ようこそ最強ゲーマーのいる教室へ   作:現魅 永純

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 Q. チェスを〇‪✕‬‪‪ゲームと評するバケモンを相手になんでそんな大事な事まで賭けちゃうかなぁ…
 A.チェスの学習の際に『  』対グランドマスターの配信をリアルタイムで追っていたので、高育入学以前に脳を焼かれていた影響。
 坂柳視点でも空崎は『才能の権化』なのでぶっちゃけ勝てるとは思ってなかった。それはそれとして自身との差を痛感したかったので挑んでる。プライドの塊である筈の坂柳が先手有利のチェスで「私が先手でお願いします」をやってたのはその為。
 あと賭けの内容を吟味した結果「別に負けても私自身はそこまで困りませんね?」と結論を出した。この辺は作中1年の9月で明かされる予定。
 なお、容赦なくコテンパンにされて敗者となったのは普通に屈辱なので部屋に戻った後に泣いてる。

 Q. 『  』からすると、AIより人間の方がチェスやる分にはキツい?
 A.空やテトと同レベルで駆け引きが熟達してない限りは意図も読み切るのでぶっちゃけ大した問題じゃない。大体は「あーうん悪足掻き乙(笑)」で容赦なくトドメを刺す。
 被害者例:坂柳 有栖




7話

 

 

 

 

 外部への連絡手段を絶たれた敷地内───学生が通う高度育成高等学校。国が運営しているという事で莫大な投資が為されており、図書館には様々な書物が揃っている。

 中間テストまで一週間となった現在昼休み、学年を問わずにその場へと集う生徒達が多数。

 

 テーブルの一角では二人の男女が本のページを静かに捲っていた。

 それは中間テストの為の参考書ではなく、図書館に置いてある小説である。

 

 白髪とルビーの瞳、目の下に深い隈を作り、高育指定の制服であるジャケットのボタンを外しネクタイを緩めている少年───空崎 夜白と。

 彼とは逆に授業中でないにも関わらず制服を真面目に着こなし、ブルーグレイの髪と淡いパープルの瞳で儚い印象を抱かせる少女───椎名ひより。

 

 彼らが何故、この中間テストという期間で読書に明け暮れているか。

 空崎は既に高校範囲など履修済みで、大学の必修カリキュラムとなる一般教育までならば既に問題ないと言える程度には学習を終えている。それこそ専門分野まで出されない限りは躓く事などあり得ない。

 椎名は勉学という点で優秀な部類ではあるが、あくまでも一般的な範疇だ。しかし今回に限って言えば必勝法と呼べる『過去問』がCクラス内では共有済みであり、まず満点は取れるだろうという自信があった。

 

 そういった経緯から読書に充てる時間を徐々に増やしており、たまたま噛み合ったので横並びで本を読んでいるのだ。

 これもまた青春の1ページ────

 

 

「やっぱ物語にエロスはあって良いと思うんだよな」

 

 

 ───華の女子高生に対する話題の振りではない。

 さよなら青春。さよなら高校人生。

 

【完】

 

 ……と、そうなってもおかしくはないのだが。しかし空崎とて話題振りの内容は相手次第で考える。

 ドストレートに下ネタを放つならば間違いなくアウトであったが、文芸作品を好む彼女に対する話題としてはセーフだ。何故なら芸術に於いて“性”の類はテーマにされる傾向にあり、知識としては彼女にも蓄えがあるだろう。

 

 昨今、フィクションであろうとも規制される事の多い性表現に対する意見としてならば問題ない───!

 

 

「セクハラですよ、空崎くん」

「───……ちょっと自首してくるわ」

 

 

 問題だった。

 本を閉じて教員室へ向かおうとする空崎を、椎名はクスリと笑って引き留める。

 

 

「冗談です。この発言で問題になるのであれば、石崎くんは今頃停学中ですよ」

「はは、ナイスブラックジョーク。俺の行動次第じゃマジでそうなってたな。つまり俺の生殺与奪は現状ひよりが握ってる訳だ」

「おや、どうしましょう。クラス争いに参加するつもりは無いのですが、言葉で制することが出来るならば吝かではありませんね」

 

 

 ───ははは。

 ───ふふふ。

 

 

「それで、フィクションに於けるエロス───いわゆるエロティシズムですね。官能小説の類ならばあって然るべきでしょうが……通常の小説で必要かと言われると、要らないと私は思います」

「うむ、蛇足になりかねん捻じ込みならば俺も同意見だ。エロを前提に作られた物語ってのはどうしてもご都合を感じる。少年誌レベルでの漫画的表現なら大歓迎だが、小説だと「ここ挟まなくても良くね?」ってなる事も多いからな」

「……結論が出ているのでは?」

「いやでも考えてみてくれ。こいつら間違いなくこの後ヤるなって流れの後に特に表現もなく意識変化もなく物語が進んでいく様を。こう───こう、なんかモヤっとくるんだよ。お前らもうちょい人間味を見せてくれって」

「気持ちは分からなくもありませんが……それは作者の腕次第かと。現代の作品でも表紙が露骨でない限り規制は掛かりにくいですし」

「身も蓋もない意見をありがとう」

「……さては今読んでいる作品がその流れでしたか? 途中から速読に変わっていましたが」

「名推理だ、探偵さん」

「こんなのを推理呼ばわりされたくありませんね……」

 

 

 ふ、と。ドヤ顔気味に告げる空崎に対し、椎名は苦いものを噛み潰したような表情で言葉を返す。

 

 

「……話題を変えましょうか。先日、と言っても一週間も前になりますが。坂柳さんがリーダーを降りて()()()()()()()()()()()件についてはご存知ですよね」

「ああ、流石にあんだけ噂になって知らない訳ない」

「アレは、空崎くんが原因なのでは?」

「───ん〜……そう()()()()

 

 

 殆ど確信気味に問いかけた椎名だったが、空崎は歯切れの悪い返事をする。

 肯定はしているが、空崎自身も疑問を感じている微妙な返答。椎名は本格的に話を聴く為、開いていた本に栞を挟み閉じて置く。

 

 

「妙な返答ですね」

「ああ、まあな。多分その様子だと事情には勘付いてるだろ?」

「……当日に遅くまで図書館に居た後、一部教室に明かりが点いている事に私が気付きました。週末でしたからあまり気にしていませんでしたが……週明けに坂柳さんの件がありましたので、関連している可能性が高いと龍園くんに報告したんです」

「なるほど、情報をプライベートポイントで購入したのか」

 

 

 その日の該当時間帯に教室に居た生徒の情報。

 Cクラスのリーダー、龍園が起こしただろう行動を言葉にすると、椎名は頷いて肯定する。

 

 

「しかし良いのか? これクラス内の情報を売ってるし……()()()()()()()()()()()()っていう証明にもなるんだが」

「構いません。というか、龍園くんからのお願いなんです。機会があれば伝えてくれって。……ああ、こうも言ってました。「過分はこれでチャラだ」と」

「律儀なヤツだな。───と、話が逸れたか。有栖の件は……ちょっとした賭けを行ってさ」

「賭け、ですか。先程の様子からしてリーダー争いをやめさせた訳ではありませんよね?」

「ああ。まあ具体的な内容は言えないが、賭けと今回の件はまた別って事だけ理解してくれ」

「……分かりました」

 

 

 龍園に報告するかどうかについては問わない。空崎としては知られても問題ない内容しか教えていないからだ。

 あの時のチェスの結果も、会話も、坂柳が予めプライベートポイントで保護している事をゲーム中の会話で知っている。流石に教室を使用した生徒の情報までは保護対象にしなかったようだが。

 龍園もその辺りの探りを入れたかったのだろうが、賭けの内容も、空崎が『  (くうはく)』である事も、無闇矢鱈に言いふらすものでは無い。

 

 

「ん?」

 

 

 ───思い出した。フランシス・ベーコンだ!

 ───うっし! これで満点確実だな!

 

 

「……少々、騒がしい方がいらっしゃいますね」

「だな」

 

 

 距離が離れているため、二人にとってはそれほど耳障りになる話し声では無いが。

 しかし充分な距離があってもハッキリと内容が聴き取れるとなれば、相応の声量で話しているという事だ。実際近くに座っていた上級生は煩わしそうに彼らに視線を送っている。

 

 

「注意してくるよ、知り合いっぽいし」

「損な役回りですね」

「いや、人物的に()()()()だ」

「……悪巧みですか?」

「失礼な。善良な一般生徒による注意喚起と、ついでの顔合わせだ」

 

 

 呆れたような溜め息を溢しつつ、椎名は本に視線を戻す。彼女らしい不干渉の姿勢だ。

 空崎は今も張った声で喋る彼らに近付いていく。

 

 

「寛治、春樹。流石に声が大きいぞ」

 

 

 Dクラスの生徒達の集い───その中の知り合いであり、先程まで声を張っていた二人の名前を呼ぶ。

 池 寛治と山内 春樹。ちょっとした事情から話す機会がそこそこにある他クラスの友人と称すべき存在。

 

 

「あー悪い悪い。ちょっと騒ぎ過ぎたな。問題が解けて嬉しくってさ〜」

「……嬉しいのは良いんだがな。ここ図書館だし、上級生達もテスト期間でピリついてるからさ、その辺りも理解してやってくれ」

「うぐ……す、すみません」

 

 

 空崎の発言で周囲の睨みつけるような視線に気付いたのか、池は頭だけ下げる形で周囲に謝罪する。

 怒気が支配していた空間は霧散しそれぞれが手元の参考書等に意識を向け直した。

 騒いでいたもう一人である山内はヘラヘラと笑い謝罪する様子はなかったが───。

 

 

「こいつらの面倒見るのは大変だろ、桔梗」

「……あはは、友達を助ける為だもん。大変なんて思ってないよっ」

「うーん、()()()()

 

 

 Dクラスの清涼剤こと櫛田 桔梗。誰であろうと分け隔てなく優しく接し、その優れた容姿から1年の中でも特に人気の高い女子と呼べる。

 ───が、彼女が承認欲求の塊である事を空崎は知っている。またかなりの激情を内心に抱えており、それを取り繕っている事も。

 

 彼女は空崎が気付いていることに気付いていないが───感情を読み取れる空崎にとって、彼女の内心は容易く分かる。

 現在もストレスによる苛立ちを内面に宿しながら、それを感じさせない表の顔を見せている。故に「流石」と称した。

 

 

「そっちは須藤 健だな?」

「あ?」

「バスケ部の期待の新人だって聴いてるぜ。本気でプロ目指してるって事もな。夢を追える奴は尊敬に値する。今のうちにサイン貰っていいか?」

「……お、おう。サインなんざねーけど……考えておくぜ」

 

 

 本心からの言葉だ───そう思わせる程の真っ直ぐな瞳に、須藤はたじろいで頷く。

 人当たりの良い笑みを崩さないまま、空崎は残る二人の方へと向いた。

 

 

「堀北 鈴音と綾小路 清隆───で、合ってるか?」

「……そうよ」

「あ、ああ。オレの事を知ってるのか?」

「お前に関しちゃ掲示板のランキングにちょいちょい乗るからな。一方的に知ってる。あー名乗ってなかったな。1-Bの空崎 夜白だ。初対面の御三方はどうぞよろしく」

 

 

 少し照れ気味の須藤、無愛想な表情の堀北、ランキング……? と首を傾げる綾小路に対して片目を閉じながら名乗り、挨拶を済ませる。

 さて挨拶もしたし()()を済ませて帰るか───と、空崎が机の上に視線を寄越そうとすると。

 

 

「なーなー空崎、ポイントって()()貸してもらえないか?」

「や、山内くん? そういう話を空崎くんには───」

 

 

 山内が空崎に対してポイントを強請ってくる。

 また、という言葉に疑問を覚えたのが二名。

 先の件───カツアゲの事が先日あった為、その被害者である空崎にポイントを強請る行為はいけないと櫛田は慌てて止めに入った。

 

 

「アホか、返す目処が立ってから言うもんだそれは。つか()()って、アレはゲーム機を買い取っただけで貸した訳じゃない」

「えー良いだろ。弁償でたっぷり貰ったんだからさぁ」

「貰いたきゃ自分で被害に遭え」

「じゃあ櫛田ちゃんを名前呼びしてる対価で!」

「だとしたら渡すべき相手は桔梗になるだろ」

 

 

 ───……当の本人は呆れた様子で山内に言葉を投げていたが。

 急に矢面に立たされた櫛田は内心で「何言い出してんだこいつ」と思いながらも、表面上は慌てながら空崎に対して首を横に振り「要らないからね」と伝えていた。

 

 そんな様子を意外そうな表情で見て、質問を投げかけてきたのは堀北だった。

 

 

「……意外ね。カツアゲに応じたのだからどんな気弱な人物かと思っていたけど、随分と飄々としているわ」

「ん? ああ、見ての通り俺って貧弱なもんで、体格の良い相手に凄まれると弱いのよなー。それに、監視カメラがあるなら素直に応じた方が手っ取り早いだろ? イジメには敏感って、この学校が()()するくらいなんだからさ」

「懸命な判断ね。実際に学校側は速やかな対処を取っていたし、極めて正しい行動だわ。逆にCクラスの生徒は愚かな行動を起こしたものね」

 

 

 ヘラっと笑いながら告げる空崎の評価を、堀北は『冷静な判断力のある生徒』に位置付ける。

 流石に冤罪を仕掛けた挙句、その虚偽の内容を加害者側がすんなり受け取った結果であるという考えには至らないらしい。

 約一名、疑わしげな目で空崎を見つめる人物がいるが。

 

 

「さっきの、ゲーム機を買い取ったというのは?」

「そいつらがポイントに困ってた様子だったから、ゲーム機を買い取る形でポイントを渡したんだよ。ちょうど月初めの頃にな」

「……懐の余裕の表れかしら」

「否定はしない。が、単純に予備のゲーム機が欲しかったんだよ。クラスメイトが興味持ってくれたんで貸す用にな」

「もうちょい高く買ってくれても良かったのに……」

「クリーニング代込みって言ったろ。お前ら菓子食いながらゲーム機弄ってたし。寧ろ充分に高くした方だぜ?」

 

 

 堀北との会話中に野次を飛ばしてくる山内へ呆れたように片目を閉じる空崎。

 

 

「ゲーム好きなのね」

「俺の人生の九割九分を占めていると言っても過言ではない」

「……そう。Bクラスの様な優秀な生徒の集まりでも、貴方みたいな人物がいるとは。ますます私がDクラスに配属された理由が分からなくなるわ」

「ん?」

 

 

 好印象───と思いきや急に喧嘩腰の言葉を投げかけられ、空崎は笑みを消して首を傾げる。

 

 

「聴こえなかった? ゲームに人生を売ってるような生徒はBクラスに相応しくないと言ったのよ」

「ちょ、ちょっと堀北さん。そんな言い方は……」

「───ふはっ、正面からそう言われるとは。ククッ……ああいいよ桔梗、堀北の言ってる事はご尤もだ。社会貢献性など皆無、ただの娯楽に身を費やすってのは、その認識で正しいだろうよ」

 

 

 どうやら無意識にストレスを溜め込んでおり、その発散として攻撃的な言葉を発したのだろう。

 いや或いは彼女の性格か? と。喧嘩腰の言葉に思わず破顔し喉を震わせて笑いつつ、堀北の内面を分析する。

 

 大人の対応で流し、満足させれば棘もなく会話は終わるだろうが───敢えて挑発する事にした。

 

 

「まあ学校側からの評価曰く? ゲームに人生を売ってる俺はBクラスで? 真面目にやってきた()()()()()()()()()なお前はDクラスのようだが??」

「───ッ、Aクラスでも無い分際でよく煽れるわね」

()()()()()D()()()()()()()()喧嘩売ってきたのは何処の誰だっけ? ……と、やべ。この言い方は不味いな。悪い、お前ら()()バカにするつもりは無いんだ。つい売り言葉に買い言葉で」

 

 

 直接言葉にはせずとも()()()()鹿()()()()()事を伝えつつ、櫛田達に向けて謝罪を告げる。

 ムッとした表情で更に言葉を返そうとする堀北を見て、櫛田は慌てて両者の間に割り込んだ。

 

 

「そ、そこまでっ! 両成敗って事で、ね? 騒ぎ過ぎるとまた迷惑になっちゃうから! ……先輩方、ごめんなさいっ」

 

 

 仲裁を保とうとしているだけの櫛田が謝罪している事に罪悪感を感じないのか、堀北は無愛想に顔を背けながら言葉を吐いた。

 

 

「精々、クラスの足を引っ張らないようにゲームの時間を削って勉強する事ね。それなら少しは点数も上がるでしょう」

「あ、そりゃ無理な相談だわ」

「……へぇ、それだけゲームが大事なのね。まあ私としては他クラスに退学者が出ようと関係ないけれど」

 

 

 向かい合う言い争いではないが、変わらぬ挑発的な態度。

 櫛田は多大な苛立ちを抑えつつ彼女を諌めようとするが───

 

 

「え? いや違う違う、だって101点なんて取りようがないだろ?」

「……は?」

「テストという区分に於いて100点以外は取った事がないもんでな。こっから点数を上げるのって不可能なんだわ」

 

 

 心底申し訳なさそうに告げる空崎の発言に、堀北のみならずその場のDクラスの生徒全員が目を見開いて彼を見つめる。

 ひとえにDクラスと言っても、学力で言えば上位の生徒も中にはいる。堀北はその筆頭で、櫛田もそれなりに優れていると言えるだろう。

 故に、先月末に行われた小テストでは100点など取れるはずが無いと考えた。

 

 

「冗談でしょう……?」

「あー……そっか、前回の小テストのラスト3問って高二高三の範囲だったな。まあわざわざ証明してまで自慢するものでもないし、信じるかどうかはお任せするよ」

 

 

 解けるから解いているだけで、別に自慢する必要もない。つまらなそうな表情で語る空崎は、堀北から見て嘘を言っている様には思えなかった。

 そもそも小テストの結果は明かされている。100点という唯一無二の得点ならばBクラスの生徒に訊けば直ぐにわかる事。

 自慢するつもりがないなら嘘を吐く必要もない。堀北は空崎の認識を再度改めて、言葉を紡いだ。

 

 

「……事実だとして、それなら別の疑問が浮かぶわね。それだけの学力があってBクラスに配属された事に不満はないのかしら」

「不満? なんで?」

「Aクラスに劣ると学校側から評価されてるのよ? 適切な評価に改めて欲しいと思うのは当然だと思うけれど」

「───なるほど。ぶっちゃけ俺は学校からの評価はどうでも良いと思ってるが、お前は相当気にしてそうだな。なら正直に言うが、俺は自分がBクラスに配属された事に納得してる」

 

 

 理由まで話す必要はあるまい。

 空崎は一息吐き、続ける。

 

 

「そもそも初期評価で全てが決まるならクラス争いなんざ無駄だろ。それが全てじゃないんだから、これからの行動で示せば良い。Dクラスはハードモードかもしれんが、Aに上がる事が不可能とは思わん」

「……貴方は可能だと思うの?」

「可能だろ。()()()()に何かありそうだし。……あ、やべ。人に言っときながら俺が余計な塩を送っちまった。まあいいや」

 

 

 空崎は端末を取り出し、ロック画面に表示された時間を()()()()()()確認した後、全員に視線を行き届かせる。

 

 

「長話の()()()()()()()()()()()()

 

 

 ───詫びだと言っているのに“質問”を求める空崎に怪訝な目が向けられる。

 だが続く言葉に、その場のDクラス全員が困惑と驚愕に陥った。

 

 

「なんでお前ら範囲外の勉強してんの?」

「……え?」

「地固めするにしても数学と英語くらいで、他は範囲勉強が基本だろ。なのに最初に知らされたテスト範囲をやってるのは何故かと思ってな」

「ど、どういう事だ?」

「……櫛田さん、茶柱先生にテスト範囲の変更がないか確認してきてもらえるかしら」

「す、すぐに確認してくるねっ」

 

 

 男子組は空崎の発言の意味を理解しきれず困惑した状態。

 だが逸早くその意味を理解した堀北は、櫛田に指示を促す。今ばかりは彼女に命じられる苛立ちよりも“焦り”が先行している様で、櫛田は素直に従う。

 

 空崎は呆れた笑みを溢しつつ、ポツリと呟く。

 

 

「いやー、サエちゃん先生ってばグレーゾーンを攻めるねぇ」

 

 

 ───この状態でも確実に乗り越えられる。

 そんな発言をすれば真っ当な勉強の他に『必勝法』が存在する事を理解する生徒は出てくるだろう。

 一見冷遇している様な怠慢だが、その実は学校側が追求できない程度の干渉。

 

 それを理解した空崎は心底呆れた様子で溜め息を吐く。

 

 

「……一応、お礼を伝えておくわ。他クラスからしたらメリットもないでしょうに」

「長話の詫びだって言ったろ。……ああ、そうだ。じゃあこっちは学パイセンへの()()って事で伝えておこうかな」

 

 

 学───彼女の兄である堀北 学の名前を出され僅かながら動揺を見せる堀北を気にせず言葉を紡ぐ。

 

 

「小テストの赤点基準だが、俺らのクラスは40点未満だった。お前らのクラスは?」

「……!」

「───じゃあ中間テスト、是非とも頑張ってくれ」

 

 

 

 ♦︎

 

 

 

 中間テスト結果発表日。

 公表結果では全教科満点の生徒が何十人も居るという事態が発生し、また全てのクラスから退学者が出る事なく、つつがなく中間テストを終える事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 





Tips. ✍︎
 須藤は赤点を取っていない。
 空崎からの赤点の話を受けて綾小路が考えを改めた結果、「退学者が出るよりは多少調子に乗る方がマシ」と判断し過去問の配布を2日前にしている為。
 その影響で約一名期末テストの方がギリギリになるが、一応生き残っている。




 ストック消費中に8話の執筆を終えたので明日も投稿あります。

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