怪物と英雄の狭間で 作:伝説の一般元ブロリスト
上手くできたかマッジでわかりません。
(―――静かだ)
最終テストが始まり、ブロリーは周りを警戒しながら歩いて行っていた。飛んでそのままゴールしてもいいのだが、ブロリー自身が『本気の教師達の実力を見たい』と言う気持ちがあった為、『全員を捕縛しての勝利』と言う方向で動いていた。
風の音すら途絶えたかのような、不気味な静寂が広がる擬似市街地。アスファルトを踏みしめる自身の足音だけが、等間隔に響いていた。
その静けさが、不意に破られた。
ヒュッ、と空気を切り裂く微かな飛翔音。
死角であるビルの二階の窓から、白い煙のような飛沫が迸り、瞬時に人の形を結んでブロリーの首元へと鋭い蹴りを繰り出してきた。奇襲を仕掛けてきたのは、分身を操るプロヒーロー――エクトプラズム。
だが、ブロリーの反応速度は人間のそれをもはや超越していた。
振り返る気配すら見せず、ブロリーはただ背後へスッと右腕を跳ね上げた。
重厚な肉の壁に激突したような硬質な打撃音が響く。放たれた蹴りはブロリーの巨大な手のひらに難なく受け止められ、そのまま握り潰されるような万力で掴まれる。
「――っ!」
呻き声を上げる間もなく、ブロリーが軽く手首をひねっただけで、その分身は白い煙となってプツリと霧散した。
「……上から?」
ブロリーがふと視線を上げ、周囲のビル群へと見渡した、その瞬間だった。
30体ほどの白い人影が、同じトレンチコートに身を包み、鋭い眼光でブロリーただ一人を取り囲んでいた。常人であれば息が詰まるほどの圧倒的な威圧感と、狂気的なまでの人海戦術。
『――作戦開始』
幾重にも重なり合う不気味な合唱とともに、頭上から、前後左右から、規格外の数のエクトプラズムが一斉に雪崩を打って襲いかかってきた。空間そのものを押し潰すかのような、白い奔流。
だが――それを見上げたブロリーの顔に浮かんだのは、恐怖ではなかった。
(……本物の先生じゃない。これ、全部『分身』だ)
血の通った生身の人間ではない。殴っても骨を折る心配もない。
普段、常に己の怪力にブレーキをかけ、恐る恐る触れるように生きてきた少年の中で、わずかにその厳重なリミッターが緩んだ。
「――ふぅっ!!」
ブロリーの太い腕が一閃した。
「はあ"あ"あ"あ"っ!!!」
ただ腕を水平に薙ぎ払っただけ。それだけで巻き起こった凄まじい衝撃波が、正面から飛びかかってきた十数体の分身をまとめて消し飛ばした。
「拘束!」
「ぐうぅ!!」
「っ!」
「うあ"ぁ"ぁ"!!」
背後から飛びつこうとした分身の顔面へ、振り向きざまの裏拳が叩き込まれ、触れた瞬間に白い霧となって弾け飛ぶ。
右から迫る三体をまとめて片手で掴み、地面のアスファルトへ叩きつけて粉砕。左から降ってきた五体の群れへ向けて足を踏み込み、巻き起こる突風だけでまとめて吹き散らす。
容赦はいらない。手加減で躊躇う必要もない。
押し寄せる白い波を前に、ブロリーは特大の巨躯を淀みなく躍動させ、群がるエクトプラズムの分身たちを、まるで紙屑でも払うかのように片っ端から粉砕していった。
「!」
分身を全て倒したと思っていた矢先、ブロリーに向けてきていたのは10を超えるセメントの柱。ブロリーは冷静にそれをエネルギー弾で破壊しようとしたが――出ない。
(―!相澤先生…の…個性……オレの場合は、
どこかに身を潜めている相澤よりも、向かってきているセメントをどうにかする為拳を作り、まっすぐに拳を振るった。
柱は砕けるものの止まらず攻撃を続けてくる、ならばもブロリーは柱に拳を繰り出したまま前へと走り、柱を破壊しながら突進。
(いた、セメントスせ…――?)
その先にいたとはセメントスだったが、その顔にはガスマスクのようなものが付けられていて、ブロリーはそんな彼に対して困惑していた。
(ガスマスク………!!)
ブロリーが抱いたその違和感の正体は、刹那の後に最悪の形で明かされることとなった。
すべては――この場に姿を見せていない根津校長が描いた、作戦の通りに動いていたのだ。
上空から、無機質な機械の射出音が連続して響き渡った。
「全弾発射ァ!!」
見上げれば、ビルの上には大量の装置が取り付けられており、そこから無数の爆弾のようなものが発射されていた。ミッドナイトとパワーローダーはそこで準備を整えていた。
この日のためだけに、工作と開発のエキスパートであるパワーローダーが機構を設計し、ミッドナイトが己の個性を極限まで高濃度に凝縮・充填した特製兵器――『眠り煙幕爆弾』
空中で炸裂した弾頭から、視界を完全に奪う濃密な白煙とともに、甘く重苦しいピンク色の催眠ガスが滝のように降り注いだ。
吸えば一瞬で意識を刈り取る劇薬。セメントスがガスマスクを装着していたのは、このガスで満たされる絶対制圧エリアの中で活動するためだったのだ。
(吸っちゃダメだ……っ!!)
野性の本能が警鐘を鳴らす。
ブロリーは咄嗟に左手で口と鼻を固く塞ぎ、足元のセメントの拘束から逃れるように、太い両脚で地面を思い切り踏み抜いた。
バゴォッ!!とアスファルトを砕き、煙幕の充満する地上から逃れるべく、一直線に上空へと跳び上がる。
――だが、それこそが根津校長の一番の狙いだった。
煙を突き破り、宙へと身を投げ出したブロリー。彼には飛行能力があるために、悠々と中へと浮き続けていたが、ビルの陰から、乾いた銃声が連射された。
「!!」
スナイプの個性『ホーミング』によって軌道をねじ曲げられた弾丸が軌道をねじ曲げられた特殊徹甲弾が、ブロリーの死角――肩、太腿、脇腹へと正確無比に吸い込まれる、ブロリーは咄嗟にそれらを蹴りで弾き、左手で口を押さえながら右手で払い除けた。
その瞬間を逃さず
「イェェェェェェェェェェェェェイ!!!!」
「づ!!」
プレゼント・マイクが加減なしの本気のボイスでブロリーを攻撃、初めての攻撃、初めての感覚、ブロリーは思わず耳を両手で塞いだ。そして次の瞬間、地面に向かって、ブロリーの体は勢いよく吸い寄せられた。
「こっちですよーブロリー君!!」
(13号……先生……!!づっ!騒音の…せいで…頭が……!!)
ブロリーは少し争うものの、ブラックホールの引力に吸い寄せられ地面へと落下していく。13号はすぐさまそこから離脱し、ブロリーのなんとか両足で着地。
「今だ!!」
着地と同時、立ち込める粉塵の中から飛び出してきた無数の人影――エクトプラズムの分身たちが、地を這うように殺到した。
一体や二体ではない。十を超える分身が一斉に飛びかかり、ブロリーの太い両腕、両脚、そして分厚い胴体へと、全身の体重を乗せて蟻のように群がり、万力のような力でガッチリと組み付いて拘束した。
「ぐっ……!!」
怪力で強引に引き剥がそうと、ブロリーが全身の筋肉を軋ませる。その瞬間に響く、プレゼントマイクの声。
「休ませるわけねぇだろリスナーァァッ!!」
プレゼント・マイクが、首の指向性スピーカーを再びブロリーの真正面へと向け、肺腑の底から空気を絞り出した。
至近距離から叩き込まれる、二度目の本気(フルパワー)の『ボイス』。
耳を塞ぐ両腕はエクトプラズムに押さえつけられ、無防備な頭部へダイレクトに超音波の暴力が突き刺さる。脳を直接シェイクされるような激痛と圧迫感に、視界が白く明滅し、奥歯が砕けそうなほどの衝撃が少年の巨躯を揺さぶった。
「が……ッ、あ……!!」
苦悶に顔を歪めるブロリーの周囲には、先ほど投下された『眠り煙幕爆弾』の濃密なピンク色の催眠香が、逃げ場のない霧となって完全に充満しきっていた。
激痛で息が漏れそうになる。少しでも肺に空気を吸い込めば、その瞬間に意識を刈り取られ、泥のように眠らされて敗北が決まる。
腕を封じられ、耳を劈かれ、呼吸すら禁じられた完全なる袋の小鼠。
そこへ、ガスマスクを着けたセメントスが、静かに両の手のひらを地面へと押し当てた。
「――完封!!」
地鳴りとともに、ブロリーの足元を取り囲むようにして、四方八方から何層もの分厚い生コンクリートの壁が津波のように一斉に隆起した。
光を遮り、空気を遮断し、退路を寸断する巨大なコンクリートの奔流。
エクトプラズムがの分身ごと、セメントの壁は球体を描くようにしてブロリーの頭上で完全に噛み合い――光の届かない、巨大な『石の檻』となって巨漢のすべてを完全に包み込み、ガチガチに固められた。
「……どう、かしら?」
「上手く行ってたとは思うけど、今はここで待機だ。油断はできないからな、出てきた瞬間にまたコイツで攻撃だ」
「そうね(―まだ終わらないでしょ? ブロリー君)」
『各員、状況を報告したまえ』
小型インカムから、根津校長の冷静な声が響いた。
「こちらセメントス。ブロリーくんをコ完全密閉しました。酸素供給も最低限に絞っています。眠り香の充満と相まって、数分と保たずに意識を手放すはずです……確定ではありませんが」
『イレイザー、彼の様子は視認できているかい?』
「……いや」
ビルの屋上から双眼鏡を覗いていた相澤が告げる。
「完全にセメントの壁に阻まれて視界が遮断された。俺の『抹消』はすでに切れています……セメントス、少しでも異変を感じたら即座に――」
相澤が指示を出し終えるより前だった。
「……っ!? 地震!?」
マイクが思わず叫び、ふらつく両足で踏ん張った。
だが、それは自然現象の揺れなどではない。
市街地全体のアスファルトが、ビル群の窓ガラスが、まるで巨大な怪獣の心音に共鳴するかのように、激しく波打ち、軋み始めたのだ。中心は――目の前に鎮座する、あの巨大な石の檻。
ピキッ……!!
静寂を切り裂く、乾いた亀裂の音。
何層にも重ねられ、戦車砲すら跳ね返すはずの超圧縮コンクリートの表面に、蜘蛛の巣状のヒビが一筋、また一筋と走っていく。
『ミッドナイト!ブロリー君は貴方の個性であれば、意識が朦朧とする、そのはずでしたよね!?』
『ええ間違いないわ…今回は、あの狭い空間で長時間吸い込むはず……もしかして、…もう、慣れたの?……いや、まだ数回しか…』
『出てきた瞬間に俺がもう一回ボイスで!』
『いや――おそらくもう彼は、マイク君の攻撃に……慣れた可能性があるよ』
そして――その無数に走った亀裂の隙間から、ドッと吹き出してきた。
眩いばかりの、禍々しくも神々しい――エメラルドグリーンの光。
コンクリートの隙間から漏れ出す光条は瞬く間に太くなり、立ち込めていた眠り煙幕のピンク色を容赦なく塗りつぶしていく。
大気が激しく震え、周囲の小石や粉塵が重力を無視して宙へと浮き上がり始めた。
『全員、下がれッッ!! 来るぞ!!』
相澤の絶叫が響いた、まさにその刹那。
石の檻の奥底から――天地を裂くような、規格外の少年の雄叫びが轟いた。
「―――うおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!!」
大爆発。
ブロリーを閉じ込めていた巨大なセメントの球体は、内側から膨張した圧倒的な気力によって、木っ端微塵に粉砕された。
何トンものコンクリート塊が榴散弾のように四方八方へと吹き飛び、猛烈な突風となって立ち塞がるプロヒーローたちを襲う。
立ち込める白煙と暴風の中心。
弾け飛んだ瓦礫の雨の中で――全身から凄まじい緑色のオーラを噴き上げ、鋭く研ぎ澄まされた双眸を爛々と輝かせた巨漢が、大地を揺るがしながら仁王立ちしていた。
「うぅぅぅ…!うぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!」
「やっぱすげぇなぁブロリー!!でもよぉ……俺たちも、負けてらんねぇんだ――ヨォォォォォォォォォ!!!!」
すぐさま教師達は臨戦体制をとり、マイクが真っ先にボイスで攻撃。そして上ではパワーローダーとミッドナイトが準備をしていた―――その瞬間、ブロリーは大きく息を吸い込み――口を大きく開きながら吠えた。
「ガァァァァァァァァァァァァッッッッ!!!!!」
ブロリーの口から離れたのはエネルギー砲では無く、雄叫びによる音波攻撃。その攻撃を見た瞬間、その場にいる全員が理解した。
――たった一撃攻撃を喰らっただけで、ブロリーはマイクの音波攻撃を……プロの技を真似たのだと。
現在のブロリーはパワー出力
5%