怪物と英雄の狭間で 作:伝説の一般元ブロリスト
お気に入り80超えて評価も赤くなっちゃった……マジかありがとうございます!!
いまもうプレッシャーでものすごいことになってます……
「ヒーローになることにも視野を入れてみる!?マジかよブロリー!!」
「ま、まだ視野に入れるだけだ…決めたわけじゃない」
翌日・夕暮れ時の帰り道、上鳴とブロリーはいつものように一緒に帰宅道を歩いていた。そこでブロリーが昨日の相談のことも踏まえて、『ヒーローにはならない』から『ヒーローになることも視野に入れてみる』に変えたと上鳴に告げた。
そのことに上鳴は嬉しさを隠せずに笑顔を見せ、テンションを上げる。彼にとってブロリーはこの世で一番ヒーローに向いている存在として見ていたため、少しでもヒーローへの道へ足を向けてくれたことを、とても嬉しく思っていた。
ブロリーはそう決めた経緯を話す。
「……昨日、オレが子供を助けたことをお父さんに話したら、とっても喜んでくれた。お父さんだけじゃなくて、上鳴もとっても嬉しそうだった……だからオレが人を助ければ、いろんな人が笑顔になってくれる、そう思ったら……ヒーローを目指してみるのも、いいかなって」
(ブロリー…!!なんて、なんて純粋な…!!!心がオアシスみてぇだ!!)
「………でも、やっぱり……怖いんだ。しばらくはなんとも無かったけど……ヒーローを目指していく中で、また、コントロールできなくなるかもしれないから…」
「でももしものための訓練はしてきたんだろ? だったら」
「でも…絶対っていう確信はないんだ……だから、怖い」
八木蕗利、彼の個性の名は『無限臨界』
体内に「力の核」を持ち、常に膨大なパワー、エネルギーを生み出し続ける個性。
身体の頑丈さや筋力もその膨大なパワーに耐えるために異常発達している。
筋骨隆々なのは、体内で高まり続ける膨大な圧力とエネルギーに耐え、肉体が内側から破裂しないための『器』として骨格と筋肉が生まれつき重厚化している。
さらにその核から生み出されているエネルギーを外へと排出することもできる。そしてエネルギーの色は緑色。
ここまで説明すると、本当に強い個性であるが……その分デメリットも凄まじく、このデメリットがブロリーを苦しめている要因。
そのデメリットとは、力の核が発するエネルギーにより『《big》一度怒ると、自分でもコントロール出来ないほど暴走してしまう事がある《/big》』と言う物。
ブロリーはちょっとやそっとのことでは怒らず、自分のことを馬鹿にされたりしても対して怒りはしない。だが自分の大切なものを傷つけられたり、非道なヴィランに対しては怒り、そうなる可能性も出てくる。
つまり彼は怒って仕舞えば、理性が働くなる程に暴走する可能性がある……それをブロリーは何よりも恐れていた。
「何かあれば、ヒーロー達が助けてくれる……そう先生達は言ってくれているけど……オレは、そのヒーロー達を逆に傷つけてしまうかも知れない……それが、もっと怖いんだ」
「ブロリー…」
「ヒーロー達を、信じていないわけじゃない……でも、でもオレは…」
ブロリーの体が少し震え、上鳴は励ます為いつもの調子でフォローをする。そうしてそのまま道を歩いていると……2人はある匂いを感じ取った。
「……焦げ臭い臭い? ――って、まさか…!!」
「上鳴、アレ!」
「――マジか!!?」
2人が匂いと共に目にしたのは燃え上がる炎と黒煙、急いでその場所へと向かうと、そこでは二階建ての民家が猛烈な炎と黒煙に包まれていた。
「急げ!!早く水持ってこい!!」
「ダメだ、火の回りが早すぎる! バケツの水じゃ追いつかねえ!!」
「ヒーローと消防はまだなのかよ!!」
「ま、まだ時間がかかるって!」
「それじゃ間に合わねぇって!」
近所の人々が必死になってバケツリレーで水をかけているものの、吹き荒れる炎の前には焼け石に水。消防隊もヒーローも到着しておらず、現場は完全なパニック状態に陥っていた。
「た、助けて……っ! 中に……中にまだ、妹とお母さんがいるの!!」
家の前で腰を抜かした少女が、涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにしながら叫んでいた。一階の窓ガラスがパリンと割れ、燃え盛る木枠が崩れ落ちる。今この瞬間にも、中の二人は命の危険に晒されていた。
(――っ!!)
その悲鳴を聞いた瞬間、ブロリーの葛藤や恐怖は吹き飛んでいた。
「これ、持ってて」
「お前まさか――いや、分かった!責任持って預っとく!!」
「ありがとう」
ブロリーは腰に巻いてある大切なマントと上の服を一瞬で脱ぎ捨て、上鳴に預けた。着込んでいた服の下から現れたのは、膨大なパワーを支えるための、岩のように盛り上がった規格外の筋肉。
「ちょ、君!?」
周囲の人々が叫ぶ間もなく、ブロリーの巨躯は炎が渦巻く玄関口へと一蹴りで飛び込んでいった。
「……ッ、くそっ!! 頼むぞブロリー!!」
上鳴は自分の無力さに噛みつきながらも、ブロリーの指示通り外に留まり、集まってきていた野次馬の人々を下がらせ、その後自分もバケツリレーに加わった。
一方、家の中に突入したブロリーを襲うのは、激しい熱気と視界を塞ぐ黒煙。しかし、ブロリーはその圧倒的な膂力で崩れ落ちてきた柱や燃え盛る家具を素手で軽々と薙ぎ払い、ズンズンと奥へ進んでいく。
(いたっ!!)
一階の奥の部屋で親子を発見。頭から血を流している母親と、母親に触れながら泣いている子供、ブロリーはすぐさま駆け寄り、2人をその太く強い両腕で軽々と抱え上げると、間一髪のところで崩落する天井を背中で庇うようにかわし、そのまま外へと脱出した。
「で、出てきたぞ!!」
周囲から「おおおっ!!」「ま、マジか!!」と地鳴りのような歓声が上がる。
ブロリーは無事に外へ連れ出した母親と小さな女の子を、駆け寄ってきた上鳴と近所の人々に優しく預けた。
「ブロリー、無事だったか!! よかった……二人とも息はある!お姉さん!2人とも無事ですよ!!」
「良かった……よかったぁ…!!」
上鳴が安堵の息を漏らし、3人を介抱しようとした、その時だった。
『――ワン、ワンっ!!』
「犬の鳴き声……?」
「コロ……!コロ!!!」
燃え盛る家の中からに聞こえてきた犬の鳴き声、それに反応し子供は大きな声で犬の名を呼び、中へ戻ろうとする。上鳴はその子の手をしっかりと握り、止める。
「行っちゃダメだ!!」
「コロ!コロー!!」
「…………」
二階の窓からはさらに激しい炎が噴き出し、家全体が今にも全壊しそうな重音を立て始めている。ヒーローや消防がまだ来ない中、一般人では足を踏み入れることすら許されない死地だった。
「……コロ……」
少女の悲痛な言葉を聞いたブロリーは、一瞬の迷いもなく上鳴に告げた。
「上鳴、二人を頼む」
「ブ、ブロリー!!」
上鳴が止める間もなく、ブロリーは再び燃え盛る家の中へと入った。炎の渦巻く家の中へ突入したブロリーを襲うのは、視界を塞ぐ黒煙と皮膚を灼くような猛烈な熱気。だが、ブロリーは眉一つ動かさず、崩れ落ちてきた燃える柱や家具を力任せに押し退けながら奥へと進んでいく。
「コロ……! どこだ……!? コロ……!」
煙で喉を痛めないよう配慮しながら、低い声を響かせて部屋から部屋へと探し回る。一階の居間、台所、廊下……どこにも姿はない。炎は刻一刻と家全体を侵食し、ギシギシと木材が悲鳴を上げていた。
(どこだ……どこにいる……!)
「ワン……ワンッ……!」
その時、奥の階段下の物置きから、かすかな引きつった鳴き声が耳に届いた。
「そこか……!―うぅぅあ!!!」
ブロリーは扉を蹴破り、部屋へと入る。煙が立ち込める薄暗い物置きの隅、倒れてきた段ボールの隙間で、小さな茶色の犬――コロが全身を激しく震わせながら小さく丸まっていた。
「……よかった。今、助ける……」
ブロリーは岩のような太い腕をそっと伸ばすと、潰さないよう細心の注意を払いながら、コロを大きな胸の中にやさしく包み込んだ。
「キャンっ……!」
「大丈夫だ……もう、大丈夫……」
コロが安心したようにブロリーの胸に顔をうずめた――まさに、その直後だった。
(――まずい‼︎)
ズザザザザァァァァンッ……ドゴォォォォン!!!
限界を迎えた二階部分と屋根が激しい炎に耐えきれず、絶望的な重音とともに一気に落ちてきた。
ブロリーとコロがいる階段下を巻き込み、民家は骨組みごと完全に崩れ去り、猛烈な黒煙と火の粉が天高く舞い上がる。
『ッッッ…!?!?』
外でバケツリレーをしていた大人たちも、助け出された母親も、コロの名を呼んだ娘を唖然としていた。
「そんな……家が丸ごと潰れたぞ……っ!」
「助けに入った少年が……!」
絶望と悲鳴が路上を包み込む。誰もが「もうダメだ」と諦めかけた――その時だった。
『ハァ"ァ"ァ"ァ"ッ!!!』
叫び声と共に瓦礫が吹き飛び、そこから彼が現れる――そう、ブロリーだ。
全身に煤がつき、黒く汚れてはいるものの、服を脱ぎ捨てた岩のような筋骨隆々の肉体には、傷一つ、火傷一つすらついていない。
そして――彼の太く温かい両腕の中には。
「無事で、良かった」
「キャンッ! キャンッ!」
小さくて愛くるしいコロが、煙を吸うこともなく、怪我一つない状態で大切に抱きかかえられていた。
「おいおい……マジかよ……怪我ゼロかよ……!」
唖然とする群衆を余所に、上鳴は最高の笑顔と感情をを爆発させた。
「やっぱすげぇ!!すげぇよブロリー!!お前さいっっっっこう!!!」
湧き上がる歓声、ブロリーは彼のことを心配する人々に軽く言葉を投げた後、ゆっくりと助け出した娘の元へと向かう。
「怪我は無い、無事だ」
「ワン!ワンッ!」
「コロ、コロォ!よかった…!よかったよぉ…!!」
「本当に、本当にありがとうございます!!なんとお礼をしたらいいか…!!」
「お礼……それなら」
ブロリーは泣きながら犬に抱きつく娘の頭に優しく触れ、優しい笑みを浮かべながら告げる。
「娘さん達を、ずっと、何があっても…愛してあげてください」
それに応える様に無言で頷き、2人の娘と犬を強く抱きしめる母親。ブロリーは彼女らの時間の邪魔にならない様にと距離をあけ、座る。
「ブロリー!お疲れさん!!はいこれ!」
「上鳴…助かる」
「ヒーローや警察、救急車や消防隊の人らももう来るってさ。まあもう全部ブロリーが終わらせたけどな!……やっぱすげぇよブロリー!めちゃくちゃカッコよかったし、マジでヒーローだったぞ!」
「…ほ、褒めすぎだ。………」
ブロリーは上鳴からもらった濡れタオルや水分を補給しながら、自分が助け出した家族の姿を見る。彼女らを助けたブロリーは、誰がなんと言おうとヒーローである。
家族が抱き合い、涙を流しながら生きて再会できた喜びをかみ締めている。その温かい光景を、ブロリーはタオルで顔の煤を静かに拭いながら、どこか愛おしそうに見つめていた。
「……上鳴」
「ん? どうした?」
「さっき……ヒーローになるのも『視野に入れる』って言ったけど……」
ブロリーは少しだけ言葉を区切ると、上鳴の目をまっすぐに見据えて静かに言った。
「あれ……撤回する」
「えっ……!? 嘘だろ、あんなに凄ぇことやっておいて、やっぱやめる……ってことか!?」
上鳴が焦ったように身を乗り出す。だが、ブロリーは首を静かに横に振った。その瞳には、今までのような迷いや恐怖の影は一切なかった。
「違うんだ。……オレ、ヒーローを目指したい。もう『視野に入れる』じゃなくて……本気で、目指すことに決めた」
「――っ! マジか……! マジかよブロリー!!」
上鳴の顔が一瞬でパッと明るくなり、声を弾ませる。そんな友の様子に、ブロリーは小さく不器用な笑みを浮かべ、胸の奥に芽生えた想いを言葉に紡いでいった。
「オレは…戦う事が怖かったんだ。強すぎるこの力を使う事が……怖かった」
自分のゴツゴツとした大きな手を見つめる。
「呪い」のように思えたその巨躯と圧倒的な腕力。だが今、その手は小さな命を、家族の幸せを守り抜いた。
「でも、ヴィランを倒すことだけが、戦う事だけがヒーローじゃないんだ。泣いている人を助けたり……こうして大切なものを守ってあげたりすることも、立派なヒーローなんだって……今日、ようやく分かった」
炎の中から助け出した家族の笑顔、そして腕の中で怯えていた犬が嬉しそうに吠えた瞬間。
それら全てが、ブロリーの胸を満たした温かい光の理由だった。
「オレの力は……誰かを傷つけるためのものじゃない。こうして人を守って、救助するために使うんだ。……だからオレは、誰かと戦うヒーローじゃなくて……人々を守り、救い出す『救助ヒーロー』を目指す」
「ブロリー……」
「これなら……オレの力でも、誰かの役に立てるかもしれない。誰かを、笑顔にできるかもしれないから。誰かの笑顔を見るのは……とっても、嬉しいから」
力強い決意のこもった言葉。
自分の恐怖と向き合い、ついに自分の力を使う
「道」を見つけた親友の姿に、上鳴は感極まったようにニッと最高の笑顔を弾けさせた。
「……最高だよ、ブロリー!! 救助ヒーロー、めちゃくちゃいいなそれ! お前のその規格外のパワーがあれば、どんな災害だって、どんな事故だってイチコロだぜ!」
上鳴はブロリーの大きな背中をバシバシと力いっぱい叩いた。
「絶対なろうぜ、ヒーローに! 俺もお前に置いてかれないように、死ぬ気で頑張るからさ!」
「……ああ。ありがとう、上鳴」
夕闇が迫る街に、遠くからサイレンの音が響き渡る。
駆けつけてくるレスキュー隊や警察の赤色灯が街を赤く染める中、ブロリーは自分の胸に手を当てた。
暴走への恐怖が完全に消えたわけではない。けれど、もう逃げるつもりはなかった。
守るべき人の笑顔のために――ブロリーは今、力強くヒーローへの第一歩を踏み出したのだった。
個性に関してはめちゃくちゃ考えた感じなのですが……どうでしょうか。詳しいことは徐々に出していく予定ですので、お待ちくださいませ。
今後ともよろしくお願いします!!