剣閃の付き人   作:かみゅう。

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#14 regret 後悔

 

 

 

先程、O-RANGEの実験助手が終わり、自分の宿舎に帰っている最中に会った方が見慣れている人が見慣れない服を着ていた。

「あ、レント!」

カノンが帰る途中でたまたまレントと遭遇した。

「おやカノン様、お元気そうで。

その服は?」

「あ、これは学園の・・・聖典学園ってところに通ってるの。

それはその制服。」

 

 

カノンはその場でくるんと回ってみせる。

その光景に少しだけ可愛いと思ってしまった。

「部活でちょっと遅くなっちゃって・・・」

「部活?」

レントにとっては聞いた事がない言葉だった。

 

 

「そう、おたすけ部って部に所属してて困っている人を助けるの。」

それで今日は時間がかかっちゃって、と笑う。

その言葉にレントは顔を曇らせる。

「・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

突然言い放たれた行動を非難する言動にカノンは怒るでも無く、悲しい顔をして受け入れている。

 

 

「ねぇ、レント。

ちょっと場所、変えよっか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

近くの公園のベンチに二人で腰掛ける。

「ここお気に入りなんだ、一人になれて夜空も見れるんだ。」

カノンは目を輝かせながら、上を見る。

それは確かに燦々と輝く星たちが写っているかのようだった。

 

 

その対極の男が隣に座って俯いていた。

「とても楽しそうな生活をお過ごし出来ているのですね。」

「うん!楽しいよ!」

カノンは笑っている。

 

 

「騎士団の皆とは仲良く出来そう?」

「今のところは、皆さんお元気過ぎて何人かは私には手に付けられそうにないです。

モノ様から少しお怒りを頂きました。」

「あーモノさんは言いそうだな。」

カノンは笑っている。

 

 

「此処は良いところですね。」

「ランヴィリズマは良いところですよ、何もかもが新鮮に写って楽しいでしょ?」

カノンは笑っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エルスタニア帝国に帰りたいとは思わないのですか?」

()()()()()。」

そこでカノンの笑顔は止まった。

まるでその言葉が飛んでくるのが分かっていたように。

 

 

それに対してレントは驚愕の表情を浮かべる。

「・・・な、なぜ・・・?」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

カノンは言い切る。

 

「星変って教えて貰いました?」

「・・・はい。」

「その時に帝国は完全に無くなったの。

もう随分昔も昔に。」

カノンは見上げながら一つ一つ伝える。

 

「私も最初はショックだったよ?

でももう何年も経つ内に諦めがつくよ。」

 

 

「何でなんですか!!?」

レントが思わず立ち上がる。

「我らの故郷!貴方の守護地!

何故諦められるのですか!?

何故・・・・・・」

レントは言葉を切り、

 

 

()()()あそこま(旅団)()()()()()あんな事(処刑)()()()()()()()!!

()()()()()()()()()()()()()()()()

レントは吠える。

 

それはカノンが小さな時から見ていたから。

それはカノンが聖剣に選ばれたと嬉しそうな顔で報告してきたから。

それはカノンが帝国に蔓延る魔獣や敵国の戦争で繰り出されていたから。

それはカノンが血塗れボロ切れのまま架台に釣られ処刑されたから。

 

「何故・・・・・・あれだけの事があって・・・幸せでいられるのですか・・・・・・」

レントは涙を流し許しを乞うかのように地面に這いつくばった。

 

 

その姿を見てカノンは得心を得る。

「そうか、レントは見てたんだね。

見て、くれてたんだね。」

カノンは思い出す、あの日の光景を。

 

人々が自分を栄光あれと送り出し、人々が自分を憎み恨み処刑した。

あの中にレントがいた、その事に気がつくと嬉しさもあった。

 

「・・・何故笑うのです。」

「だって、私の従者があんな時でも私の事を考えてくれていたなんて主人冥利に尽きるってものだよ。」

 

 

あんな時なんて顔でも状況でも無かった筈なのに聖剣の主は笑う。

明るく照らす星のように照らすが、レントにとっては眩しいばかりの光であった。

 

「レントの言ってる事も分かるよ、本当なら私は彼らを憎むべきなんでしょう。

旅団として人を救い、聖女として国を救った者としての最後が処刑などなんという事なのだと。」

目を瞑り、胸に手を当て淡々と告げる。

「お姉ちゃんにも言われたよ、私の意志を尊重するって。

なら私の意志は決まってる、私の聖剣をもって人類を救済する。」

 

 

そういうカノンは真っ直ぐレントを見つめた。

それでもレントは納得はいかない顔で腑に落ちた心持ちだった。

「・・・変わりませんね、カノン様。

旅団として国を出た時も同じような問答で喧嘩しました。」

「そうだったね、あの時も私はレントの心配を振り切って出ていっちゃったね。」

 

 

「やはり、貴方は聖女としてあり続けるのですね。」

レントはそこでようやくカノンを見つめた。

「聖女じゃなくて魔王としているつもりなんだけど、私はもう世界を何度か壊している訳だしね。」

 

 

「そんな私でも主として認めてくれるかな?」

「・・・・・・それでも私は貴方の従者です。」

 

 

レントは笑った。

「とはいえ、従者をこんなにも心配させるのは主人失格では?」

「な!?お、お父様だって昔は婆やを困らせてたって聞いたよ!?」

 

先程の重い空気はどこへやら他愛の無い話で二人は笑いあった。

昔のように、友達として、主従として。

 

何分だったのだろう、遠くから声が聞こえた。

「おーい、カノーン、レントー!

ここにいるのかー!」

ソナタの声が聞こえた。

帰りが遅くなっている二人を探しに来たのだろう。

 

「お姉ちゃんが呼んでる、帰ろ!」

「はい、カノン様。」

 

昔からそうだった、二人して無邪気な遊びばっかしてソナタに怒られて三人で部屋に帰る。

そんな日々が続いていた、続いていたはずだったのだ。

 

()()()()()()・・・・・・・・・

 

 

 

 

「っ?」

「どうしたの?早く行こ!」

一瞬、頭痛ともいえない目眩を覚え不快感を感じたが、通り過ぎてしまった。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

「我々の任務?」

ソナタはレントからの質問に驚いた。

 

ソナタ、カノンと三人の夕食会。

六層のファミレスでテーブルを囲んでいた。

このようなジャンク的な場所で食べることには抵抗が無いわけではなかった。

 

 

「そうだな、主に永続神域の調査班や星遺物(アーティファクト)の確保が任務になる事が多い。

ガーデナーの皆に頼む事も出来るが彼らは不死では無いからな。

無茶が出来る騎士が抜擢される場合が多い。」

 

神域を生み出す魔剣、星から生み出された膿《星遺物》。

それらは人にとって害あるものに他ならない。

それらを解決、回収する任務を騎士団は負っている。

 

「突然どうしたんだ?」

「・・・・・姉様殿下、先日私の事を同志と呼んで頂きました。

私はその言葉に自分の中で失意と歓喜、そして目標が生まれました。」

レントは手を胸に当て、告げる。

 

 

「・・・聞かせてくれ。」

「私は貴方方の従者でいるつもりでした。

ですが、先程カノン様と帝国は無くなったと。

もう私達は帝国に関わらず、人類を救済すると。」

 

レントは淡々と話す。

自分の中で決まったことを話すように。

 

「それが失意か。」

「はい、皇族を捨てた方にお仕えすることは出来ません。

私はバラード家としてエルスタニア帝国に仕える事を誇りに生きてきました。」

ただ、と続ける。

 

「その上で、ソナタ様は同志として私と視座を共にして下さりました。

私が楽になるなら私に合わせよう、と。」

二人は黙って聞いていた。

彼の元主人として、友人として。

 

「カノン様は変わらずにいて下さいました。

私があの日この方に仕えようと心に決めた、聖剣を手にした少女のままでした。

・・・帝国が無くなろうとこの方さえいれば良いのだと思いました。」

 

 

「ちょっと重すぎる気がするけど・・・」

カノンが思わずツッコミを入れてしまったが、彼は昔からそうだった。

私が手を繋ぐと顔を赤くして、照れたり。

困ってたら一番に駆けつけてくれて一緒に解決してくれたり。

 

「それが歓喜か。」

「はい、私は執事としての誇り捨てることは出来ません。

それを理解した上で我らは同じなのだと。」

好意を真っ直ぐ伝えてくれたり、私を諌める度に本気で泣いたり。

そんな格好を昔から見てきた。

 

 

「では、目標とは?」

レントは一度、深呼吸をして私たちを見つめる。

 

 

「・・・()()

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()。」

 

「ふぇぁ??」

「っはぁ!?」

 

 

「俺は対等として見てくれた貴方達に並べる存在でありたい。

バラード家、従者、BUTLERとして全てに誇りを持てるならどれだけ幸福な事でしょう。」

 

「だからこそ俺自身がまだ許せない。

並び立つなんて烏滸がましい実力も気概も備えきってないのです。」

 

「だからいつか俺がそんな存在になった時、一生を貴方達の付き人としている事を認めて頂けますでしょうか。」

 

 

 

突然の告白に固まっていたが、ソナタは続く言葉に得心を得る。

「なるほど・・・いや、しかし添い遂げるとは・・・

いや、言葉としては間違いとは言えないのだろうが・・・」

あまりの衝撃に頭を抱える。

 

昔からその気はあったのだ。

少女の感性による恋愛感が無かったとはいえないが、この男が甲斐甲斐しく付き添ってくれる。

それだけで気になってしまっていた時期もあった。

 

「・・・話は分かった。

君が好きなようにやるといい。」

ソナタは一度、姿勢を正すように座り直す。

「ただ具体的にはどうするつもりなのだ?

目標というには達成する為の過程も考えているのだろう。」

 

 

「・・・実はそれに対して相談をしたく。」

「ああ聞こう。」

 

「戦闘指南の講師と物資調達のプロを紹介して頂きたいのです。」

レントはソナタと向き合いながら伝える。

まずは自分が強くなる事が目標に近づく第一歩なのだと。

 

「今の私は先程の任務について行っても足手まといになるでしょう。

まずはそれを解消してみようかと。」

「・・・なるほど、指南役にならピッタリの奴がいる。

後で声を掛けるようにしておこう。」

ただ、と続ける。

 

「今は少々複雑だからな、君からちゃんと誠意を示しておいた方が良いだろう。」

「?分かりました。」

レントは首を傾げながらも了承する。

 

 

 

ソナタはカノンの肩を叩く。

「そろそろ戻ってくるといい。

彼にカノンが想像している意味は含まれていない。」

「・・・はっ!?婚約!??」

カノンは肩を跳ねさせ目が覚める。

もう少しの時間が必要かとソナタは休憩させる。

 

 

「それにしても、君から物資調達なんて聞くとはな。

何が欲しいんだ?」

レントははっきり言っても私欲は無い方だ。

何かと世話を焼いたり、体を動かしている方が楽だと言い張る奴だ。

 

「いえ、単純に運命様の業務に私情を挟む訳にはいきませんので。

少なくとも早く終わらせる事が出来ればと思いまして。」

レントは少し思い出すかのように伝える。

 

「『執事の七つの秘密道具 《スタック・フェルムート》』を作ろうかと思いまして・・・」

「・・・なんと言ったんだ?」

「スタック・フェルムートと呼ばれる代々バラード家に伝わる秘薬です。

アレを飲むと仕事が倍の速度で出来るものになる優れ物でして。」

 

「初耳なんだけど!?」

カノンが思わず立ち上がる。

「元々便利故の依存性の観点から封印されていたものでした。

コレに頼れば家の栄光が『薬に頼らなければならぬ落伍者』と罵詈雑言の嵐となる。

そう危惧した先々代の執事長である曾祖父が封印としました。」

 

レントはカチャと音を立てる左腕を触った。

「ですが今は()()があります。

依存性・・・つまり欲求を止めれば副作用は全て消え去る筈ですから。」

 

 

「それより、執事の秘密道具ってなに?

そんなものが使われている所なんて見た事無いんですけど・・・」

「いえ、普段から使っていましたよ。」

 

そういい、懐から様々な道具を取り出す。

即効性のある毒針を仕込んだ懐中時計。

ロープフックが射出される腰ベルト。

どの向きに置いても安定するシルバートレイ。

極薄の刃が仕込めるネクタイ。

 

などなどと、見せびらかしている内に二人が固まっている事に気づいた。

声をかければソナタは咳き込んで質問を返してきた。

 

 

「・・・しかし魔剣をそんな使い方をしていいのか?」

ソナタは最前線にて皇帝の魔剣を見てきた。

その効果は言うに及ばず。

それと同型の代物を薬の副作用消しに使うとは・・・・・・

 

「これに関してはメイズ様と運命様のお墨付きです。

私は魔剣の力を知らず侵食率だけが上げられました。

もし暴走などを起こした場合、今の状態では抑えることも出来るか怪しいと。」

 

侵食率とは魔剣がどれだけ不可逆な影響を及ぼしているか。

レントは約150%まで上げられた上で扱いは赤子同然。

どれだけ危険な状態か子供でも分かる。

 

 

「小さな事で慣らしつつ安定を図れとの事です。

その為に少しづつ・・・ええ、取るに足らない事でも多用しています。」

「・・・そうか。

分かった、物資関係を一手に引き受けている騎士団がいる。」

ソナタは納得して、レントのお願い事を受けた。

 

「話の分かる男だが、不心得者には容赦がない。

君なら大丈夫だろうが。」

「ありがとうございます。」

 

 

 

 

夕食会はここでお開きなったのだ。

レントは自分の宿舎に帰って行ったのだが、

「・・・ねぇお姉ちゃん。」

「・・・・・・ああ、あの意匠には見覚えがある。」

 

 

 

 

 

 

 

「あのシルバートレイの意匠は()()()()()()だった。」

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

シリアスを書くと執筆速度が落ちる。

感想や評価、お待ちしております。

 

 

 

 

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