それから――更に1年の月日が流れた。
アレからハンコックやヤマトとの仲も更に深まり、ハンコックとヤマトがヴァルハート性を名乗ったことにより海軍達からも執拗に質問攻めに合うなど多少の事件もあったが比較的平和に過ごしていた。
ハンコックに関しては余程の事が起きない限りは基本的にエデン連邦の方に常駐している。流石に3日に一回ほどアマゾンリリーに帰っているが基本的な住居は此方に…というか俺の部屋にしている
平和に暮らす一方エデン連邦としては、世界でも類を見ない巨大な国家連合へと成長していた。世界各国の国々…アマゾン・リリーを始めとする加盟国は互いに協力し、かつては世界政府の影響下にあった地域にも少しずつ変化が広がっていく。
「力ある者が弱き者を支配する世界ではなく、互いに支え合う世界を作る」
その理念を掲げるレイの存在は、次第に世界中へ知られるようになっていた。
しかし――。それを快く思わない者たちも当然存在した。
それはーー世界政府…そして天竜人である。特に天竜人達は過去の遺恨が未だ消えておらず一部では未だにエデン連邦…ないしはトップのレイを消そうと試みるもの達がいる。
無論レイがやられるはずも無く全ての暗殺が失敗に終わっているのだが…更に彼らが支配する現在の世界秩序に対して、真っ向から異を唱える存在が存在する
彼等の名は"革命軍"
革命軍――
数年前から世界政府による支配体制を覆し、世界に「自由」と「平等」をもたらすことを目的とする巨大組織。
その存在は世界政府にとって最大級の脅威であり、政府からは「世界最悪の犯罪者」とまで称されるほど危険視されている。
表向きには各地で反政府活動を行う組織とされているが、その実態は単なる武装勢力ではない。
各国の情報収集、民衆への支援、独裁国家の打倒、奴隷制度の撤廃など、世界政府によって抑圧された人々を救うための活動を長年続けている。
その思想の根底にあるのは――
「生まれた場所や身分によって人生を決められる世界を終わらせる」
という理念である。
しかし、その目的のためには世界政府という巨大な権力と敵対する必要があり、常に政府から追われる立場にある。
ある日の夜、氷城の大広間とされる謁見場。レイは一通の報告書へ目を通していた。
「……革命軍、か。」
目の前にはエデン騎士団の幹部たち。そして、その隣にはハンコックやヤマト、各国の代表者たちも集まっている。
「正確には、革命軍からの極秘接触です。」
「表向きではなく、直接話をしたいとのことです。」
レイは静かに書類を置いた。
「名前は?」
一瞬の沈黙そして報告役が答える。
「革命軍総司令官……革命家ドラゴン本人です。」
その名が告げられた瞬間、室内の空気が変わる。
総司令官
革命家ドラゴン
革命軍を率いる最高指導者。世界政府から最も警戒される人物の一人であり、圧倒的なカリスマ性と戦略眼を持つ。単純な武力だけで世界を変えようとはせず、各国の情勢、民衆の意識、政府内部の動きまで把握しながら、長期的な革命を進めている。
冷静沈着で感情を表に出すことは少ないが、根底には強い正義感と「人が自由に生きられる世界を作る」という揺るがぬ信念を持つ。世界政府最大の敵…世界最悪の犯罪者とまで呼ばれる男である
その本人が、自らエデン連邦へ来る。
「……わざわざ本人が来るってことは、それだけ重要な話ってことか。」
レイは窓の外へ視線を向ける。
「目的はなんだ?」
「恐らく同盟の申請…そして支援要請です。」
続く言葉に、さらに重みが増す。
「革命軍は……天竜人による支配体制を終わらせるため、エデン連邦との協力を求めています。」
室内に緊張が走る。ハンコックの表情が僅かに険しくなる。彼女にとって天竜人という存在は、決して忘れることのできない過去そのものだった。
「……つまり。」
ハンコックが低い声で呟く。
「天竜人を討つための戦いに、妾たちの力を求めておるということか。」
「…恐らく」
レイは腕を組み、真剣な表情になる。
「世界政府と真正面からぶつかるなら、革命軍だけじゃ足りないってことだろう。世界政府と戦うってことはCPに加えて海軍も出てくるからな」
レイは黙ったまま考える。革命軍の目的、天竜人による支配からの解放、それはエデン連邦が掲げる理念とも、決して無関係ではない。
しかし――革命軍と同じ目的を持つからといって、簡単に手を組めるほど世界は単純ではない。
数日後、エデン連邦へ一隻の船が到着する。護衛の騎士たちが警戒する中、その船から降り立った男。長身で黒い外套を着用し鋭い眼差しで此方を見つめる男。
世界政府が最も恐れる革命の象徴。
「初めましてだな」
その男は静かに口を開く。
「レイ・ヴァルハート」
氷城の入り口にて待っていたレイは、その姿を見て目を細めた。
「まさか、革命軍のトップ自ら来るとは思わなかったよ。」
革命家ドラゴン。世界を変えようとする革命家。
そして――今の世界で唯一、天竜人の支配体制へ真正面から牙を剥く男。二人の視線が交差する。片や革命によって世界を変えようとする者。片や新たな国家連合によって世界の在り方を変えようとする者。
思想も方法も違う、しかし目指す先には、共通するものがあった。
「話を聞こう。」
世界政府を敵に回し、数十年に渡って世界の裏側で戦い続けてきた組織。その頂点に立つ男が、今、自らエデン連邦へ足を運んでいる。
此度の会談は単なる交渉ではない。世界の情勢を変え得る一手かも知れないのだから
会談の場は、氷城最上階の会議室。巨大な円卓を囲み、二つの勢力の代表が向かい合う。
片方にはエデン連邦。新たな国家連合を築き上げ、世界政府とは異なる秩序を示した勢力。
もう片方には革命軍。現在の世界体制そのものを変えようとする勢力。
しばらくの沈黙の後、ドラゴンが口を開いた。
「まず伝えておこう。我々革命軍は、エデン連邦を敵視していない。」
レイは黙って聞く。
「むしろ、その存在には注目していた。」
ドラゴンの視線が窓の外へ向く。そこには平和に暮らす人々。種族も、生まれも違う者たちが共に生活する街並みが広がっていた。
「世界政府が長年維持してきた秩序とは異なる形で、国家同士が協力し合う仕組みを作り上げた。それは、我々革命軍が求める未来と近い部分がある。」
レイは静かに問い返す。
「……だから同盟を求めに来たのか?」
ドラゴンは頷く。
「そうだ。世界政府、そして天竜人による支配体制を終わらせるために。」
その言葉に、室内の空気が変わる。ハンコックの表情が僅かに険しくなる。
彼女にとって、その名は決して忘れられるものではない。
尚もドラゴンは続ける。
「しかし、これは単なる戦力補強ではない。互いの目的を利用するだけの関係なら、私はここへ来ていない。」
レイは目を細める。ドラゴンは真っ直ぐに彼を見る。
「…俺たちエデン連邦は此方から仕掛けたりはしない…其方さんと違ってな」
レイは敢えて挑発的に話しかける。その言葉に、周囲の空気が僅かに張り詰める。革命軍の幹部たちが反応する中、ドラゴンだけは表情を変えなかった。
「ふん。此方とて無闇に血は流したくはない。だがそうでもしなければ救えぬ命もある…君なら理解出来ると思うんだがな」
「…どういう意味だ」
ドラゴンの言い回しに違和感を覚えるレイ
「君は、自分をただの理想主義者だと思われたいのかもしれない。だが、私は知っている。君がここまでの国を築き上げるまでに、何を失い、何を背負ってきたのか。」
レイの眉が僅かに動く。
「……何?」
「革命軍は世界の裏側を探る組織だ。」
ドラゴンの声は淡々としていた。
「表に出る英雄の記録だけではない。歴史から消された者たち。誰にも知られず、誰かを守るために戦った者たち。そういう者たちの足跡を、我々は追っている。」
そして――。
「君の過去も、その理由の一つだ。レイ・ヴァルハート。」
その名を呼ぶ声は、感情を挟まない冷静なものだった。
「幼い頃、君は天竜人によって全てを奪われた。母を失い、まだ何も分からない幼子だった君は、奴らの支配する場所へ連れて行かれた。」
レイの瞳が鋭くなり異様な緊張感が漂い始める
「そこで何を見て、何を感じ、何を失ったのか……我々には完全には理解できない。」
ドラゴンは淡々と続ける。
「だが、その経験が今の君を作ったことは間違いない。そして――」
一瞬、ドラゴンの視線がハンコックへ向く。
「君の妃であるボア・ハンコックもまた、天竜人によって人生を壊されかけた一人だ。彼女もまた、自由を奪われる寸前だった。」
「……」
レイは黙って聞いていた。
だが――
「……」
拳が、ゆっくりと握られる。ドラゴンは気付かず、あるいは気付いていて続ける。
「君たちは、天竜人という存在によって傷つけられた者同士だ。だからこそ、君にも我々と同じ怒りが――」
『黙れ』
レイの低い声が遮った。瞬間、レイの全身から絶対零度の冷気が吹き出し室内の様相が変貌する。ドラゴンが言葉を止め。レイは俯いたまま、静かに口を開いた。
「……人の過去をぺちゃくちゃ語りやがって…お前は今、何を話している?俺の過去を……まるで資料でも読み上げるように。」
レイの瞳に鋭い光が宿る。
「母が殺された。幼い頃、何も知らない俺が連れて行かれた。ハンコックが奴隷にされかけた。……全部事実だ。だがな。」
レイはドラゴンを見る。
「それをお前が知ったように語るな。」
レイの声が震える。それは悲しみではない。長い年月を経ても消えることのない、深い怒りだった
「俺たちが何を失ったのか。どれだけ苦しんだのか。味わった事もねぇテメェが簡単に言葉にするんじゃねぇ!!」
レイの怒りが頂点に達し次の瞬間レイを中心に、凄まじい覇気が爆発した。
この大広間全体を黒と紫の稲妻が奔り轟音を鳴らし威圧する。それはただ強者が放つ力ではない。己の信念を曲げない者だけが持つ、紛れもない王の資質。
――覇王色の覇気。
革命軍の兵士たちの何人かが、気絶し、残されたものは耐えようと膝をつく。
耐えようとしても身体が本能的に理解してしまう。目の前の男は、自分たちが今まで相対してきた強者とは違う。
ハンコックも黙ってレイを見る。普段、決して過去を語らない男。その彼がここまで感情を露わにすることは珍しかった。
革命軍は選択を誤った。少なくともレイの過去に土足で足を踏み入れてしまったのだ。この会談は失敗に終わる…誰もがそう考えた時
「…すまない。配慮に欠けた言葉だった」
氷で出来た硬い長机に勢い良く頭をぶつけるように謝罪するドラゴン。案の定と言うべきか額からは夥しい血が流れ始めている
「……ドラゴン総司令……」
革命軍の幹部たちが驚きの声を漏らす。彼らにとって、それはあまりにも意外な姿だった。普段のドラゴンは、常に冷静で感情を表に出さない。世界を変えるという大義のためならば、時に非情な決断すら下す男。
そんな彼が、自分自身の失言を認め、相手へ頭を下げている。
レイはしばらく黙っていた。目の前の男を見つめる。
怒りはまだ消えていない。
だが――その姿を見て、僅かに冷静さを取り戻していた。
「……何をしている。」
レイが低い声で問う。尚もドラゴンは頭を上げない。
「傲慢だった。君の過去を……君たちが背負ってきた痛みを、理解したつもりになっていた。我々革命軍は、世界中の苦しみを見てきた。だからこそ、誰よりも人の痛みに寄り添えると思っていた。」
ドラゴンは拳を握る。
「だが、それはただの思い上がりだった。君にとってそれは、記録でも情報でもない。決して他人が簡単に触れていいものではなかった。」
そこには言い訳も、取り繕いもなかった。ただ己の間違いを認める、一人の男の姿があった。レイは小さく息を吐く。
「……革命軍のトップが、そんな簡単に頭を下げるんじゃねぇよ」
するとドラゴンはゆっくり顔を上げた。額から流れる血を拭うこともせず、真っ直ぐレイを見る。
「世界を変える為ならこの俺程度の頭なんぞ何度でも下げてやるさ」
その言葉に、レイは僅かに目を細める。ドラゴンという男の本質が見えた気がした。この男は、世界政府とは違う。自分の地位や権力を守るためではなく、本当に世界を変えるために動いている。
先ほどまで張り詰めていた空気は、まだ完全には消えていない。
しかし、そこにあったものは敵意ではなかった。互いの信念を理解するための、静かな緊張感だった。ドラゴンは一度だけ深く息を吐き、改めて口を開く。
「……改めて話そう。我々革命軍が、何故このタイミングでエデン連邦へ接触したのか。」
レイは黙って聞く。
ドラゴンの視線は真っ直ぐだった。
「結論から言えば、革命軍はまだ世界政府と全面的に戦える段階にはない。」
その言葉に、革命軍側の者たちが僅かに表情を変える。
それは認めたくない現実。しかし、ドラゴンは隠さなかった。
「我々はこれまで数十年、世界各地で同志を集め、圧政に苦しむ国々を支援し、情報網を築いてきた。天竜人による支配体制を終わらせるという思想を持つ者たちを探し、育て、組織として形にしてきた。」
ドラゴンは拳を握る。
「だが……思想だけでは世界は変えられない。正義を掲げても、力がなければ守れない命がある。」
その言葉に、レイは何も言わなかった。それは彼自身が一番理解していることだった。どれだけ正しい想いがあろうと、力がなければ大切なものを失う。幼い日の自分が、まさにそうだったように。
「現在の革命軍は、次の時代を担う者たちを育てる段階にある。」
ドラゴンは続ける。
「俺の意思を受け継ぐ若い世代、各地で立ち上がった同志たち。まだ名もないが、確かな覚悟を持った者たち。彼らが未来の革命軍を支える存在になる。」
しかし――ドラゴンの表情が僅かに険しくなる。
「それでも、今の我々では世界政府の最高戦力とは戦えない。」
彼らを相手にするには、まだ足りない。」
レイは腕を組む。
「つまり……時間が必要ということか。」
「ああ。」
ドラゴンは迷わず頷く。
「革命軍は今、力を蓄えている。ただ兵士を増やしているわけではない。同じ志を持つ者を探し、育て、世界中に根を張る。いつか来る、その時のためにな。」
その言葉には、長年戦い続けてきた男の覚悟があった。
「だが。」
ドラゴンはレイを見る。
「世界は待ってくれない。天竜人による支配は今も続いている。奴らの権力によって苦しむ者たちは、今日この瞬間にも存在している。だからこそ、我々は選択を迫られている。まだ準備が整っていないからと、見過ごし続けるのか。それとも、危険を承知で前へ進むのか。」
レイは静かに目を細める。
「……だから俺たちに声を掛けた。」
ドラゴンは頷く。
「そうだ。エデン連邦は、単なる軍事同盟ではない。君は既に、世界政府とは異なる形の秩序を作り上げた。種族も、国も、生まれも関係なく共存できる場所を。」
「…」
「噂では世界政府の更に上層部…五老星が、エデン連邦に天竜人を近づけることすら戸惑っているらしいじゃないか」
五老星はかつてレイの怒りに触れ、痛い目を見ている。恐らくエデン連邦では天竜人の権利が使えなくなり何かあれば問答無用で殺される未来を見据えているのだろう。
ドラゴンの視線が窓の外へ向かう。そこには、人魚族、巨人族、人間、様々な種族が暮らす街並みがある。
「我々革命軍が望む未来の一つが、そこには存在している。」
レイは少しだけ沈黙する。
「……だが、革命軍とエデン連邦では方法が違う。」
「ああ。」
ドラゴンは即答した。二人の視線が交差する。
「だが、目指す先は同じだ。誰かが生まれだけで支配される世界を終わらせる。」
ドラゴンは静かに言う。
「だから私はここへ来た。どうか力を貸してほしい。より良い未来の為に」
「…」
ドラゴンの覚悟と革命軍の意思は伝わった
「…お前達が知っているかは分からないが俺たちは既に二つの海賊団と同盟を結んでいる。」
「…存じている。白ひげ海賊団と九蛇海賊団だな」
「俺が彼等と同盟を結んだのは彼等は俺たちに力を貸してほしいと頼まなかったからだ。白ひげ海賊団は俺たちに縄張りの強化を…九蛇海賊団は俺たちと同盟に入る事で他国への牽制と守りの強化を…彼等二つに共通するのは決して攻撃や迎撃の争い為に同盟を組んだ訳ではないと言う事だ」
「…」
「しかしお前ら革命軍が欲しているのはウチの軍事力と戦闘力…お前は我々に戦争をしろと言っているようなもんだぞ」
「…」
「俺も仲間達にいつでも覚悟を決めれるように日々伝えているつもりだ。…だがそれでも…それでも可能な限りコイツらに戦闘はさせたくない」
「…」
「それでも俺に…俺たちに血を流させる覚悟がお前にはあるのか?」
ドラゴンはしばらく黙っていた。レイの言葉は、責めているわけではない。
だが、その一つ一つが重かった。エデン連邦が何を守ろうとしているのか。そして、レイが何を恐れているのか。それを理解したからこそ、軽々しく答えることはできなかった。
やがてドラゴンは静かに口を開く。
「……ない。」
その即答に、室内の者たちが僅かに驚く。
ドラゴンの返答にレイも目を細めた。
「……何?」
「血を流す覚悟など、私一人で決められるものではない。」
ドラゴンは真っ直ぐレイを見る。
「君の仲間たちが、君の国の民が、戦場へ向かう覚悟を持つかどうか。それは君たち自身が決めることだ。私は、革命軍の目的のためにエデン連邦の民を駒として扱うつもりはない。」
ここまで巻き込んでおいて今更何のつもりだ…そう思ったがそこには確かな意思があった。
「もし私が『世界を変えるためだ』という理由だけで、君たちに戦えと言うのなら……それは天竜人と何も変わらない。」
その言葉に、レイの瞳が僅かに揺れる。
ドラゴンは続ける。
「我々が終わらせたいのは、力ある者が弱き者の意思を無視する世界だ。ならば、革命軍自身がそれを犯すわけにはいかない。」
静寂が訪れしばらくして、レイが口を開く。
「……なら、お前は何を求めている。」
ドラゴンは答える。
「全面的な軍事介入ではない。まずは情報共有だ。世界政府の動き、海軍の配置、天竜人の動向。我々革命軍が長年築いてきた情報網を共有する。」
レイは黙って聞く。
「そして、互いに不可侵の協定を結ぶ。エデン連邦が望まぬ戦争へ巻き込まれることを、革命軍側から防ぐ。」
ドラゴンは一度言葉を切る。
「その上で……もし世界政府がエデン連邦へ牙を向けた時。その時だけは、共に戦って欲しい」
レイは眉を動かす。
「防衛戦だけ、か。」
「ああ。」
ドラゴンは頷く。
「革命軍が求めるのは、君たちの兵力を借りて世界政府へ攻め込むことではない。君たちが築いた国を守るための力だ。エデン連邦が、自らの意思で戦う時だけ共に立つ。」
その言葉に、ハンコックが静かに口を開く。
「つまり……妾たちを革命軍の戦力として扱うのではなく、対等な同盟相手として扱うということか。」
ドラゴンは頷いた。
「そうだ。革命軍とエデン連邦は、それぞれ違う役割を持つ。我々は世界政府の支配構造へ内部から揺さぶりをかける。君たちは、新しい世界の形を示し続ける。」
ドラゴンは窓の外を見る。
「人々に『世界政府がなくても平和に暮らせる場所が存在する』と証明することもまた、革命だ。」
レイは黙り込む。確かに、革命軍の存在は危険だ。
世界政府を敵に回す以上、争いは避けられない。
しかし――目の前の男は、エデン連邦を武器として見ていなかった。
利用する対象ではなく、同じ未来を見る存在として見ていた。
「……」
レイはゆっくりと息を吐く。
「一つ条件がある。」
「聞こう。」
「エデン連邦の民、そして俺の仲間たちの命を、お前たちの革命のために消費しないこと。戦う時は、俺たち自身が選ぶ。誰かに強制されることは絶対に認めない。」
ドラゴンは迷わず答える。
「約束しよう。革命軍の名に誓おう。」
その返答を聞き、レイは静かに立ち上がった。
「……なら、話は進められる。…俺たちエデン連邦は革命軍と協力関係を結んでやる。」
「革命軍を代表して感謝する」
ドラゴン及び革命軍の面々が頭を下げ感謝の念を伝える。
「あの…すいません。ドラゴン総司令」
その時、ドラゴンの後ろに構えていた革命軍の一人がドラゴンの耳元で何かを囁く。
「…そうか。…重ね重ねで申し訳ないのだがもう一つ御願いがあるのだが」
「…なんだ?」
「君の実力を見込んで頼みがある。ウチの若い者を一人鍛えてやって欲しい」
「は?何で俺が」
ドラゴンの頼みとは革命軍の若者の育成であった。しかしこれをレイが受ける通りはない。第一にレイはエデン連邦の代表であり暇ではないのだ。
「そこを何とかお願いしたい。君は四皇と呼ばれる海の到達点達にも引けを取らない個人の強さを持っている。指導してやって欲しいとまでは言わない。…ただその力の一端を奴に見せてくれるだけで良いんだ」
「やけにソイツに拘ってるんだな」
「…あぁ。奴は"サボ"はいずれ私の後を引き継ぎ革命軍を引っ張っていく男になる。才もあり強くなろうとする気概もある。何よりサボ自身が若くして我々同様同じ頂を見据えているのだ」
「…へぇ。」
あの革命家ドラゴンがそこまで推す革命軍の未来…か。少し興味が湧いてきた。
「良いだろう。んで肝心のソイツはどこにいる?」
「それなんだが、奴はこのような会談をあまり好まなくてな。今頃街に繰り出しここを謳歌している事だろう」
「…大丈夫なのかソイツが革命軍の未来で」
疲れたような表情を浮かべるドラゴンを見ているとなぜか革命軍が不憫に見えてきた。
「実力は保証する。…ではこれから宜しく頼む」
「あぁ。こちらこそ」
そうして互いに手を取り合い、此度の会談は「承諾」という形で幕を閉じることとなった。
彼らは共に、世界に平穏をもたらすことを望む者たちである。しかし、その理念を実現するための歩み方は、対極と言っても過言ではなかった。
革命軍は独自の情報網と勢力を駆使し、各地で改革を推し進めながら志を同じくする仲間を増やし、着実にその影響力と戦力を拡大していった。
一方、エデン連邦は当初こそ、代表であるレイとヤマトが各国を巡り、世界の現状をその目で確かめながら、何が正しい道なのかを模索する日々を送っていた。しかし、やがて一つの国を築き、自分たちが守るべき民を得たことで、その方針は大きく変化していく。
世界を変えるために力を広げるのではなく、己たちが手にした平和と、そこに暮らす人々の未来を守り続けること。それこそが、エデン連邦が掲げる最も重要な使命となったのである。
もっとも、エデン連邦の発展は決して武力による侵略や征服によって成し遂げられたものではない。同盟の締結、各国との和睦、そして互いの利益を尊重した協力関係。その積み重ねによって、自然と国は大きくなり、多くの者たちが彼らの理念に賛同するようになっていったのだ。
しかし――この二つの巨大な勢力が手を結んだという事実は、世界に大きな波紋を広げることとなる。
それは喜びや希望だけではない。
長きに渡り支配され続けてきた者たち、そして現状を変えようと願う者たちにとって、この同盟は一つの大きな希望となった。
世界の裏側で「反乱分子」と呼ばれていた者たちが、次々と立ち上がり始める。
果たして――下々の者たちが、神々と呼ばれる存在に抗い、その支配を終わらせる時は近づいているのかもしれなかった。