剣閃の付き人   作:かみゅう。

6 / 6
#6 left arm 左腕

 

身体を動かす。腕を回す。足を上げる。腰を回す。

一昨日、当たり前に出来ていた事だがようやく正常な体に戻ったことを実感する。

「昨日まで本当に大変だった・・・」

 

 

一昨日になる叢裂との戦闘訓練の連続。

それを終わり、ベッドに横になると同時にまるで全身を万力で押し潰されているかの様な錯覚を感じた。

押さえつけているだけじゃない、四肢や体の筋肉を引き伸ばされる様な痛みが支配していた。

そのおかげか、夜朝は一睡すら出来ず逆に体調が悪くなったように感じる程だった。

 

「しかし、起きてみればここまで快調とは・・・・・・

貴方にも感謝を、115号(イイコ)。」

「ニャーン♪」

隣のキーティに手を伸ばし、顔にあたる場所を撫でる。

 

昨日、動けない時の世話は殆どこの『看護型キーティ 115号』が行っていた。

時折、舞護も来てはいたがやはりこのキーティが一番だろう。

 

2日経っただけなのに既に愛着の湧いたものが沢山あるものだ。

優しくしてくれたキーティ。

動けない体に食事を運んでくれたキーティ。

汚いだろうに小水の処理をしてくれたキーティ。

恥じらう自分に頭を撫でてくれたキーティ。

痛みで眠れない夜に側にいて子守唄を流してくれたキーティ。

 

 

 

困った。

キーティしか思い出に無い。

何なら優しくしてくれたのもキーティしかいない気がする。

みんな騒々しく扉を開けたり閉めたりしていった記憶しかない。

 

しかし、動けるようになったのだ。

二日前、運命様に言われた通りナースコールを押して、ラビリスなる人を呼ばなければならない。

 

「申し訳ございません。

離れる時が来たようです。」

「ニャーン?」

「寂しそうにしないで下さい。

また暇があれば会いに来ます。」

 

 

・・・・・・何かが致命的に狂っていってる気がした。

薄らと感じる悪寒を無視し、ナースコールを押す。

ほのかな振動が返ってきた後に扉の向こうから足音。

そして、開かれる。

 

「呼ばれて飛び出て出て来た案件っ!!」

「もう引き篭ってて良いですか。」

 

青い髪の眼鏡の女性が飛び出て来た。

先程までの郷愁に浸りたくなる気持ちが増すのを感じる。

 

 

「残念だけどそうはいかない案件なんだよねー。

メイズママから案内をお願いされてる案件だからレッツゴー!」

そう言い、扉の影からあるものを取り出した。

 

「ほらほら早く乗って!」

「・・・それにですか?」

四角い板に車輪をつけ持ち手がついている。

・・・つまり()()であった。

 

 

「あまり人が乗る形状をしていないのですが・・・」

「さぁさぁ!早く乗る方が良い案件かも!」

「・・・分かりました・・・

・・・・・・どう乗れば良いのでしょうか。」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

登場の仕方や乗り物の形状の割にはゆったりとした案内(運搬)だった。

初めてゆっくり廊下を見渡す。

白い壁、清潔感ある床、薬の匂い

窓からは青い景色がどこまでも広がっている。

 

 

「ゆっくり見るのは初めてですが綺麗な場所ですね。」

「GARDENは浮遊都市なのさ。

正確には大陸なんだけど、そこはどっちでもいい案件だね。」

ラビリスは説明を続ける。

 

「GARDENは13層の区画に分かれていて、各層を軌道エレベーターが通っていてそれで移動するの!

ちなみにここは9層ね。」

窓の外を見れば天と地を繋ぐ様に柱が立っていた。

「あれ、ですか?」

「そそ!あーカノン達も同じ(おんなじ)反応してた案件だったかも。」

 

 

それは当然だ。

エルスタニア帝国にはここまでの技術はなかった。

「・・・素敵な場所、だと思いますか?ラビリス様。」

レントは確認する。

此処に自分が居てもいいと確信を得る為に。

「それは安心していい案件だよ!」

ラビリスは笑って答える。

 

 

 

 

 

「さぁ!あれが軌道エレベーターだよ!

あれに乗って陛下の部屋に行く案件だからね!」

正面にエレベーターの入口が見えた。

時間にしても数分だが十分に満足する移動だった。

これに乗り、自分も騎士としての1歩を踏みだs…

 

「じゃあココを右折する案件かもー!!」

出せなかった。

エレベーターを直前としてラビリスは突然スピードを上げ、方向転換した。

「ラ、ラビリス様!?」

 

突然のスピードアップに必死に振り落とされないようにしがみ付く。

しかし、

「ちびりす!案件だよっ!」

「はいさー!」

 

また突然に視界が真っ暗になった。

それだけではなく姿()()()()()()()()()()()()()()

それに何故だか口も塞がれている気がする。

ん!?んー!んんー!んー!(は!?あの!一体!何が!)

叫んでみるが言葉では無く唸り声しか出ない。

そう、今レントは、

 

 

「何言ってるか分かんないからさっさと行くよー!」

台車の上で()()()()()()()だった。

勘の良い読者ならもう理解しただろう。

こうなった騎士が何処に向かうのか・・・・・・

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「メイズママー!連れてきた案件かもー!」

「ふふ♪ありがとね、ラビリス♪」

 

そう、メイズの研究室。

メイズは不老不死などを研究する為に騎士(検体)(モルモット)を欲している。

読者がGARDENにいる間、メイズから要求される事案の一つだった。

それに彼が選ばれたということ。

いや、選んだのはこの我が読者なのだが。

 

『勤務初日一発目でこれは彼も哀れだな。

君に人の心というものは無いのかい?』

(心外だね、ちゃんと心苦しいよ。

魔王でもね。)

『とは、言ってるがニヤけてるぞ。

彼が特殊な騎士(被検体)だからと見返りに特別な報酬()が増し増しで貰えるからだろう?』

運命は心の中で口笛を吹く。

 

『それはそうと、そろそろ彼に目を向けたらどうだい?』

運命は目を()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を見た。

 

んー!んんーんんーんー!?(あの!早く外して貰えます!?)

レントは抵抗はしていないが、口と目で訴えを続けている。

そうこうしている間にベルトにてベッドと括り付けられていく。

 

「よしっ!これで最後!

じゃあママ、これで案件終了!」

「うん、ありがとね♪ラビリス♪」

 

 

ラビリスは足早に去っていく。

「よし、じゃあ早速始めましょうか♪」

んー!んんー!!んんんー!!!(先に!猿轡を!!取ってください!!!)

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、始めましょうか♪」

「少し・・・GARDENが・・・嫌いになりそうです。」

「真正面から言われると心に来るものがあるね。」

 

 

レントは拘束されたままぐったりしていた。

目覚めてから初日より、心落ち着ける時間が少ない事に疲れ果てていた。

「GARDENで過ごしていれば大小こんなことは日常茶飯事さ。」

「そんな日常のカノン殿下が巻き込まれていない事を祈ります。」

・・・確かに彼女は正す側の人間だが、巻き込まれていない訳では無い事は黙っておいた。

 

「さてレント君、君なら少し勘づいているかもしれないけれど質問会の続きよ。」

メイズが少し真面目な顔で告げる。

「一昨日はカノンちゃん達がいて話しづらい事があったかもしれないけれど、私達以外入って来れない此処なら話せるわよね?」

 

そう告げるメイズにレントは驚きつつ理解した。

()()()()()()()()()()()

 

「なるほど。()()()()()()()()()()。」

「そうは言わないでくれ。

僕たちはまだ君を知らなさ過ぎるんだ。」

知らない。知らないだろう。

話していないのだから。

 

()()()()()()()

()()()()()()()()()()()()()()()

 

「・・・御丁寧に()()だけ出されて知らない?

それは通じないだろうさ。」

そう、レントの拘束は身体はもはやベルトしか見えない状態だが、左腕だけ見えるレベルにされてある。

この二人は()()()()()について推測がついているのだろう。

「口が悪くなってるよ。

それがもしかして素?」

 

レントはハッとした顔で運命を睨む。

「・・・もしかして今までストレスを掛けられ続けたのは思考力を落とす為だったりしますか?」

「悲しい事に日常茶飯事なんだってば。」

レントはばつが悪そうな顔で誰もいない方に背ける。

 

「・・・何も言わなくてもコレの察しがついている御様子じゃないですか。」

「まぁね。言って欲しいならこっちから言うよ。」

運命はメイズに目線を配る。

「・・・ではどうぞ。

私は全てを受け入れる所存です。非難でも糾弾でも。」

 

メイズは一度目を伏せ言葉を発する。

「・・・その義手、()()なのね。」

「・・・・・・・・・」

 

 

魔剣。

超常な事象により星の認知書き換える兵器。

認知を書き換え歴史を捻じ曲げ、在るべき形へと再現に至る。

その結果、神域となり歪んだ世界のまま固定される。

 

魔剣とはその名の通り剣である。

そんな兵器が左腕の義手に。

・・・いや、()()()()()()となっている。

 

 

 

「カノンちゃん達からある程度聞いているわ。

第一軌道人類史がまだ正常だった頃のお話し。」

それはまだ平和だったお話し。

「・・・貴方は()()()()()()()()()。」

それはまだ平穏だったお話し。

 

「教えて、貴方に一体何があったのか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・はっきりとは覚えていません。」

レントは呟くように話す。

「ただある時、急に空が赤く染まり始めたのです。」

「それと()()()()()()()()()()()()()()。」

 

それは、第一星変時の事だろう。

だが誘拐とは何だろうか。

 

 

「・・・気づけば、赤と白が混じったような部屋にいました。」

 

 

 

 

 

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お気付きかもしれませんがストックが切れ、更新が遅くなりました。

誤字脱字がありましたら報告お願いします。

 

 

 

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