――あの日から数か月。
レイとヤマトは一つの場所に留まることなく、世界中の海を渡り歩いていた。
戦火の絶えない紛争地帯。王が民を搾取し続ける独裁国家。
腐敗した貴族が富を独占し、弱者が飢えに苦しむ国。
奴隷売買が当たり前のように横行する港町。世界政府の名を盾に、罪なき民を虐げる支配者達。
二人が戦う理由は、金でも名声でもない。
ただ、その地で泣く者がいるから。ただ、その地で自由を奪われた者がいるから。レイは腐敗した権力者を討ち、ヤマトは圧倒的な力で戦場そのものを叩き潰す。
その結果、多くの土地が争いから解放され、人々はようやく明日を夢見られるようになっていった。
もちろん、それで終わりではない。平和を取り戻した土地は、やがて別の国や海賊、あるいは世界政府から再び狙われる。
力なき理想は、いつか必ず踏み潰される。
だからこそレイは解放した土地へ、一枚の旗を掲げた。
深き蒼を纏うその旗には、一匹の黄金の龍が天より舞い降りるように描かれている。
その龍が踏み砕くのは、一つの城。そして、その城に刻まれた世界政府の象徴。
それは、ただの紋章ではない。
「理不尽な支配を打ち砕く」という誓い。
「誰にも自由を奪わせない」という宣言。
「この地には、レイがいる」という証。
その旗が風にはためく限り、この土地へ再び牙を剥く者がいるのなら、世界の果てからでも必ず駆け付ける。
それがレイの覚悟であり、この旗に込めた意味だった。
やがて人々は噂し始める。
「あの旗が立つ国に手を出すな。」
「黄金の龍が降りた土地は、もう誰にも支配できない。」
「もし奪おうとすれば――奴が来る。」
その噂は海を越え、国を越え、やがて世界中へと広がっていく。
海賊でもない。革命軍でもない。世界政府にも属さない。それでいて、誰よりも民を守るために剣を振るう者たち。
それはまだ小さな勢力に過ぎなかった。しかし、その旗は確かに世界へ問いかけていた。
力とは、誰かを支配するためにあるのか。それとも、大切なものを守るためにあるのか。
この時代、人々はまだ知らない。
この一枚の旗が、やがて天竜人を頂点とする八百年の支配体制へ真正面から牙を剥く”反逆の象徴”となることを。
そして、その黄金の龍は。
世界に新たな夜明けをもたらすため、静かに翼を広げ始めていた。
潮風が穏やかに吹き抜ける、とある港町。
戦火とは無縁に見えるその町は、活気に満ちていた。
市場には魚や果物が並び、子供達は笑い、大人達は酒場で盃を交わす。
「平和な町だね。」
荷物を抱えたヤマトが笑う。
「……あぁ。」
レイも辺りを見渡し、小さく頷いた。
この数か月で訪れた町の中でも、ここまで穏やかな空気は珍しい。
二人は知らなかった。
この町が――
“四皇”白ひげ海賊団の縄張りであることを。
港の高台には、大きく白ひげ海賊団の海賊旗が掲げられていた。
だが、世界を巡ることばかりに意識を向けていた二人は、その旗を特に気に留めることもなく、市場で食料や生活用品を買い集めていた。
そんな時だった。
「助けてくれぇ!!」
一人の商人が悲鳴を上げる。見ると十数人もの武装した海賊達が店を荒らし、住民へ暴力を振るっていた。
「白ひげの縄張りだからって調子に乗るな!」
「今日からここは俺達のシマだ!!」
どうやら最近勢力を伸ばしている海賊団らしい。白ひげの名を恐れず、この町を奪いに来たのだ。
住民達は震えることしかできない。その光景を見たレイは、小さくため息をついた。
「ヤマト。」
「はいはい!」
それだけで十分だった。
次の瞬間ヤマトが持つ巨大な金棒が地面を砕き、十数人の海賊がまとめて宙へ吹き飛ぶ。
「なっ……!?」
残った海賊が剣を抜いた瞬間。
レイの姿が消え気付けば全員の武器だけが綺麗に切り落とされ、海賊達は膝をついていた。
誰一人として致命傷は負っていない。
圧倒的だった。住民達が歓声を上げようとした、その時。
「……派手にやったなおい」
どこからともなく、落ち着いた男の声が響く。路地の奥から数人の男達が姿を現した。
1人は特徴的な金髪の男、肩には不死鳥の刺青。
その後ろには大男、小柄な剣士、屈強な男達が並ぶ。町の住民達が一斉に頭を下げた。
「マルコ隊長!」
「ジョズ隊長!」
「ビスタ隊長!」
現れたのは――白ひげ海賊団一番隊隊長、不死鳥マルコ。
そして三番隊隊長ジョズ。五番隊隊長ビスタを始めとする白ひげ海賊団の隊長達だった。
マルコは倒れた海賊達を一瞥すると、ゆっくりレイへ視線を向ける。レイの手には氷の剣。
「悪魔の実か…随分と綺麗な剣だよい。」
レイは警戒する様子もなく答えた。
「…誰だあんたら」
「この街にいて俺らの事をしらねぇのか。」
ビスタが面白そうに笑う。
「攻撃にに迷いがない。しかも誰一人殺していないとは……。」
ジョズは腕を組みながら豪快に笑った。
「がっはっは! 若ぇのに強いもんがいるもんだ!」
ヤマトはレイの横へ並ぶ。
「なに? ケンカなら買うよ?」
「違う違う。」
マルコは苦笑しながら両手を上げる。
「敵じゃないよい。」
そして真っ直ぐレイを見る。
「お前さん……名前は?」
「レイ。」
「姓は?」
「……レイ・ヴァルハート。」
その名を聞いてもマルコの表情は変わらない。だが、その眼だけは鋭く細められた。
これほどの実力を身につけているがまだ若い。それでいて驕りがなく、民を守るために力や使う。海賊にも、賞金稼ぎにも見えない。
何より――その眼には、白ひげと同じ”弱き者を守る意思”が宿っていた。
マルコは小さく笑う。
「レイ。」
「あん?」
「一人……いや、二人か。会わせてぇ人がいる。」
「?」
「俺達の親父だよい。」
その一言にヤマトが首を傾げる。
「親父?」
ジョズが豪快に笑う。
「世界最強の海賊だ。」
ビスタが静かに続ける。
「お前達ほどの器を持つ者なら、一度くらい会っておく価値はある。」
マルコは船が停泊する港へ視線を向けた。
巨大な船影と海に浮かぶ白鯨。世界中の誰もが知る伝説の船――モビー・ディック号。
「来るかい?四皇“白ひげ”エドワード・ニューゲートのところへ。」
巨大な白鯨――モビー・ディック号。
その圧倒的な船体は、一隻の船というよりも海に浮かぶ要塞そのものだった。
帆には白ひげ海賊団の象徴たる海賊旗が堂々とはためき、数百人を超える船員達が忙しなく甲板を行き交う。
「マルコ隊長が客を連れてきたぞ!」
その一声だけで船内の視線が二人へ集まる。
「誰だ?」
「若ぇ奴だな。」
「マルコ隊長が直々に?」
ざわめきの中を、レイとヤマトは堂々と歩く。
誰一人として臆する様子はない。その姿を見て、古参の船員達は思わず目を細めた。
「肝が据わってやがる……。」
やがて船の最奥そこだけ空気が違った。巨大な椅子に腰掛け、一人の男が酒樽ほどもある盃を片手に酒を飲んでいる。
身の丈を遥かに超える薙刀と筋骨隆々の肉体。そして空間そのものを支配するような圧倒的威圧感。
“世界最強の海賊”。
四皇――エドワード・ニューゲート。
「親父。」
マルコが軽く頭を下げる。
「面白ぇ若ぇのを見つけたよい。」
白ひげは酒を飲み干すと、ゆっくり二人を見下ろした。
「グラララララ……。」
腹の底から響く豪快な笑い。
「近う来い、小僧共。」
レイは物怖じすることなく歩き出す。ヤマトも続くように前へ出た。
白ひげは二人を眺める。そして笑みを消した。
「……ほぉ。」
その一言だけで、周囲の隊長達が表情を変える。親父が興味を示した。
それだけで十分だった。
「名前は。」
「レイ・ヴァルハート。」
「ヤマト。」
白ひげは黙ったまま二人を見つめ続ける。
「小娘…おめぇの方はもしかしてあのクソ餓鬼の親族か何かか?」
「クソ餓鬼?」
白ひげはヤマトを見て…ヤマトの角や纏う雰囲気を見て懐かしの姿が思い浮かぶ。かつては同じ船にも乗りはしたその男は今や白ひげと並ぶ"四皇"にも位置付けられている。
「カイドウ…おめぇから奴の影を感じる」
「…ヤマト?」
「…カイドウは…カイドウは僕の父親さ」
白ひげの言葉にヤマトが少し微妙そうな表情を浮かべたことにレイは気づく。そしてヤマトがカイドウの娘だと聞いた白ひげ海賊団の面々は皆驚愕の表情を浮かべる。ある者は興味を、ある者は関心を…ある者は敵意をーー
「…ヤマト」「…うん。」
誰よりも先に敵意を感じ取ったレイはヤマトを庇うように一歩前へと出る。そしてレイの全身から冷気のようなオーラが吹き出す。
「ーー"やめねぇか"」
「「「っ!?」」」
しかし寸前のところで白ひげの声が響き渡る。少しの怒気を含んだその声に船員たちは大きく驚き後ずさる。しかし、レイの警戒心は微塵も弛まない。
「すまねぇな2人とも…ちっとばかし懐かしい名前にコイツらも緊張しちまったらしい」
「…随分とカイドウとは仲のいい関係のようだな」
「グラララララ…言うじゃねぇか小僧。まぁ腐れ縁だ」
「…。」
「それよりもオメェだ。レイ・ヴァルハート…どっかで聞いた事のある名だと思ったら…オメェ…最近北西の方で暴れ回ってる名前じゃねえか」
最近世間を賑合わせている男たち。各国の争いや政治に乱入し尽くを解決し己が手中に収めている。その男たちの縄張りとした地域にはとある旗が置かれているという。
群青色の旗色に金色の龍印…更には不条理を打ち砕くと言う意味深を込めた剣…北西部を中心に戦力を増やし続けているという海賊でも海軍でもない謎の集団。
その集団の頭の名前が確か…"レイ・ヴァルハート"だった事を白髭は覚えていた。
「そうだ。俺がそのレイ・ヴァルハートで間違いねぇ」
「グラララララ…やっぱりオメェだったか。なぜそのような事をする。オメェがやろうとしていることは簡単なことじゃねぇことは分かっているはずだ。海賊どころか世界を敵に回しているようなもんだ」
「…」
「それでもオメェがやろうとする理由はなんだ」
静まり返るモビー・ディック。酒を飲む音すら止み、数百人の視線が一人の青年へ注がれる。レイは一切迷わなかった。
「理由なんて単純だ。」
その蒼い瞳が真っ直ぐ白ひげを射抜く。
「この世界は心底腐ってる。力が無い奴は黙って泣き寝入りするしかねぇ奴が殆どさ。力ある者が弱き者を踏みにじり、それを誰も止められねぇ。…俺はそれが許せねぇ…口では正義だなんだと口にしながら屑どもの手足にしかならねぇ海軍じゃあどうしようもならない…だったらそれを俺が止めるしかねぇだろ。」
船員達が息を呑む。
「俺は海賊王にも四皇にも興味はねぇ。欲しいのは支配じゃない。――誰も泣かねぇ世界だ。その為に天竜人だろうが世界政府だろうが……この世界の不条理そのものをぶっ壊す。」
その言葉に、船内の空気が凍り付いた。何故ならそれはあまりにも大きすぎる理想。あまりにも無謀すぎる宣言。
白ひげは笑わなかった。ゆっくりと盃を置く。
その音だけで空気が張り詰める。
「……ガキが」
海そのものが唸るような威圧感のある声が船内に響き渡る
「世界を知らねぇ理想ほど脆いもんはねぇ。」
立ち上がると巨大な体躯が影となり、レイ達を覆い隠す。
「俺ぁ、この海には何十年も立ってきた。仲間を失い国が滅ぶのを…夢に敗れた男を何千、何万と見てきた。」
白ひげの眼光が鋭く細められる。
「世界を変えるだぁ?不条理を壊すだぁ、口で言うだけなら誰でもできるっつうんだよアホンダラぁ。オメェ程度の覚悟で、この海は変わりゃしねぇ。それでも口にするなら覚悟を示しやがれ!!」
次の瞬間天地が軋んだ。それは"覇王色"…白ひげの覇気が津波のように船全体へ叩き付けられる。
空が割れるような轟音と共に甲板が悲鳴を上げ酒樽が弾け飛び経験の浅い船員達が次々と膝をつき、意識を失って倒れていく。
「ぐっ……!」
「親父の覇気だ……!」
隊長達でさえ思わず身構えるほどの圧力。
それでもレイは一歩も退かなかった。髪が逆立ち衣服が激しくはためく。それでもその瞳だけは、一切揺らがない。
「……そうか。」
静かに本当に静かに口を開く。
「アンタも、そう言うんだな。」
レイはゆっくりと腰の剣へ手を添えた。
「俺は世界を知らねぇ。確かにそうさ。だから知るために歩いてきた。国を巡って戦場を見た。飢えた子供を見た。笑えなくなった人達を見た。不条理に家族を奪われた奴らを見た。…何より俺本人が"この世の底"を既に知っている。」
握る拳に力が入る。
「だから俺が諦めねぇ。この命が砕けても。俺の旗が折れても。世界中を敵に回しても。俺は歩みを止めねぇ。」
レイはゆっくり顔を上げた。
その瞳には、一片の恐怖もない。
「それでも世界が変わらねぇって言うなら、変わるまで何度でも挑戦しよう。俺の覚悟は――たとえアンタでも止められねぇ。」
その瞬間レイの雷鳴のような蒼白い覇気が爆発した。
轟音と衝撃がひしめき合い、白ひげの黒き覇気と、レイの蒼き覇気が真正面から激突する。
空気が裂け甲板が軋み。二つの王の意志が火花となってぶつかり合う。
その時、天を覆う雲が、真っ二つに裂けた。
「「「――っ!!!」」」
マルコが目を見開く。
「……親父の覇王色を、真正面から……!」
ジョズの額を汗が伝う。
「あり得ねぇ……。」
ビスタは思わず口角を上げた。
「本当に何者だ」
そして白ひげは――。激突する覇気の中心で、その青年を見つめながら静かに笑った。
「グラララララ…面白ぇ…この俺相手にそこまで言える奴が世界に何人いやがる」
「…」
「確かにオメェの道は偽善かも知れねぇ。だが積み重ねれば偽善も贋物も本物になる。オメェの覚悟は十分伝わった。気に入った。オメェら俺の船にのらねぇか?」
己と同等の覇王色を持つ才能と実力…そして胆力。何よりも奴は既にこの世の絶望を知っている眼をしている。それでも世界を諦めずもがこうとしている馬鹿に白ひげは光を見た。
「…やめとくぜ。俺はもう誰の下にもつかねぇからよ」
「グラララララ…振られちまったか。おいマルコ」
「ん?」
「今夜は宴だ。酒を持ってこい!!」
「おい聞いたからオメェら!今日は宴だ!飲むぞ飲むぞ!!」
「「「おぉぉぉ!!」」」
その日は浴びる程酒を呑み、楽しんだ。初めはヤマトがカイドウの娘と知って敵意を抱いていた者、白ひげを親父と慕う彼等からすれば面白いはずも無かった。…しかし今は違う。彼ら…特にレイは白ひげと真正面から張り合えるほどの"覇王色の覇気"を有しているのだ。
それがどう言う意味なのかわからない者はクルーにはいない。だから楽しむのだ。彼等は次会った時は敵か味方かそれは誰にも分からない。それを判断するのは彼らではなく白ひげである。であるなら白ひげが認めた彼らをこれ以上とやかく言う者はいない。
これまでヤマトもレイも10代も中頃と言うこともあり酒を飲んだことなど有りはしなかったが白ひげのクルー…マルコに勧められるがままレイは酒を飲んでしまった。
気付けば宴は最高潮に達していた。巨大な肉が焼かれ、酒樽が次々と空になり、甲板では誰かが肩を組んで歌い始める。
「おいレイ!」
「飲め飲め!」
「若ぇんだから遠慮すんなよい!」
気付けば盃が何度も何度も満たされる。断っても誰かが注ぎ空にしてもまた注がれる。隣ではヤマトも船員達と大笑いしながら酒を飲まされていた。レイも次第に笑い始める。普段の冷静な表情はどこへやら。
「……っはは。」
「笑ったぞ!」
「レイが笑った!」
「もっと飲ませろ!」
「おい待っ――」
そこから先は、もう覚えていない
「…………。」
眩しい。
頭が割れそうに痛い。
「…………ん。」
ゆっくりと瞼を開く。そこには自分がよく知る船の白い天井。全身が軽い。喉はからからだが頭の中が真っ白だった。俺は歩き出す為に大きなベッドを這おうと腕を伸ばした瞬間
「…んっ」
女性の艶めいた声が聞こえ、レイの左手にはこの世の極上な柔らかさを全て注ぎ込んだと言わんばかりの幸せな感触。
「…え…」
心臓が大きく跳ね上がり脳が見るなと警鐘を鳴らす中、俺はゆっくりと"いるはずのない人物"へと眼を向ける。
そこにあるのは透き通るような白く艶めいた肌に、無駄のない引き締まった体。しかし女性らしい、しなやかな肉体なのは言うまでもないが何よりも年代以上のその豊満な肉体。腰まで届く白髪は、光を浴びれば雪のように輝き、その毛先だけが淡い水色へと染まり長い睫毛に、すっと通った鼻筋の整った顔立ちは、誰もが振り返るほど端麗だ。
「…っ。」
俺は大きく唾を飲み込む。状況を整理しろ。脳に血を巡らせ。俺はカイドウと戦った時以上の緊急事態に遭遇していた。
あの後、俺たちは白ひげのクルーたちに浴びる程酒を飲まされたんだ。そこから記憶がない。俺はどうやってここまで帰ったんだ。ここは自分の船舶なのだから帰ってきたのは間違いない。ただ不味いのは今の状況だけ。
そうだ。ヤマトのことだ。きっとただ眠る時に裸になってしまったに違いない。俺は何もしてない。…していない…ないよな?
俺は恐る恐る純白のシーツをゆっくりと捲る。…指先が震えまるでこれ以上真相を確かめるなと警告しているようだ。
「……っ」
中には間違いなく戦闘以外で流れたとされる小さな赤い染みが残っていた。
やっちまった。…最低だ俺。記憶がないのも余計に拍車を掛ける。いや俺自身ヤマトの好意には気づいていたし俺もヤマトのことは好きだ。もちろん異性として…だがどうしても脳裏にもう1人少女の顔が浮かんでしまうんだ。だから今までどんなに理性が落ちようともなんとか踏ん張ってきた。
ハンコックとどう顔を合わせたら良いんだ…俺
「…ん…レイ?」
レイが自責の念に打ちのめされている中、ようやくヤマトが目覚める。ゆっくりとレイがそちらに振り向くとそこにはーー
「…ふふ…やっちゃったね」
豊満な体をシーツで包み、頬を赤く染め上目遣いでこちらを見つめる心底幸せそうな表情をを浮かべるヤマトの姿。
やべぇ…破壊力超やべぇ…カイドウの雷鳴八卦なんて目じゃないぞこれ
「…??」
ダメだダメだ俺は最低なことをしたんだ…その責任を取らねぇと
「すまないヤマト」
「??」
全裸で正座し大きく頭を下げるレイにヤマトは不思議そうに頭を傾げる
「酒に溺れお前を抱いてしまった… 酒に酔っていて冷静じゃなかった。お前のことを軽く見ていたわけじゃないし、傷つけたいなんて全く思ってない。ただ、ああいうことはお酒の勢いじゃなくて、お互いちゃんと気持ちを確認した状態でしたかった。…本当にすまない」
せめてもと、誠心誠意を込めた謝罪を披露するレイ。そんなレイに対してヤマトは
「レイはさ」
「??」
「僕のこと嫌い?」
「っそんなわけ無い!!」
レイが真っ向からすぐに否定したことでヤマトは無邪気に笑う
「ありがとう。僕はレイが大好きだよ。多分初めて会った時から…」
普段のヤマトからは考えられない程に真面目な表情と落ち着いた声。大人の階段を登るとこうも違うのか
「…俺も好きだよ。…けど」
「ん??」
「こんなの最低だって分かってんだ。でもどうしても頭ん中からアイツが消えねぇ…」
ヤマトは知っている。ハンコックと呼ばれた女性のこと。レイの記憶に深く刻まれ彩られた己が好敵手。
「知ってるよ。でも…いやだからこそ、僕との関係をあやふやにしないように謝ってくれたんでしょ?」
レイはヤマトの好意を受け入れようとしている。しかし曖昧な気持ちをそのままにしながら適当に付き合うと思う男では無いことはヤマトが一番知っている。
「ーーそんな君だから好きなったんだ」
誰よりも真っ直ぐで、誰に対しても誠実で、皆んなの…僕の希望となってくれたその姿に憧れ…恋い焦がれたんだ
「…でも俺は」
「レイはさ、酒を呑んで記憶がない状態で僕に手を出したことを後悔してるんでしょ?」
「…」
雰囲気の変わったヤマトに押されつつ小さく頷くレイ
「じゃあさーー」
「…っ!おまっ」
シーツに包まったままレイを押し倒すヤマト。シーツの隙間からどんな宝石よりも美しい素肌が覗いている
「やり直し…しよ?今度はちゃんと"記憶にも"刻まれるように」
「っ…」
この日、天竜人及び神の騎士団・五老星相手に大立ち回り、世界最強の生物・カイドウ相手に死闘の大決戦、世界最強の海賊・白ひげ相手に覇王色の衝突と啖呵を切り、誰とどんな奴らにも屈しなかった男が初めて負けを認めた。
ヤマト強し。この作品のヤマトは中々強かで策士です。R18行かないよね…ドキドキッ