Q. 社会性もあるしニコイチスペックだとしたら何が弱点なんだ。
A.強いて言うなら他人に干渉し過ぎるところ。前話に特に説明無しで出てきた『悪癖』にも関連してる。あと素手のタイマンはガチで貧弱なのでそこに持ち込まれると弱い。堀北(妹)とか相手にしたらボッコボコにされるレベル。
Q. 学校が生徒個人の賞金に対して3割寄付を強要するのってどうなんだ...?
A.学校側は強要してない。空崎側が通りやすくする為に契約条項として予め提示してた。
空崎的には5割まで許容範囲だったけど、学校側は「ゲームでそんな稼げるわけ無いからすぐ辞めるだろ」と舐め腐ってたので実は1割でも余裕で通ってた。会議でも「時間が削れるの面倒だなぁ」くらいの認識。なので1ヶ月で230万を稼がれて実は焦ってる。
でも契約破棄して8000万払うのもなぁとも。後々になって「5月の内に破棄しときゃ良かった!」と阿鼻叫喚に陥る事が確定。
Q. 茶柱センセー、「私もやってみるか」とか言ってゲーム始めたりしない?
A.しないけど、仮に始めたらイメージに指の動きが追いつかなくて愕然とする。そこで漸く空崎のゲームの腕前が常軌を逸してる事に気付く。
現時点だと「今のところ全勝とは、ゲームの腕前に自信があるのも頷けるなぁ」程度の認識。空崎のプレイ画面を観てれば満足するので他の人のプレイ映像を検索しないポンコツ。
Q.茶柱エンジョイしすぎだけどクラス間闘争はどうした?
A.改めて伝えるが作中はまだ1年の5月初め。Dクラスの惨状が加速していく中で空崎の格ゲーでノーダメ完封とかテトリスで20RENパフェとか人力9連続パフェを目の前で魅せられたので映像が気持ち良過ぎてドーパミンが刺激された。なおどれだけの神プレイかは分かってない。
クラス間競争自体は諦めていないが、綾小路をどう動かせば良いか悩んでる最中。
「夜白ー、ここ教えてもらって良いか?」
「はいよ。どこで躓いた? あーここは───」
放課後のBクラスで、勉強会が行われている。
全員参加という訳ではなく、比較的勉強が不得手と言える生徒が中心だ。
成績に優れている生徒も居るが、大半は自主学習をしており、教室の机には幾つか空白が生まれていた。
一之瀬は結局教える側で、主に女子を対象。空崎は男子を対象とし、呼ばれればその都度質問に答える形を取っている。
不得手とも得意とも言えない生徒が何人か居たが、彼らは空崎が作成した擬似テストを受けていた。
「夜白くん、夜白くんっ」
勉強会が始まって20分弱。
呼ばれる事が途切れた段階で、一之瀬はBクラスの生徒から少しばかり離れた位置で空崎を呼びながら手招きする。
「どうした?」
「えっと、その───例の過去問の範囲じゃなくて、最初に教えられた範囲の勉強だけど……これで良いの?」
「あー……この手が使えるのって今回だけっぽいんだよ。学パイセンの反応からして。結局は地力を整えていく必要があるし、取り敢えずはこれで良い。チエちゃん先生から範囲変更の連絡がない今だと、そっちの範囲を教えられても身に入らないだろうしな」
「そっか……。ありがとね、わざわざ擬似テストなんて作ってきてくれて」
「どういたしまして。苦手意識を覚える事が多い傾向にある問題を中心に組んだけど、後で帆波も解いてみるか?」
「む、挑戦状かな? 受けて立つよっ」
「帆波ちゃーん、ごめん! ここ教えてもらって良いかな?」
「あ、うん! どこどこ?」
「空崎、擬似テストを終えたから採点を頼めるか?」
「おっ、早いな隆二。90点以下なら飲み物奢りって事でよろしくな」
「……賭けが急過ぎないか? いや、やはりもう少し見直しを───」
「却下」
和気藹々と勉強は進む。
元々基礎が出来ている生徒ばかりで、教える事にさほど苦労はせず時間が流れる。
そして、50分が経過した。
「帆波、そろそろ休憩時間にするか?」
「ん、そうだね。じゃあ何人か私と一緒に飲み物を───」
ガラっ───と。
突如として、Bクラスの教室の扉が開かれる。
他クラスの生徒が用事なのか、或いはクラスメイトが途中参加しに来たのか。
教室に残っていた生徒の大半の視線が、音の発生源へと向かう。
「ハッ、相変わらずBクラスは真面目連中が多いな」
空崎は自身の記憶を探り、彼がCクラスの生徒である事を理解する。
名前までは把握していないが、入学して1週間の間に遅刻した際、覗き込んだCクラスの教室で見た顔だ。
「石崎くん、ウチの教室まで来てどうかしたの?」
(Cの石崎───石崎 大地か。見るからに血の気の多さが浮かび出てんな……)
一之瀬の発言から彼の名前を把握し、不良のお手本とでも言うべき着崩しと雰囲気に、空崎は苦笑する。
「なーに、放課後でやたら五月蝿いクラスがあるもんだからよ。てっきり乱交パーティーでもしてんのかと思ってな」
───うーわ、と。
恐らく、当人を除いて教室内にいる全員の心の声が一致しただろう。
「うわ……っ」
何なら一部はギリギリ本人に聴こえない程度の声量で溢している。
下品な憶測をあっけらんと言葉にする石崎に、その場の全員がドン引きしていた。
「……声大きかったかな? 扉も閉めてたし、漏れ出る声量で話していたつもりは無かったんだけど」
「ア? 俺がイチャモンつけてるって言いたいのか?」
「まさか。もし本当なら建て付けについて学校側に問い合わせないとね! って思っただけだよ?」
「そうかよ」
一之瀬だけは表情を崩す事なく、応答していた。
石崎は唾でも吐きそうな程に不機嫌な様子を見せているが、流石に証拠が残るレベルの行動はしないと弁えているのか、動く様子はない。
───というよりは。
(……やたらソワソワしてんな。帆波相手に緊張───してない訳じゃないが、それ以上に別の所へ意識が泳いでる。これは……そうだな。
空崎は持ち前の観察眼で石崎の内面を読み取り、何が狙いであるかを把握する。
そして僅かに、口の端を釣り上げ、即座に人当たりの良い笑みに切り替えた。
「まあまあ、テスト期間でピリピリするのはどの学校も一緒って事だ。迷惑を掛けたなら悪かったな」
「あ?」
「Cクラスの友人から聴いた話だと、成績が振るわない生徒も多いらしいし……ここは詫びとして、俺が作ったこの擬似テストでも───」
ヘラヘラと笑いながら、軽率に肩に触れる。
教室内の監視カメラに石崎の口元が映らない角度を意識しつつ───沸点が低ければ直ぐにキレるだろう、と。
そしてそれは、現実として起こった。
「アァ? 少し勉強が出来るからってテメェ見下してんのかオラッ!」
「ちょ、石崎く───」
片手で胸ぐらを掴まれ、吼えられる。
流石に手は出さないだろうと認識していた一之瀬は慌てて止めに入ろうとしたが、石崎には見えない位置で空崎が掌を向けて介入の阻止を指示した。
空崎にとって想定通りの行動である。一之瀬はそれを理解したのか、落ち着かない様子で見守っていた。
そして、空崎が取った行動とは。
「ヒッ───ごめんなさい許して下さい殴らないでっ」
酷く情けない表情を晒しながら、謝っていた。
─────………
……………?
クラスの空気が固まる。
視線の意味は困惑だった。
普段から空崎と関わっているクラスメイトにとってそれは、あまりにも衝撃的な───白々しい演技だったから。
「ぁ、そんなつもりはなかったんスけど……こ、これで勘弁してくれやせんかねッ? ヘヘッ」
「お、おう? ……けっ、情けない奴がBクラスに居たもんだ。興が削がれたぜ」
空崎の胸ぐらを掴んでいた手を離し、空崎が見せた端末に表記されている『譲渡完了』の文字を確認し、石崎は己の端末を手に取る。
プライベートポイントが振り込まれた事に驚愕と困惑を見せていたが、追求する様子も返す様子もなく、彼は捨て台詞を吐き捨てて教室を出ていった。
───少し考えれば。
これだけの早さでプライベートポイントの譲渡機能を使うなど、前もって準備していなければ不可能だという事に気付きそうなものだが。
石崎がそれに気付く事は無かった。
「………よし、お前ら」
出ていった石崎を見送り、彼の歩幅からして聴こえないだろう距離になったと判断した空崎が口を開く。
凄まじく爽やかな───そして彼を良く知る友人からすれば悪どいと取れる様な笑みで、告げる。
「Cクラスをカツアゲで訴えようぜっ☆」
───ああ、コイツが他のクラスに所属していなくて本当に良かった。
その場に居たBクラスの生徒の心が、再び一致した瞬間である。
♢
「……思ったより早い帰りだな。ちゃんと指示通りやったのか?」
場所はCクラスの教室。
椅子に過剰に寄り掛かり、脚を組んで端末を弄る彼───Cクラスのリーダーこと龍園 翔は訝しげに、戻ってきた石崎へそう問いかける。
出来るだけ自然な流れで胸ぐらを掴む程度の接触を図れ───というのが彼の指示。
正当な理由があれば、この程度の行動は学生同士のちょっとしたいざこざで済むだろうと考えた結果だ。
「は、はい。Cクラスの成績が悪い、なんて言い方をしてきた奴がいたんで、それにキレた感じで」
「なら結構。……の割には、随分と困惑してる様子だな? 何か隠してるなら吐かせてやろうか?」
「いや、その……急にプライベートポイントを渡してきて媚びへつらってきたんで、どうしたもんかなと」
「あ?」
Bクラスは良い子ちゃんの集まりである。それが龍園の認識だ。
とはいえ脅しに簡単に屈するような性格をした生徒に心当たりはない。問題にならないよう諫めようと動く───それが龍園の想定であり、だからこそ石崎が思っていたよりも早く帰ってきたと考えた。
「……そいつの姿に見覚えは?」
「あんまり……少なくとも今までちょっかいを出した相手の中には居なかったです」
「………渡されたプライベートポイントの量を見せろ」
石崎はおずおずとした様子で端末からアクセスできるポイント残高を開き、移行履歴を画面に移して龍園に向ける。
最新の移行履歴に刻まれたポイントの量は、『34000』だった。
「チッ───おい石崎、とっととこの金を……いや、もう遅ぇなクソッ。舐めた真似してくれやがって!」
「え、えっ?」
「分かんねぇか? 石崎、この34000っていう
鋭い目つきで睨みつけながら問い掛ける龍園に、石崎は動揺を覚えながらも頭を回す。
「半端って───……、……あっ、これってCとBの……!?」
「気付いたか。俺らとBクラスのクラスポイントの差は340。プライベートポイントに換算すれば一人当たり34000だ。そいつは媚びへつらったんじゃなく、ポイントを使って挑発してきたんだよ」
「な、舐めやがって……!」
「だが問題はそこじゃねぇ。ただの意趣返しなら、怒りを買った挙句にポイントの浪費で馬鹿の行いに過ぎないからな。俺の予想が正しけりゃ───」
ガラッ───と、音を立てて開かれる扉。
そこには険しい表情を晒すCクラスの担任、坂上がおり、教室を見渡している。
石崎を視界に捉え、視線を彼に集中させた。
「石崎くん、君にカツアゲの疑いが持たれています。詳しく話を伺いたいので着いてきて下さい」
「ハッ、手が早けりゃ口も早ぇな」
「ど、どういう事っすか!? 俺はンな事して───」
「黙って着いてけ石崎。そんで坂上には正直に話せ。余計な短気は起こすなよ」
「ぐっ……分かりました」
坂上に着いて出て行く石崎を見送り、龍園は考えに耽る。
(甘ちゃん連中だと思ってたが、強かな奴が居たもんだ。……教室には監視カメラがある。急突貫なら穴のある策だろう。動作……はカツアゲの補完になりかねないか。声を拾えてれば疑いを晴らしつつ向こうが冤罪を仕掛けてきたと訴え返す事も───)
「龍園くん」
思考を深めていた龍園の耳に、キーの高い声が入り込む。
集中していた彼は反応が遅れ、数秒の間を置いて顔を上げた。
「……あ? どうしたひより。こちとら急な案件で忙しくなりそうなんだ。雑談なら後にしろ」
「石崎くんの件ですよね?」
「さっきまで教室に居なかったのに、耳が早いこった。だがテメェはクラスの問題に関わらないっつー話だったろ。俺もそれを許可した。それとも協力してくれんのか?」
「方針は変わりませんよ。ですが、友人からのお願いでして。
「……ほう? 良いぜ、聴かせろ」
少女───椎名 ひよりの『
椎名は自らの端末を取り出し、チャットに記されている文言をそのまま言葉として出力し始めた。
「では……。『こういったトラブルでは生徒会が介入する審議会を経てペナルティが決定する。石崎を退学にしない事はもちろん、両者のクラスポイントがマイナスにならない様に立ち回り、審議会で得た情報を提供するから、ペナルティを探る行動はこれで手打ちにしろ』……との事です」
「なるほど。言葉だけじゃなく明確な対価を提示したか。そいつは交渉ってもんを弁えてるらしいな。だが……───」
───要求を飲むにはまだ安い。
それが龍園の判断だった。
確かに仕掛けたのは石崎であり、プライベートポイントの移行という証拠とこれまでの接触がある以上、有利なのはBクラス。
だが徹底的に対抗しようと思えば冤罪を訴える事も出来る現状で、『いつかは知れたペナルティの内容』を対価にした所で旨味が少ない。
クラスポイントがマイナスになるかも定かではない以上、この条件では確約は出来ない。
(急突貫にしちゃ上出来だ。だがこれなら徹底抗戦した方が色々と探れる)
「ひよ───」
「それと、追伸」
───断ると返せ。
そう紡ごうとした龍園を遮る言葉。
額に青筋を浮かべて不快を示す彼に気付かないまま、椎名は伝達を続けた。
「『石崎には土産を持たせた。今回限りの必勝法だ。存分に活用してくれ』。……以上です。追伸含め、以降伝える内容はありません」
「土産……必勝法?」
追伸の内容に龍園は眉を顰める。
具体的に何を渡したのかまでは伝えていないらしい。椎名も「土産とは何でしょうね?」と呟いており、要領を得ない。
「チッ……ひより、石崎が戻ってくるまで返事は保留だ。取り敢えず教室に居ろ」
「分かりました。本に集中しますので、返事の内容が決まったら声をお掛けください」
鞄から本を取り出して即座に没頭する椎名を横目に、龍園は頭を回す。
土産の内容は気になるがそれはそれとし、冤罪で訴える場合のシミュレーションだ。
沈黙が場を支配し───10分が経過。
扉を強く開く音。
石崎が解せないと言わんばかりの表情で龍園に近付いてくる。
「龍園さん、俺はカツアゲなんて───」
「わーってるよバカが。プライベートポイントを渡してきた奴が嵌めてきた。結論はもう出てる。それより石崎、そいつから何か土産でも渡されなかったか?」
「えっ、み、土産っすか? えぇと……あ、なんか作った擬似テストってやつを渡されましたね」
確かポケットに───と。
制服の腰ポケットに手を突っ込んだ石崎は、疑問を覚えた様に首を傾げる。
しわくちゃになっている紙と丁寧に折り畳まれた紙を取り出した。
「あれ……?」
「どうした」
「いや、こっちの折り畳まれた紙なんて入れてた記憶が無くて……」
「……両方とも寄越せ」
「は、はい」
龍園は先ず、石崎が貰った心当たりのあるしわくちゃな紙を広げて見る。
(……面倒な問題ばかり集めてんのか? 教科の偏りからしてこれが必勝法とは思えねぇ。となると、もう片方か)
擬似テストと称した紙は机の上に放り投げ、折り畳まれた紙を広げる。
驚くほど綺麗に折り畳まれていたため龍園は一見で気付かなかったが、6枚重なっている。
(回答用紙……堀北 学? 生徒会長の……1年の頃の過去問か。範囲は多分1学期っぽいが、過去問の何が必勝法に───いや待て、6枚目のテストはこの間の小テストと同じ問題じゃねぇか? ……それに、坂上は確か……)
「…………ク、クク……おいおいそういう事か? 精査する必要は……そうか、
「りゅ、龍園さん?」
「石崎、今回の件はお前がカツアゲを起こしたって事で終わらせる」
「えっ、どういう───」
「落ち着け、詳しくは後で説明する。悪いようにはしねぇよ。おいひよりッ」
口元を手で覆い、笑いを溢す龍園が告げた言葉に石崎は動揺するも、彼を宥める言葉を掛けた後に椎名の名前を呼ぶ。
怒鳴る程ではなく、だが普通よりも語気を強める事で集中している人間にもしっかり届く様に。
彼女は読んでいた本に栞を挟んで鞄に戻し、端末を手に取った。
「結論が出ましたか?」
「ああ、そのお友達にはこう伝えとけ。『了解したぜクソ野郎』だ」
「…………『了解した』ですね。返しておきます」
「おい『クソ野郎』を付け忘れるな」
敢えて無視した言葉を蒸し返され、椎名は不快を隠さずに眉を顰める。
「重要ですか、そこ。女の子にそんな言葉を強要するなんて見損ないましたよ」
「ハッ、損なう何かがあったのかよ?」
「……それもそうですね。訂正します。最低です、龍園くん」
「クククっ、テメェも大概クソ度胸だな。だが良いぜ、今の俺は機嫌が良い」
龍園は愉快そうに何度も笑いを溢しながら、Bクラスの教室がある方向へと視線を向ける。
「仲良しこよしの雑魚だと思ってたが、面白い奴が潜んでたな。Bクラスのポイントがあそこまで残っていたのはそいつの功績だな? ククっ……仕方ねぇ。暫くは大人しくしてやるか」
「賢明な判断だと思います」
「……ひより、帰る前に二つ聴く。そのお友達とやらの名前と性格、能力について教えろ」
「友人を売る様な真似はしませんし……そもそも、その事について尋ねるならば私は不適切かと」
「あ?」
「私は図書室でしか彼と会いませんし、直接顔を合わせたのは1週間以上前です。基本的にチャット機能で本の感想を語り合うくらいですからね」
───椎名のマイペースに付き合える程度には変人らしい。
取り敢えずの評価の位置付けとして『変人』の烙印を押し、続けて質問を言い放つ。
「二つ目───まさかとは思うが、スパイなんて真似はしてねぇだろうな?」
「……どちらにしても、干渉はしていないと決めています。それに、どう仕掛けるかについての会議に、私は参加していないでしょう?」
「ククっ、速攻で疑われた理由に気付いた時点で怪しさ満点だぜ?」
「では、通話履歴やチャット履歴を確認しますか? 削除跡もありませんので、やり取りは全て見れると思いますが」
「ハッ、そこまで言うなら信じてやる。本の感想なんざ全部見ようと思うと辟易するからな」
「そうですか。確認したかったらいつでもお申し下さい」
椎名は会釈し、マイペースに教室を出て行く。
彼女を見送った後、石崎は龍園に問い掛けた。
「良いんですか? だいぶ怪しいと思うんすけど……」
「疑わしくはあるが、まあシロだろ。暴力で従う様な女じゃねぇが、かと言って暴力を振るわれる理由を作る奴でもねぇ。だからこそ不干渉を貫いてんだ。それよかテメェはこれからの身の振り方について気にしとけ」
「あ……そ、そうっすよ龍園さん! カツアゲをした事にしろってどういう事なんですか!?」
「声デケーよバカが、ちゃんと今から説明する。いいか、今回の流れは───」
石崎にこれから起こる事、彼がすべき事についての内容を告げて行く中、龍園は頭の中で『事を起こした椎名の友人』について考える。
(必勝の過去問なんざ紙で持っているのはリスキー、普通なら電子保存一択だ。ましてやポケットに入れるサイズに6枚を折り畳むなんざ、誰かに忍ばせる目的以外でやる必要がない。つまりソイツは最初から、
───そうなれば当然、石崎の口元の動きはカメラに映ってないだろう。
冤罪を晴らすには証拠があると確実。アドリブで対応していたなら証拠が映っている可能性は充分にあり得たが……。
(これはアドリブじゃない。
石崎への説明を終えて一息。
視線を外の窓ガラスへと映し、そこに反射される己の顔。
引き攣った笑みを浮かべ、一滴の冷や汗を垂らす自身の姿を認識しながら、ポツリと呟いた。
「───ククっ、倒すには骨が折れそうだ」
♕ Tips. ✍︎
椎名が意味深な言動をしている様に見えるかもしれないが、本当にスパイでは無い。
空崎からのチャットで頼まれた際に『
ちなみに二人の出会いは入学間もない頃。色んな本を速読してる空崎を見て「あまり仲良くなれなさそうな人だ」と認識していたが、ミステリー小説やホラー小説の類なんかはじっくり読んでいるのを見て好感度が修正され椎名から話しかける様になった。
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誤字脱字の報告も助かります! 何度か見返してても何故か見落としがあるんですよね……。