Q. こんな精神攻撃、自身もゲームオタクだと晒している様なものやんけ!だけど、ある意味空崎の理解者にもなれる可能性が高いのか。
A. 理解者というか楽しくゲームについて語れる相手になれるとは思うけど、高校生が空崎と語れるレベルでゲームオタクなのはやばいんじゃないかな。
Q. 空崎はなんとなく、某クソゲー投稿者が取り扱ってるような頭おかしくなるゲームも普通にやってる印象あるし、そういう方面の精神攻撃も効きそう(笑)
A. 単純作業を繰り返す時間消費ゲーだったりエンディングの浸りも無い虚無ゲーの類は事前知識があるとやらない。某クソゲー投稿者が取り扱ってる例で挙げるとすると『変態カメレオン』とか『SOF』。
でも『ファイナルソード』とか『弥助シミュレーター』みたいなコンセプトがハッキリしてて作り込んだ上でのクソゲー・バカゲー評価はプレイしてる。なのでバグラッシュとか処理落ちラグが発生するけどゲームとしては成立してるタイプのゲーム名を出されると精神攻撃になる。
Q. あれ?高円寺ってフリーダムなだけで高育の中じゃ上から数えたほうが良いくらいにマトモ……?
A. 『 』とかいう伝説上の存在で、事実認めるべき才能を有し、自身の行動を尊重し理解を向けてくれる友人の考えだからこそ尊重しただけで、マトモとか改心したとかではない。空崎の行動理念でも納得がいかなければ「まあ勝手にやってくれたまえ。私は関与しないがね」のスタンスを崩す事はしない。
設定してから既に何日か経過しているのでご覧になられた方もいらっしゃるかもしれませんが、読者の方からファンアートを頂きました!
ご本人様から許可を貰いあらすじに掲示しています。依頼無しで絵を頂いたのは初めてなので大変嬉しく、作品を執筆する励みになります。改めて、ありがとうございます!
体育祭。全員参加競技の全てが行われる午前の部を終え、時刻は昼を迎える。
現在は教室の使用不可能との事で、利用できる場所は食堂やグラウンドと普段よりも限られており、体育祭という行事による影響か、間違いなく普段よりも学年別の生徒が食事を共にしている光景が目に映る。
そんな中、空崎はと言うと。
「───ってな訳で、勝敗は今のところ五分五分っすね」
彼もまた上級生と食事を共にしていた。
否、単に上級生と一括りにするのも失礼だろう。この学校に作用を齎す事も出来る立場の生徒会所属───その生徒会長である堀北 学と、副会長である南雲 雅の二名とだ。
昼食を摂る前には一之瀬も居たのだが、彼女は挨拶と応援だけ残してクラスメイトの下へと戻っている。
空崎の発言を聞き届け、片や表情を変えぬまま頷き、片や嬉しいやら悔しいやら入り乱れる表情で、それでいて納得を見せている。
「こうして聴くと、やっぱ得意不得意がハッキリしてるんスね。堀北先輩」
「ああ。人間性が表れているようにも感じるな」
「……なんか俺が面倒な人間って言っているように聴こえるんスけど」
「複雑な状況にも臆せず挑める人間、という意味だ。悪気はない」
「てか雅パイセンが面倒なのは事実じゃ?」
「おい空崎、お前には先輩を敬うという考えはないのか?」
「場所と相手次第ではちゃんと敬ってるんすけどね」
「差別野郎め……」
「識別の域でしょ。支配欲と勝利の定義の擦り合わせをちゃんとしてくれれば素直に尊敬出来るんすけどね。忌憚のない意見って奴っす」
100メートル走・200メートル走は
後者は僅差だったものの、記録上は間違いなく南雲が勝っている。残る競争対象種目は借り物競争と全学年対抗リレーの二つ。
種目数の関係から「借り物は除外で良いのでは?」という意見が空崎から出たのだが、「運も実力の内って言うじゃないっスか」と述べたのは南雲。
悪態吐くやり取りが繰り広げられているが、二人の間に剣呑な空気は無い。適度な距離感の先輩・後輩のコミュニケーション。
そんな様子を見た
言葉なく空崎と南雲は視線を向けた。その意味を理解し、
「なに。この学校で、まさか普通の高校生の様なやり取りが出来るとは思っていなくてな。クラスポイントが動く内容を経ていくと共に、競い合いは蹴落とす事も覚悟しなくてはならない殺伐としたモノであるという認識がどうしても働いてしまう。だから逆に、今の空気感が新鮮に感じる」
「……ま、優勢に進めてる俺ら赤組だからこそっスけどね。白組の方は───1年以外は、大分気落ちしてますよ」
「今年の1年は中々にタフだな」
「1年の中でもトップクラスの能力がある二人がCクラスに集まってるのが大きいんでしょうけど……後はコイツのせいじゃないっスか?」
「ふっ、違いない」
「
クラス対抗が基本のこの学校。
しかしリーダー格やAクラスへの意識が強い生徒は別として、1年生の大半の生徒はクラス間の競争にそこまで意欲的ではない。
何故ならこれまでに行われたクラスポイントの推移が発生する事柄に於いて、クラス間の争いという認識が働いていないからだ。
1学期中間・期末テストは個人の問題が大きく、無人島試験は全クラス協力体制が敷かれ、船上試験では圧倒的優位な立場のクラスからの提案で全グループ一致で平等の利益を得ている。
競い、敵対し、蹴落とす意識を強める目的だった二つの特別試験を協力的な形で終えた事により、クラス間の競争で鬼気迫る程の動機が見つからないのだ。
付け加えれば、現A・Dクラスの全面協力体制という事象から、楽観的な生徒は「ワンチャン俺らも統合できるんじゃね?」という考えを抱き、逆に聡明な生徒は「夏休みの様な特別試験が来たら2クラスが全面協力している状態で自分達が勝てる可能性は極めて低い」と諦観状態にある。
無論、クラスポイントを下げない為にポイント推移の発生する行事には意欲的に取り組むだろうが、楽観・諦観のどちらにしてもAクラスへの意欲というのは例年に比べて遥かに低いのが今の1年だ。
その分、クラス間の隔たりや敵対心というのも控えめ。学校の想定からは逸れていると言って良いだろう。
夏休みに行われた1年の特別試験の結果については生徒会所属である二人の耳にも届いている。流れている噂から、その要因が空崎にある事も。
まるで悪いことをしたかのように発言する両者に空崎は不満げな表情を返した。
「1年の最優秀候補は須藤か柴田か高円寺……俺としてはサッカー部の
「んー、今回は健……須藤っすね。颯は借り物と四方綱引きを辞退してる影響でその辺りのプラスが無いんで。六助……高円寺は推薦全般出ないだろうし」
「直接対決一つやりゃ取れたんじゃないか?」
「まあ100メートルなら多分勝てたでしょうけど、総合と確実性を考えると流石に避けるのがベターっすよ。アイツが最優秀に拘ってたなら別ですが」
「……拘ってたなら、か」
空崎がある程度は順番についてコントロールしている事は二人とも断定しており、空崎自身も不正している訳ではないので誤魔化さずに答える。
純粋な脚の速さという面で言えば柴田は須藤にも勝ち目があるだろう。しかし総合的な身体能力は須藤の方が高い。勝利の為の組み合わせを考える必要がある立場としては、当然マッチアップは避けるべきだ。
付け加えた言葉に、
「お前は、
珍しく葛藤する様子で問い掛ける
「抽象的っすね、学パイセンにしては。ンなもん内包してる意味合い次第でしょ。独善思考や自分勝手、他者理解を省いた押し付けがましい言動は論外として───
「不要なリスクが生まれるとしてもか?」
「俺が寄り添うと決めているエゴの過程なら
執着はモチベーションと共にパフォーマンスも高める。もちろん過ぎれば見るべきものが見えなくなる為、大事なのは何処で折り合いをつけるかだ。
「ま、これはあくまでも俺の考えな訳で。学パイセンには学パイセンのやり方があるし、別に俺が全部正しいなんて言うつもりもない。でもまあ、そうっすね。あくまで俺の“意見”として挙げるなら……妹にはもうちょい、優しく接しても良いと思いますよ」
「……優しく、か」
「全肯定ではなく、全否定でもない。良いところを良いと評価し、悪いところを悪いと評価する。至極当然の接し方で良いんすよ。期待してるからこそ庇護下から外すってのは分からなくもないけど、厳しいだけが成長の躍進を担う訳じゃないでしょ」
兄に憧れ、頼りにして、歩んで来た道まで否定する必要はない。少なくともその過程が個人能力の
「客観視点と主観、過程と目的意識。何処で折り合いをつけるのか、ちゃんと話し合ってバランスを取るのが───………いやちょっと待て」
会話の途中で、空崎は何かに気付いたように言葉を切る。
反論の余地もないと大人しく聞いていた
「そもそもの前提なんすけど……学パイセンさ、妹に「どう在って欲しいか」っていうのをちゃんと伝えてます?」
「………………ない、な」
「おいこらポンコツ眼鏡」
生徒会長の立場の人間に対して一般生徒が向けてはいけない暴言を思わず吐いてしまう。
だが今までの会話内容から自身の反省点には直ぐに気付いたのだろう。空崎の物言いに言い返す事なく、彼は段々と縮こまっていた。
「あのっすね───いや分かる、分かるよ。依存気質の人間を自立させる為ってのも、兄離れさせる兄心ってのも。学パイセンが妹に一切興味がないってんなら俺もとやかく言うつもりは無いんすけど、でも成長を期待してんなら相応の手順があるでしょ」
堀北(妹)が勝手に成長出来る人間なら
だが現実問題、彼女は“憧れ”という動機で確かな地力を付けてきた。もちろんその過程で蔑ろにしているモノは看過してはいけないが、努力そのものは認める必要がある。
なのに、「なぜ憧れが間違っているのか」も「ならどうすれば良いのか」も教えないまま目標を切り捨てられてしまえば、あんな性格にもなるだろう。
獅子は我が子を千尋の谷に落とす、とは言うが、人間なんて落ち方を間違えればその時点で死ぬのだ。
正しい落ち方も知らない人間が、登り方など考えられるはずもない。
「……しかし、俺は模範的な姿を見せて来たつもりだ。それに間違った“憧れ”を抱かれてしまっては、どうしようもない」
「何の為に口と言葉があると思っていらっしゃる?」
己の選択を言葉一つでバッサリ切り捨てられ、
「言わなくても分かるだろうってのは、ただの怠慢ですよ。その結果失望するなら、それこそ
自立思考は大事だ。
では自立思考を覚える為にはどうするか、という過程での選択がコミュニケーションの放棄というのはあんまりだろう。彼にとっての『模範的な姿』が全て正しく模範であると認識できるほど、人は賢い生き物じゃない。
妹の主観で形成された価値観を度外視して、憧れを抱いた理由を訊こうともせず、ただ失望する。
堀北 鈴音が独善的で勘違いの孤独を歩んだのは事実。綾小路の発言からして躊躇いなく凶器を振るうレベルの危険行動を起こしていたのも推測できる。
しかしそんな性格になった影響は、兄である堀北 学の独善思考からではないかと。空崎はそう指摘した。
───いや後者に関しては義務教育から道徳心を学習していれば起こす筈はないのでこればかりは責任を押し付ける訳にはいかないが。
「そう、だな。否定しようがない。……皮肉なものだな。妹に偉そうに指摘しておきながら、それが正しいと信じ、自らの欠点を省みる事も無かったとは」
『見本』であること。
『模範』であること。
そう生きてきた彼の人生も価値観も、決して否定はしない。寧ろ尊敬さえ覚える。
でもそう在って欲しいと、周囲に向けるものとは違う『期待』を寄せるのであれば、相応の行動を起こす必要がある。兄として誰より近くに居たのなら。
「……ああ。この体育祭が終わったら、しっかり話し合う事にしよう。ありがとう、空崎。俺は後輩にも恵まれた」
「うっす。……ところで其処のニヤニヤしながら「妹さんは先輩の隙になりそうだな。どう利用してやろう」って考えてる雅パイセン。実行したら今後の勝負の機会が無くなると思った方が良いっすよ」
「……へいへい、わーってる。直すつもりではあるけど悪癖なんだよ、先ず利用方法とか考えちまうのは。……いやホント、マジで直すんで、その顔やめてくれないっスか。堀北先輩」
ゴミを見るような目で確かな怒気を帯びている
そんな様子を空崎はケラケラと笑っていた。
「恵みの後輩はどうやら俺だけだったようで」
「あん? ふらふらと生徒会にも部活にも属さず廃人ゲーマーやってる様な後輩が恵みとか笑えるぜ」
「廃人ゲーマーだなんてそんな、褒めなくても」
「どこに褒めてる要素があるんだよ……」
「ところで学パイセン、今回の勝負で買ったら雅パイセンに何させるか決めてます?」
「……? いや、そもそも賭けなどしていないからな。そういう要素がないからこそ受けたとも言える」
純粋な勝敗を決するのみ。
腕を組み真っすぐな目でそう告げる
「分かってないっすね学パイセン。こういう時は些細な賭け事を行うのがセオリーなんすよ。お互いにとって『利』があると尚良し」
「……賭けの必要があるのか、それは?」
「カ~~っ、頭の固い先輩はこれだから。勝負そのものに重きを置き、その勝負を通じるからこそ芽生えるものもあるんすよ。例えば、そうっすね」
「学パイセンが勝ったら、雅パイセンに対する呼称を「みゃーび」にするとか」
「……は?」
「───みゃーび……ふ、みゃーびか」
「え、ちょ……冗談っスよね堀北先輩。そんな呼び方は堀北先輩自身も嫌っスよね? なんか乗り気に見えるの気のせいッスよね?」
「悪くない。なるほど、些細ではあるが絶妙な距離感の縮まりと勝負意欲の刺激を感じる。さて南雲、お前の望みは何かあるか?」
「ええ……」
次期生徒会長の威厳無しな愛称。
見ればニヤニヤした空崎がいつの間にか端末のボイスレコーダーを機能させていた。些細な賭けとは言うが反故にさせるつもりはないらしい。
ある意味では無茶な要求でも通せそうなチャンスではあるのだが───『学生らしい楽しさ』を堪能している今の
ましてここには自身の邪な考えなど容易く見破る
『学生らしさ』とは何かを考え、やがて出した答えは。
「───……じゃあ、焼き肉でもどうっスかね。もちろん堀北先輩の奢りで」
「ああ、もちろん構わない。ふっ……『賭け』という言葉に、警戒を抱きすぎるのもいかんな。コミュニケーションにも使える、いい学びだ」
「何事も過ぎれば毒っすからね。過ぎる事への警戒という学びも、過ぎさせない意識の学びも、どっちも大事だと思ってます」
「焼き肉の食べ
「え、もう負ける前提っスか?」
「『奢り』が無くなるだけだ。理由がなければ俺との焼き肉は嫌か?」
「……ははっ、言い方間違えるとパワハラっスよ堀北先輩」
「む、確かに気をつけねばならんな」
この実力至上主義の学校でも指折りの能力を有している生徒たち。
腹に黒いものを宿しながら読み合い・駆け引きを高度に繰り広げることも出来るだろう3人は───しかし、ただ普通の少年の様に談笑し、蟠りのない屈託のない笑みを浮かべていた。
♢
昼休憩が終わり、午後の部。推薦種目の時間帯。
生徒によっては既に出番を終えて観戦・応援が主体になっている。
全ての競技の中で最も不確定要素が強い借り物競争が午後に入って最初の種目。
開始前に企てていた『お題の内容をプライベートポイントで購入する』という策は通らず、この辺りは情報不足による運要素がどうしても大きくなってしまう。
まあ不可能な要素は取り入れないだろうと、学校に配置されている備品や生徒の所属情報などの『借り物』として挙げられる要素は共有して挑むことになる。
この推薦種目には空崎も出場している。彼唯一の出場推薦種目だ。
結果は、持ち前の思考速度と判断力により身体能力差など関係ない圧勝。個人種目では唯一の1位奪取となった。
他A・Dクラスの生徒も事前予測で把握できていたお題を引き当てていたのが殆どで、元々低めに想定してた借り物競争での獲得総合ポイントを大きく上回る形。高円寺によって危うかったクラス毎のポイント差もかなり修正されたと言っていいだろう。
その当の高円寺は予測通り推薦競技に出るつもりはない様で、ゆっくり観戦モードに入っていた。
南雲が1位を取った一方で
「……会長と副会長は、何か勝負でもしていらっしゃるんでしょうか?」
「ああ。俺はその審判」
「色々なことに首を突っ込みますね、夜白くんは」
「その方が健全で面白そうだし」
坂柳の問いかけに、空崎は彼女が持つタッパーに詰められたはちみつレモン*1を一つ食べながらそう答える。
空崎のスタンスは重々承知しているので、坂柳はそれ以上追及することなく、ただ呆れたように肩をすくめた。
続く四方綱引き、男女混合二人三脚も予測から大幅にズレることなく結果が出ていく。
比較的低めに見積もっていた当初の予定よりも更に僅差になってはいるが、このまま進めば1年の学年内順位はA・Dクラスの1・2位フィニッシュになるだろう。
「───は~、長かった。油断は出来ないが、なんとか無事終わりそうだな」
「だねぇ。閉会式と同時に総合ポイントの発表があるみたいだし、これは時間が掛からない筈だよ」
「お、そりゃ有難い情報」
「打ち上げには参加するよね?」
「当然。
「よーし、私もリレー走者として最後の気合入れないと!」
「ガンバレ」
「応援が安い!? もー、他人事だと思ってるなら交代させるよ?」
「昔はお前みたいな走りも出来たが膝に矢を受けてしまってな……」
いつも通りの気安いやり取り。
実際に走る前になればちゃんとした応援の言葉を贈るし、贈られるだろうというのがお互いに分かっているので、遠慮のないコミュニケーション。
既に結果がある程度見えているので少しばかり気が緩んでいる。空崎に関してはとっくに出場種目を終えて観戦モードに入っているから猶更だ。
「───……」
「……夜白くん?」
故に、空気感の変化は露骨だった。
最後のリレー準備を進めているDクラスの面々に焦点を当てた空崎は、突如ピタリと動きを止めて目を鋭くし観察を続ける。
一之瀬の疑問の声に答えることなく、空崎は動き始めた。
「───木下」
「な、なに? 空崎くん」
「脚出せ」
「……やだなぁ、下手したらセクハラだよ? 問題にはしたくないから───」
「脚、出せ」
些か張り詰めたような空気感を纏う空崎の様子に周囲が気付き、その対面の木下にも視線が集まる。
セクハラ目的じゃないことは周囲に既に認識されている。木下は大人しく指示に従う。
「……捻挫。骨折の可能性は無し。二人三脚で少し無茶な体勢になったか……取り敢えずリレーは辞退だ。翔、アクシデントによる代走のポイントはこっちで負担する。玲音、代走はお前に頼むから身体温めておけ」
「あ、ああ」
「ちょ、待ってよ! 大丈夫、全然走れるから! ただの軽い捻挫だよ? 陸上部の私が辞退したら……ッ」
「駄目だ」
実際、軽い捻挫なら多少の違和感で割り切って速さへの影響は僅かで済む。代走として選んだ近藤も決して遅くはないが、このハンデ程度なら陸上部の木下の方が速いだろう。
冷静な判断とは言い難いが、事実は事実。指揮が龍園ならば「本人が言うなら良いだろ」と判断しただろうし、事実今もその意味を込めた視線を空崎に送っている。が、にべもなく却下した。
「捻挫を軽く見るなよ、木下。痛みが軽くても症状は靭帯の損傷だ。悪化すれば完全に断裂する可能性もあるし、関節が変形する。今まで通りの走りが出来なくなるぞ」
「……、……っ」
「いいか。俺らは少年漫画の主人公じゃない。怪我を背負ってでも無茶して勝ちます、ハッピーエンド───なんて綺麗な都合の良い未来はそうそう起こり得ない」
でも現実は、残る50年以上の人生に傷を抱えながら生きることになるのだ。一時の感情でそんなリスクを背負う必要はない。
「そうしなきゃいけない場面もあるかもしれないが、少なくとも今はそうじゃないだろ。負けてもノーリスクだからって訳じゃなく、仮にお前らがクラスポイントを有していたとしても、たかが50のマイナスを避ける為だけに一生モノの怪我を負いかねないリスクは割に合わない。お前は、そんな安い存在じゃないからな」
「っ……」
「という訳だ、翔。文句は受け付けないぞ」
「はっ……甘ちゃん野郎め」
「この学校が無茶を容認し過ぎなんだよ」
己がしてきた対策───1年にとっては実感の湧かないだろう想定。監視カメラの補完や、無人島試験で一致団結を行わなかった場合の『もしも』を思い描きながらそう呟く。
その無茶の最たる要因になり得た目の前の男は、自覚があるのか論争には持ち込まず、とぼける様に肩を竦めた。
───リレー開始前にCクラスとDクラスの学年内ポイント差が僅差だったこともあり、この2クラスに関してはリレーでどっちが先かで学年内の順位が決められていたと言える。
そして結果は、僅かな差でCクラスが先着。
学年内の総合ポイントは、1位Aクラス。2位Cクラス。3位Dクラス。4位Bクラス。1年生の最優秀には須藤が選ばれている。
総合は赤組の勝利。結果、Aクラスはクラスポイントが+50。Bクラスは-200。Cクラスは-100。Dクラスは-50(元が0のため変動なし)という結果で体育祭を終えることになった。
♕ Tips. ✍︎
堀北(兄)が借り物競走で引いたお題は『好きな人(恋愛的に♡)(星之宮直筆)』と『兄・弟・姉・妹のいる生徒』。前者は実は先に空崎が引いており躊躇いなく柴田を連れて行って「え、恋愛的になんて書いてませんよね?」と答えた影響で書き足された。後者は生徒会長の知識量なら思い至る生徒がいたかもしれないが、初手で鈴音が浮かんだので反射的に却下している。3枚目は『眼鏡』。
全学年リレーでは勝っているので南雲との勝負は引き分け。以降は南雲の事を『雅』と呼ぶ様になるし、焼肉には生徒会のメンバーで行った。