The Reaching Shore――届かせるもの――   作:ほいみん

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Fate/stay night二次創作長編『The Reaching Shore――届かせるもの――』第13話です。

※独自解釈/女性体オリジナルサーヴァント/ギルガメッシュ×アトラス/本文に文章生成AI補助あり
※掲載イラストは作者による手描きです。

詳しい注意事項・AI使用表記・制作FAQはこちら:
【作品案内URL】
https://docs.google.com/document/d/1J5hZ3qOATZGBYELXd_x-g7suIvv0zHGGJ4TijIUNzlI/edit?usp=sharing

アトラス設定資料はこちら:
【設定資料URL】
https://docs.google.com/document/d/1Gdk-aR_oVREDxgTlwfcmQzWDoM_qF-cY2UsIi8TS6_0/edit?usp=drive_link



最終部 十分だ
第24話 通してくれ


 紙を握る指に、力が入っていた。

 

 三行の書き置き。

 

 その最後だけが、頭の中に残っている。

 

 まだイリヤだから。

 

 聖杯になるものではなく。

 

 誰かに決められる器でもなく。

 

 イリヤ自身が、自分の足で出ていった。

 

「柳洞寺よ」

 

 遠坂が言った。

 

 迷いはなかった。

 

「言峰はセイバーに、イリヤを柳洞寺へ連れていけと命じた。器を起動する場所も用意されてる。イリヤはその話を聞いてた」

 

「ああ」

 

 行き先が書かれていなくても、ほかには考えられない。

 

 自分のことを自分抜きで決めさせないために。

 

 イリヤは、決めようとしている連中のところへ向かった。

 

「現在位置は特定できぬ」

 

 アトラスが言った。

 

 弁明はなかった。

 

 士郎も責めなかった。

 

「追う」

 

 紙を折る。

 

 懐へ入れる。

 

 上着を掴み、アゾット剣を腰へ差した。

 

 鞘に収まったままの細い剣が、身体へ重さを伝える。

 

 使うかどうかは決めていない。

 

 それでも、持たなければ選べない。

 

 遠坂は宝石を確認する。

 

 十年ものは四つ。

 

 それとは別の通常宝石を、すぐ使える位置へ移していく。

 

 セイバーは玄関へ向かう前に、一度だけ左手を見た。

 

「言峰から、何か来てる?」

 

「いいえ。今は何も」

 

 今は。

 

 その言葉だけが残った。

 

 令呪はあと一画。

 

 遠坂は、そう考えている。

 

 けれど、その一画がいつ使われるかは分からない。

 

「行くわよ」

 

 四人が衛宮邸を出た。

 

     ◇

 

 夜道を走る。

 

 アトラスの紺碧の光が、足元を薄く覆っている。

 

 踏み込んだ地面が崩れない。

 

 曲がり角で足を取られない。

 

 塀の影から飛び出すものも、風に流される枝も、士郎たちの進路へ届く前に逸れていく。

 

 夜の道が、進む者だけを通すように整えられていた。

 

「正面から行くわよ」

 

 遠坂が言う。

 

 誰も異を唱えない。

 

 柳洞寺へ続く参道を目指す。

 

 走りながら、士郎は左手を一度だけ見た。

 

 残った令呪。

 

 最後の一画。

 

 教会では使わなかった。

 

 呼べば、アトラスは来た。

 

 それでも呼ばなかった。

 

 イリヤが、自分で選んだ条件を崩したくなかったから。

 

 今も、使い道を先に決めるべきではない。

 

 呼ぶための令呪じゃない。

 

 何をさせるのか。

 

 誰を守り。

 

 何を拒むのか。

 

 それを決めなければ、また同じになる。

 

 士郎は左手から目を離した。

 

 まだ命令は作らない。

 

 イリヤへ辿り着くまで、何が道を塞ぐのか分からない。

 

     ◇

 

 柳洞寺の池。

 

 水面の近くに、三人が立っていた。

 

 言峰綺礼。

 

 イリヤスフィール。

 

 間桐慎二。

 

 慎二の腕には黒い拘束が巻きつき、池の縁から離れられる範囲を狭めていた。

 

 完全に動けないわけではない。

 

 足を引けば下がることはできる。

 

 だが、逃げるには足りない。

 

 言峰は二人を同時に見られる位置にいた。

 

「自分から来るとは思わなかったな」

 

 イリヤの白い髪が、夜風に揺れる。

 

「わたしのことを、勝手に決めさせないためよ」

 

「殊勝なことだ」

 

「褒められに来たんじゃないわ」

 

 慎二が鼻で笑った。

 

「何だよ。結局、来るんじゃないか」

 

 拘束された腕を隠そうともせず、胸を張る。

 

「おまえが使えないっていうなら、次は僕だ。ギルガメッシュだって、僕を見捨てたわけじゃない。最初から僕には価値があったんだよ」

 

 言峰が慎二を見る。

 

「英雄王は、その少年を代わりの器にするつもりだ」

 

「代わり?」

 

 慎二の顔から笑みが消える。

 

「代わりって何だよ。僕は最初から選ばれてるんだ。そいつの代用品じゃない」

 

「完全な小聖杯ではない」

 

 言峰は訂正しなかった。

 

「だが、泥を現世へ流すための代替器にはなる」

 

「泥?」

 

「英雄王は、泥を現世へ流すつもりだ。耐えられぬ者を捨て、残った者を治めるためにな」

 

 慎二の口元が引きつる。

 

 それでも、すぐに笑い直した。

 

「つまり、僕が聖杯を使うんだろ? 僕が残す奴を選ぶ。そういうことじゃないか」

 

「おまえが使うのではない。おまえが使われる」

 

 笑みが止まった。

 

「……何?」

 

「英霊の魂を受け入れ、器として形を変えられる。人間の姿を保てる保証はない」

 

 言峰の声は変わらない。

 

「完成すれば、泥を通す入口になる」

 

「待てよ」

 

 慎二が一歩下がる。

 

 腕の拘束が張り、身体が止まった。

 

「そんな話、聞いてないぞ」

 

「説明を求めたことがあったか?」

 

「ふざけるな!」

 

 慎二の声が池へ響く。

 

 イリヤは言峰を見ていた。

 

「あなたも同じことをするんでしょう」

 

「私は、英雄王の統治には興味がない」

 

「じゃあ、何がしたいの」

 

「この戦争が最後に産むものを、見届けたい」

 

「そのために、わたしたちを使うのね」

 

「器は必要だ」

 

 言峰は二人を順に見た。

 

「イリヤスフィールが完成した器として役割を果たす。あるいは、それを拒むなら、そこの少年を使う」

 

 慎二が言峰を見る。

 

 イリヤも動かない。

 

「選ぶがいい」

 

 どちらが器になるのか。

 

 言峰は、イリヤへ選択を渡したように見えた。

 

 白い少女は、慎二を見なかった。

 

 言峰だけを見る。

 

「私は聖杯じゃない」

 

 言峰は黙った。

 

 池の水面が、風に揺れる。

 

「ならば、代わりを使うだけだ」

 

 慎二の肩が跳ねた。

 

 自分へ向けられた言葉だと理解するまで、わずかな間があった。

 

「嫌だ」

 

 声は小さかった。

 

 さっきまでの笑いも、虚勢もなかった。

 

「聖杯になんかなりたくない」

 

 拘束へ手をかける。

 

 外れない。

 

「助けろ」

 

 言峰へ向けたのか。

 

 イリヤへ向けたのか。

 

 ここにいない英雄王へ向けたのか。

 

 慎二自身にも、もう分けられない声だった。

 

 イリヤが、初めて慎二を見る。

 

 慎二もその視線に気づいた。

 

 怯えた顔が、すぐに歪む。

 

「何だよ」

 

 イリヤは何も答えない。

 

 城でバーサーカーを奪われたことも。

 

 慎二が何をしてきたかも。

 

 消えたわけではない。

 

 ただ、拒絶した言葉だけを見ている。

 

「そいつだって聖杯じゃない」

 

 言峰の視線が、二人の間を移った。

 

「二人とも、器であることを拒むか」

 

 否定はしない。

 

 拘束も解かない。

 

 ただ、二人の答えを見ていた。

 

     ◇

 

 間桐邸の門が開く。

 

 長い髪の女が、夜の道へ出た。

 

 ライダーは屋敷を一度だけ振り返る。

 

 窓に明かりはない。

 

 そのまま踵を返し、柳洞寺へ向かう道へ走った。

 

 屋敷へ近づくものを、自分の方へ引き寄せるように。

 

 桜のいる方角から遠ざけるように。

 

 正面参道へ続く山道を選ぶ。

 

 斜面を駆け上がる。

 

 木々の間を抜けた先に、金色の光があった。

 

 黒い上着。

 

 金の髪。

 

 山門へ向かっていたギルガメッシュが足を止める。

 

 ライダーは戻らなかった。

 

 山道の中央へ出る。

 

 間桐邸へ続く道を、背後へ置く。

 

 金色の波紋が開いた。

 

 警告はない。

 

 剣が放たれる。

 

 ライダーは斜面を蹴った。

 

 刃が直前までいた場所を貫き、樹木を折る。

 

 崩れた幹へ足をかけ、さらに上へ跳ぶ。

 

 鎖が夜気を裂いた。

 

 ギルガメッシュの腕へ向かう。

 

 別の波紋から現れた刃が鎖を弾く。

 

 金属音が山へ響いた。

 

 ギルガメッシュが笑う。

 

 背後に、さらに多くの黄金が開く。

 

 ライダーは着地と同時に踏み込んだ。

 

 逃げない。

 

 戻らない。

 

 金の光が一斉に降る。

 

 一つを避ける。

 

 二つ目を鎖で逸らす。

 

 三つ目が脇腹を貫いた。

 

 身体が揺れる。

 

 それでも前へ進もうとした。

 

 四つ目が胸を貫く。

 

 長い髪が、血とともに揺れた。

 

 ライダーの足が止まる。

 

 膝が山道へ落ちる。

 

 霊基が、端から光へ変わっていく。

 

 声はなかった。

 

 名前も呼ばなかった。

 

 最後まで、間桐邸へ背を向けたまま。

 

 身体が消える。

 

 ギルガメッシュは消滅を見届け、山門へ向かって歩き出した。

 

 黒い上着の裾が、夜風に揺れる。

 

 その輪郭へ、黄金の光が走った。

 

 肩。

 

 胸。

 

 腕。

 

 脚。

 

 魔力が幾重にも重なり、黒を覆っていく。

 

 夜道を歩いていた男の姿が消える。

 

 代わって現れたのは、黄金の甲冑をまとう王だった。

 

 赤い外套が背後へ落ちる。

 

 歩みは止まらない。

 

 英雄王は、そのまま山門へ向かった。

 

     ◇

 

 間桐邸。

 

 廊下を歩いていた桜の手から、盆が傾いた。

 

 胸の奥へ、短い衝撃が走る。

 

 繋がっていたものが切れた。

 

 桜は足を止めた。

 

「ライダー……?」

 

     ◇

 

 池の水面が揺れた。

 

 風ではない。

 

 何もない空間から、見えない何かが落ちてくる。

 

 イリヤの身体へ。

 

 言峰が顔を上げた。

 

 白い指先から色が抜けていく。

 

 夜気よりも冷たく、白くなる。

 

 イリヤが指を動かす。

 

 反応が遅れる。

 

 自分の手を見下ろした。

 

 呼吸が浅くなる。

 

 胸の動きが小さくなり、その間隔が乱れた。

 

 膝が折れる。

 

 片手を池の縁へつき、倒れることだけは避けた。

 

 慎二が反射的に腕を動かす。

 

 だが、触れる前に身を引いた。

 

 池の上。

 

 夜空が歪む。

 

 水面に映った月だけが、円形に引き延ばされた。

 

 空中の一点へ影が集まる。

 

 何もなかった場所に、奥行きが生まれる。

 

 黒い輪郭が夜空へ浮かぶ。

 

 まだ小さい。

 

 向こう側も見えない。

 

 ただ、孔だけが開き始めている。

 

「始まったか」

 

 言峰が言った。

 

 イリヤは池の縁へ手をついたまま、顔を上げる。

 

 唇が動く。

 

「……まだ、わたしは」

 

 声は続かなかった。

 

 けれど、意識は残っていた。

 

     ◇

 

 正面参道へ入った瞬間、空気が変わった。

 

 山門の先から、重い魔力が流れてくる。

 

 何が起きているのかは分からない。

 

 イリヤがどうなっているのかも。

 

 誰がいるのかも。

 

 ただ。

 

 内側で何かが始まっている。

 

「マスター。内部の状態が変化している」

 

「分かるのか」

 

「詳細は不明だ。だが、先ほどまでとは異なる」

 

「急ぐぞ」

 

 石段を上る。

 

 セイバーが前。

 

 士郎の近くにアトラス。

 

 遠坂が斜め後ろ。

 

 四人で一つのまとまりを作り、山門へ向かう。

 

 上から、黄金の光が降った。

 

 セイバーが足を止める。

 

 士郎たちも続いて止まった。

 

 石段の上。

 

 山門を背にして、ギルガメッシュが立っていた。

 

 夜の中で、黄金の甲冑だけが燃えるように輝いている。

 

 赤い衣。

 

 金の髪。

 

 その背後に、黄金の波紋が浮かんでいた。

 

「器を追って雑種どもが揃い踏みか。よい。ならばここで篩にかけてやろう」

 

 山門は、その背後にある。

 

 イリヤは、その先だ。

 

「そこをどけ。イリヤのところへ行く」

 

 ギルガメッシュの赤い目が、士郎へ向いた。

 

 笑みが消える。

 

 黄金の波紋から一本の剣が射出された。

 

 狙いは、士郎。

 

 セイバーが前へ出るより先に、紺碧の壁が立つ。

 

 剣が光へ衝突した。

 

 石段が砕ける。

 

 宝具の軌道が沈み、脇の石垣へ突き刺さった。

 

 アトラスが士郎の前へ出る。

 

 小さな背中が、三人と黄金の間に立つ。

 

 その光景が。

 

 前にも見たものへ重なった。

 

 アーチャーが城へ残った。

 

 自分たちを先へ行かせて。

 

 ギルガメッシュの前に一人で立った。

 

「待て。そんなの、アーチャーの時と同じだ」

 

「同じではない」

 

 アトラスは振り返らない。

 

「あの時の汝は、進むことを理解していなかった。今の汝は、行く先を知っている」

 

「だからって、アトラスだけ残して行けるか。四人で抜ける。俺も戦う」

 

 黄金の波紋が増える。

 

 一本ではない。

 

 アトラスだけでもない。

 

 セイバー。

 

 遠坂。

 

 士郎。

 

 四人すべてへ刃先が向けられる。

 

 紺碧の光が広がった。

 

 三人を覆う。

 

 黄金へ壁を向ける。

 

 同時に山門へ伸ばそうとした道が、閉じかける。

 

 拒絶を強くすれば、進路まで塞がる。

 

 道を開けば、士郎たちを覆う光が薄くなる。

 

(おれ)がここに残ると決めた。汝は、己の決定を奪う気か」

 

 言葉が、士郎を止めた。

 

 イリヤは、自分のことを自分抜きで決めさせないと言った。

 

 アトラスも同じだ。

 

 士郎のサーヴァントだから残るのではない。

 

 命令されたから門になるのでもない。

 

 自分で。

 

 ここに残ると決めた。

 

 士郎が守らなければならない少女ではない。

 

 自分を守る盾でもない。

 

 自分で選び、自分で裁定する王が立っている。

 

 ギルガメッシュの宝具が、さらに光を強める。

 

「俺を守らなければ、もっと強く拒否できたのか」

 

「可能だ」

 

 あの時の答え。

 

 アトラスは、士郎を守っている限り全力を使えない。

 

 教会では、イリヤの側から呼ばなかった。

 

 今度は、士郎たちがアトラスの防護の内側から出る。

 

 先へ通る。

 

 それで、アトラスは一人になる。

 

 命令するのは、残ることではない。

 

 残るという決定を、成立させる条件だ。

 

 誰を通す。

 

 どこまで通す。

 

 誰を通さない。

 

 どこを境界にする。

 

 全部、決まっている。

 

 士郎は左手を上げた。

 

 最後の令呪が赤く光る。

 

「アトラス。

俺とセイバーと遠坂を、イリヤのところまで通してくれ。

ギルガメッシュは、この山門から先へ通すな」

 

 赤い光が左手の甲から走った。

 

 アトラスへ届く。

 

 三人を覆っていた紺碧の光が震える。

 

 役割が変わる。

 

 壁だったものが、進むための道へ変わっていく。

 

 アトラスが初めて振り返った。

 

「衛宮士郎」

 

 一瞬だけ、目が合った。

 

 士郎は答えなかった。

 

 前を見る。

 

 山門の向こう。

 

 イリヤのいる方向へ身体を向ける。

 

 三人の足元から、紺碧の光が石段を上る。

 

 黄金と三人を隔てていた面が、一本の道になる。

 

 道は、ギルガメッシュの脇を抜けて山門へ続く。

 

 ギルガメッシュの周囲に浮かんでいた宝具が動いた。

 

 士郎。

 

 遠坂。

 

 セイバー。

 

 四人へ向けられていた刃先が、一つずつアトラスへ揃っていく。

 

 赤い目が細められた。

 

 口元に、満足そうな笑みが戻る。

 

「行け、セイバー。貴様は後だ」

 

 セイバーは止まらない。

 

 紺碧の道を駆け上がる。

 

 士郎が続く。

 

 遠坂が最後に踏み込み、一度だけ後ろを見る。

 

 ギルガメッシュは攻撃しない。

 

 三人を狙っていた刃は、すべてアトラスへ向けられている。

 

 黄金の王は、目の前に残った一騎だけを見ていた。

 

 士郎たちは、その脇を通る。

 

 山門へ届く。

 

 セイバーが越える。

 

 士郎が越える。

 

 遠坂が越える。

 

 アトラスは越えない。

 

 ギルガメッシュも、山門から先へは進まない。

 

 境内へ入る。

 

 士郎は一度だけ振り返った。

 

 山門を背にしたギルガメッシュ。

 

 石段の下に立つアトラス。

 

 長い言葉はない。

 

 別れの言葉も。

 

 遺言もない。

 

 黄金の宝具が、アトラス一人へ揃う。

 

 ギルガメッシュは、もう後ろへ進む三人を見ていなかった。

 

 紺碧の光が解ける。

 

 士郎たちを覆っていた光。

 

 道を作っていた光。

 

 黄金を拒んでいた壁。

 

 消えたのではない。

 

 すべてが、石段の下に立つ一人の王へ戻っていく。

 

 アトラスの身体へ。

 

 足元の石段へ。

 

 山門を境界とする領域へ。

 

 城が閉じ始める。

 

不可侵なりし紺碧の城塞(オレイカルコス・アダマンティノス)

 

 門が立つ。

 

 壁が重なる。

 

 道が閉じる。

 

 士郎たちを囲っていた城は、もうそこにはない。

 

 一人の王だけを中心に、王宮のすべてが閉じていく。

 

 完全閉城。

 




お読みいただきありがとうございます。
しばらくは毎日7時頃に更新予定です。

後日譚の
『The Reversed Star――逆位置の星――』 https://syosetu.org/novel/417875/
も連載中です、よろしくお願いします。
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