熱とかは出なかったんですけど代わりに鼻水がダラダラと出てきてずっと鼻詰まりです。
後そのせいで投稿が遅れました すいません
まあ体調も良くなったんで、なんとか書くことできました
ちなみに今作のオリジナル設定として照橋さんには美化委員に入ってもらいました。
何か理由があるかって?
あるわけないだろ!!
と言うわけで早速どうぞ!!
side:斉木楠雄
「恋愛マスターの
(……やれやれ、とんでもない詐欺師が来たもんだ。恋愛マスター? 笑わせるな。お前の頭の中、全領域が斉照という謎の単語で埋め尽くされているじゃないか。……そもそも斉照って何なんだ)
僕が心の中で盛大に呆れていると、担任が教室の後ろを指差した。
「よし、安例の席は……斉木の隣が空いてるな。そこに座れ」
「了解です!!」
(おい神、余計なことをしてくれたな。厄介ごとは僕の視界の外に追いやってくれ)
僕が心の中で頭を抱える中、安例は爽やかな好青年スマイルを浮かべながら、僕の隣の席にカバンを置いた。
side:安例成
俺の渾身の爽やか自己紹介が決まったおかげか、クラスの反応は悪くない。最初の休み時間には、物珍しさもあって結構な数のクラスメイトが話しかけてきてくれた。
ただ……肝心の「恋愛相談」はまだ来ていない。まあ初日だしな。
……と思っていたら、一人の女子生徒が、暗く沈んだ表情で俺の席へとおずおず近づいてきた。
「あの……安例くんだっけ? さっきの自己紹介って……本当?」
「ああ、本当だぞ。もしかして、何か悩み事か?」
俺は少し口角を上げ、安心させるような笑みを浮かべる。
「うん……彼氏のことなんだけど……」
(──よし、やっぱり付き合い始めのトラブル関係か。プロの仕事開始だな!! いっちょ人肌脱いでやりますか!)
俺は一瞬で仕事モードへと切り替えた。
「よし、じゃあ詳しく聞かせてくれ」
「彼氏が最近、あんまり構ってくれなくて……。待ち合わせにも毎回遅れてくるし、電話しても全然出ないの。これって、やっぱりただ忙しいだけなのかな……?」
女子生徒の悩みを聞きながら、俺の頭の中では前世の職場で培った膨大なデータベースとプロファイリングが高速回転を始める。
「なるほどな。すまないが、いくつか確認させてくれ。電話に出ないのは具体的に週に何回だ? それはいつから始まった? 最近の彼の行動で……例えば、デートの行き先をすべて君に丸投げしてきたり、支払いを渋るようになったり……そういう変化はあるか?」
隣で斉木が(おいおい何だコイツ……)という顔でこちらをチラ見してきた気がするが、完全に無視だ。
「えっ……!? う、うん、まさにその通りで……! 先月から急にデートのお店選びも雑になって、お金も私が多めに出すことが増えて……」
よし、確定、黒だな。
「……今ので分かった。結論から言うと、その彼氏が君と本気で向き合っている可能性は極めて低い。心から大切に思っている相手なら、いくら慣れが生じてもそんな雑な扱いはしないからな」
「そっ……そうなの……!?」
「ああ。だがまだ確定とまでは言えない。とりあえず、今日にでも一度その点を彼にハッキリ問い詰めてみな。それで彼の本性が分かるはずだ」
「……分かった。私、勇気出して聞いてみる。ありがとう、安例くん!」
女子生徒は憑き物が落ちたようなスッキリした顔で、自分の席へと戻っていった。
周りで様子を見ていた男子生徒たちが、「すげ〜!! マジでカウンセラーみたいだったぞ!」「あそこまでズバズバ見抜けるなんて、なかなかやるじゃねぇか」とざわめき始める。
そして、翌朝。
俺が教室のドアを開けた瞬間、昨日相談に乗った女子生徒が勢いよく飛んできた。
「安例くん!!! 本当にありがとう!!」
その顔は、すっかり吹っ切れた清々しい笑顔だった。
どうやら昨日、意を決して彼氏を問い詰めたところ、なんと「友達との罰ゲームで渋々付き合っていた」らしく。彼女は即座にその彼氏にビンタを叩き込み、自分から別れを告げてきたらしい。
「安例くんのおかげで、都合のいい女にならずに済んだよ! 本当にありがとう!」
「おう! 災難だったな! でもこれでスッキリだ、次はもっと君を大事にしてくれる良い男を見つけな!」
俺が爽やかにサムズアップを返すと、教室中の生徒が一斉に大爆発した。
「「「うおおお! 数分の相談でそこまで見抜いてたのかよ!?」」」
「あいつマジで本物の恋愛マスターだ……!!」
一瞬で俺の席の周りに人山ができ、「俺の相談も聞いてくれ!」「私の恋占いも頼む!」と怒涛の相談ラッシュが押し寄せた。俺はプロの矜持にかけて、午前の休み時間をフルに使ってすべての生徒の悩みをバッサバサと捌いてやった。
そして迎えた、昼休み。
教室で弁当の蓋を開け、「ふぅ」とひと息ついていた……その時だった。
「あ!! 見つけたっす!! あんたが噂の安例っすね!!」
教室のドアをバーンと開けて入ってきたのは、紫色の髪をした実にチャラそうな男──鳥束零太だった。
(……あ、スケベじゃん。絶対ロクなことにならないから無視しよ)
俺は即座に視線を逸らして箸を伸ばそうとしたが、鳥束はズカズカと寄ってくるなり俺の腕をガシッと掴んだ。
「ちょっと来てくださいっす!! 仕事の時間すよ!!」
「え? ちょ、おま……待て弁当!!」
俺の抵抗も虚しく、俺は鳥束に無理やり教室から引きずり出されてしまった。
そして連れてこられたのは……なぜか校庭のど真ん中。
そこには、巨大な人集りと、なぜか設営されている【安例先生の恋愛相談所】という謎のテントがあった。
「鳥束!! 俺に整理券チケット30枚くれ!!」
「私は50枚!!」
「おい俺はラブスプレスパスを買うぞ!! お金ならある!!」
万札や小銭を握りしめた生徒たちが、目を血走らせて鳥束の周りでくれくれと大騒ぎしている。
(……おい待て、このスケベ、俺の噂を聞きつけて勝手に商売始めやがったな!?)
だが、目の前には本気で悩んでいる(そして大金を払おうとしている)顧客たちが並んでいる。プロとして、持ち込まれた依頼を無碍にはできない……!
俺は覚悟を決め、パイプ椅子に深々と腰掛けた。
「……よし、あんたは自慢話が多すぎる。相手の話を聞く姿勢を持たないと、彼女さんに愛想を尽かされるぞ」
「は、はい!! ありがとうございます安例先生!!」
「はい、次の方ー!」
side:斉木楠雄
(…………なんだ、これは…………)
僕は目の前に広がる光庭の光景に、今まで以上に盛大に頭を抱えていた。
校庭のど真ん中に謎のテントが設営され、その中で安例が凄まじい手際で生徒たちの恋愛相談を裁いている。そしてその傍らでは、鳥束が「ハイハイ並んで! ラブエクスプレスパスは1枚3000円っすよ〜!」と札束を懐に押し込んでいた。
(あいつ……たかが転校初日の恋愛相談で、校庭にフェス会場みたいな行列を作るとはな。……というか、鳥束。お前またクズみたいなビジネスを始めやがって)
僕は怒りを覚えたので、元凶の元へと近づき、そいつの頬をサイコキネシスでギチギチとつねりあげた。
「痛い痛い痛い痛い!! 痛いっすよ斉木さん!!」
(これはどういうことだ? 一体何をした?)
「ひえぇ! これはビジネスっすよ!! あの安例って奴が恋愛相談が死ぬほど上手いって聞いたんで、試しにチケット作って売ったらこうなったんすよ!! というかつねるのやめてください痛いっす!!」
鳥束は半泣きになりながら手を離すようお願いしてくる。
こいつにはもっと痛い目にあって欲しいところだが、仕方ないのでつねるのをやめてやった。僕はふと、安例の方を見てみた。彼はまだ相談の真っ只中だ。
「いきなり告白はやめな。まずは関係性を埋めていくんだ。あと相手を見極めろ。俺はそいつに会ったことないから分からないが、その特徴からだと浮気する可能性があるぞ」
「ありがとう!! 安例先生!!」
僕は疑問を抱く。なぜたった一人の人間に相談したいがために、ここまで生徒が集まるのか。
(なぜここまで行列ができてるんだ? 流石に出来すぎているだろ)
「あいつの実力は確かなものっすよ。実際、相談した人がその後指示通り告白したらほぼ全員付き合えたらしいっすからね」
(……本当か? あいつの頭の中、最初は『斉照』とかいう謎のワードで埋め尽くされていたぞ)
「斉照? なんっすかそれ?」
(知らん、僕にも分からん)
side:安例成
昼休みが終わり、ついでに五時間目も終わった。
……つっっっかれたあぁぁぁ…………。
鳥束め……お前のせいで昼飯が食えなかったじゃねえか。売上の半分は貰えたけど……あいつだけはぜってえ許さん。
流石に疲れたので、次の休み時間は自分の席でのんびりしよう。そう思っていた、その時だ。
「おっふ!!」「おっふ!!」「おっふ!!」
廊下からなにやら断末魔のような「おっふ」の大合唱が聞こえてくる。
同時に俺は感じ取った。眩いばかりの神々しい光が、こちらに向かって近づいてきているのを。
俺が顔を上げると、そこには光の主が立っていた。
「えっと……安例くんだっけ?」
……おっふ。
鳥束のせいで一瞬忘れていたが……思い出した。俺の本来の目的、それは『斉照』を成立させること。
そしてそのために必要不可欠な最高峰のパーツ。それが──完璧美少女、照橋心美だ。
「休んでるところごめんね!! ちょっと話したいことがあって!」
彼女曰く、どうやら俺を美化委員にスカウトしにきてくれたらしい。
もし俺が斉照の尊さを知らないただの転生者なら、「面倒くさい」と断っていたかもしれない。だが……!
「わかった、美化委員に入らせてもらうよ!」
「本当!? ありがとう! じゃあ早速先生に伝えてくるね!」
照橋さんは花が咲くような笑顔を残し、パタパタと去っていった。
……よし。そろそろ始めるか。
【安例成のΨ愛作戦を!!】
──そして時間は飛び、放課後。
早速俺は、美化委員の仕事をしていた。
(え? 時間跳ぶの早すぎだろって? それは俺に言うな、作者に言ってくれ)
幸運なことに、今回は照橋さんとペアで特別教室の掃除をしていた。
常人なら緊張でおっふするところをなんとか耐え抜き、俺は早速、本題の作戦を開始した。
「照橋さんってさ……好きな人いるでしょ?」
ガタッ!!
その言葉が出た瞬間、ほうきを持っていた照橋さんの体が大きく跳ね上がった。
「俺は恋愛マスターだからな、そのくらい直感で分かるのさ。……斉木楠雄。同学年のあいつだろ?」
ガラガラガラガラッ!!
それを聞いた瞬間、照橋さんは手に持っていたほうきとちり取りを豪快に床へ落とし、顔をリンゴのように真っ赤にしてパニックを起こし始めた。
「いやいやいやいや!! そんな!! ちがっ!! そんな!! 楠雄くんのことなんて好きじゃ──!! いや、すきだけど……いや! 好きじゃないから!!」
分かりやすっ!! これ他のヤツらに聞かれたら学園崩壊レベルの大事件になるな……。気をつけよう。
「大丈夫、俺こう見えて口は固い方だから。というか口が固くなかったら恋愛マスターなんて名乗れないさ」
「違っ、だから! 斉木楠雄くんが好きなんて……そんなわけないですから!!」
(……すげぇな。予想以上に作戦が上手くいくぞ。正直、もっと苦戦すると思ってたのに)
俺は少し声を落とし、プロのカウンセラーらしい落ち着いたトーンで彼女に語りかけた。
「照橋さん、自分の気持ちには正直になった方がいいぞ。恋愛ってのは、いつ何が起こるか分からないからな」
すると照橋さんは急にほうきの手を止め、鋭い視線で俺をじっと見つめてきた。
「……何が目的か、教えてくれる?」
あー……こりゃ警戒されてるな。まあ、転校初日の男にいきなり好きな人を当てられたら、盗撮かストーカーでも疑われて当然か。
「目的? 強いて言うなら……俺は幸せなカップルを見るのが大好きなだけだ」
「……本当?」
「本当だ」
(……ヤバい、攻めすぎたか……!? これで心を閉ざされたら計画が詰むぞ……!)
俺が背中で冷や汗をかいていた、その時だった。
「…………わかったわよ」
照橋さんは顔を真っ赤に染め、キュッと唇を噛みしめると、蚊の鳴くような、でもハッキリとした声で呟いた。
「……そうよ。私は斉木くんが好きなの。他の誰でもない……斉木くんが好きなのよ!!」
(……っぶねぇぇぇ!! なんとかセーフ!! これで警戒されたままだったら『Ψ愛作戦』が初日で破綻するところだったぞ!!)
胸を撫で下ろしていると、照橋さんが上目遣いに俺を見てきた。
「えっと……安例くんはそういう恋愛相談が得意なのよね? ……もしよければ、私のも相談に乗ってくれるかしら?」
「いいよ。……ただ、本格的な話は明日にしよう。放課後、二人っきりで話そう」
「えっ? なんで? ……やっぱり、えっちなことが目的じゃ──!?」
「いやいや! 照橋さんと二人で話してるのが他の男どもにバレたら、俺が地の果てまで追いかけ回されて殺されるからな!?」
というか、俺はそういう邪心には一切興味がない。尊いカップルが幸せそうにニヤニヤしている姿を眺められれば、それだけで白飯十杯はいけるクソデカ感情オタクなのだ。
「あー……そういうことね。ごめんなさい、疑っちゃって」
「いや、俺の方こそ突然踏み込んだこと言ってすまなかった。……とりあえず、今日はここまでにするか」
「そうね」
照橋さんと気まずくも温かい雰囲気のまま別れ、俺は一人で帰路に就いた。
あっちいなぁ……。とは言っても、前の世界に比べたらまだ涼しい方か。
前世だと夏の最高気温が40℃を超える日なんてザラにあったからな。それに比べればマシだ。
オレンジ色に染まる帰り道を、一人でゆっくりと歩く。
歩道橋の影が長く伸びる通学路。周りには誰もいない。
……ふぅ。
俺は足を止め、後ろの誰もいない空間に向かって、静かに振り返った。
「……いるんでしょ。出てきなよ──斉木楠雄くん」
オッス!! オラ安例!!
なんか作戦が死ぬほど上手くいってっぞ!!
だがまだ油断はできねえ、ここで楠雄に直接勝負を仕掛ける!!
次回!! 安例成のΨ愛作戦!!
『作戦開始!! 楠雄VS安例成!!』
ぜってぇ見てくれよな!!