憑依八神君がどうにか綾小路を退学にさせようと奮闘する話 作:bb
──東京都内の会議室。
液晶に移る高校生達のデータベースを背景にスーツ姿の男──月城は長い沈黙を止め、口を開いた。
「以上が、綾小路清隆及び二年生156名の詳細なデータです。貴方達の役目は一つ。四月の内に綾小路清隆を退学させ、ホワイトルームへ連れ戻すこと」
月城の穏やかすぎる声が、会議室の空気を冷たく満たす。
彼の視線の先に立つ二人の少年少女──八神拓也と天沢一夏は綾小路清隆のデータベースを見返す。
神を仰ぎ見るかのような純粋な崇拝心と狂気的なまでの興味を瞳に宿して綾小路の顔を見る天沢を、八神は冷ややかに一瞥した。
──これじゃ使い物にならなそうだな。
八神の胸を支配していたのは、天沢のような無邪気な高揚感ではない。
ホワイトルームで育った者にとって、四期生──綾小路清隆という存在はどれだけ血を吐くような努力を重ねても決して届かない、絶対的な絶望の象徴だ。
天沢のように彼を崇拝でもしない限り、綾小路清隆に対して劣等感と憎悪を抱き続け現実を見れず破滅するだけだろう。
しかし八神は自分が綾小路よりも遥かに格下であることを客観的に受け入れていた。
「四月中、ですか。高度育成高等学校の特殊なシステムを考慮すると、極めて猶予が短い命令ですね。一年生のデータも見せていただけませんか? 所属するクラスによって、立ち回りやすさにかなり差が出そうなので」
八神は震える指先を静かにポケットへと隠し、至って冷静なトーンで答えた。
「他の五期生と比べて非常に優れた能力を有している君でも、気後れしてしまいますか?」
月城が試すような目を向ける。八神はその視線を真っ向から受け止め、淡々と言葉を返した。
「いえ……ただ、相手はあの最高傑作です。油断や慢心は即座にこちらの破滅を意味する、それだけです」
「結構。期待していますよ、八神くん」
月城の満足げな笑みを背に、会議室を後にする。廊下を歩きながら、天沢が退屈そうに髪を弄りながら話しかけてきた。
「ねえ拓也ぁ、そんなにビビんなくて良くない? いくら最高傑作って言ったって、あっちは何年もブランクがあるんだしさ。四月中なんて、適当にハメちゃえば一発だよ」
八神は歩みを止めず、前を見据えたまま淡々とした声色で返事をする。
「一夏、君が綾小路清隆にどんな感情を抱こうと勝手だけど、僕の邪魔だけはしないでくれ」
「えー、ひどいな〜一応同じ五期生なのに、信用してくれないんだ?」
「人を信用しろと教わった事は一度もないだろ」
一瞬、天沢の目が鋭く細められたが八神はそれ以上彼女を相手にしなかった。
天沢と共闘したって綾小路清隆に勝てるビジョンが見えないのに、寝返る可能性すらある彼女と手を組むなど八神は願い下げである。
◇◇◇
四月。桜の舞い散る中、高度育成高等学校の校門をくぐった八神拓也は完璧な模範的優等生の仮面を被っていた。
穏やかな笑顔、丁寧な物腰、誰に対しても分け隔てのない親切な態度。
彼は瞬く間に周囲の信頼を勝ち取り、配属された1年Dクラスの教室に座っていた。
「初めまして、八神拓也です。これからよろしくお願いします!」
クラスメイトの緊張をほぐすように爽やかに微笑みかける。その姿はどこからどう見ても、これから始まる輝かしい高校生活に胸を躍らせる前途有望な新入生そのものだった。
だが窓の外を見つめる八神の瞳の奥には優等生の光など宿っていない。あるのは、もう後戻りできなくなった事による恐怖だけ。
与えられたものをこなせなかったホワイトルーム生がどうなるかは想像に難しくない。
しかし隣の席に生徒が腰かけた気配を感じ取り、即座に思考を切り替える。
「初めまして、僕は八神拓也です。名前を聞いてもいいですか?」
八神の隣人は声の方向に顔を向ける。
彼女の大きく澄んだ瞳はどこか人懐っこさを宿し、整った目鼻立ちと相まって親しみやすい愛らしさを感じさせた。
「初めまして、私は七瀬翼です。よろしくお願いします、八神君」
席順までは指定していなかったが、月城理事長代理が気を利かせてくれたのかもしれない。八神が入学する際、Dクラスを指定した理由の内一つが七瀬翼の存在である。
しばらく七瀬と他愛もない話をしていると、Dクラス担任の司馬がやってきてホームルーム開始と共にSシステムについての解説を始める。
過去、入学から一ヶ月は事実を隠して生徒達をふるいにかけていた伝統を崩す異例の事態だが今年はそうでもしないといけない理由があるようだ。
「それぞれ端末を手に取って、開いてみてくれ。OAAと書かれたアプリがインストールされているだろう。起動してみろ」
正式名称──Over All Abilityと呼ばれるこのアプリは全校生徒の個別成績を5項目に分けて査定・数値化するようだ。
「全校生徒の能力を数値化したものだ、試しに自分のデータを開いてみてくれ」
各々が自分達のデータを確認するが、ここはDクラス。過半数は自身の数値が低いことに嘆いている。
「私、総合Bだったんですが……八神君はどうでしたか?」
「僕も総合Bです。Dクラス内じゃ高い方だと思いますが、全生徒と比べたら中の中……良くて中の上くらいですかね?」
総合的に見れば普通でも、このアプリがあれば生徒の得意不得意が一目で分かるというわけだ。
勉強が得意な生徒や運動が得意な生徒はもちろん、社会貢献性が低ければ会わなくてもその人の人間性が伝わってくる。
「入学したてのお前達には情報量が多いかもしれんが、ここからが本題だ。お前達にはこれからOAAを利用し、二年生と合同の特別試験に挑んでもらう」
内容自体は複雑なものではない──そう前置きして司馬は説明を始める。
「やることはただの筆記試験だ。しかしその前に、一年生は二年生からパートナーを選び、ペアを組んでもらう──」
長々と説明を続けているが、要は学力の高い生徒を早い者勝ちで選び平均点を上げて勝ちに行くだけの試験だ。
しかし肝はペナルティの部分。
「もしペアの点数が500点以下の場合は、パートナーの二年生は退学。一年生は三ヶ月間プライベートポイントが支給されない」
多くの生徒──主に学力の低い生徒達が不安がるが、それは自分のせいでパートナーが退学になる可能性と三ヶ月間お小遣いなしで生活しなければならない事に対する不安。
故に多くの生徒が聞き逃している、穴がありすぎるペナルティの条件を。
「500点以下……ということは、もしパートナーの二年生が全教科100点を取っても一年生が全教科0点を取ってしまえば問答無用で退学になる……?」
七瀬はその真意に気づいたようで、深く思考しているようだった。
八神は考えるまでもなく勘づく、ここで綾小路清隆を退学にさせろという月城の意図に。
実際、このルールを利用すれば綾小路を退学にさせる事は容易い。
ルールを利用できる状況が作り出せれば、の話だが。
──意図的に低い点数を取ったと判断された生徒は学年問わず退学。
このペナルティはこちら側でどうとでも工作できる。
できればここで手を打って綾小路を退学にさせたいところだが、焦って動いて天沢に邪魔されては元も子もない。
絶好の機会だからこそ慎重になるべきだと八神は考える。むしろ、この試験は無条件で好きな二年生を退学にさせられる試験──綾小路以外がターゲットでも何ら問題ではない。
「おいてめぇら、無駄話をやめろ。俺は宝泉和臣、今日からDクラスのリーダーだ。文句ある奴は出てこい、直接黙らせてやるよ」
司馬が退室した瞬間に席を立ち、教壇にどかっと腰かけた大柄な男子──宝泉和臣はクラスを見渡し、OAAで一人ずつクラスメイトの能力を確認していく。
「揃いも揃って馬鹿の集まりだなぁ? おい、俺がお前らをAクラスに連れてってやるよ。だから俺の言うことには絶対従え、いいな?」
体格も良く、威圧的な彼の言葉に反抗する生徒は見当たらない。ここで立ち上がって口答えの一つでもしようものなら、間髪入れずに拳が顔面に飛んでくることは誰もが予測できていた。
しかしそんな状況で立ち上がり、真っ向から意見をぶつける生徒がいた。
「待ってください宝泉君、そんな脅すようなやり方は認められません」
「あぁ? お前は──七瀬か、正面切って俺に意見してきた度胸だけは褒めてやるよ。で? だから何なんだ?」
席を立った七瀬の正面まで歩き、威圧的に見下ろす宝泉を前にしても七瀬の目は真っ直ぐだった。
「私は、宝泉君がリーダーでも構いません。しかし今みたいに脅すようなやり方でクラスメイトを従わせるのは反対です」
「そうか、だけどな……これが俺のやり方だ。文句があるならかかってこいよ七瀬、それとも口だけか?」
互いに睨み合う、周りの生徒は居心地が悪くてしょうがないだろう。
しかし八神は違う、真隣で静かに二人を観察していた。
どちらかといえば見所があるのは──、
「おい、さっきから何ジロジロ見てんだよ。お前もDクラスに配属された無能なのに、学力Aだからって見物客気分か? 八神」
「いえ、ホームルームで沢山の情報が伝えられたので今後の事について考えてただけです。ちなみに、僕も宝泉君がDクラスのリーダーになるのは賛成です」
ただ──そう前置きして言葉を続ける。
「クラスメイトが宝泉君に無条件で従っては、宝泉君に頼りきってしまうクラスになります。なので僕と七瀬さんが宝泉君の参謀ポジションとしてサポートしていくというのはどうでしょう。結果を出せば、わざわざ暴力で人を従わせる必要もありませんよね?」
「はっ、随分と大きくでたな八神──だが、案としちゃ悪くねぇ。一先ずは手元においてやる、俺の期待を裏切ればどうなるか……分かってるな?」
宝泉はそう言い放ち七瀬にも目を向ける、何故私まで──そんな表情を一瞬見せた彼女は八神の期待するような視線を受け、溜息を吐いて提案を承諾した。
宝泉は八神と七瀬を連れて教壇に座り直し、今後についての話を再開させた。
「じゃあまずは二週間後に控えてる合同筆記試験についてだ」
ドン! と力強く教壇に拳を打ち付けると。
「絶対に俺の許可なくパートナーを決めるんじゃねえぞ、分かったか。今回の試験、立場上一年生がクソ有利だ。二年からしたら、馬鹿ほど焦ってパートナーを選ばなきゃ退学になるんだ──むしれるだけ、むしりとる」
宝泉はまず、二年生からカモを見つけてプライベートポイントをむしり取る作戦を取るようだ。
学力の低い生徒が多いDクラスだろうと、同じ二年Dクラスならパートナーも組みやすい。
学力の高い生徒ほど高値で売れるという宝泉の思考は間違っていない。
学力の数値も低いわけではないし、これで頭も回る男なのだろう。
「何か意見あるか?」
宝泉は横に立つ七瀬と八神に目を向けるが、二人とも首を横に振ると満足そうに笑って教壇を降りる。
「まぁ逆らう奴はいないだろうが、もし俺の命令に反して勝手にパートナーを決めようもんなら……今すぐにこの学校から出て行きたくなるような目に合わせてやるよ」
これは脅しでもなんでもない、やると言ったら本当にやる男だと社会貢献性Eの評価がそれを証明していた。
会議とは言えぬほど一方的な命令を終えた宝泉は席に戻り、八神達も次の授業の準備を始める。
「本当に良かったんですか? 八神君がリーダーに立候補してたら、私は間違いなく八神君を支持してましたよ」
「申し訳ないけど、僕はリーダーって柄じゃないですから。それに……喧嘩は得意じゃないので」
宝泉がリーダーになるのは八神にとっても都合が良い、今回の試験内容を先に知らされていても八神はDクラスに配属される事を望んだろう。
それほど、宝泉和臣は八神にとって好都合な人間なのだ。
八神は頭の中でいくつもの策とパターンを練りながら、退屈な時間を過ごしていった。
◇◇◇
放課後、帰ろうとした八神を七瀬は慌てて引き止める。
「あの、帰る前に少しいいですか八神君。話しておきたいことが──」
しかしその言葉は宝泉によって遮られる。
「おいおい七瀬、あんま出しゃばんじゃねえよ。心配しなくても、アレについては俺から話しといてやる。行くぞ八神、早くしろ」
「え、宝泉君と二人きりですか? 七瀬さん……」
助けて、とは言わず代わりに捨てられた子犬のような目で七瀬に助けを乞うが、結局は宝泉に力ずくで連れて行かれてしまう。
「絶対に乱暴な真似はしないでください、宝泉君」
「そりゃ八神次第だ」
宝泉に連れてこられた場所は、校内でも人気が全くない場所だった。
しかし天井を見ればしっかりと自分達を映すように監視カメラが光っている。
「内緒話がしたいなら、もっと人の目がないところにしたらどうですか? それともわざわざ監視カメラの前で話します?」
「あ? どこもかしこも監視カメラだらけかよ、キメェ学校だなぁおい。他言することについてペナルティがあんのかは聞いてねえが──来い、俺の部屋まで行くぞ」
入学したての一年生である宝泉達はまだ学校について知らないことのほうが遥かに多い。それは監視カメラの場所や、密談に適した場所もそう。
二人は仕方なしに密談場所を宝泉の自室で妥協し、寮まで移動した。
「で、だ。俺は昼休みに生徒会長から呼び出され、七瀬を連れて話を聞きに行った訳だが──そこで、もはや合同筆記試験なんざどうでも良くなるような話を聞かされたのさ」
ベッドにどかっと腰かけ、あぐらをかいて話を始めた。
八神は腕を組んだまま静かに壁へ背を預けて宝泉の話に耳を傾ける。
「一年から各クラス代表者が集まっててな、そこで生徒会長は言ったんだよ──二学期までに二年の綾小路清隆を退学させれば、報酬として2000万ppを付与するっつー秘密裏な特別試験を始めるってな」
八神は目を見開く、そんなことをやるとは全く聞かされていない。
となればその試験は月城の意思ではなく、南雲の独断か。
「……突拍子もない無茶苦茶な話ですね。まず綾小路清隆って誰です? この学校の有名人ですか?」
「そんなこと俺が知るかよ。だが、OAAを見る限り特に個性もねぇカスさ。このカスを退学させるだけで2000万、やらない手はないだろ? 八神」
2000万ppを南雲が所持しているのは既にこの目で確認済みだと宝泉は付け足した。
そして、この場に七瀬を連れてこなかった理由が謎だったがようやく合点がいった。
「七瀬さんは乗り気じゃなかったんですね?」
「見た感じはな。あいつはあいつで優秀だが、こういう時邪魔なのは間違いねえよ。それに比べて八神、お前は話の分かるやつだよな?」
拒否権はない──とでも言いたげな顔だ。
八神自身、これは都合の良い展開だった。
綾小路清隆を退学にさせる為の動機づけとしてこれ以上はない、他クラスの動向は知らないが宝泉は確実に二学期まで綾小路を狙い続けるだろう。
「全面的に協力しますよ宝泉君、ただし条件があります。今後僕がどんな行動をしようと、その罪は宝泉君が被ってください。ヒール役がお似合いでしょ? 君」
「……あ?」
「隠れ蓑になって欲しいんですよ、僕はあくまで強制的に従わされている少し学力が高いだけのひ弱な生徒として過ごします。宝泉君は、そんな僕に代わって周りからのヘイトを一任して欲しいんですよ」
にっこり笑って要望を告げるが、宝泉は明らかに不機嫌そうな顔で立ち上がり。
「ペラペラペラペラ、いつからそんなに偉くなったんだ八神? それは要するに、お前にとって都合の良い駒として生きろっつーことだな? そう言いてえんだなぁ? おい!」
「まさか、持ちつ持たれつで行きましょうよ。実際Dクラスと他クラスの力量差を考えれば、早い段階で僕が目をつけられて行動を制限されるよりどう足掻いたって悪目立ちする宝泉君が注目された方がいいでしょ?」
──それに、と言葉を続け。
「僕の提案をのんでくれるなら、必ず綾小路清隆を退学にさせます。そして報酬の2000万ppは宝泉君が全て受け取ってかまいません。どうです?」
八神は笑みを崩さずに交渉を続け、宝泉は距離を詰めて睨みつける。
宝泉の独裁クラスという印象を逆手にとった合理的な提案、だと頭では理解しているがそれはそれとして気に入らない。
「俺はな、期待してんだぜ八神。七瀬もそうだが、お前みたいに優秀な奴がDクラスに入れられる理由なんざ、過去に消えない傷があるくらいだからな」
刹那──硬く握られた拳が八神の鳩尾めがけて振るわれる。
「これでも譲歩してる方だって、分かってくれた?」
その拳は八神の手の平で受け止められ、想像以上に強い握力で引き抜こうにも動かせずにいた。
「んだよ、できんなら最初からそう言いやがれ。俺にとっちゃこっちの方が分かりやすいって、その頭がありゃわかんだろ?」
「ただ遊びたいだけでしょ、それに僕の提案が君にとってどれだけ得か──それが分からないほど、君は馬鹿じゃない」
手を離すが宝泉は一歩も退かず八神を睨んでいた。
「まずは今回の試験で結果を出せ、話はそれからだ」
「じゃあついでに作戦会議といこうよ。他クラスの動きは分からないけど、まぁ今の時点で綾小路先輩を退学に陥れようとしているのは僕らだけと考えるのが妥当だ」
ベッドにあぐらをかいて座り直した宝泉は先程から疑問に思っていた点を突きつける。
「お前が綾小路を退学させる事に乗り気なのはどうしてだ?」
通常なら2000万という金額が目的の大部分だろう、宝泉が実際にそうであるように。
しかし八神は2000万を得ても宝泉の総取りでいいと言った、入学したてで出会ったばかりの人間──しかも宝泉に対してその提案はいささか勝手すぎる。
持ち逃げされる可能性を考慮していないはずがない。
「クラスの為ですよ。どちらにせよ僕が2000万を手に入れたところで持て余すだけだから。それに……そんな大金を賭けられた生徒が普通であるはずがない。綾小路先輩を退学させれば確実にしっぺ返しをくらう。その時ターゲットになるのは、報酬の2000万を得ている生徒だ」
八神の提案である、ヘイトは全て宝泉が背負って欲しいという案はここにも適用される。それに綾小路清隆を退学にさせたとして、2000万を手に入れた生徒が同じように特別試験の対象になる可能性も捨てきれない。
「なるほどな、今日一日で相当お前の印象が変わったぜ。気に入った、合同筆記試験は好きに動いていい。だが必ず結果を出せ、分かったな」
「ならやってもらいたいことがあります。一先ず、今回の試験で綾小路先輩を狙う必要はない」
「あ? どうしてだ」
当然、疑問に思う。今回の試験、綾小路とパートナーを組んで0点さえ取れば2000万。そんな破格の条件、しかも二学期までにどれだけ二年生と交流できる試験があるかは分からない。
もしかすれば、今回が最初で最後のチャンスかもしれない。
そんな宝泉の思考は八神が次に放った言葉によって霧散し、代わりに獰猛な笑みを浮かべた。
──今回の試験で、綾小路先輩以外の二年生を可能な限り脱落させる。
八神君が何を目的に綾小路を退学にさせたいかは後に書いていきます。