ED傭兵、清純幼淫魔を誑かす 〜行き倒れ淫魔を哀れに思い、ED治療も兼ねて拾ったが――勃たんし、それを硬派で誠実と勘違いされるし〜 作:ぞうきん
……そうして。
あの後、露店街でたくさんの冒険者や傭兵に囲まれた俺たちは、怪しいからとその場を後にさせても貰えず。
この都市フダイセンのギルド会館へと半ば連行されるように連れられて――
「――――それで。その魔族が言ったのですね? ……そちらの、淫魔の少女が目的であると……!」
ローテーブルを挟んで、向かいのソファに座る女性――ギルド職員のカンナが厳めしい顔つきで言った。
「あぁ。間違いない」
「……っクレバー、さん?」
あっさりばらした俺に、ヒュプノは裏切られたとでも言いたそうな表情を向けてくる。
でもなあ、仕方ないだろう。このままではまたあの魔族が攻めてくるんだ。ヒュプノが狙いだと黙っていると、周囲へどれだけ被害が出るか。
ただ、さっきも言った通り俺はお前を見捨てない。まあ見てろ。
「それで、魔族が彼女を狙う理由はいったいなんなのですか? 単なる同族意識……ではないのでしょう?」
「さあな。そこまでは本人に聞かないと分からん」
「そう、ですか……。っしかし、それが本当ならとんでもない情報です……! 賊の少女が都市内にいたことも、それを追って強大な魔族がやってきたこともっ。都市防衛の考え方から見直さないといけないほどの……」
王女だってことまでは言わん。さすがにそれ言ってしまうと、ヒュプノがこの都市自体にも狙われそうだから。
で……俺にとってはここからが本番だ。支部長を始めとしたギルド職員が都市警戒網設置等に忙しい中、無理言って担当受付嬢のカンナを呼んできた。いまから俺は、その目的を果たす。
「なあ、カンナ。これから少し無茶を言う」
「……え? 無茶、ですか?」
難しい顔をしながら首をわずかに傾げるカンナに。
俺は言った――
「――例の魔族の討伐を、俺に任せてくれ」
「!」
「それは……どういうことですか、クレバーさん……!」
驚くヒュプノにカンナ。俺は続ける。
「あの魔族は、どうやらヒュプノの気配を探知することができるらしい。仮にどこかへ隠したとて、また空からあいつがやってくることになる」
都市内にも、外に出たとしても、逃げ場はないってことだ。
「であれば、この都市が取れる手段はただ一つ。ヒュプノを狙ってやってくるやつを、返り討ちにすることだけだろう」
「それは、そうですが……! 貴方ひとりに任せろと言うのですか!? 危険すぎます!」
「ふ、そりゃあ危険はあるだろう。魔族を相手にするのだからな――」
「なに笑っているのですか……! 貴方の安全のことですよ!」
おっと、怒らせちまったか。
カンナの顔には確かに俺を心配する色が浮かんでいる。カンナが新人の頃、担当の冒険者・傭兵ができないのを哀れに思って話しかけてから、彼女が俺を心配しなかったことはない。それでも今回は格別だな。
でも、悪いな。これは譲れないことだ。ヒュプノに手を出した俺が責任を持って……な。
ほら、俺の隣のヒュプノだってきっと俺に縋るような顔でも――――って、うわ。なんか表情消してカンナを睨んでるんだが! 弱っちそうなのにイヤな威圧感が……。
「……ヒュプノ。安心しろ。お前を守るといった言葉に嘘はない」
「! クレバーさん……っ。は、はいっ」
分かる、分かるよ。俺を止めようとするカンナはお前にとって敵も同然だもんな。でもほら、都市の中でギルドに喧嘩売るのはやめよう。生活できなくなるぞ。
「……クレバーさんは、わたしを選んでくれました。――あなたではなく、わたしを」
「!? この、小娘……っ」
ちょ、だから喧嘩売るなって!
さっさと戻そう、話を……。
「カンナ。続き、いいか」
「っ………………はい、お願いします。……私を納得させられるような話であることを期待します」
「そうだな。まず、前提から言っておく。――俺は、この娘を見捨てる気はない。つまり、魔族の再来は必ず起こると思ってくれ」
「…………」
納得いってない顔だなあ。魔族のために身を切るのは……って感じか。ただこれは俺の主義の問題だから、それが嫌なら俺ごと都市から追い出すしかない。
そう。追い出すのだ。
「っわぷ」
俺はヒュプノの頭にぽんと手をのせて。そして、ニヤリと笑みを浮かべて言った。
「――今日から、俺たちは都市の外で生活する。街の中を戦場にしないためにな」
「それは……!」
「街に被害が出るリスクを下げる。当然の話だな」
ギルドとしては俺が言った通りに動くか、あるいはオレをヒュプノごと切り捨てるかの選択肢があるが……これくらいのワガママが通るくらいの貢献はしてきたつもりだぞ、これまで。
さあどうだ。もし俺が負けても、その時はヒュプノが連れ去られるだけ。勝てば人類圏で活動する高位の魔族を一人やれる。どっちに転んでも都市が許容できないほどの事態にはならない。
ほら、どうなんだ、カンナ……!
「ぁ、それは、でも……! ……クレバーさんはギルドの重要な戦力で…………その、っ」
下手に個人的な付き合いがあるから、冷静にギルドとしての損得勘定ができないか? なら……。
最後に一押し――
「――もし作戦が上手くいけば。俺は、今回の策の功労者としてカンナの名を一番に挙げる。どうだ、ずっとお前が求めていた功績だぞ」
「っ……! 私は、そ、そんなものより!! 貴方、の……!」
どうだ? カンナ、新人の頃からずっと功績欲しがってただろ。ほら、なんか厄介な実家を黙らせるための実績がどうとかで。
ん? なんでそんな絶望した顔してるんだ。お前の望みだったじゃないか。俺たちがあって最初の頃は、毎日のように言ってたじゃないか。「私の功績ために、毎日必死に働くのです」なんて。
おお? 対照的に、ヒュプノはずいぶんにんまりした顔に。なんだお前ら、二人してどういう感情だそれ――?
と、そんなギルド会館での一幕を経て。
結局最後には折れたカンナの手配で、俺たちはその日中に都市外での待ち伏せを許可された。ギルド保有の天幕なんか張ってもらって、夜となった今はそれぞれに用意されたベッドに横になって。
……なんだが。
すでに草木も寝静まる真夜中。
ベッドで仰向けになっている俺の上に、なぜか――
――――半裸のヒュプノが、妖しい顔でまたがっていた。