Q. 性癖の開示…!!! 本気だね。
A.ちなみに私も性癖の範囲は広めだが、強いて挙げるなら全体的にスレンダーなイメージの中で尻が大きい女性が好み。ウマ娘のグラスやヘリオスとか。誰か存在しない記憶を生やして良いよ。
Q. これに関しては珍しく堀北の方が普通じゃない…?
A.普通。空崎もそれは分かってるから「学力が高いのは良い事」と葛城に対して再三念押ししてる。3ヶ月足らずで考えを改めてはっきり“夢”と言えるものを見つけた坂柳が異常。
ただ「技術を進歩させる様な人間はこの時点で歩む道を定めてるんだろうな」という納得感で堀北は勝手に脳が焼かれた。
Q. 文学少女って太ももがむちっとしてるもんなの?
A. 発言を引用しただけだからハッキリと答えが欲しいならトモセシュンサク先生に聞いて欲しいけど、運動不足で肉付きの良い女の子が椅子と体重・重力に挟まれて太ももがむちっとなるイメージからだと思う。でも解釈は人それぞれ。二次元なんてロマンを追い求めてナンボ。
Q. 俺は胸派
Q. 自分、低露出が癖
A. 性癖に貴賎はない。みんな違ってみんな良い。
1回目のディスカッションで行われた坂柳と空崎の会話は、竜グループに配属された殆どの生徒にとって劇薬だったと言える。
成績優秀者である二人が語る、将来の夢。極めて現実的に見据えて過程を組み立てている。机上の空論を叶えようとしている会話は、学生として優秀である人間である程に脳に焼き付いただろう。
Aクラスとして卒業を目指す自分は、果たしてこの二人よりも胸を張れる未来を歩めるのか───と。
しかし今は試験最中。将来は大事であるが、足下を見なければ掬われてしまう。
時間の経過と共に落ち着きを取り戻し、2回目のディスカッションが訪れた時には全員が試験に向き直る事が出来た。……が。
「さて、お前ら」
───あまりにも悠長な考えだったと気付いたのは、“彼”が口を開いた瞬間だった。
「全員、携帯を取り出して床に置け」
胡座をかき、脚に肘を置いて頬杖を突きながら命じる空崎に視線が突き刺さる。
沈黙の数秒。
次に口を開いたのは堀北だった。
「……空崎君。メールを強引に見ようとする行為は禁止されているのは分かっているわよね? 貴方の指示に従う理由はどこにも───」
「チッ」
「ふふっ」
拒否を示す堀北であったが。言い切る前に、舌打ちが一つ。上品な笑い声が一つ。
前者は龍園、後者は坂柳。この場で二人だけは、空崎の指示に従い画面が見える様に携帯を置いた。
坂柳に対してもそうだが、驚くべきは龍園の行動。この場で最も他人の指示に従いそうに無い人間があっさりと携帯を取り出した事実に、視線が集まる。
「お前らも従え」
舌打ちこそしたが、表情に苛立ちは見られない。状況自体はある程度の予想を立てていたのか、龍園はCクラスの生徒に向けてそう言い放つ。
彼の指示ならば従うべきだろうと、Cクラスの面々は揃って携帯を床に置いた。
空崎は楽しげに笑いつつ、視線をゆっくりと動かす。
そして止めた視線の先では、葛城が動揺した様子で坂柳を見ていた。
「坂柳……」
「従うかどうかはお任せしますよ、葛城くん。Cクラス全員が携帯を取り出した今、取り敢えずのリスク回避は出来ましたから。……ですよね? 夜白くん」
「ああ。
「……当然でしょう。私達が取り出せば自主性であったと主張出来る可能性が生まれるもの。さっきも言った通り、従う理由はないわ」
「そっか。んじゃ仕方ない」
目を瞑って肩を竦める。
まさか本当に自主性を主張するつもりだったのか。そんな疑いが向けられた瞬間───
「では情報開示。Aクラス、鼠・鳥・猪。Dクラス、兎・竜・馬」
心臓を掴まれた様な錯覚。
ポーカーフェイスは、維持を許さなかった。
「さて。ここにいる諸君らなら、この意味───分かるよな?」
仮にポーカーフェイスが維持できたところで、彼の確信に満ちた瞳の前では無意味に等しかったが。
動揺の気配が漂う中、再び沈黙の時間が訪れる。
「……葛城、あまり坂柳を睨みつけるな。裏切りを働いた訳じゃない」
「っ、ならば何故───」
「信じられないかもしれないが、空崎は優待者のメールが送られる前から優待者が誰であるかを察していた。
睨みつけられる坂柳を庇うかの様な言葉を投げたのは神崎だった。
続く言葉に、唖然とした表情が葛城に浮かび上がる。それは葛城のみならず、龍園と坂柳、Bクラスの面々を除いた竜グループ内の全ての生徒にも。
全員が言葉を失う中、冷や汗を流しながら堀北が当然の疑問を放つ。
「……なら、なぜ早々に決着としなかったの? 12グループの内9グループを終わらせる事は出来た筈よ」
「『法則』に当て嵌めた結果、たまたまBクラスだけが適応されていた可能性が0じゃなかったから。1回目のディスカッションではそれを確認したかったってのと、後は最初に告げた通りだ。Bクラスは結果1を望んでる」
先ほど空崎の言い放った『ラブコール』とは、当然文字通りの意味では無い。
龍園は空崎が既に『優待者の法則に気付いている』という事を勘付いていた。そのためBクラスとCクラスで優待者を暴き、結果3を2クラスで独占する事を企てていた。それが龍園からの
しかし、龍園は『法則』の存在にこそ気付いていても、どんな法則であるかまでは理解していない。当然主導権は空崎にある。
結果1を望む空崎と、結果3を望む龍園。噛み合う筈もない。ともすれば龍園は空崎が動く前に法則を暴いて仕掛ける必要があった。
だが空崎が開口一番に出した指示により、主導権を握る事は不可能であると断定した。それが龍園が指示に素直に従った理由だ。
今この場の主導権は空崎が握っている。龍園以外も、それを理解し始める。
「とは言え、不利益を出す訳にはいかないんでな。既に俺からのメッセージ一つで裏切りが出る様に準備を済ませてある。不審な動きを見せたら直ぐに発信だ。あと1分以内に携帯を床に置け」
───逆らう余地は、残されていなかった。
「それじゃ、隆二、サーヨ。確認よろしくな」
端末のメッセージ画面を周囲に見せつつ、クラスメイトである神崎と安藤に指示を出す。主語はなかったが、事前に打ち合わせているので行動に淀みはない。
携帯は全てロック画面。パスワードが掛けられているこの状態ではメールの確認など出来ないが、既に優待者を暴いているBクラスにとって確認すべきはそれではない。
男子は神崎が。女子は安藤が。それぞれの携帯と、軽いボディチェックを行う。
確認しているのは携帯が通話状態になっていないかどうか。また別の端末を用意して通話状態にしていないかどうかだ。
他のグループに話が通ってしまうと会話内容から優待者を推測される可能性がある。それを避ける為の確認作業。
「……オーケー。全員に他グループとの繋がりがない事が確認できたところで、
端末からは手を離さない。不審な動きを見せれば直ぐにでも発信できる状態を維持している。交渉とは言っているが、脅迫そのものだ。
「何度も伝える様だが、Bクラスが望んでいるのは結果1。それは裏切りに動かなかった事からも信じて貰えたと思う。ではなぜ結果1を望むか、それを説明するとしよう」
空崎は薄ら笑いを浮かべつつ、言葉を紡ぐ。
「今回の試験、全てのグループが結果1で終えた場合、各クラスに分配されるプライベートポイントはそれぞれ2150万。クラスポイントの旨みが無くなる代わりに、マイナスが発生せず大きなプラスを得ることが出来る。ここまでは全員が理解してるよな?」
冷や汗を流しながら、何人かが頷く。
「ここで重要になるのは2150万が直ぐにクラスへと入金されるということ。結果3で最良の結果───理論値は600だが、まあこれは不可能。クラスポイント300とプライベートポイント450万を得たと仮定した場合、結果1と同等のポイントに持っていくまでには大体1年と2ヶ月が必要になる」
「……でもそれは」
「ああ、クラスポイントは単なるプライベートポイントの換算だけじゃなく、成績にも関連する事だ。同等の価値で測るのは御門違い───ンな事は今は関係ない。言ったろ? 重要なのは2150万が直ぐに入金される事だと」
Aクラスで卒業する為には全てのクラスの中で一番のクラスポイント量を保有する事が条件となる。それを「関係ない」と言い切るだけの理由。
「2150万……より具体的に言えば2000万。この額は、学校の定めたルールを覆せるだけの権利を購入する事が出来るプライベートポイントの量だ」
───……?
周囲に広がるのは困惑。言葉の意味は理解しているが、具体的にどんな権利を購入出来るのかが定かではない。
それはAクラスに近づくチャンスを捨ててまで掴む価値がある事なのか。
「ま、これだけじゃピンとこないよな? だから具体的に二つ例を挙げよう。一つ目、クラス移籍の権利を買う事が出来る」
ただし、と。驚きの声が上がる前に、空崎は注意点を付け加えた。
「2000万で移籍できるのは1人だけ。どのクラスに移籍しようとも2000万という値が変化する事はない。今回の試験で得られる2150万はクラス内のトータルだから、1人の為にそれを使おうって物好きは……まあいないだろ。俺が本命として挙げたいのは二つ目」
端末を持たない手で二本指を立て、それを告げる。
「退学を取り消す権利が買える。退学者を出さない為の保険として即時2150万の確保が出来るのは、Bクラスとしては300クラスポイント以上に魅力的なんだよ。他クラスに同額が与えられるとしても、これを獲得出来るチャンスを逃したくない。赤点で一発退学とかやってくる学校だから、試験の結果次第で退学になるって事もあり得るだろうしな」
───無論、今回の試験で獲得した300クラスポイントを1年3カ月以上維持し、且つ退学者を出さない自信があるならば、裏切りを働く方がメリットは大きかったかもしれない。
だが人には得手不得手が存在する。これから先の試験で100%減少しないと言い切ることは出来ない。確約されない以上は長い目で見るにはリスクあるため、それならば今回の試験で即時稼ぐのがマストというのが空崎の判断だ。
「さて。結果1を選ぶメリットについては理解してもらえたと思う。それでは次に、全グループで結果1を取るための『契約』だ」
空崎は神崎に視線を送る。
彼は頷き、持ってきたジャージに包んでいたファイルを取り出し、その中から数枚の紙を抜き取る。
各クラスに1枚ずつ。
行き渡ったのを確認し、言葉を続けた。
「今配った紙が契約の内容だ。見やすいように各クラスに配っただけだから内容は同じ。不安なら見比べても構わない」
・干支試験では全てのグループで結果1を達成する
・結果2が発生した場合、該当グループの優待者が得たポイントで未解答・間違えた生徒の情報を購入。該当クラスは他クラスに対し、結果1で得られる予定だったポイントを情報購入で使用したポイントを含め全て補填する
・結果3が発生した場合、裏切ったクラスから該当人数分の自主退学を強制する(退学者の選別は空崎 夜白の独断で決める)
・万が一学校側から優待者の再選が行われた場合、契約は無効とする
要は「結果1で終わらせることを強制する」というものでしかない為、契約条項は多くない。内容は分かりやすく、短い時間で把握できる。
一つ目、二つ目は当然の内容。四つ目は寧ろ他クラスにとっては有り難い補足だ。
しかし───
「……三つ目の内容が、理不尽過ぎないかい?」
「当たり前だろ? 契約に必要なのは相互の了承であって、対等な内容である必要はない。俺たちは300クラスポイントを獲得できる状況を捨ててまで全員に利がある話を提案してるんだ。そんな中での不義理には厳しい罰則を与えなきゃ、契約に同意を示した面々に申し訳が立たない」
結果1で終わらせれば問題ない話だろ、と。問い掛けてきた平田に当然と言わんばかりの態度で返す。
空崎の言う通り、Bクラスは9つのグループを結果3で終わらせる事が可能なのだ。万が一にでも『法則』に気付かず試験が終わればBクラスは450ポイント───下手を打てば600ポイントの獲得。他クラスは150〜300ポイントのマイナスという結果が残る。
その可能性を捨てて全員が利を得る選択を提示した。それを反故にするペナルティは厳しく取り扱うべきだろう。
「……これって───」
「退学覚悟で裏切りを発生させるつもりならやめとけ。記載通り、退学させる生徒は俺の独断だ。それに、自主退学にはペナルティが発生するらしい。幾らかまでは分からんが、下手したら獲得したクラスポイントが無駄になるぜ」
ペナルティははっきりと書かれているが、裏切り自体は可能。退学覚悟なら抜け道も可能か───そんな平田の思考をあっさりと先読みし、「つまらん真似はしてくれるなよ」と言わんばかりの表情で宣告する。
要は、契約に同意した時点で裏切るメリットなど皆無という事だ。平田は口を閉じて沈黙した。
「……結果4になった際のペナルティが書かれていないのは、結果そのものがペナルティだからということでいいのかしら?」
「ああ。他クラスにプラスを与える事に加えて自クラスのマイナスだからな。Bクラスに一矢報いたいってんなら止めないが……Bクラスの優待者がいるグループで結果1が取れれば一先ずクラス内貯金で2000万は貯まるから、そこまで痛くはないと言っておく」
抜け道も痛手では無いと空崎は断言する。
同時にクラス内貯金を公開。クラス内の情報を暴露するのはデメリットが大きいが、タイミングを見極めれば武器として作用する。
こと今回で言えば「一矢報いようが痛くない」事への証明にもなるし、『クラスの為の貯金』という存在はBクラスの連帯を示す事にもなる。
大きなデメリットを覚悟しての一矢報いる行動も無意味。契約を受けた後にも取れる抜け道をそう告げられ、堀北は言葉を悩ませる。
「つかそもそも、足の引っ張り合いにそこまで頭を悩ませんなよ……。そりゃまあ、場をコントロールされて穏やかじゃない心中はお察しするがな? 結果1で終える事が出来れば全クラスに等しく2150万が入るんだ。別にBクラスだけが得する提案って訳でもない。難しく考える必要はないと思うんだが」
呆れ、苦笑して話す空崎。
言い分は尤もだ。確かにこれでBクラスだけが得する契約を提示したならば兎も角、内容は『結果1で終わらせて報酬をそのまま受け取る』というだけ。
指定金額をBクラスに渡す必要もなく、正しく結果1で終わらせれば良い。何をそんなに悩む必要があるのかと。
「抜け道を探るのは結構。契約の不備を疑うのも結構。自らが不利益を負わない様に思考するってのは、大人の社会で生きて行くには大事なことだ。けど自らがそれを使う立場になるってのはやめとけ。信頼と同時に倫理観も失うし、常にその選択肢を浮かべる事になれば人生の中で大きなリスクが伴い続ける」
悪意を認識する事は大事だが、悪意を使う立場になるのはやめておけ───片目を閉じて告げる空崎に、坂柳が楽しげに笑って問い掛ける。
「では夜白くん。Bクラス側が取れる『抜け道』については、どう説明しますか?」
堀北や平田が探っていたのは、Bクラス以外が取れる契約の抜け穴についてだった。
しかし坂柳は、Bクラスが取れる抜け道を指摘する。
「この契約では、各クラスにスパイを忍び込ませて
「ああ、出来るな」
───ッ!?
鋭く息を呑み、驚愕を示す生徒が複数。
坂柳の指摘内容はもちろん、あっさりと認めて頷く空崎にも驚きを隠せない。
やはりこの契約は受けるべきではない───そんな思考を数人が過らせる中で、空崎は「失敬な」と言わんばかりに呆れた表情を見せる。
「でも退学させる対象は基本的に裏切った張本人だ。
「……なら、契約で退学者を出すようなペナルティを提示する必要は無かったと思うのだけれど。矛盾してないかしら」
「してない。このペナルティは裏切るメリットを可能な限り無くす目的でしかないからな。それに退学者を出したくないのは俺の勝手な考えで、ここまでのペナルティを提示されてなお裏切りを働く奴はそれこそ自主退学以外のなんでもないだろ。それを止めるつもりはない」
肩を竦め、言葉を紡ぐ。
「ま、俺の言葉を信じるかどうかはお任せするが───どのみち今回のディスカッションが終了する5分前までに契約が成立しなければ、結果3で終わらせる。今お前らが出来る選択は、リスクを承知で俺を信じて契約を結ぶか、Bクラスの一人勝ちを許すかの二択だ」
或いは───と。
「このディスカッション中に他のグループで結果3が出た場合は、契約前の行動って事で見逃すけどな。お前らの反応を見た限りじゃ『法則』に気付いてる奴はいなさそうだし、この話し合いを知らない奴らが10%未満の確率に賭けて裏切るとは思えないが。ああ、もちろん目の前の携帯を取って連絡なんて行動はするなよ? その瞬間に俺はメッセージを送らせてもらう。それじゃあ、良き選択を」
その言葉を最後に、空崎は口を閉じて周囲の観察に徹する。不審な動きを見れば直ぐにメッセージを飛ばせる様に準備を整えた。
数秒の沈黙の後、口を開いたのは龍園だった。
「Cクラスは同意だ」
契約書にサインし、空崎の前に紙を放る。
頷き、残るAとDはどうするのかと視線を送った。
次に口を開いたのは葛城。2回目のディスカッションが始まって30分を過ぎた頃だ。
「Aクラスも……同意しよう」
「おや、宜しいのですか? 先ほど夜白くんは「契約を結ぶ前の結果3は見逃す」と言い、竜グループの優待者がDクラスである事も明かしています。一矢報いる事の出来る唯一のチャンスですよ?」
「3分の1では確信に至らない。何よりメールを送る動きを見せれば先に優待者を当てられるだけだ。……後は空崎を信じるしかあるまい」
「ふふ。主導権を握られた時点で悪足掻きにしかなりませんからね。懸命な判断ではあります」
───残るはDクラス。
契約書を握るのは冷や汗を垂らす堀北。竜グループ内の視線を集める彼女は思考を凝らす。
「堀北さん……」
平田と櫛田は既に契約を同意する方針。後は堀北が同意を示せば、契約は完了だ。
しかし、ディスカッション終了10分前になっても彼女は動かない。
「堀北」
ここで沈黙していた空崎が口を開く。
契約書を見つめ固まっていた堀北は視線を上げ、彼の眼を捉える。
「契約書は全クラスが同意しない限り不成立にするつもりだ。俺が言いたい事は分かるか?」
「……ッ」
つまり。
AクラスとCクラスが同意を示した現在、3クラスは結果1に舵を切っている。そんな中でDクラスだけが同意を示さず契約を不成立にさせた場合、Bクラスは9つのグループを結果3で終わらせる事になる。
Bクラスの一人勝ちである以上、Bクラスへのヘイトはどうしたってあるだろうが───しかしDクラスが同意を示さなかった結果となれば、それがDクラスにも分散される事になる。
クラスポイントのマイナスを食らった挙句、上位クラスからの敵意まで集めてしまう。
ディスカッション中に他グループで結果3が発生する可能性を考えてギリギリまで契約を結ばずにいたが、望みは薄い。
だが一つ、堀北には疑念があった。
「空崎くん。私たちのクラスには自由人の高円寺くんが居るわ。例え契約を知らせたとしても───」
「六助には先の無人島試験でBクラスが負担した30ポイント分の対価として、今回の試験で大人しくする様に先んじて約束を交わしてる。暇つぶしに付き合う必要はあるが……まあそれは気にするな。仮に裏切った場合は契約通りだ。六助が相手でも行使する。
「……友人なのでしょう? 躊躇いはないの?」
「
身内だろうが容赦はない。
淡々と告げられる内容に、堀北は絶句した。
「……そこまでして公平性を貫く理由は?」
「ん? ……そうだな」
───盟約に誓って
ふと頭を過ぎるフレーズがある。
知らない世界。知らない言葉。
この世界にはない、絶対遵守の誓い。
あの世界を羨ましいと感じたから───なんて事は流石に言えない。
少しだけ、噛み砕いて伝える事にした。
「絶対がないこの世界だからこそ、自分の中で決めた絶対の価値を下げたくない。それだけだ」
「そう……」
言葉に納得したから、などという様子は無かったが。迫り来る制限時間と選択肢の少なさ、選択肢のリスクを加味し───Dクラスも同意を示した。
契約により、全グループでの結果1はほぼ確約された。残るディスカッションはただ指定時間に集まるだけの自由時間となる。
裏切りが発生する事なく、また契約書の最後に書かれた優待者の再選が行われる事もなく。最後のディスカッションを終えた。
裏切りを発生させない為に試験終了後も退出は許さず、解答時間である9時半まで部屋で待機。
そして。
子(鼠) ─── 試験終了後グループ全員の正解により結果1とする
丑(牛) ─── 試験終了後グループ全員の正解により結果1とする
寅(虎) ─── 試験終了後グループ全員の正解により結果1とする
卯(兎) ─── 試験終了後グループ全員の正解により結果1とする
辰(竜) ─── 試験終了後グループ全員の正解により結果1とする
巳(蛇) ─── 試験終了後グループ全員の正解により結果1とする
午(馬) ─── 試験終了後グループ全員の正解により結果1とする
未(羊) ─── 試験終了後グループ全員の正解により結果1とする
申(猿) ─── 試験終了後グループ全員の正解により結果1とする
酉(鳥) ─── 試験終了後グループ全員の正解により結果1とする
戌(犬) ─── 試験終了後グループ全員の正解により結果1とする
亥(猪) ─── 試験終了後グループ全員の正解により結果1とする
夏季グループ特別試験。
干支になぞらえ12のグループに分けられて行われたこの試験は、その全てが同じ結果を以て終了する。
これによりグループ内の全員に50万。優待者には更に50万を上乗せした100万のプライベートポイントが配られ、全クラスが合計2150万プライベートポイントを手に入れる事が出来た。
結果だけを見るならば。無人島試験ではA・B・Cクラスがそこそこに稼ぎDクラスが一人勝ちしているような状態で、グループ特別試験では全てのクラスが大量の資金を入手した形だ。
最良とまでは言わずとも、学校の想定とは大きく異なるポイントの推移と言えるだろう。
だが、この二つの試験のどちらの結果も、Bクラスの生徒がコントロールしていたという事実を認識しているリーダー格の生徒は。
手放しに喜ぶ事は、出来なかった───……
♕ Tips. ✍︎
真鍋と軽井沢のやり取りは原作通り行われた。が、今のタイミングで問題になりかねない行動を起こされては困るので、伊吹から報告を受けた龍園が「過去のことならクソと一緒に水に流せ。どうしてもってんなら日にちと時間帯を具体的に言え。該当の店の映像を買い取って正当に訴える。勝手な行動は控えろ」と止めている。
何が原因で『計画』が破綻するか分からないので割とガチで焦っていた。