道具を使って磨いた空薬莢を1つ取る。私はノギスを使い、それの全長、口径、開口部の厚み等を調べる。
1つ1つ丁寧に、黙々と作業を進める。それは宛ら経典の写経のように。
使用済みの雷管を取り外し、雷管ポケットを磨くと新たに取り付ける。計量した火薬を長い薬莢へと注ぐ。
そして、特別に鋳造した弾丸を用意する。ガンショップで見付けたこの『金型』は私の小さな宝物だ。
45口径にして700グレイン…グラム換算にして45グラムの大重量、大質量弾である。
これを諸に食らって立っていられる普通の生徒は早々居ない。
私は弾丸と薬莢をプレスマシンにセットし、レバーを操作する。
ガチャン、ガチャン、とプレスマシンが音を立てる度に、空箱にカチャン、カチャンと完成した弾薬が金属音を立てて貯まっていく。
サイドアームの二挺のリボルバー…【黒騎士】で使う為の特別な弾丸を、所定の量を作り終えた私は愛銃のメンテナンスを始めた。
勉強机に作業用のマット、タッパー、各種清掃道具を用意し、ゴム手袋を付ける。
先ずは目視確認。銃身の外側から内側まで丁寧に確認する。亀裂は危ない。横で銃を撃っていた知人の銃が亀裂で爆発した時には心底冷や汗をかいた。
銃をゆっくりと分解し、クリーニング剤で洗浄していく。
発砲したその日の内に銃身内部はクリーニングする事を心掛けているが
やはり一番なのはゆっくりと時間を掛けてクリーニングする事。
火薬は私達が思っている以上に、その刺激的な薬品的作用で銃身を傷ませる。
故に確りと煤を払い、洗剤で汚れを落とし、銃身を保護するトリートメントを塗布する。それが終われば銃身のお手入れは終わり。
次に手を掛けるのが内部機構。トリガー周りやボルトだ。
繊細な部品の塊である其れを取り扱うのには一際気を使う。
こう言う時は一気に作業を進めるのではなく、ちょいちょいと休憩を挟むのが良い。
私はたっぷりミルクを入れたコーヒーを飲んだ。内部機構に関しても基本は銃身のメンテナンスと変わらない。
分解し、傷や亀裂が無いか確認し、汚れたグリスを拭き取り、新鮮なグリスを塗り込む。
そして丁寧にゆっくりと組み立て、動作の確認をする。
私はリボルバーのシリンダーにダミーカートリッジを装填するとハンマーをコックし、引き金を引く。ハンマーが落ちて気持ちの良い金属音を響かせる。
次に、ダブルアクショントリガーを調べる。確りと引き金を引き、それと連動してハンマーが起き上がり、やがてカチンッとハンマーが落ちるのを確認する。
そうやって何度か確かめた後、私はメインアームのボルトアクションライフル…【ペイルライダー】の確認を始めた。
ダミーカートリッジをマガジンの中に装填し、素早く何度もボルトを引いては押し込む動作を繰り返す。装填と排莢は良好。
再びダミーカートリッジをマガジンに装填すると、今度は撃つ動作を取る。
うん、問題なくトリガーも撃発装置も動いている。
私は時間を掛けて銃のメンテナンスを終えればぐぐぐ、と背伸びをした。壁に掛けてある時計を見ればそろそろ11時に差し掛かろうとしていた所だ。
不意に呼び鈴が鳴る。彼女が来たのだと私は理解した。
「ふふ、こんにちはマリンちゃん、遊びに来ちゃいました」
明るいピンクの髪の少女が笑いかけてくる。私の楽しい週末が、始まろうとしていた。