブロリーもまた、そのあまりにも歪で残酷な家庭の事情に、胸をぎゅっと締め付けられるような痛みを覚えていた。
「記憶の中の母は、いつも泣いていた。……『お前の左側が醜い』と…母は俺に煮湯を浴びせた」
「 っ…!!」
「………」
轟の衝撃的な過去に緑谷は息を呑み、ブロリーは静かに拳を握りしめていた。
「 親父の思い通りになど、絶対になってたまるか。俺は……親父の『炎』の力なんざ、これっぽっちも使わねぇ。母の『氷』の力だけで、お前ら二人を……オールマイトの何か持っているお前達二人に勝って、あの男を完全否定して1位を手に入れる―それが、俺の親父に対する復讐だ」
重く冷たい静寂が、その場を支配した。
あまりにも重すぎる業を背負わされた少年の告白に、緑谷は拳を震わせ、言葉を失っていた。
そんな中――。
「轟」
静かに口を開いたのは、ブロリーだった。
その声には、怒りも、怯えもなかった。ただ、深く澄み切った、どこまでも痛ましそうな優しさが滲んでいた。
「轟の胸の中……すごく、寒くて……痛そうだ」
「……何だと?」
轟が眉をひそめ、ブロリーを見上げる。
ブロリーは首元のチョーカーにそっと手を添えながら、言葉を続けていく。
「轟の痛みを、オレが全部わかるなんて言えない。……でも、自分の体にある力を嫌いになる…その気持ちは…わかる」
「………」
「オレもずっと……この体も、溢れてくる力も、全部消えてなくなればいいって思ってた。触ったものを壊しちゃうのも、怒りで頭が真っ白になるのも……全部怖くて、自分が怪物みたいで大嫌いだった。……だから、轟が自分の半分を嫌って、苦しそうにしているのを見てると……すごく、胸が痛い」
「…………」
轟は眉をわずかに動かしただけで、何も言い返さなかった。
だが、その瞳の奥にある冷徹な氷の膜が、ブロリーのあまりにも濁りのない言葉によって、微かに揺らいでいるのが見て取れた。
「―でも、そんなオレを救ってくれたのは…上鳴や、中学校の頃の同級生…先生、お父さんにA組の皆んなだ。みんながオレを優しいと、ヒーローって言ってくれたから…今のオレが…ある」
ブロリーは一歩、轟の方へと足を踏み出した。
「轟の炎が、誰から受け継いだものだとしても……今その体にある力は、君のものなんじゃないのかな……オレ、そう思うんだ」
「……余計な、お世話だ」
轟は低く吐き捨て、背を向けた。
その拳は微かに震えていたが、足取りは変わらず冷たく、頑なだった。
「お前たちがどれだけ綺麗事を並べようと、俺の決意は揺るがねぇ。……親父の力なんざ使わずに、お前ら二人を完膚なきまでに叩き潰す。それだけだ」
通路の出口へ向かって歩き出す轟の背中。
その凍てついた孤高の背影を見つめ、緑谷がギリッと奥歯を噛み締めて前へと飛び出した。
「轟くん……!」
呼び止められ、轟が足を止める。
緑谷は拳を握りしめ、震える体を真っ直ぐに伸ばして叫んだ。
「僕も…ずうっと助けられてきた。今僕がここに立って居られるのは、誰かに助けられて来たからだ……!」
「……」
「だからこそ負けられない。さっき受けた宣戦布告に改めて返す……僕も君に勝つ!」
二人の真っ直ぐな言葉を背中に受け止め、轟は振り返ることなく、ただ一言だけ静かに落とした。
「……トーナメントで、待ってるぞ」
その言葉を残し、轟の姿は通路の先の眩い光の中へと消えていった。
残された二人は、冷気の残る薄暗い通路でお互いに顔を見合わせ、小さく頷き合った。
それぞれの信念、葛藤、そして覚悟を乗せて――体育祭はいよいよ、全校生徒と日本中の視線が集まる最終種目、1対1のガチンコトーナメント戦へと幕を開けようとしていた。
――しかしその前に。
「――十年ぶりかな? お茶しよ、エンデヴァー」
「オールマイト…!!」
ここでも、一悶着あろうとしていた。
「君の息子さん、焦凍少年……力の半分も使わずに素晴らしい成績だね。教育がいいのかな?」
「……何が言いたい」
「あっ、あーいやね?マジで聞きたくてさ。次代を育てるハウツー?ってのを」
「―」
オールマイトはここで、思いっきり発言をミスってしまった。
「…………」ゴオォォォッ……!!
エンデヴァーの顔面にまとわりつく業火が一気に膨れ上がり、血走った碧眼が、オールマイトの胸ぐらに突き刺さる。
「……俺をおちょくっているのか……!!」
地獄の底から響くような怨嗟の唸り声に、オールマイトは両手をヒラヒラと振って飛び退いた。
「―えっ、いやいや! 別にそんな煽るような意味じゃなくてね!? 純粋にち……あ、いや! 指導者としての意見を聞きたかっただけで――」
「貴様ァッ!! アレだけの逸材を育てておいて……何が、何が学びたいだッッ!!!!」
エンデヴァーの怒号が通路をビリビリと震わせた。握りしめた拳の熱で、周囲の大気が陽炎のように歪む。
「圧倒的な破壊力、頑丈さ、そしてあの理不尽なパワー……! 貴様が裏でどれほどの英才教育を施し、手元で囲い込んで育て上げたのかは知らんが……! あれほどの怪物を完成させておきながら、この俺に『ハウツーを学びたい』だと……!? ふざけるのも大概にしろオールマイト!!」
「い、いやぁぁ……ハハハ、逸材って……えっ、だ、誰のことだい? 緑谷少年のことかな? それとも、ほら、A組の優秀な生徒たちのことかい……?」
オールマイトは冷や汗を滝のように流し、トレードマークの白い歯をカチカチと鳴らしながら、これ以上ないほど不自然にとぼけて見せた。
(や、ヤバい……! 完全に蕗利のことだ……! だが、彼を私の息子として引き取ったことは公には絶対秘密……! ここで認めるわけにはいかない……!!)
「白々しい真似をするなァッ!! あの『八木蕗利』のことだッ!!」
エンデヴァーが食ってかかる。
「障害物競走での圧倒的な突破力、騎馬戦での逃げ足と制圧力……! 隠し立てできるレベルの器ではないことくらい、プロの目をごまかせると思うな! 貴様……あの少年を、自分の後継として……『平和の象徴』の座を継がせるために隠し持っていたな!?」
「そ…それは誤解さエンデヴァー。彼と私は何の関わりもない、あるとすればただの先生と生徒さ」
「アレだけの個性を見せておいて何を言う!!」
「たまたま私と似た個性というだけさ、それなほら…私と彼、似てるのは体格だけだろ? 顔とか髪色とか、ね?結構違うし!ね!?」
「貴様…!!!」
エンデヴァーは怒りで全身から炎を噴き上げ、床を踏み抜かんばかりに一歩前へと詰め寄った。
「貴様がどれほどとぼけようと関係ない……! 俺の焦凍は、貴様を超えるために創り上げた最高傑作だ! 貴様の息子だろうが後継だろうが関係ない……最終種目のトーナメントで、俺の……オレの自慢の息子がお前の子を叩き潰す!!」
「エンデヴァー、少し落ち着いてくれ」
「フンッ!!」
エンデヴァーは猛然と背を向け、ドカドカと通路の奥へ去っていった。
「…………ふぅぅぅぅぅ……」
猛烈な熱気が去った後、オールマイトは胸を撫で下ろし、ガクッと肩を落として特大のため息を吐き出した。
(―流石に、エンデヴァーには勘づかれちゃったかなぁ………ま、まぁ、このまま誤魔化し続ければ何とかなる……かも)
オールマイトは今後のことを考えながら移動し、『頑張れ蕗利!お父さんは応援しているぞ…!!』と強く思いながら元いた場所へと向かうのであった。
(……いつかエンデヴァーと、パパ友トークでもしてみたいなぁ)
「峰田、人を騙すのはダメだ」
「ハイっ!全くもって、その通りです!!!!」
最終種目が始まる直前、グラウンドの一角。
峰田は背筋をこれ以上ないほどピシッと伸ばし、直立不動の姿勢で汗を滝のように流しながら絶叫していた。
事の発端は数分前。
「『クラス委員だから知っているだろうけど、女子生徒は午後の開幕はあの格好で応援合戦をしなくてはいけない』という峰田の真っ赤な大嘘に引っかかり、八百万が個性をフル稼働させてチアガールの衣装を作成。麗日、耳郎、芦戸、蛙吹、葉隠、そして八百万のA組女子全員が、露出度の高いミニスカートのチア衣装を着せられてグラウンドに勢揃いしてしまったのだ。
「峰田さん……!! 謀りましたわね……!!」
「うぅ……最悪……!」
騙されたと気づき、恥ずかしさと怒りで顔を真っ赤にする女子たち。
そんな中、どこからともなくズシン……ズシンと地響きを立てて現れたのが、クラスで最も巨大な少年――ブロリーだった。
悪意による嘘を許さない、キリッと引き締まった真剣な表情で見下ろされた峰田は、その規格外の巨躯から放たれる威圧感に生命の危機を本能で察知し、一瞬で平伏したのである。
「自分の欲望のために、みんなに嘘をつくのは、良くない」
「う、うぐっ……! そ、それは本当に申し訳ございませんでした……!」
ブロリーの真っ直ぐな正論にぐうの音も出ない峰田。だが、ここで引き下がる峰田ではなかった。なんとかこの絶体絶命の空気を誤魔化そうと、必死に視線を泳がせながらブロリーの顔を窺う。
「で、でもよブロリー! お前も男なら分かるだろ!? ほ、ほら……み、みんな、すっげぇ似合ってるよな!?」
峰田が話を振ると、ブロリーは言われた通りに視線を女子たちへと向けた。
ポンポンを持ち、羞恥に頬を染めるクラスの女子たちをじっと見つめたブロリーは、ふっと表情を柔らかく緩め、大きな瞳をパチクリとさせて素直な感想を口にした。
「……うん。確かにみんな、ふりふりしてて、すごく可愛い」
「だろだろ!? 男なら誰だって拝みたくなる最高の光景だろォォッ!?」
下心ゼロ、どこまでも澄み切ったド直球の褒め言葉。それを聞き、『100点!!』『満点!!』『パーフェクトアンサー!!!』と麗日・葉隠・芦戸が大声でブロリーを褒める。
「でも、それとこれとは、話が別」
「ピャァ…!!」
低く、ピシャリと響いたブロリーの一言に、峰田の心臓がキュッと縮み上がる。その後は地面に埋まるのではないかと言うくらいの勢いで謝った峰田の潔さを讃え、彼は許された。
「上鳴君は知らなかったのかい?」
「マージで知らなかった、つか知ってたら流石に止めてたよ……ブロリーに怒られたく無いし」
A組チアリーダー騒動が終わると、とうとう最終種目の準備が始まった。
「最終種目はトーナメント形式!一対一のガチバトルよ!」
「一対…一」
(『ブロリーとだけは当たりらませんように!!!』)
(『ブロリーと当たれ…!!!』)
さまざまな思考が飛び交う中、ルールの説明がされる。要するに『相手を場外に出す』か『相手が戦闘続行不可』、もしくは『相手が降参する』まで戦う真剣勝負だ。
気になる対戦の組み合わせはクジで決めた――だがブロリーの中で、そのクジの結果は最悪と言っても過言ではなかった。
【第1回戦】
緑谷VS心操
轟VS瀬呂
八木VS上鳴
飯田VS発目
芦戸VS青山
常闇VS八百万
尾白VS切島
麗日VS爆豪
「―――上鳴……と……戦う……⁇」
「――マジ……か……いや、覚悟はしてたけどさ……マジかぁ」
ブロリーの初戦の相手は……上鳴。
人生の中でいちばんの友と戦う――それはブロリーにとって、過去1番辛く険しい試練となる。
本編とは関係ないのでスルーしてもらって構わないのですが、最近思った一言を言わせてください。
クウラ様かっこよくない? あのマスクがシュインって出るシーンでカッコよすぎで思わず大声を出してしまった。