『その日、全てが引っ繰り返った。』
レント・バラードはそう感じた。
青い空を見なくなり久しい時にそう思い出していた。
歩く 歩く 歩く
目標は有るが、目的は無い。
意味は有るが、意識は無い。
そんな曖昧な逃避行を続けている。
何年?何十年?
いや、何千年続けている様な気がした。
何しろ
傍から見れば命を持たぬ幽鬼に見えど、もはや命を捨てることすら出来ぬ身と成り果てている。
そんなボロ切れの身となりながら、意識のない身体となりながら一つの思考が未だにこびり付いていた。
『ここから逃げなくては。』
その思い一つのみを残し歩き続けた。
何故そう思ったか、思い立ったかすら遠い過去の話。
ただ、
大事な、大事な人。
顔も声も覚えてない。忘れてしまった。
だが、もはや求めるものなど他には無い。
そうしてまた、歩き彷徨い続ける。
歩く 歩く 歩く
赤く染っている空の下を、緑で生い茂っていた筈が紫に枯れきっている草原を。
歩く 歩く 歩く
突如目の前が拓けた。
下を向きながら歩いていたので気づかなかったが崖の上に向かっていたようだった。
あと数十歩も歩けば落ちてしまう様な端にたどり着いた。
そして眼下に広がる光景を見た。見つけたのだ。
一言で言えば
自分の最後の記憶。私はここに居た筈だった場所。
『
栄光の粋を極め、近隣諸国の中でも最大国家。
宛も無く歩き続けた先の帰る場所。
だが、それも自分の知らない内に様変わりしていた。
長く見ていなかったからでは無い。
このような高所から見下ろした事が無い訳でも無かった。
何やら結界の様なもので覆われていたからだ。
しかも、一色ではない。
白と黒、青と赤が重なり合っているように見える。
そして、時折白の光が強く光っている。
いやそれだけでは無く、緑や青の優しい光も見受けられる。
そして、それに呼応する様に
それに気づかなかった訳では無い。
それよりも故郷に辿り着いた事。様変わりに驚いていただけだ。
レントは震えた唇を強く結びながら帝国内を目指し歩く出した。
今度こそ目指す場所を違えぬように。
街中は見る限りでは荒れている。
壁は所々崩れており、石畳は剥がれている。
家は崩壊しているものが多い中、人の気配はあった。
いや、
それは切羽詰まる様だが、何故か優しい気配を感じた。
それを一目見ようと近づこうとした。
その時
何十年とも見ることが無かった青空を見た。
そして街の中心部、先の広場の中で見た。
フードを被った人物を中心に含めて7人、空を見上げていた。
その最前には
かつて仕えていた主。記憶より少し伸びた背丈に涙が出そうになる。
気づけば踏み出していた足から砂利音が出て7人が一斉に振り向き得物を構えた。
金髪の少女が振り向き、目を見開いた。
「・・・・・・レント・・・?」
「カノン・・・殿下・・・?」
カノンと呼ばれた少女が信じられないという目で、ソナタと呼ばれる少女もまた。
故郷への帰還、会えないと思っていた主人の邂逅
極限の安堵と呼べるそれを味わった男は
極度の疲労による脱力感に男は
まず、意識を手放したのだった。
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「レ、レント君!?ちょっと!?」
「レント!?なぜ君が!?」
皇帝、久条運命は驚いた。
いや、人が来た事もそれがカノンとソナタの知り合いだという事もそうだが。
「君たちは・・・感じるかい?」
「陛下?何を?」
ブルーはきょとんとして、
「いえ、シドウは何も。」
風雅は首を振り、
「いえー私も
ロンドは困惑し、
「あはー、2人が見たことも無い程狼狽えてて草ー♪花ー♪」
トロイメライは笑っていた。
彼女らは騎士。
だが今、自分が感じている気配も間違える訳が無いのも事実である。
(ねぇ、君も感じてるんだろ?)
(君はこの状況をどう見るんだい、我が読者。)
脳内図書館の主、リリィも首肯しながら問うてくる。
(そもボクはキミの見聞きした体験しか知覚する事が出来ない。よって《この気配》も感じているとも。)
(じゃあ、どうしよっか・・・)
(少なくとも放置の方が愚策ではあると思うがね。それに・・・)
「運命くん、どうしましょうか・・・」
カノンが声を掛けてきた。
見れば、レントなる来訪者の体勢を整え寝かせている。
(この状況で彼を無視する方が無理というものだ。)
それもそうか、と思い意識を戻す。
まず、何をするにも
「彼は一体何者なんだい?」
運命は問う。他の4人も同じだったようで声を出さずとも目線を介抱する2人に向ける。
「彼は・・・」
「・・・彼は我ら皇族の関係者だ。」
ソナタは言い放つ。
「すまない。色々と説明しなければならないと分かっている。
がしかし、位相反転した事で世界が戻ったこともあるし、今はGARDENで説明をさせて貰いたい。」
簡潔に分かりやすい説明。
そして、GARDENで説明するということは、
「彼を持ち帰る、ということなのかしら?殿下。」
「・・・うん。今は気絶していてるだけ。それに、彼に
「うーん・・・・・・いいよ。」
少し長い沈黙の後、それらしい態度で許可を出した。
「えぇ!?良いんですか?後でメイズママから
ロンドが心配する事も分かる。
つまり、GARDENに関係者というだけの不審者を連れていくという事なのだから。
しかし、
「大丈夫、マリア達を説得するだけの材料は見つけてあるから。」
運命は自信有りげに頷く。
「助かる。」
「じゃあトロイさんは帰還準備始めちゃうねー♪」
ソナタが感謝を伝えると同時に帰還準備を始める。
カノンは、
「・・・ねぇレント君。何で君はこんなに傷をつけてるの・・・?
何でこんなに傷があるのに生きているの・・・?」
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