Q. やっぱりカメラの死角を意図的に作るの学校側としても問題多すぎでは?
A.その辺は4話でも突っ込んでいる通り。気付いても対処しないんだから王道路線走るよりも悪意に振り切った方が有利なのは当然の帰結だし、マジで大問題だと思う。
Q. ストーカーがナレ死した結果、綾小路と佐倉の繋がりが無くなって退学しやすくなってしまったのでは…?
A.なってる。何なら成長イベントもなくなってるから結構マズい。現時点では。
Q. 須藤の事件発生してないのに佐倉が家電店にいるのなんで?
A.お小遣いが入ったのでデジカメ用のメモリーカードを買いに行った。カメラ自体を買いに行く訳じゃないからあの店員と関わることもないだろうと楽観視した結果。
こう言い換えると身も蓋もないが半ばご都合主義。でもPC持ってないからデータ保存がメモリー依存になるし、辻褄は合ってる筈。
今回は一之瀬視点です。
次回からの無人島試験に関してはここまでの連日投稿が途切れて日が空きますので、その辺りをご承知下さい。
高育の終業式は、一般よりも早い方だと思う。
梅雨が明けて夏の日照りが肌を差す。期末テストも無事乗り越え、私達は1学期の間に誰一人欠けることなく夏休みを迎えた。
普段ならば費やせない程の時間を与えられ、開放的になる季節という事もあり生徒達は自由を満喫する。
ケヤキモールをじっくりと堪能する人。
敷地内を許される範囲で散策する人。
部活動に励む人。
生真面目に勉強をする人。
生徒それぞれの過ごし方がある。
そんな中で私、一之瀬 帆波は現在───
「ハッピーバースデー! 帆波ちゃん!」
16歳となる誕生日を、クラスメイトと共にしていた。
「ありがとう、みんな! ……本当に、ありがとうね!」
場所は寮の自室。
誕生日を祝うメッセージは、既にクラスメイト全員から貰っている。日付変更と同時に送ってくる子や、早寝早起きしただろうと推測出来る朝の時間帯に送ってくる子の差はあったが、個人でもグループでも大層盛り上がった様子だった。
本人の私がちょっと気後れするくらいには……。
現在時刻はお昼のちょっと前。
Bクラスの女子が数人、纏って部屋に訪れた。本当は全員で来るつもりだったらしいが、部屋の広さを考えて流石に自重したとのこと。
目まぐるしく、パーティーグッズの飾り付けや食べ物の並びを終え、こうして祝いを楽しんでいる。
でも、あの……この『本日の主役たすき』と『16歳サングラス』は掛けてなきゃダメ? ……そっかぁ。
「じゃあ私達からのプレゼントは───じゃん! ハーバリウム!」
「わっ、凄い爽やかな色! ハーバリウムって花のイメージがあったんだけど、海イメージのモノもあるんだね?」
「時期合わせであったんだよねぇ。消耗品の類も考えたんだけど、これならスペースも取らないし良いかなと思って」
「うん、嬉しいよ! 何処に飾ろうかなぁ……」
Bクラスでは、既に何人か誕生日を迎えている子もいる。この場にいるこずえちゃんや、今は部活に出ているだろう紗代ちゃん。
それぞれ日常生活に支障が出ない程度のポイントを手元に残し、それ以外をクラス貯金に回すようになって、誰かの誕生日プレゼントは数人が出し合って渡すのが鉄則になっていた。
別にプレゼントを義務化している訳ではないし、さほど高いモノで無ければクラス貯金から抽出するのは構わないのだが。現時点で誕生日を迎えている生徒は例外なくプレゼントを貰っているらしい。もちろん全員からではないけれど。
星乃宮先生曰く、クラス内の全体の仲の良さというのは、どうやらこの学校の中でも随一とのこと。素直に嬉しい評価だ。
「……」
こんな贅沢、私がしてて良いのかな。
ハーバリウムを棚に置きながら、ふと考える。
今の生活は、入学前よりも遥かに良い暮らしだ。でもこれを享受する資格が、果たして私にあるのだろうか。
決して裕福とは言えない家に母と妹を置いて、犯罪者である私だけが。
……いや、だからこそ。
この学校で頑張って、Aクラスの特権を得て。二人に贅沢をさせるのがせめてもの罪滅ぼし。
友人の善意や好意を否定してまで、資格だの考える必要はないだろう。
罪の告白はすると誓った。
ならせめて、それまでの間の幸福は……許して欲しい。
「───はぁ〜、美味しかった」
用意された食事を終え、まったりとした時間が訪れる。
私が生徒会活動をしている間に起こったクラス内のことや、把握してなかったケヤキモールの施設などの雑談。
そんな刻を過ごす中、私は何か物足りなさを感じていた。
……いやいや、何が物足りないんだ。
誕生日を友達が祝ってくれる。それで不満などある筈がない。
ついさっき贅沢をしていい資格があるのかどうか考えたばかりだというのに、何を考えているの私は。
「ところで帆波ちゃん、何か物足りないと思わない?」
「……えっ」
麻子ちゃんの指摘に、内心を読まれたと思い心臓が跳ねる。
だがニヤけた表情を晒している様子を見るに、そういう訳ではなさそうだ。
「多分そろそろ来る頃だと思うんだけど───」
麻子ちゃんの視線が端末に向けられる。
それと同時に、部屋のチャイムが鳴った。
「あ、来た来た」
尋ね人には察しがついている様で、相手を確認する事もなく麻子ちゃんが迎えに出る。
「遅いぞー、空崎くんっ」
「───これでも急いだ方なんだがな」
入ってきたのは夜白くんだった。
空崎 夜白くん───この学校で初めての友人であり、私にとってはBクラス内でも特別な立ち位置にいる生徒。
親友と呼ぶべきか、悪友と呼ぶべきか。僅か3ヶ月程度の付き合いだが、彼が与える自身への影響が大きいという自覚がある。
「あ、あれ? 夜白くんって今日はいつもの予定があった筈じゃ……」
「長めの休憩が入ったから、そのタイミングで一度寮に戻ってきたんだよ」
何の為に、という問いは彼の持つ箱に消え去る。
デザインされた、見覚えのある形の箱。
恐らくはケーキ箱だろうと察する事の出来る形状を見て、私は先ほどまで感じていた物足りなさの正体を認識する。
そういえばケーキに類する甘味系の物は食べていなかった。
「女子の集まりに踏み込むのも申し訳ないが、渡したら直ぐに退散するから勘弁してくれな」
「えー、空崎くんもパーティーに参加しようよ?」
「そもそも予定があるから無理」
こずえちゃんの誘いを彼はにべもなく断る。
……こういう状況下に置かれた男の子は照れながら葛藤を見せるものだと恋愛ゲームで学んだけれど、やはりフィクションなのだろうか?
彼は決して無感情とは言えない表情ではあるが、いつも通りの飄々とした態度を崩さない。
「ふふふ、楽しみにしててね帆波ちゃん。凄いものが見れるよ〜」
「え?」
「何でマコちが自慢げなんだよ……。んじゃ、はい。ご賞味あれ」
「え、ちょっ、まだ動画回してない───ッ!」
麻子ちゃんの慌てた様子を背景に、私の視線はその箱の中身へと誘われる。
現れたのは、ブルーカラーにデコレーションされたケーキだった。
「わぁ……綺麗……」
青は食欲を減衰させる色と良く言われるが、鮮やかに飾られたケーキに対してその傾向は感じない。
どちらかと言うと、勿体無くて食べたく無いという感想が出てくる見た目だ。
「これ、何処のお店の……?」
「オーダー品なら俺が持ってくる必要ないだろ? 俺の手作りだよ」
「へぇ、手作り───手作りっ!? 数多い特技って普段から口にしてるけど流石に得意なことが多すぎないッ!?」
これは絶対にパティシエを目指せるレベルだ。
凄い才能を持ってるとは思ってたけど、流石に多彩が過ぎる。
へぇ……これ、夜白くんの手作りかぁ。
うーん、どうにか保管出来ないかな……。
「……わぁ、今日一幸せそうな顔だ」
「それは何より。作った甲斐があるってもんだ」
「えっ、え? 私いま変な顔してる?」
「大丈夫、可愛いよ!」
いや可愛いよじゃなくて───って動画回ってる!?
「じゃあ俺はお暇するな。後はごゆっくり〜」
休憩の合間に来たからか、夜白くんは颯爽と部屋を出ていく。
…………。なんか、これで終わらせるのも寂しい気がする。
「えっと、ごめん。直ぐ戻ってくるねっ」
予定がある中で引き止めるのも悪いが、まだちゃんとお礼を伝えてなかったのを思い出す。
お気になさらず、と。手を振っている皆に甘え、駆け足で扉を開けた。
「や、夜白くんっ」
「ん?」
「その、ありがとうね。忙しい中で来てくれて」
「ああ、どのみち今日か明日かで渡すつもりだったからな。マコちが誘ってくれたのは丁度良かったよ」
扉を閉めて、玄関前の通路で向かい合う。
「そういや直接言葉では伝えてなかったな。誕生日おめでとう、帆波」
「───うんっ」
あ、これだ。私はこの言葉が欲しかったのか。
心に潜んでいた妙な寂しさが一気に消え、幸福感で胸が満たされる。
贅沢は程々に。でも彼になら甘えても良いだろうという安心感が、素直に喜ばしく思わせるのだろう。
「明日は多分男子代表で───日和らなければ 颯辺りがプレゼントを渡しに来るはずだ。楽しみにしてやってくれ」
「……それは、夜白くんも協力したの?」
「え? さっきのケーキが俺からのプレゼントのつもりだったが……」
「あっ、そ、そうだよねッ!?」
なんかケーキと誕生日プレゼントは別っていう認識が働いてしまっていた。
しかしあれだけ豪勢なケーキ。時間もそれなりに掛けているだろうし、プレゼントの意味合いである事は疑う余地もない。
夜白くんはキョトンとした顔で驚きを見せていたが、次第にニヤけた表情へと変化していく。
「───ほう……? なるほど、何か欲しい物でもあったのか。よし良いぞ。最近は出費が重なったが、休みに入って稼ぐ量も増えたからな。いや〜おねだり上手になってくれて嬉しい限りだぜ、帆波。ぜひ好きな物を言ってくれッ」
あ、もう渡す気満々だ。
言葉を挟む余地もなく捲し立てる様子に、「断ると逆に失礼に当たる」と思ってしまう。
ど、どうしよう。何か特別欲しい物があった訳じゃないんだけど……。ケーキを頂いたし、また別で形として残る様なモノとか……。
「───その、偶に借りてる夜白くんのポータブルゲーム機……とか、貰えないかなぁって」
「俺の? 新品じゃなくてか?」
「うん。夜白くんのお下がりで……ダメかな?」
「構わないが、寧ろ良いのか? 手入れはしっかりしてるけど男のお下がりだぞ?」
大丈夫というか、それが良いというか。
もちろんゲーム機として遊びたい欲求もあるが、それ以上にお守りとして持っておきたい気持ちもあるのだ。彼の近くは非常に心強く、彼自身が触れてきたゲーム機を持っていればそれを感じる事が出来ると思うから。
「……オーケー。じゃあ不必要なセーブデータとかを洗い終わったら渡しに行くわ」
「えっ?」
「セーブデータ数が限られてるゲームもあるしな。その類は整理しとく」
ここ最近、ゲームに触れる様になってから、それなりに知識を得る事が出来たと思う。
一瞬だけ彼の言葉の意味が分からなかったが、理解が追いついた。
そうだ、彼のゲーム機を貰うという事は、当然そこにダウンロードされたゲームも全て───……っ!
「あ、あのッ、ごめん夜白くん! そこまで要求するつもりは私無くてッ!?」
「うん? あー、ゲーム目的じゃ無かったのか。まあ気にしなくて良いぞ? 本垢だと流石に困ったが、こっちで購入した物は全部サブ垢だし。ダウンロードしてるゲームは全部クリア済みなんで、寧ろ新規で遊んでくれた方が嬉しいからな」
い、卑しい女とか思われてない?
うぅ、なんか今日は完全に気が抜けてる……。
「……っと、そろそろ時間ヤバそうだな。サエちゃん先生から催促されそう。じゃあ学校に戻るから、是非とも満喫してくれ。『本日の主役』さん?」
「───……あ」
そういえばサングラスは外したけど、たすきは外して無かった?
え、このままで通路に出てたの!?
今日の私、本当にダメだ!!
♕ Tips. ✍︎
空崎の特技の多さには理由があり、『将来の夢』が関係している。費やしている時間はゲームより遥かに少ないが、手先の器用さと才能を活かして知識のインプットと身近で出来る実践経験を熟し、特技と呼べるレベルに仕上げている。
『速読』に関しては先天的に扱えたが、『変声』や『細工菓子』はそれなりに時間を掛けて会得した。
他にも『裁縫』や『魚捌き』、『ひよこ鑑定』といった特技などもある。もしかしたらどこかでステフ因子が混ざったかもしれない。