Q. 原作でひ弱を自称する空の身体能力ってフィジカルエリートオタクな作者の基準が狂ってるだけで一般的な基準だと中の中か中の上じゃない?
A.やっぱゲーム三昧のヒキニートが推定30〜40キロの人を背負って腕立て30×5とスクワット30×5やってんのおかしいよね……文脈的に多分腹筋とかプランクもやってるだろうし。
まあ健康的側面で言えば普段からやってる分こっちのがマシって事で……。
Q.無人島試験の倫理観ってやばくね?
A.高度育成高等学校(笑)に倫理観とか期待する方が無駄だと思われる。
Q. 『 』因子由来の演算能力、機転思考力を持ってる奴に「ルールの穴をみつけれるかな?」と言わんばかりのよう実特別試験は相性良すぎるのでは?
A.筋さえ通せば基本的にはルールに従う。でも今回は学校方針とはいえ騙し討ちしたので穴を突く。これでも自重した。体育祭とペーパーシャッフルは真っ当にやる予定。
「ね、ねぇ夜白くん。本当にこの格好になる必要はあるの?」
「ある。美少女のこの姿を目の当たりにして視線を奪われない男はいないし、何より俺のやる気が上がる」
「うぅ……皆も一緒なら分かるけど、何で私だけぇ……」
「あのワンタッチテントだと一人しか着替えられないんだから仕方ないだろ。全員待ってたら他のクラスの奴らが探索始めちまう。ほら行くぞ」
「A・B・C・D諸君! ちゅうもーくッ!!」
───堂々たる、覇気を含んだ声。
拡声器など使う必要もなく、キーが低いながらも透き通る声音で発せられる大音量の言葉に、全てのクラスの生徒の視線が集まる。
思わず意識してしまっただけで直ぐに自分たちのクラスのやり取りに戻ろう───と、そんな考えを過らせた生徒が多数。
だが声の源の存在。その隣にいる、水着姿の少女───恥ずかしがりながら立つ一之瀬 帆波の姿を見て、男子は否応にも視線を奪われた。
男子とは視線の意味が違うものの、視線を奪われたのは女子も同じ。その場の注目を集める一之瀬は、体温が高まっていくのを感じている。
やはり恥ずかしがる美少女とは素晴らしく絵になる。単純に水着姿というだけでもさることながら、そこに感情表現が加わることで芸術としての価値が高まる。それが恥ずかしいという姿となればエロティシズムという刺激が加えられ、男子の欲望も女子の共感性も纏めて独り占めする事ができ、それによって重ねられていく羞恥の気配が────
-閑話休題-
「さて諸君。バカンスという名目で連れてこられた場所で無人島生活を強要され、ご機嫌いかがかな? 今回の試験を伝えられて各々のやり方について考えている頃だろう。もしかしたら方針を決めた所もあるかもしれない。だが良ければ俺の言葉に耳を貸してもらえるかねッ?」
空崎の言葉の後に漂うは、困惑の気配。
だが否定的な意見は出ておらず、取り敢えずは話を聴こうという姿勢が見られた。
「結構。では俺の意見を言おう。あの性根の腐ったクソ共───失礼。ヘドロで煮込んだドス黒い脳を頭に宿す邪智暴虐の大人───え、これもダメ? 反面教師を地でいく───よしこれで。反面教師を地でいくあの大人たちは、追加ルールの存在を明かした事でこう考えている訳だ───コイツらはポイントを必死に残そうとクラスメイトと衝突しつつ意見の擦り合わせがおぼつかない状態で1週間を過ごす羽目になる。子供ってやっぱりアホだな。感情のコントロールをすれば妥協点を見つけられるだろうに(笑)……と!」
空崎の声は非常に大きい。
初期地点から動いていない為、その発言は当然ながら教師陣にも届いている。
謂れのない代弁を耳にした教師陣は揃って焦りを含んだ表情で首を振っていたが、視線は空崎と一之瀬に集められており視界に留まることはない。
また、騙し討ちで今回の試験を伝えてきた経緯がある為、教師を庇う姿勢の生徒は当然の様に存在しなかった───……。
「狡い大人の思惑に乗るのは癪だろう? 俺は腹が立っている。そこで提案だ───全員でボイコットしないか?」
半数は、その言葉の意味を理解出来ただろう。
だが理解に及んでいない半数のため、空崎は説明を続ける。
「学校側は1週間という目安を立てているが、それに従う理由はない。ポイントを使い切って遊び倒し、1日で全員でリタイアする。どうだ?」
───数秒の沈黙。
大人達への反感と、それに伴う代償がそれぞれの頭の中で渦巻いているだろう。
そんな中で逸早く、Dクラスの生徒の一人が数歩前に出て口を開いた。
「反対だ。A・B・Cクラスは多少なりとも余裕はあるのだろうが、俺たちDクラスはまだポイントが二桁の身だ。先生方への反感は確かにあるが……ポイント獲得のチャンスを捨ててまで行う事ではない。するならば勝手にしてくれ」
クラスメイトと全く話し合う素振りもなく意見を述べてきたが、どうやらDクラスは全体的に同意見の様だ。周囲の発言から意見を述べてきた男子生徒───幸村 輝彦という名前を把握し、空崎は不遜な笑みを崩す事なく言葉を紡ぐ。
「なるほど。輝彦は───」
「───名前呼びはやめてくれ。その名前は好きじゃない」
「あ、そう? じゃあゆっきーで」
「……まあいい」
「ゆっきーのクラスは全員同意見と。
「ならもういいだろう。俺たちは俺たちで話し合う」
「代案があって、それが本命なんだが。聴く気はあるか?」
「くだらん。大人への反抗第一な行動ならば、そちらで好きにやってくれ」
ふぅ、と。普段から会話をそれほどするタイプではないのか、今のやり取りだけで疲れた様な息を吐く。
振り返り、足を進め───
「Dクラスが推定440ポイントを得られる提案なんだが、それでも聴く気はないって事で宜しい?」
「…………なに?」
───進めようとする幸村だったが、思わぬ発言に急停止する。
その驚愕はDクラス全体にも走り、それが虚言ではないと逸早く理解した堀北が歩み寄る。
「どういう事かしら?」
「おっ、聴く気になったか? そりゃ良かった。……あ、お前らも安心して良いぞ。翔、康平。Dクラスが飛び抜けて得する形になるが、A・B・Cにも平等な利がある話だ」
「クク……面白い話なら乗ってやるよ」
「……取り敢えず、話は聴こう」
各クラスのリーダー格と呼ぶべき生徒達が空崎の前に集まり、腰を据える。
Aクラスからは葛城と的場。Bクラスはそのまま空崎と一之瀬。Cクラスからは龍園と金田。Dクラスからは堀北と平田と櫛田。合計9名が円状に座る。
「ではまずざっくりとした結論から。Dを除く3クラスはDクラス用に物資を提供し、後に全員リタイア。Dクラスはスポット更新とリーダー当てによるポイント獲得を独占し、この二つを他3クラスに山分けする。以上。───さて、各々質問があれば言ってくれ」
───本当にざっくりとした結論であり、全容が把握出来ない。
大まかな流れは確かに理解出来たが……と。質問内容をどうしようか悩む中、葛城が挙手する。
「はい康平」
「スポットと、リーダー当てによるポイントを山分けするとは? 確かに0ポイントの状態ならば、リーダーを当てられた際のマイナスが発生しないメリットはあるが……専用ポイントの移譲は出来ないという説明を受けているだろう。物資提供の方は、おそらくその抜け道なのだと理解は出来るがな」
「スポット更新とリーダー当てによるポイントは試験終了時に加算される物だ。要はクラスポイントに当たる。送り元のクラスから同意さえ得られれば、これは移譲可能。
「……不可能ならば契約の許可が下りないだろうから、可能と仮定しよう。ではその内容は?」
「リーダー当てによって得たポイントはそのまま各クラスへ返還。スポットはDクラスに5分の2。他3クラスに5分の1ずつ。俺の想定だと、D以外はこの二つを合わせて120ポイント程度を平等に獲得出来る」
スポットの数に想定がついていると取れる発言だ。
リーダー当てによるポイント加算は50。つまり70ポイント分が3クラスに平等に配られ、140ポイントがDクラスに入る。スポットでのポイント獲得は総合で350辺りというのが、空崎の推測。
「初日と最終日は合わせて3回……最大限に更新して1日3回を6日分とすると……20個辺りか? なぜスポットの数を断言出来る」
「勘」
「…………」
「───もあるが、一応の根拠は示しとこう。この無人島が徹底的に管理されており、人の手がかなり加えられている事に気付いた奴はいるか?」
しん……と。再び沈黙が訪れる。
「学校が所有する孤島とは、言っていたが……」
「そっか、そこまでは意識してなかったか。さっき船で島をグルッと一周したろ? その時に島の全体図を脳内で書き起こしたんだが、自然じゃあり得ないくらい綺麗に分割されてるんだよ。スポットがある位置は有用な地形や環境が付随してるって事には勘付いてる奴もいるだろうが……特徴的なエリアを分割して数えると、だいたい20辺りになる」
一応の根拠と本人は伝えているが、十分に説得力のある言葉だ。
問題があるとするなら、島の地形全体をハッキリと思い出せる生徒が空崎以外に居ないという点だが。
「俺の頭の中で擦り合わせた簡易的なものだからメリットとして挙げなかったけど、物資提供には現時点で分かる範囲の地図とスポットの位置も付け加えておこう。さて、他に質問は?」
「……僕から良いかな」
「どうぞ、洋介」
「なぜ、Dクラスにやたら有利な条件なんだい? 普通なら自分達のクラスに利益を齎す事を第一に考えると思うんだけど」
「僅かだとしても、Bクラスに利益のある提案だと100%反対されるから。これはAとCでも同じだ。……こう言っちゃ悪いが、Dクラスだけ突出してクラスポイントが低いからこそ出来た提案でもあるんだよ」
「……と、言うと?」
続きを促す平田に、空崎は頷いて言葉を紡ぐ。
「仮にDクラスが現時点で400ポイントとかを所持していたら、口裏合わせの結果はどこも受け入れなかっただろ? 何せ他クラスとの差を縮めるチャンス、或いは突き放すチャンスだ。……が、Dクラスは現在87ポイント。残ポイントの山分けだとDクラスも同意しなかっただろうが、これだけの利益があれば前向きになるだろ? 後はA・B・Cが納得できるかどうかだけ。……そんで改めて悪い事を言うが、最初にポイントを0まで落としたDクラスが今更土俵に上がったところで蹴落とすのは容易───というのが客観的な評価だ。受け入れるかはまた別として、納得する理由には足る」
「……っ」
容赦のない評価に、平田と堀北は顔を顰める。
だが反論はしない。多少舐められていようが、推定440ポイントという莫大なクラスポイント獲得のチャンスをみすみす逃すほど愚かではない。
空崎の提案が実行不可能という状況にならない限りは、大人しく話を聴くことにした。
「ついでに言うと、真っ当に試験を受けて切り詰めても180ポイントを獲得できれば御の字。リーダー当てに動く奴がいれば一気に状況が変わる。体調不良によるリタイアという不確定要素に加え、身体的、精神的疲弊に耐えてその結果を得るくらいなら、バカンスを楽しんで120ポイント得る方が遥かに良いと俺は考えてる」
「……Dクラスだけが大きく得する状況さえ呑めれば、不確定要素のリスクを気にすることなくそれなりのポイントが稼げるから、か。確かにそれなら納得出来るかもね」
言葉を噛み砕き、平田は表情を整えて納得の素振りを見せる。
彼からの質問は終わりかなと空崎が判断すると、視界の中で動く手が見えた。
「私からも良いかしら」
「おっ、堀北か。面白い質問?」
「……つまらない質問な上、平田くんと少し被るわ。貴方がこの提案をする理由は何?」
「ふむ、さっきの答えじゃ納得できないか?」
「先程のは客観的な視点から得られる各クラスの利点を話したに過ぎないと私は感じたわ。貴方なら、別の形で『意趣返し』が出来たんじゃない?」
「まあ確かに、他の手も考えたな。全生徒分のプライベートポイントを俺が払い、点呼位置を自由設定にする権利を買う事で担任をアホほど歩かせるとか。リーダーを担任に設定して馬車馬のように働かせるとか。でもマジで嫌がらせにしかなんねぇし、試験自体は普通に受ける事になるからなこの場合」
「………サラリととんでもない事を言うわね。可能だとしても、全生徒分の権利となると相当な資金が必要になるから実質不可能でしょう」
専用ポイントに着目していた影響で気付かなかったが、確かに試験中にプライベートポイントの使用が不可能であるとは明言されていないし、リーダー選びはあくまでも『クラスで選んだ人』であり『クラスメイトの中から』という文言はなかった。
まだ試験の概要が明かされてから数十分程度。この時点で抜け道を幾つも浮かべている空崎に対し、堀北は少し引いた様子で感心を見せる。
だが、話題が逸れていることに気付き咳払い。
空崎は当初の質問に対し答える事にした。
「堀北、この試験に於ける最悪の結果って何だと思う?」
「それは……不測の事態でポイントを全て失う事じゃないかしら」
「間違いじゃないが、それは過程だな。それを含めこの1週間の中でクラスの雰囲気がバチくそに険悪と化して、以降の試験にまで引き摺ることが俺は最悪だと認識してる。そしてこの危惧は、起こり得る可能性が極めて高いのもまた問題だ」
空崎の語る『最悪の結果』を危惧していた生徒は、その場に数名居た。一之瀬はもちろん、葛城と龍園と平田だ。
他人との関わりが希薄な堀北にとって、それが『最悪』と称するほどの事だろうかという疑問が浮かぶ。
「何故なら人はそれぞれに価値観というものがある。成熟した大人なら擦り合わせと妥協ってもんを第一に考えるだろうが、俺らは子供だ。まして騙し討ちの試験を強制されてフラストレーションは溜まりきってる。断言するが、大人でも同じ状況なら感情を制御するのは難しいと思うぜ。当然こんな状態では、意見の一致は容易な事じゃない」
「……それは、そうね」
「真っ当に受けようと思えば今回の試験、協力も意見の一致も必ず必要になる。そんで今後の試験でも同じ事は起こるだろう。そんな中で「私の意見が正しい」と全員が自己を貫けば───ああ残念、クラスは崩壊。競争どころの話じゃ無くなっちまうな」
堀北の価値観に合わせ、『Aクラスに上がる事が到底不可能な状態になる』という結論を空崎は述べた。
そこで『最悪』の意味を理解出来たのか、彼女は納得の表情を見せる。
「まあどこかの誰かは? 寧ろ率先して他クラスを険悪な状況へと貶めようと動こうとするかもしれんが?」
「クク……おいおい、酷い奴が居たもんだな。一体どこの誰なんだ?」
肩をすくめて、両手の手のひらを上に向けとぼける某方を視界の端に捉え、呆れたように首を振る。
それはさておき、と。話が脱線する前に堀北の方に視線を合わせた。
「大人の思惑に振り回されて人間関係が拗れまくるのが個人的に嫌だってのも含め、そのリスクを極限まで薄れさせたいというのが
「……もう半分は?」
「俺がサボりたいから」
「は───?」
その発言には流石に面を食らったのが多数。
一之瀬は呆れ、龍園は笑いながら理解を示したが、その他は全員理解が追いつかないといった顔を晒す。
「だって面倒じゃんよ。ぶっちゃけ最初から無人島生活って明かされてたら不参加を選んだぜ俺。1週間もゲームを断つとか考えられん。しかも騙し討ちでやられたんだからモチベとか無いんだわ。まあ何もしないってのもクラスの連中に申し訳ないから妥協点でサボれる口実が欲しかった。それが理由だ」
「……不思議な事に、今までのどの説明よりも納得が出来たわね。契約書は?」
「当然用意済みだ。他に質問はあるか? ……オーケー。各自確認して、不満や不備が無ければサインをしてくれ。ああ、Dクラスはクラスメイトへの説明も忘れずにな? 近くに居るし殆どは聴こえてると思うけど、クラスポイントの移行は全員の同意が必要になるからさ。俺はその間にマニュアルの地図を書き直しとくからよろしく」
・A・B・CはDクラスの欲する物資・食料を提供する
・A・B・Cクラスの生徒は全員6日目までにリタイアする
・A・B・Cのリーダー選出にはDクラスの生徒を指定
・Dクラスはリーダー当ての権利を必ず使用し、それによって得たポイントを各クラスに返還。権利の行使をしなかった場合、各クラスに対し12ヶ月間5000プライベートポイント×Dクラス人数分を支払う
・Dクラスがスポット更新によって得たポイントは、5分の2をDクラスに。残りを5分の1ずつ3クラスで分配
・リーダーに選出された生徒が体調不良の事態に陥らない限りはスポット更新を最大数実施する。これを反故にした場合、Dクラスの残ポイントから不足分を賄うこととする
「疑問点が今になって出てきたわね」
「そうだね……。えっと、空崎くん?」
「あー? ああ、こんな体勢で申し訳ないが、聴かれれば答えるから言ってくれ」
契約書をいの一番に確認したDクラスから声を投げられる。
覆い被さる様な体勢でマニュアルの表紙を下敷きに地図をブラッシュアップしつつ、そこから視線を動かさないまま空崎は言葉を返した。
「3クラスの生徒からリタイアを確約する理由は? 好き好んで過酷に身を投じる生徒がいるとは思えないけれど、わざわざ付け加える必要性を感じないわ」
「それがあるんだよなぁ。書かれ方が紛らわしいけど、リーダー変更は正当な理由さえあれば出来ちまうんだよ。リーダーの対象が他クラスでも可能なのはさっきの問答で理解したと思うが、選ぶのはあくまでも該当クラス。だから万が一にでもリーダー当て直前で変えられないようにする必要がある。要はDクラスの為の保障だ」
空崎の発言を聞き、残る三つのマニュアルを見返す各クラス。
明記されているのは『正当な理由無くリーダーを変更することは出来ない』だ。正当な理由に該当する要因まではハッキリしていないが、それが確かである事に堀北は冷や汗を流しつつ頷いた。
「この、スポットの最大数という判断と……体調不良の判断というのは、どうするつもりなんだい? 葛城くんの質問で述べてたスポットの数は、確か推測でしかなかった筈だよね?」
「ああ。スポットの数に関してはウチのクラスから同行する奴を選出して確認してもらう。不安ならAとCからもな。体調不良の判断は腕時計で出来るらしいし、リーダーを後で教えてもらえれば日に3回分の情報を履歴保管の権利込みで買う。万が一にでも虚偽申告した場合は書いてある通りのペナルティだ」
なるほど、と。質問した平田は頷いて納得を見せる。保管履歴の権利さえ買うのであれば、万が一本当にリーダーから体調不良者が出た場合でも確かなデータとして残る。虚偽で無ければ多少取り分が減っても問題にしないというのが空崎の意向であると理解し、無茶まではさせる必要が無くなったのは朗報だ。
とはいえDクラス内から選出されたリーダーで無ければDクラスとしてのスポット更新ポイントが手に入らない為、そこには運動能力が高く且つ病気に罹りにくい生徒を選ぶべきだろう。
空崎としては『リーダーに選ばれた生徒が所属しているクラスにスポット更新のポイントが入るようにする権利』をプライベートポイントで購入する事でもう少し楽にする事も考えてはいたが。
しかし結果に直結する様なルールを改定し過ぎるのもな、と。少しだけ自重した。
「クラスポイントの移行をしなかった場合のペナルティを定めなくていいのかしら?」
「その点で生徒に出来るのはクラスポイントを動かすかどうかの可決のみだ。実行するのは学校側だから契約すれば強制される」
「あくまでも各クラスに損を生じない様にする為のペナルティって事ね。……というか、この契約書を最初に見せて話を進めた方が良かったと思うのだけれど」
こんな契約書を予め用意しているのを見るに、最初に提案した『全員でボイコット』のくだりなんて必要なかっただろう、と。呆れた様子で堀北は言う。
一応理由自体はあるが───今更説明したところで
「お約束というものだよキミィ。掴みってのは大事だからな、ゆっきーとも距離を縮められたろ?」
「……、……いえ。私が言えた義理でないとは分かってるけれど……距離が縮まった様には見えないわ」
「なん……だと……ッ?」
少しばかり茶化した様子で告げたが、堀北は微妙な顔を晒しながらそう返す。
空崎が視線を幸村の方に移すと、彼は険しい表情のまま首を横に振った。距離を縮めた覚えはないという意思表示である。空崎は項垂れた。
「……あー、後から言われても面倒だからこれも言っとかねぇと。まだDクラスはサインしてないよな?」
「うん。とりあえず他クラスの確認を終えてからと思っていたけど……僕らは何か見落としてたかな?」
「や、見落としっていうか……変数の対処だな。お前らの内輪で解決しそうにないし」
あっさり告げられる「お前らどうせクラスの纏まりとか無いだろ」という発言に平田と櫛田は思わず笑顔が固まる。
それ自体は事実のため気にする素振りはなく、だが何の対処だろうと堀北は視線で疑問を伝えた。
空崎は地図のブラッシュアップ(既に簡易とは言えない状態)を途中で止め、Dクラスの生徒が集まっている場所───から少しだけど外れた、海を眺める存在に近づいていく。
「なあ六助、お前はどのみちリタイアするつもりだろ?」
「おや、随分な言葉を投げてくるじゃ無いか。空白ボーイ」
高円寺 六助。
日本有数の資産家である「高円寺コンツェルン」の御曹司。身体・頭脳共に類稀なる才覚を持つが、Dクラス内でも特に有名な問題児とされている。
そんな彼に対し友人に話しかける様な態度で近付き、また高円寺も気分を害する事なく応えたことで、Dクラスにはどよめきが走った。
「───まあそう言っても君に嘘は通じないからねぇ。確かに私は今日、体調を
「いや別に。でも後々になって───」
「おい高円寺! 身勝手な理由で折角のチャンスを無駄にするつもりか!?」
「───……と、こんな感じで責任の所在をこっちに向けられても面倒ってだけだ。ゆっきー落ち着け」
当然近くに居るクラスの生徒には発言が丸聞こえだ。
Dクラスだけは無人島生活で1週間を過ごす事になるが、当初の想定に比べれば物資提供がある分遥かに快適となるだろう。そんな中で30ポイントのペナルティを躊躇いなく出そうとする高円寺に、幸村は怒りをみせながら近付く。
「ふむ? 真っ当に試験を受けるよりも遥かにポイントを稼げるのだから、30ポイント程度のマイナスなど微々たる物と私は思うけどね」
「わざわざペナルティを出す必要も無いだろう! Aクラスに上がるなら少しでも───」
「はいストップゆっきー、まず俺の話を聴け。わざわざ交渉を中断させる為に指摘したわけじゃねーのよ。六助のリタイアによるDクラスのマイナスポイントはBクラスの取り分から差し引いて補填する。それで文句は無しだ」
「……なに?」
間髪入れずに告げられる空崎の言葉に、幸村の怒りは霧散する。
「クラスでAクラスに上がる事への拘りがなく、クラスポイントが上がろうが下がろうがどうでもいい六助に納得してもらおうってんだから、これくらいはするさ。先に言っとくが、六助の分のみだからな。他のリタイア者が出ても補填はしない」
「ふふふ、悪いねぇマイフレンド。私の肉体が貧弱なばかりに」
「……、……という訳でゆっきー。それで納得しろ」
どうやら高円寺は体調不良設定を貫き通す様だ。「本当の貧弱を近くにどの口でほざきやがる」と凄まじく突っ込みたい気持ちを抱いて半眼を向けたが、空崎は我慢して幸村と視線を合わせた。
「納得は、するが……なぜ他クラスがそこまでする?」
「契約を円滑に進める為。AとCに分ければ平等も維持出来たけど……」
空崎の視線が先程まで居たリーダー格の集う場所へと向けられる。
そこには頭を振って否定の意を示す葛城と、首を掻っ切る仕草で否定の意を示す龍園の姿が見られた。
視線を幸村に戻し、苦笑を見せる。
「という訳だ。なら多少の損はウチで引き受ける。それで円滑に事が済むなら安い買い物だ」
「……Bクラスは納得してるのか?」
「大丈夫、納得してるよ。幸村くん」
「い、一之瀬……っ」
話の流れからして『Bクラスが納得しているか否か』についての質問は容易に予測がついた。それは一之瀬も同じであり、呼ばれる前に近付いていた。
この返答は空崎よりも彼女がした方が良いだろう。
「この契約はBクラスの総意だよ。もちろん他クラスに受け入れて貰えなかったら別のやり方も考えたけど、契約自体は皆が前向きになってたんだし、30ポイントの差でそれが完遂されるなら躊躇う必要はなし! そもそも何処かの誰かさんは最初からリタイアする気満々だったもんね?」
「む、なんて奴だ! クラスの事を考えずにリタイアなど言語同断! 俺が成敗してくれようッ!」
「君の事だよっ!?」
───いや、クラスの事を考えた道筋は提示してたので自分とは別人っすね。
そう言わんばかりに無駄に上手い口笛を吹く空崎に、一之瀬は呆れた様な笑顔で息を吐く。
「そ、そうか。ならば俺から言う事はあるまい」
「……ゆっきーやーらしぃ」
「な、なんの事だっ? ……用事が済んだなら戻ってくれ!」
明らかに一之瀬が近くに居る状態に動揺している幸村へ揶揄う様な言葉を投げると、顔を真っ赤に染めながら“羞恥”と“怒り”を宿し彼は顔ごと視線を逸らす。
空崎は「男なら仕方ない」と真剣な表情で頷き、一之瀬は疑問に首を傾げた。
───その後、高円寺の件を新たに契約書に付け足したり、何度かやり取りは行われたが、契約は内容を変える事なく成された。
内心で中指を立てながら気持ちのいい笑顔を見せつつ、教師陣から契約の承認を受け取る。
「……ねえ夜白くん。やっぱり私だけが水着姿になる必要ってあった?」
「え? ………………あったぞ」
「なかったじゃん! 夜白くんがそこまで溜めを作るの珍しいもん、絶対必要なかったよっ!」
───……教師陣が契約の確認をしている間に、そんなやり取りも行われていたが。
「よぉしみんなっ、遊び倒すよ!」
───おー!
♕ Tips. ✍︎
葛城は事前に坂柳からの説明で「空崎がなんらかの交渉を仕掛ける可能性がある」「もし2日以上拘束されてゲームの類に触らない事態になれば第一にサボる事を考えての交渉になるだろうから、内容に納得がいけば難しく考えずに同意して構わない」という話を受けており、当人から該当の台詞が出た事で契約に同意する事を決意した。
龍園はリーダー当てによる他クラスへのマイナスが出来ない点に少々不満を覚えていたが、元よりCクラスはリタイアするつもりだったしAとBもリタイアする気になっていたから得することを優先した。同時に空崎のある発言から一つの計画を思いついており、試験最中は本当に大人しくすることを決めている。