ダンジョン魔法少女、ただし子持ち   作:鉄板フライ

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第6話

 ◇ ◇ ◇

 

 今、協会内の一室にて、成瀬の状態で待機させられている。

 先日出した探索者動画が大盛況、バズっていうらしいんだけれど、その影響で早急に次の手を打つことになったらしい。

 その手というのは、私たち個人個人の紹介動画。

 ショート動画ってスタイルで出していくみたい。

 

 そもそもアイドルらしいけれど、ユニット名とか決まってるのかな……。

 なんて考えてるのは現実逃避だ。

 

「……」

「……」

「…………」

「…………」

 

 き、気まずい。

 日比谷ちゃんにめっちゃ見られてる。

 

 日比谷ちゃんがこっちを見てくる視線があまりにも酷い。

 犯罪者を見るような目でこっちを見てきてる。

 

 兎島ちゃん、束村ちゃん、比嘉ちゃんは呼び出されて別室にいる。

 順番に収録しているらしい。

 

 どういう順番で収録してるのかよくわからないけれども、そんな感じで私は日比谷ちゃんと控室に取り残されている。

 針のむしろだ。

 

「な、なにかな。日比谷さん」

「……」

 

 聞いてみてもこれだよ!

 ジーっと見つめられるばっかり。

 

 若い子の事わからないよぉ~。

 助けて兎島ちゃん束村ちゃん。

 比嘉ちゃんはまだあまり仲良くなれてないから助けは求められない。

 

「……成瀬、さんって」

「はいっ!?」

 

 急に話しかけられた。

 若い子わからない、怖い。

 

「持ってるステッキ、それ、オリジナルですよね?」

「っ!?」

 

 隠していたわけではない。

 けれども、話したわけじゃない。

 前のあれを見てたどり着いた?

 

 このオリジナルという単語は間違いなくそうだ。

 ダンジョン産デバイスのオリジナルとレプリカ、その二つを指すに違いない。

 

「……そうだね。うん、これがオリジナルだよ」

 

 隠す意味は、ない。

 と、判断した。

 これは隠しきれる自信がないのもあるし、仲間には誠意として話すべきだと思ったからだ。

 

「やっぱり」

「ずるいと思う?」

「……いいえ」

 

 これは意外。

 日比谷さんは私がリーダーなのが気に入らない様子だったから。

 きっと、オリジナルを持っているのも特別扱いされていると思ったのに。

 

「ダンジョン産デバイスが魔法少女ステッキなら、きっとそれに基づいた能力のはずです。そして、私たちに渡されたレプリカは衣装を変える力」

 

 だからこそ、オリジナルはもっとすごいものだと予想できる。と、彼女は言う。

 きちんと勉強しているなぁ。

 スクールで教えてもらえる内容なんだろうか。

 

「なので……オリジナルは姿そのものを変えることができる。違いますか?」

「……」

 

 さて、困った。

 どう答えるべきだろうか。

 正直にはいと答えるか、嘘を吐くか。

 

 正直にはいと答えた場合、私の見た目が本当のものじゃないって可能性にたどり着いてしまう。

 けれども、いいえと答えても嘘だと見抜かれるに違いない。

 いや、信じてもらえない、って言った方が正しいかな。

 

 これはどっちを答えても同じ答えにたどり着く問題だ。

 違うのはその過程。私の印象をどう受け取ってほしいか。

 

「……違うよ」

「へぇ」

 

 私は、否と答えることにした。

 

「説明するね。このステッキの機能は幾つかあって、メイン機能はあのダンジョンで見せたあの凄い魔法がそうだと思う」

 

 実際にステッキを取り出して、じっくり見させてあげる。

 誰かが使ってる間は他の人はこのステッキを使えなくなる(会長調べ)ので、渡しても問題はない。

 ステッキを受け取った日比谷ちゃんはじっくりと様子を見ると、満足したのか私に返してくれる。

 

 レプリカとオリジナルでは、見た目に些細な違いがある。

 これで私のがオリジナルだと理解してくれたはず。

 

「つまり、成瀬さんの探索者としての路線は……」

「そう、剣術の方が私のメイン。魔法はオリジナルステッキの機能だね」

 

 まずは印象操作をする。

 ステッキのメイン機能はそっちだって言えば、大半の人は副機能は大したことないと思ってくれるから。

 

 ……これが詳しい人とかだと、ダンジョン産デバイスはわけわからないからって先入観捨ててくるんだけどねー。

 日比谷ちゃんはまだ駆け出しだし、うん、授業料ってことで騙されてくれないかな?

 

「変身機能は軽く見た目を変えるだけだね。髪の色とかは変わってるけれど、姿を大きく変えてるって感覚はないかな」

 

 こっちの説明も、まるっきり嘘ってわけじゃない。

 髪の色は黒から水色に変わっているし、鏡を見た感じ顔つきには昔の名残が残っている。

 大きく変わってるといえるのは、身長が少し低くなってるところぐらいかな。

 それ以外はお化粧で説明ができる範疇だよ。本当だよ。

 

「本当に、ですか?」

 

 じっと、正面から私の目を覗き込んでくる日比谷ちゃん。

 

 圧が強い。

 ほんっとうに圧が強い。

 何をそんなに疑ってるの? 私の中身にひょっとして気づかれてる?

 アラサーおばさんが何してんの? きっついわぁとか思われてる!?

 

「……本当、だよ」

 

 思わず視線を逸らしてしまう。

 なんか、こう、怖い。

 怖いよ。

 目つきに鬼気迫る勢いがある。

 

「目ぇ、逸らしましたね?」

「いや、だって、怖いよ。日比谷さん」

 

 私の言葉で自分がどんな表情をしていたのか自覚したのか、彼女はこほんと一つ咳ばらいをした。

 ちらりと横目で視線を戻すと、先ほどまでの視線の強さは失われている。

 少しだけ申し訳なさそうにしているあたり、やっぱり悪い子ではないんだと思う。

 

「すみません。流石に私が悪かったです」

「ううん。気にしないで」

「ですが、成瀬さん、あなたのやってることは許せません」

 

 ……許せない、か。

 やっぱり、この子たちを騙してるようなものだからね。

 それは許せないと感じても――。

 

「――男の人が姿を偽って女の子のふりをしているだなんて!」

 

 ――え?

 

 聞き間違いかな? と思って目を丸くする。

 

「……ごめん、どういうこと?」

「騙そうったってそうはいきませんよ」

 

 彼女は立ち上がり、まるでミステリーの探偵が犯人を指摘するときのように指を刺す。

 指し示しているのはもちろん私だ。

 

「あなたの説明には嘘がある。レプリカの機能はオリジナルの劣化互換。つまり、レプリカ程度の姿変化であるはずがありません」

 

 この指摘はその通り。

 やっぱり、誤魔化せなかったか。

 

「そして、私はあなたの剣筋を良く知っています。そして、それを使う人が限られていることも……」

 

 剣筋を、知っている?

 私の剣は我流だ。

 だって、私が探索者にされたときには何かを習っている余裕なんてなかったし、生き残るためにはその場その場で強くなるしかなかったから。

 だから、流派とかは存在しない。

 

 私が剣を教えた相手はいるけれど、彼は今……。

 

「あの人は既に引退済み。なら、その剣を振るう人はあの人の夫しかいない」

 

 そう、私が剣を教えたのは、夫。

 彼は今、行方不明になっている。

 並びに、この事実は公表されていない。

 ダンジョンの入り口が唐突に閉じて、中にいた人が行方不明になっただなんて。

 そんな事実は、あまりにも不都合だったからだ。

 

 あの人の捜索に出費がかさんでいるのも、秘密裏に探す必要があるから。

 協会の中でも一部の人しか知らない事実。

 その人たちにしか依頼できないわけだから。

 

 日比谷ちゃんが知らないのは当然。

 彼が今もどこかで活動していると思い込むのも、理解ができる。

 けれど、それは、なんというか。

 

「そうですよね――成瀬ミルナさん。いいえ、久留実忠人(ただひと)さん」

 

 日比谷ちゃん、私を夫と間違えてる――っ。

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