運命様を探す為に部屋を飛び出し、街中を歩く。
久理様と闇虹様の連絡先を交換した所までは良かったが、一緒にいるという鉉覇様と煤墨様の姿を教えてもらうのを忘れていた。
許して下さい、あの時の闇虹様が本当に怖かったのです。
系統で言えばカノン様が本当に怒った時と同じでした。
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・いや、思い出すのは辞めよう。
フラッシュバックだけで気分が落ち込む。
もう二度とソナタ様のドッキリには断固として断ると決めたのだ。
閑話休題。
街中を捜索するとしても実質散策と変わらない。
道行く人に話しかけてみても『見ていない』か『だいぶ前に見た』だ。
こんな情報ではどうやっても見つけられないだろう。
さて、開始三十分足らずで詰んでしまった。
どうしようかと悩んでいると、
「お、レントか!何してんだ!」
見覚えのある頭についた耳、目が覚める髪色。
「レアリザス様、お久しぶりでございます。」
「固い固い、もっと砕けていいんだぜ。
お兄ちゃんとか。」
両手に袋を持ったレアリザスが通りがかった。
袋の中には食料品が見えている。
「あら、この方はどなたですの?」
「・・・ぅにゅ?」
そして隣には初対面の方が二人いた。
この方たちも頭の上辺りから獣耳が生えていた。
気づいていた事だが、騎士団ごと特徴というか特色があるようだった。
「ほら、ちょっと前にオラスが見せてきた動画に映ってた新人の子。
覚えてないか?」
「ああ!あの魔剣使いの方ですの!」
「・・・zzz」
・・・一人は寝てしまったようだ。
・・・・・・子供?
「あ、ああ申し訳ございません。
レント=バラードと申します。」
いつもそうだ、GARDENには色々な事がありすぎて挨拶が遅れてしまう。
「あらご丁寧にどうも、私はアクシオンゲートがKNIGHT、シオン様の忠実なる騎士、エリス=ケットフリークですわー!」
金色の長髪、レアリザス様よりも巨大な尻尾、エルスタニアでも何度か見かけた言葉遣いと所作。
それだけでこの御仁の品格が計り知れる。
そして、
「ほら、ハル。
新しい騎士仲間だ、挨拶出来るか?」
「・・・んぅ、、」
グズる子供がレアリザスに手を引かれ前に出る。
まさか、この子も騎士だと言うのか。
「・・・ぅーん、ハルちゃんはー・・・
アクシオンゲートのー・・・JOKERー。
いぇーいですとろーい。」
・・・緩い子供だ。
黒が入った白い髪、前髪のリボン、緑の特大ぬいぐるみ。
こんな
「あ、こら。」
『おい、今ハルちゃんの事をバカにしましたね。』
眼前に突然現れた少女。
褐色の肌に黒紅の角、そして顔がハルと瓜二つだった。
「バハ、出てきちゃダメ。」
『なんでー!だってこの人ハルちゃんのことを子供だーってナメてましたよ。』
「・・・ほんと?」
「え、あ、いや、その。」
子供だと思ったのは本当。
子供が騎士なんてと思ったのも本当。
「・・・申し訳ございません!
見たままに子供だと侮った事、謝罪をさせて下さい。」
腰を折り、謝った。
「・・・まぁ許す。」
『え、ちょ?許しちゃうの?』
「ん、もういい。」
「まぁ、バハ。
ここはお兄ちゃんの顔を立てて許してくれないか。」
レアリザスがハルの頭を撫でる。
その行為にハルは気持ちよさそうに目を瞑る。
『・・・まぁいいですけど。』
助かった・・・のか?
「ありがとうございます。
申し訳ございませんが、私は運命様を探しに行かなければならないので。」
御迷惑をお掛けして、退散するというのもマナーが悪い。
が、気にしていられない状況なのだ。
「鉉覇様と煤墨様という方も一緒に居るはずなのですが・・・」
「まぁ、煤墨さんなら先程お見かけしましたけど・・・」
「・・・はい!?」
ここで衝撃の発言が出た。
探していた人物を先刻発見したという人が出てきた。
「あれ、いたか?」
「遠目でしたわ、こちらが気づいたら目が合って会釈だけして終わりましたけど・・・」
いや、今はどう会ったかなんて関係ない。
「どちらで会いましたか!?」
「あ、あっちの方向のですわ。」
「ありがとうございます!!」
別れの挨拶も無いまま走り出した。
それが無礼に当たる行為だと分かっていても、一刻も早く捜索に行かなければならない。
「何だったのかしら。」
「まぁ運命の側近として動くなら色々あんだろうな。」
『大人だと思って頂けたんでしょうか。』
「バハは早く戻って。」
息を切らしながら走る。
人が増えてきて、周りの建物もビルから商業店が多く買物をしている人が多くなってきた。
走っているせいで人を避ける余計な動作で思ったより疲労してしまっていた。
道端に座り込み、少し休憩する。
端末を見ても闇虹様と久理様から見つけたという連絡は無い。
どうしようかと、下を向き溜息を吐いたその時だった。
「お、なんか執事さんが落ち込んでる説はっけーん。」
「説じゃなくてホントに執事さんが落ち込んでるよ。」
黒い装束に身を包んだ男性二人に話しかけられた。
「どしたどした?こんなとこで執事さんが落ち込んでるなんて、只事じゃない説じゃん。」
背中に黒い熊のぬいぐるみ・・・のような何かを乗せた男性が話しかけてきた。
疲れのせいか、ぬいぐるみも動いている様な気がしている。
「い、いや、今少し人を探していまして・・・」
「へぇ、人を?どんな人?」
メガネを掛けたアイボリー髪の男性から質問をされた。
・・・少し視線が細められた気がした。
「運命・・・GARDENの皇帝陛下です。
朝から執務室で見かけないもので・・・」
「ほおぅ・・・」
「へぇぇ・・・」
「実は騎士団の鉉覇様と煤墨様という方が一緒にいるというので、闇虹様と久理様も探して頂いてるのです。」
「ふぅーん?」
「なるほど?」
・・・なんだろう、生返事だけ返ってくるが二人が顔を見合せて何かを考えている。
「こりゃ大変だ、さっさとコウテイヘイカを見つけて
「そうだね
「えーと?」
二人は顔を合わせ、打ち合わせをするかの様に小声を出す。
「そうだ、お二人のお名前を聞かせて頂いても宜しいでしょうか。」
声を掛けられた二人は少し思案した後、笑顔を向けた。
「じゃあ俺は
「僕は
「実は俺もヘイカを見かけたんだよね♪」
少し歩いた所でクマ様が答えた。
聞けば、彼らも運命様が商店街にて買い食いをして、遊んでいた。
その後ゲームセンターやカラオケに行っていた事。
最後に端末の着信履歴に気づいた運命様が別れた事。
「・・・随分詳しいですね?」
「大丈夫大丈夫♪」
「無問題無問題♪」
先導する二人に追従し、歩く。
喋る間も前を向いているせいで顔が見えない。
「俺もかのヘイカに詳しい説でてるからさぁ、きっともうすぐ会えると思うんだよね。」
「なるほど。」
彼らは長く運命様と付き合いがあるようだ。
それならば信用出来るだろう。
「・・・先程から何故、皇帝陛下と棒読みなのですか?」
「・・・大丈夫♪」
「彼は普段違った呼び方なんだよ♪」
それから数分、歩き続けた先で開けた場所に着いた。
どうやら街の中心のようで綺麗な噴水が目立つ。
建物こそ違うが、エルスタニアも似たような景観であった。
そして、その噴水の縁には運命が座っていた。
何故か落ち込んでるようで俯いてしまっている。
「運命様っ!!」
レントは目につくや走り出し、駆け寄った。
その声に反応し、運命は顔を上げた。
「レ、レント!?
もう連れ帰りに来たの!?」
そう声を掛けた所で運命はレントに遅れて駆け寄った二人に気がついた。
「あ、あれ?二人ともどうしたの?
さっきぶりだけど。」
レントは小さくえっ、と声を出した。
「いやいや、そこで執事さんが困ってた説だったから連れて来たのよ♪」
「陛下もどうしたの、ここで。」
二人はまるで親友かの様に接している。
「いや、さっき闇虹から連絡が来ていてね。
説教されちゃった。」
「ははは!当たり前説ー♪」
「
・・・・・・今なんと?
見ればフェイカー様は口角を上げ、こちらを見て笑っている。
「それで闇虹ちゃんはなんて言ってたの?」
闇虹様をちゃん付けで呼んでいる。
・・・まさかこの人達が。
「今日という今日は許さないって。」
「
その言葉に二人は固まった。
「・・・それさっき?」
「ちょっと前だよ、だからここで待ってたんだ。
もうすぐ着くんじゃないかな。」
それを聞いた
「マズイね、直ぐに陛下を連れて避難しないと・・・」
その時、周囲が白い魔法陣で包まれた。
「み〜〜〜〜つ〜〜〜〜け〜〜〜〜た〜〜〜〜・・・・・・」
幽鬼がいた。いや鬼がいた。
オーラが揺らぎ立ち上る様が見える。
「今日という今日はもう許さないわよ。
ここら一帯の空間は把握したわ、逃げられないわ。」
徐々に近づいてくる。
「あ〜あ、先に見つけてほとぼり冷める説まで逃げるつもりだったんだけどな!」
「させる訳ないでしょバカKING!」
そこで確信を得た。
それはつまり、
「貴方達が鉉覇様と煤墨様だったのですね・・・」
「はは、騙しててゴメンな!」
「僕達も陛下と共犯だったからね、闇虹ちゃんに捕まる訳にはいかなかったのさ。」
二人は笑いながら謝ってくる。
正面には
右手には先程、運命様の部屋で見た・・・《外装型魔術演算理論空間''27番目の儀式''》が構えられていた。
どう見ても戦闘態勢。
周りを見れば魔法陣によって塞がれている。
運命達を守ろうとレントは左腕に手をやる。
すると、それを煤墨に止められた。
「大丈夫、お詫びと言ってはなんだけど僕が頑張って収めてみるよ。」
そう言うと煤墨は闇虹の方へ歩みを進める。
「闇虹ちゃん、
「あら、大丈夫よ。
建物に被害は出さないし、不死に対して死なないから本気も意味無い。
精々、拘束して仕事をさせるだけよ。」
二人は相対し睨み合う。
その様子が2秒程、続いた後に煤墨が溜息を吐いた。
「闇虹ちゃんの言い分も分かるけど・・・」
煤墨は右手を前に翳し、
「鉉くんが逃げたいって言ってるんだ。」
本を顕現させた。
それは白い本。
それは
「力づくで逃げさせて貰うよ。」
『擬似禁忌魔導書類《白》』から紙片が舞っていく。
それは空間に満遍なく敷き詰められていく。
「『模倣術者:鶴喰闇虹』空間掌握、論破。」
そう詠唱すると、魔法陣の一部が消え、広場から続く道の一本が開ける。
「な!?」
「僕の術式を忘れたのかい?
それに今回は味方の術式さ、破り方は分かりやすいさ。」
煤墨は振り返り、自分達に向き合う。
「さ、逃げるといい。
ここは僕が請け負うから。」
それを聞くや鉉覇が煤墨の横に立つ。
「俺もいた方がいい説あんだろ?」
「いや、鉉くんも彼女の標的なんだけど・・・」
困った顔の煤墨に鉉覇は口を寄せる。
「俺が怒られれば運命の分も減る説があんじゃん?」ボソッ
「・・・まぁ、確かに?」ボソッ
「何をコッソリと話してるの!
逃がすわけ無いでしょ!」
闇虹が魔法陣を閉じようとする。
それに応え煤墨はさらに紙片を展開する。
「さ、レント早く!」
運命はレントの腕を引き、逃げようとする。
レントは目の前の光景に釘付けになっていた。
「おーい、こっちこっち。」
「ああ、出てきましたね。」
魔法陣から出てみれば大きな帽子を被った女性二人が声をかけてきた。
「やぁ、玄鉄、濡羽。」
「やぁ、じゃないですよ。」
「久理にヘルプ呼ばれて探してたらとんでもない事になってるじゃん。」
どうやらこの人たちは久理様の知り合いだそうだ。
いや、この流れは彼女等も騎士なのか。
「で、君が例の新人?」
「執事さんですね。」
固まるレントに白髪の女性が右手を差し出してくる。
「ども、
その握手に応じると、間に挟まるように黒髪の女性が入ってくる。
「同じくFORTRESSの濡羽です、子供扱いすれば即訴えるので悪しからず。」
「は、はい、宜しくお願いします。」
思わず、空返事を返してしまった。
その様子に三人は首を傾げた。
「それで運命、今度は何したん?」
玄鉄が運命に問い直す。
「闇虹を
「何やってんですか!そんな事シックスで一番やっちゃいけない事なんですよ!」
怒らせた事があるのか濡羽が肩を震わせながら叫ぶ。
「君たちは?」
「ウチらは一緒に買物してる時に久理から連絡あってさ、
『闇虹が怒った!』
『盟友を捜索中!』
『助力を求む!』
って、悪霊さんの泣いてるスタンプ付きで送られてきてさ。」
「気ままに探していたら、闇虹の術式反応が突然現れますしビックリしました。
あんなにキレさせた陛下は訴訟ものです。」
濡羽からのブローに思わず項垂れる。
こういう正論にはとことん弱い皇帝なのだ。
そんな項垂れる皇帝はとある事に気づいた。
レントが未だに空間魔術結界から目を離していないのだ。
まるで、
そして、
「何か見えるかい?」
「はい・・・見えます。
私ならあれを解決出来ます。」
私の目は魔法陣が取り囲む結界を見ていた。
だが実際は
見える筈のない霊子が荒れ狂っているのが見える。
それだけで中で魔術というものが乱発されているのか察する。
ブレイドラインなら全員で止めるだろう。
前回のBLADE御披露目でソナタ様に言われた。
『こんな練度では魔界や軌道修正との戦いに出すことなど出来ない』と。
分かっている、これは優しさだ。
血の繋がらない姉からの優しさをひしひしと感じた。
昔からそうだった。
貴方はカノン様を大事に大事にしていた。
そして、仕える私を同じくらい大事にして下さった。
だが、駄目なのだ。
不幸の身で戦う力を得た。
不運によって落とされた谷底。
だが自分が欲しているのは暗き底での安住ではなく。
苦難の崖を登りきった先の平原なのだ。
・・・・・・いや、正直言えばまだ登りたい、とは口が裂けても言えない。
かの天上に光る星に憧れ、手を伸ばす。
しかし、自分は所詮
なら足掻いてみようとも。
どこまでも落ちて身体を打たれようと。
登る為に指が引き裂かれようと。
光に近づき過ぎて焼かれ落ちようと。
私は暗き底で星に手を伸ばし続けるのだ。
(行ったか・・・)
脳内図書館の主が呟く。
それに対し自分は、右手に魔剣を握り締めながら歩いていく騎士を見ていた。
(して我が読者。)
その背中を見る胸中は決まっていた。
(
『決まっているだろう?嬉しいよ。』
そう、ここまでの全ての出来事は自分の描いたストーリーで出来ていた。
闇虹が怒ってくる事。
鉉覇と煤墨が止めに入る事。
レントが停戦に入る事。
『まぁ、これからの事を考えると憂鬱になりそうだけど・・・』
(それを飲み込んで実行しているんだろう。
今更ぐたうだ言うのは止めたまえ。)
そんな事は分かっているが、理解と感情は別だ。
そう心の中のリリィと話しながら端末を操作し通話をかける。
「もしもし、メイズママ?」
「あら、どうしたの?」
通話先のメイズは突然の電話に不思議そうな声を出す。
だが、用件は事前に共有済だった。
「以前言っていた、レントの
メイズは一度声を閉ざした、そして。
「・・・分かったわ、ちゃんとするのよ。」
「分かってるよ、GARDENに被害は出さないよ。」
今までやってきた風雅やソナタ、
それを測るためにこの計画を進めさせて貰った。
レントと繋がりが浅い為、加減をせず戦闘をしてくれる。
本気で自分が止めれば止まってくれる。
そして、他の雑事に対応出来る。
そんな騎士団に
後ろに突然歩き出したレントを止めようと、玄鉄と濡羽が声をかけようとするのを止める。
「ごめん、二人とも。
ここら一帯に人払いの魔術ってかけれる?」
「いけるけど・・・」「いけますが・・・」
「さあ、魔剣使い本来の
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