怪物と英雄の狭間で 作:伝説の一般元ブロリスト
⚠︎青春過多注意
やっぱり、こう言う漢の青春って男でもめちゃくちゃいいんですよね
最終種目であるトーナメント戦が始まり、会場の盛り上がりはさらに増していた。
一回戦の心操vs緑谷では、心操の個性である洗脳に引っかかってしまったものの、緑谷は場外ギリギリで個性を発動。指を代償に我に返り、そのまま心操へと接近し、一気に場外へと投げ勝利した。
二回戦の轟vs瀬呂の勝負はもはや勝負にもならないと言うレベルで瞬殺。
轟をテープで場外へと持っていった瀬呂であったが、轟の渾身の氷結攻撃に行動不能にされ、観客席からのドンマイコールを聞きながら敗北してしまった。
そして、第3試合――。
次の対戦カードは……上鳴電気vs八木蕗利。今年の雄英体育祭で一番に目立ち、他との圧倒的な力の差を見せているブロリーと、A組きっての広範囲高火力アタッカーによる激突に、会場の期待値は否が応でも跳ね上がっていた。
『当たれば一撃必殺!!まだまだ可能性を秘めている男!上鳴電気!!頑張れぇェェェ!!!!』
「――よしっ!!」
上鳴はいつものおちゃらけた雰囲気を封印し、今まで見たこともないくらいの真面目な表情で入場ゲートから出てきた。
その様子を、スタンドのA組観覧席から見守るクラスメイトたちの表情は一様に固い。
「上鳴、いつもの自分を殺し、勝負に挑んできているな」
「相手があのブロリーだもんなぁ、そりゃいつもの調子じゃ勝てるわけないしな」
「緊張しすぎてガチガチでもあるし……心配なんだけど」
常闇は腕を組み心配そうに眉をひそめ、切島がそれに同調するかのように頷き、耳郎は心配をしていた。
「でも、いちばん心配なのはブロリーちゃんの方じゃないかしら」
蛙吹が顎に指を当てて呟いた言葉に、麗日や他A組生徒達も深く頷いた。
「うん……普段から自分の力に気を遣いまくっとるし、相手が仲のええ上鳴くんとなれば尚更……。今頃『戦いたくない』ってしょんぼりして、戦う気力ゼロの顔でトボトボ出てくるんとちゃうかな……」
誰もがそう予想していた。
一番の友人を殴らなければならない状況に心を痛め、困り果てた泣きそうな顔で入場してくるのだろう、と。
だが――。
『対するはァァァッ! 規格外のパワーで予選を完全制覇!! 歩く巨大守護神――八木蕗利ィィィッッ!!!!』
実況とともに、暗い入場ゲートの奥から姿を見せたブロリー。その姿は……―――背筋を真っ直ぐに伸ばし、マントや首輪に触れることもなく、その黒い瞳には一切の迷いも躊躇も宿っていない。
真剣そのものの、引き締まった凛々しい表情――本気で勝負に挑む戦士の顔だった。
「ブロリー、アイツ、めちゃくちゃいい顔してんな!」
「相手が昔ながらの友達であろうと勝負は真剣勝負…!」
上鳴はブロリーの一番の友だ――だがそこで、情に流され何もしない事こそが、相手への最大の侮辱だと彼は知っている。
友達だからこそ、これまでの恩も、情けなさも、憧れも、全部を拳に乗せて真正面からぶつかり合わなければならないのだと。
観客席の誰一人として、二人を『怪物と噛ませ犬』などとは見ていなかった。
ステージ中央、白線の前で向き合う二人の間には、見えない火花が散るほどの濃密な空気が張り詰めている。
「ブロリー!」
上鳴がニッと笑い、全身の筋肉をバチリと緊張させた。
「恨みっこ無しの真剣勝負!――俺はあと先のことなんて考えねぇ、ここで全部使い切るぜ!!!」
「ああ――来い、上鳴」
ブロリーは腰を低く落とし、静かに構えた。
その巨躯から滲み出る威圧感は、暴走のそれではなく、大地のように静かで揺るぎない力強さに満ちている。
『それでは第三試合!――スタァァァァァトッ!!』
開始の宣言がされた瞬間、上鳴の全身から眩い金色の雷光が爆発した。
「必殺!!無差別放電――130万ボルトォォォッッ!!!!」
初手からの出し惜しみ一切なし。
アホ面のリスクやこの後の試合すら完全に投げ打った、上鳴電気の魂の全開放電が、ブロリーへと襲いかかる。ブロリーは避けず、その攻撃を真正面から受けてみせた。
130万ボルト…それは強力な護身用スタンガンの最高出力。並大抵の人間ならばすぐ動けなくなりノックダウンするレベル――だがブロリーにそんな様子は一切ない。
(そりゃそうだよな…!ブロリーが、これくらいで倒れるわけがねぇ――だからこそ、だからこそ俺も!!)
上鳴は放電をし続けたまま、更にその威力を上げる。
「150………いや!――200万ボルトォォォッッ!!!!」
さらなる電撃がブロリーに降り注ぎ、近くにいたミッドナイトが両眼を覆わなければならないほどの輝きを放っていた。
「………!!!」
だがブロリーは以前不動、拳を握り締め、攻撃の態勢へと入り視界には上鳴の姿がはっきりと写っていた……むしろ、今は彼以外は写っていない。
(―200――まん――!!久しぶりに…!ここまで…上げたけど…!!キッツイな…これ!!!気を抜いたら…確実に――アホになる…!!―――でもまだだ…まだ足りねえ!!)
アホになりそうになる自分を死ぬ気で耐え、上鳴は歯を食いしばり、両足をしっかりと地面につけ腰に力を入れながら両手を上に上げる。
(あいつが……本気で受け止めてくれてんのに……ッ!! ここで止まれるかよォォォッッ!!!!)
上鳴はさらにさらに威力を上げ、今自分にできる最大をブロリーにぶつけた。
「Puls ultra…!!!無差別放電!!――300万ボルトォォォォォォォッ!!!」
300万ボルト――それは小規模な落雷に匹敵する程の威力を持つ攻撃。普段の上鳴ならば使うことがまず無く、並の人間ならば心停止や内臓破裂を引き起こす程の威力。
「ふぅぅぅぁ"ぁ"ぁ"!!!」
―それでもブロリーの二本の足は、大地を鷲掴みにしたまま、ミリ単位たりとも後退していなかった。雄叫びを上げながらその電撃を耐え、右手にギュッと力を入れ続ける。
親友が、自分のために限界を超えて絞り出した魂の叫びを、覚悟を、自らの肉体と心で受け止め切ったのだ。
「ぜぇ……っ……はぁ……っ……!」
やがて雷光が途切れ、立ち込める白煙の中に上鳴の姿が現れる。
両腕は力なく垂れ下がり、脳は限界を迎え、目の焦点が揺らぎ、今にもアホ面になりかけて意識が途切れそうになっている。
それでも、上鳴の視線は前を捉えていた。
白煙を切り裂いて構えを取り続けている、雄大な巨峰のような親友の姿を。
(……耐えられた。すげぇよ……やっぱり――やっぱりカッケェよ―ブロリー!)
満足そうに、上鳴の口元がふっと緩む。それを見たブロリーも頷き、攻撃に出た。
「――はぁ"!!!」
ブロリーは深く、重く、踏み込みながら拳を放った。
直接殴れば、その肉体を粉々に砕いてしまう。
だからこそ――ブロリーは上鳴の身体そのものではなく、その手前の『空間』めがけて、魂を込めた全力の正拳突きを繰り出した。
拳の先から生まれたのは、大砲など比較にならない、純粋な質量を持った巨大な風圧正拳。
衝撃波の塊は、上鳴の身体を傷つけることなく、その全身をふわりと包み込むように捉え――そのまま真正面から、かなりの勢いで後方へと吹き飛ばした。
「うわ、あぁぁぁぁぁッ――!!」
突風に運ばれた上鳴の身体は、美しい放物線を描いてリングを飛び越え、場外へと滑らかに着地した。
スタジアムを支配する、静寂。
ブロリーは突き出した拳をゆっくりと引き、肩で息をしながら、場外の上鳴をじっと見つめていた。
その体からは白い煙のような物が出ており、着ていた体操服の上も焦げて無くなり、ズボンも太ももくらいにまで焼けて短くなっていた。―ちなみにマントは無事。
壇上で状況を見届けたミッドナイトが、ハッと我に返ったように鞭を高らかに振り抜く。
『上鳴くん場外! ――八木くん、3回戦進出ッ!!!!』
ワァァァァァァァァァッッッ!!!!
一拍の静けさの後、スタジアムが壊れんばかりの大歓声と拍手喝采に包まれた。
「上鳴」
ブロリーはリングから静かに降り立ち、芝生の上に倒れ込む上鳴のそばへと歩み寄るその場にそっと片膝をついた。
「上鳴の本気、しっかりと
自らの胸――心臓のあたりに大きな掌を当て、真っ直ぐに親友を見つめる。
「火傷ひとつ……してないのは……流石だなぁ、ブロリー」
仰向けに転がったまま、上鳴は顔を歪めて力なく笑った。
「火傷はしてないよ。でも……ビリビリって、体の奥まで全部熱くなった、こんなの初めてだ」
「へへっ……なら、よかったぜ。無茶した甲斐があったってもんだ……」
上鳴は満足そうに目を細め、微かに震える右手を持ち上げようとしたが、指先がピクピクと痙攣して持ち上がらない。
「次は……もっと練習してさ……。いつか……いつかはお前の隣になって見せるぜ―約束だ」
「うん。約束だ。……上鳴は、本当に強いよ。オレの自慢の友達だ」
ブロリーがふわりと心からの温かい笑顔を向けた、まさにその時だった。
「おう…ありが―と――――ウェ???」
ピキィン、と上鳴の頭の奥で何かが完全に切れる音がした。
ギリギリで保たれていた理性の糸がプツンと途切れ、キリッとしていた凛々しい眉が一気に下がり、口元がだらしなく半開きになる。両目からは光が完全に消失し、焦点が定まらない虚空へと向けられた。
「ウェ〜〜〜イ…!ウェ〜〜〜〜〜イ!」
両手の親指をピンと立て、クタクタになった首を横に揺らしながら、完全にキャパオーバーの『アホ面モード』へと突入してしまった。
「あ……」
ブロリーは目を丸くした。
今この瞬間も、スタジアム中の観客、そして全国放送のカメラが、グラウンドの二人を大写しに捉えている。
限界を越え、魂を削って最高の戦いを見せてくれた親友。その男の晴れ舞台の幕引きが、全国ネットに晒されるアホ面で終わっていいはずがなかった。
「上鳴は、すごくかっこよかった」
ブロリーは誰よりも真剣な顔で小さく頷くと、自らのマントに手をかけた。
「だから、かっこいいまま、退場しよう」
ふわり、と大きなマントが上鳴の頭から上半身ごと優しく包み込まれる。
晒されかけたアホ面と親指を立てた両手を完全に布の奥へと隠し終えると、ブロリーは巨体を屈め、壊れ物を扱うようにそっと両腕で上鳴を軽々と抱き上げた。
「ウェ……イ……?」
マントの隙間からくぐもったマヌケな声が微かに漏れ聞こえる中、ブロリーは背筋をピンと伸ばし、誇らしげな戦士を運ぶように堂々と歩き出した。
『おおっとォォォッ!? 八木蕗利!!ここで倒れた上鳴に己のマントを被せ、自らの手で抱き上げての退場だァァァッ!! 敗者にすら敬意を払い、その尊厳を守るその姿勢…… なんという漢!!なんという漢の友情!!観客やこれを見ているリスナー諸君!!彼らに拍手ぉぉぉぉぉ!!!』
マイクの実況が感動のあまり震え、観客席からは割れんばかりの拍手と歓声が降り注ぐ。
「ブロリー…!上鳴のアホ面隠してあげたんだな!」
「八木くん、優しすぎるよ……!」
「何点?」
「満点」
スタンドのA組席から切島や緑谷たちが温かい眼差しで見守る中、ブロリーは胸の中の親友に『よく頑張った』と優しく声をかけながら、光差すその場から静かに歩み去っていった。
「――ご馳走様でした」
ちなみにミッドナイトは割と真剣な顔で、最高の青春をありがとうという気持ちでそう呟きていた。
最後の最後で話が変わるのですが。
我らがフリーザ様の形態変化なんですけど、最終やゴールデンよりも第二形態の方が圧倒的に好きなんですけど、わかる人いますかね。あの……バッ!!ってやつが大好きでして