怪物と英雄の狭間で 作:伝説の一般元ブロリスト
お待たせいたしました、死にかけていました、いやもうほんとマジで死にかけてました。
熱が止まらない吐き気が治らない食欲ゼロでもう、ほんと大変でした………。お待たせしすぎてしまって申し訳ありません。
とりあえず私のことは忘れて、本編へどうぞ!!
無数のモニターや設計図、大小様々な工具が所狭しと並ぶメリッサの研究室(ラボ)。部屋に飾られている一枚の写真を見て、緑谷は目をまん丸にして驚きの声を上げていた。
「こ……これが、ブロリー君の…小さい頃…!」
「ね? かわいいでしょ?」
「メリッサ……恥ずかしいから、もう消して……」
巨大な両手で顔を覆い、耳の先まで真っ赤にして身を縮めるブロリー。
写真に写っているのは、今よりもずっと背が低く、あどけない顔つきのブロリーが、同じく幼いメリッサと手を繋いで照れくさそうに笑っている姿だった。
今でこそ見上げるほどの巨漢だが、その優しげな琥珀色の瞳や、少し困ったように下がる眉尻は、当時のままだ。
「こんなふうに笑ってる写真、実はけっこう珍しいの。蕗利くん、昔から写真撮る時はいつも緊張して固まっちゃうから」
メリッサはクスリと笑いながら次に飾ってある写真を一枚手に取る。
そこに写っていたのは、先ほどとは打って変わって、ブロリーが顔を伏せ、今にも泣き出しそうな表情で立ち尽くしている一枚だった。少し離れたところで、幼いメリッサも困ったような、悲しそうな顔をしている。
「蕗利くん、覚えてる? この写真を撮った日のこと………これは、私が蕗利くんを傷つけちゃった日に撮った写真」
メリッサは少しだけ寂しそうに微笑むと、不思議そうに写真を見つめる緑谷の方へと向き直った。
「出久くん。私ね……『無個性』なの」
「……えっ」
緑谷の肩が、ビクンと跳ねた。
「昔、蕗利くんと一緒に遊んでいた時にね、私、言っちゃったんだ。『蕗利くんの個性が羨ましい、私にもそんなすごい力があればよかったのに』って。……そうしたら、蕗利くん、すごく悲しそうな顔をして、怒ったみたいに黙り込んじゃって」
無個性ゆえに、ヒーローのような力に憧れた少女の無邪気な本音。緑谷には、そのメリッサの痛いほどの渇望が、自分の過去と重なってよく分かった。
けれど同時に――その言葉が、自分の力を「呪い」のように恐れているブロリーにとって、どれほど悲しい響きを持っていたのかも。
「……オレの力は、周りを壊して、人を傷つけるだけの危ないものだから」
ブロリーが、俯いたまま静かに口を開いた。
「メリッサは、すごく優しくて、頭もよくて、キラキラしてた。だから……そんな悲しいものを、メリッサに持ってほしくなかった。羨ましいなんて、言ってほしくなかったんだ……。でも、うまく言葉にできなくて、メリッサを泣かせてしまって……すまない」
「もう、謝らないでってば。パパから蕗利くんの本当の『個性』の危なさを聞いた時、私、自分の無神経さがすごく恥ずかしくて、いっぱい泣いたんだから」
メリッサはそう言って、ブロリーの太い腕にポンと優しく手を置いた。
「でもね、あの日のことがあったから、私は自分の夢を見つけられたの。……私にはヒーローになる力はない。でも、蕗利くんやおじ様……オールマイトみたいに、力があるからこそ苦しんでいる人たちを、私の発明で助けることはできる!」
メリッサの瞳に、曇りのない強い光が宿る。そして緑谷に向けて、一つのサポートアイテムを手渡し、それを手につけさせる。
「これは……!?」
緑谷が目を輝かせて身を乗り出す。
「名付けて『フルガントレット』、これを、是非とも出久くんに使って欲しいの」
「えっ……ぼ、僕に!?」
「ええ。出久くんの個性、すごく強力だけど……あまりにも強い力を使うと、自分の身体を壊してしまうんでしょ? これなら、出久くんの100パーセントの力にだって三回は耐えられるように設計してあるわ。筋肉への負荷も、かなり抑えられるはず!」
「すごい……! これなら、全力で戦える……!!」
フルガントレットを装着した右腕の感触を確かめるように、緑谷はギュッと拳を握りしめ、感動で声を震わせた。
「ありがとうございますメリッサさん!…でも。こんなすごいもの、僕なんかがもらっていいのかな……!」
「もちろん! 私の作ったアイテムで、出久くんが思い切り戦えるなら、それが一番嬉しいから!」
誇らしげに胸を張るメリッサ。その光景を、ブロリーは心底嬉しそうに、そして少しだけ眩しそうに見つめていた。
自分の力で誰かを傷つけてしまう自分とは違う。メリッサはこうして、自分の頭脳と優しい心で、傷つくヒーローたちを救うことができるのだ。
「……よかったな、緑谷」
「うん!」
「――そして、蕗利くんにはこれ!!」
メリッサが弾んだ声で言いながら、保管ケースの奥から引き出してきたハンガーラックには、真新しい一着のコスチュームが掛けられていた。
「こ、これは……?」
「蕗利くんのコスチューム、バージョン2よ!」
誇らしげなメリッサの言葉に、ブロリーと緑谷は揃って目を丸くした。
それは、黒を基調としたピタリと密着するインナーと、紫色のズボン。その上には、胸部と腹部、そして両肩を保護するようにせり出した、緑と黒のアーマーが備え付けられていた。さらに、手首と足首を守るための黒いリストバンドと、白いブーツもセットになっている。
無骨でありながらも、どこか洗練された力強さを感じさせるデザインだった。
「前のコスチュームも良かったけど、蕗利くんがもっと動きやすくて、思い切り戦えるように作り直してみたの」
メリッサはアーマーの肩の部分をコンコンと指先で叩いた。
「この胸や肩のアーマーは、すごく軽くて頑丈だから、どんな衝撃も以前よりしっかり防いでくれるわ。それから、下に着る黒いシャツと紫のズボンは、前のコスチュームと同じようにゴムみたいにすっごく伸びる特別な布でできているんだけど、その布の強度は、前の何倍もあるの!!だから、戦いの中で蕗利くんの筋肉がどれだけ大きく膨れ上がっても、絶対に破けたりしないから安心してね!」
「オレの体が大きくなっても、破れない……」
「ええ! それにマントも、絶対に取れないようにしてあるから安心してね」
メリッサが、ブロリーの腰に巻かれているマントを見て優しく微笑んだ。
「すごいよ、ブロリーくん! すごくかっこよくて、強そうなコスチュームだね!」
緑谷がフルガントレットをつけた腕を振りながら、自分のことのように大興奮している。
「オレに、こんなすごいものを……」
ブロリーは、目の前の真新しい戦闘服(コスチューム)に大きな手をそっと伸ばした。アーマーのひんやりとした感触と、どこまでも伸びそうなインナーの生地。
力を使うたびに服が破れてしまうことや、周りを壊してしまうことに怯えていた自分を、優しく包み込んでくれるような温かさがそこにはあった。
「ありがとう、メリッサ……。これ、すごく……すごく嬉しい」
ブロリーが琥珀色の瞳を潤ませながら深々と頭を下げると、メリッサも嬉しそうに顔をほころばせた。
「ふふっ、どういたしまして! これに着替えて、今夜のパーティーに行ってもいいくらい!」
「いや、それは流石に…」
「ふふふふっ、冗談冗談!」
自分の力を恐れる少年に贈られた、彼専用の頑丈なコスチューム。
緑谷とブロリー、二人の少年の力と心を支えるアイテムを手渡したメリッサの瞳には、ヒーローを支える科学者としての確かな誇りが輝いていた。
「―すまない、遅く……あれ?」
「おおブロリー!…おおっ!やっぱスーツ似合うな!」
「胸のボタンが悲鳴をあげてるけどな」
「大胸筋がここまではっきり浮き出るとは…!」
「用意できたのが、これしかなくて…」
正装のスーツ姿に着替えたブロリーが少し遅れて集合場所にやってくると、そこには飯田・轟・心操・常闇・緑谷・上鳴・峰田のみ、女性陣はまだ到着できていないようだった。
「他の人は?」
「まだ来てない! 団体行動を何だと思っているんだ!?」
ブロリーが尋ねると、飯田が凄日苛立った様子で答える。するとその時、入り口の扉が開く。
「ごめん! 遅刻してもうた!」
謝りながら現れたのは、ピンクと白を基調としたドレスを着た麗日、その姿はいつもとは違う華やかな格好だった。
「おぉ…」
「ほら緑谷!ここは、ビシッ!ビシッと!!」
「え!?あっ、えっと…と、とっても似合ってるよ!麗日さん!」
「そ、そうかな〜……えへへへっ」
緑谷が褒め、麗日が照れる。そうしていると再び扉が開く。
「申し訳ありません…耳郎さんが…」
扉から現れたのは、ライムグリーンの大人の女性らしいスレンダーラインのドレスを着た八百万と、紺とピンクを基調としたドレスと黒い上着を着た耳郎だった。
耳路は髪を纏め上げていつもの私服とは違った意味でお洒落な格好をしていたが、恥ずかしいのか八百万の後ろに隠れていた。
「二人とも、綺麗だ」
「まあ、ありがとうございます」
「そ、そうかな…? う…ウチこういう格好はその、何というか…」
「いいじゃん耳郎!超似合ってる!もっと自信持っていいと思うぜ!」
「なっ―――ッッ!!」
褒められた耳郎は、突然耳郎が上鳴と峰田の耳にジャックを刺して爆音を浴びせる。
『ぎゃあああああああ!!?』
爆音を浴びせられて伸びている二人に対し耳郎はフンッ!とそっぽをむいた。
「何だよ!? 俺褒めたじゃんかぁ!?」
「うっさいばか!」
「なんでオイラまで!?」
「連帯責任‼︎」
「なんの責任!?」
そう言う耳郎の耳は赤くなっていた、いわゆる照れ隠しというやつだ。女性陣の登場に対してブロリーは素直に『綺麗だ』という感想を抱きつつ、周りを見渡す。
「発目と、メリッサがまたきてない」
「お二人でしたら、もうそろそろ―』
八百万の言葉に被さるように、扉がゆっくりと開かれた。
「ごめんなさーい!遅れちゃった!――ほら、発目さんも!」
「あっ…あの!メリッサさん、やっぱり私は……!!」
華やかな声とともに現れた二人の姿に、その場にいた全員の視線が釘付けになった。
長い髪はポニーテールにしており、いつもの眼鏡を外しナチュラルメイクをしているメリッサは誰が見ても『美しい』という感想を抱かせるほど魅力的だった。
そして、そのメリッサに手を引かれて渋々といった様子で姿を見せたのは――雄英高校サポート科、発目明。
シックなワインレッドのタイトドレス。特徴的なピンクのドレッドヘアも綺麗にアップにまとめられ、隠れていたスタイルの良さと端正な顔立ちが際立っていた。
『―どなた!?』
上鳴、峰田が思わず声を揃えて後ずさった。
「失礼ですね!?私ですよ!サポート科の発目明です!ああもう、やっぱりこの服は通気性も伸縮性も最悪です!今すぐ脱いで着替えたい……!」
見た目は完全なクールビューティーだが、口を開けばいつものマシンガントーク。その圧倒的なギャップを前にして、心操が思わず口を開く。
「ほんと、綺麗だな」
「うむ…文句のつけようがない」
一方、メリッサはそんな周囲の反応をよそに、嬉しそうにパタパタとブロリーと緑谷の方へと、発目を連れながら駆け寄ってきた。
「二人とも、スーツすっごく似合ってる!……って、蕗利くん、胸のボタン大丈夫!?」
「あ、うん……少し、苦しいけど、力まないように気をつけてるから」
ブロリーが照れくさそうに頭を掻くと、メリッサは安心したようにクスリと笑った。
「メリッサも……すごく綺麗だよ。見違えちゃった」
「ほんとに!メリッサさん、すっごく綺麗です!」
「ふふっ、ありがとう二人とも。……そーれで!」
メリッサはそばにいた発目の背中を押し、ブロリーの目の前へと持ってくる。
「蕗利くん、今の発目さん、どう?さっきここへくる途中で見かけて、そのまま引っ張ってきたの」
「そうだったのか」
「こういう格好は、あんまり慣れていなかったので……いやぁ正直いうと、ちょっと恥ずかしくて!アハハッ!!……やっぱり、似合ってないですよね! アハハッ!」
どうやら、メリッサがここへくる途中に、中へ入ろうとするも今の格好を見せるのは……と恥ずかしがっている発目を発見し、そのままここまで引っ張ってきたようだ。
「綺麗な赤い服……いつもと違う発目も、オレはすごくいいと思う」
真っ直ぐで嘘偽りのない琥珀色の瞳で見つめられ、発目の顔がボフンッと音を立てて真っ赤に染まった。
普段は油まみれで他人の目など一切気にしない彼女だが、ブロリーのあまりにも純粋な褒め言葉に、らしくもなく視線を泳がせ、口をパクパクと動かす。
「そ――そうですか!? いやぁー!!雄英体育祭の覇者であり、私の特別なクライアントであるブロリーさんがそうおっしゃるなら、このドレスにも圧倒的な価値があるということですね!!」
発目は照れ隠しのように両手をバタバタと振り回し、顔の熱を冷ますように早口でまくしたて始めた。
「なら! この通気性の悪さや伸縮性の欠如も、改良の余地があるというものです! いっそこのタイトなシルエットを維持したまま、スカートの裏地に小型のベイビーたちを無数に収納できる隠しポケットを増設し、さらには万が一の戦闘に備えてヒールに小型ブースターを内蔵すれば、パーティー会場でも隙のない完璧なサポートドレスが完成するはず……!!」
ブツブツと何やら恐ろしいドレスの改造案を呟き始め、いつものように十字の瞳をギラギラと輝かせる発目。
「……見た目は綺麗にまとまっても、中身は完全にいつもの発目だな」
「うむ。良くも悪くも、我が道をゆくブレなさよ」
呆れたように肩をすくめる心操と、静かに頷く常闇。
麗日や八百万たちも「発目ちゃんらしいなぁ」「ふふっ、元気が出たみたいですわね」と微笑ましく見守っている。
「よかったね、発目さん! 蕗利くん、ナイス!」
メリッサがウィンクをして親指を立てると、ブロリーはよくわかっていない様子で小首を傾げたが、発目がいつもの調子に戻ってくれたことにホッと息を吐いた。
峰田は血涙を流しながら悔しそうにしていて今にも暴れそうだったので、常闇がダークシャドウで押さえ込んでいる。
「コホンッ!」
その時、エントランスに響き渡るような大きな咳払いが一つ。
ビシッと背筋を伸ばし、眼鏡をカッと光らせた飯田が一歩前へと進み出た。
「これで全員揃ったな! これより我々は、雄英高校の生徒として、世界が注目する『I・アイランド・レセプションパーティー』の会場へと向かう! 会場には世界中のプロヒーローや著名な科学者の方々が多数出席されている。くれぐれも粗相のないよう、節度と品格を持って行動するように!」
『おー!』
飯田の力強い号令に、全員が元気よく返事をした。
華やかなドレスと、少し窮屈そうなスーツ。それぞれが非日常の装いに身を包み、期待に胸を膨らませながら、若きヒーローたちは夜のI・アイランドを彩る光のパーティー会場へと歩みを進めていった。
しかし
「…―!!!!」
「あれ?どうしたのブロリー君」
「……嫌な、気配がする……オレの、嫌いな、気配…」
「……なあ、ブロリー。お前のその、嫌な気配って…まさか!!!!!!」
ブロリー達はここから、また新たな戦いへと巻き込まれていくのであった。
次回
ブロリー君ブチギレ寸前
岩盤祭り
お楽しみに