未熟故、誤字脱字、設定等の修正点多々あるかもしれませんが、よろしくお願いします。
裏路地の領地内のいざこざを《解決》してきた良秀は、血の匂いを漂わせて屋敷に戻った。
屋敷から浅黒い肌に刺青を入れた偉丈夫が出てきた。
「
「おりゃあもう寝たいんだがな。」
良秀は気怠げに答えた。実際、ここ数日働きづめであった。
「俺は伝えたからな!」
返事を聞かないまま、ヒースクリフは良秀と入れ替わりに屋敷を出ていった。
「次の親指の会談に組長が何人か若衆も連れていくとのことです。」
副組長室、部屋の中央に据えられた机に座る、夕日の髪を頭の後ろに束ねた女性は刀を手入れしながら言った。
「親指?あんなお・もの集会に行くつもりはない」
良秀はぶっきらぼうな態度で答えた。煙草を吸っていないだけ本人からすれば譲歩しているつもりなのだろう。
「碌な意味ではないでしょうね。一応、意味を聞いておきましょうか。」
「......臆病者共」
「口を慎しんでください。」
イシュメールは刀から目を離し、鋭い視線を突き刺す。
「貴女が黒雲会に転がり込んできた日のことは忘れられません。組員や若衆と大立ち回りをして組長の所に押し入って、何か話し終わったかと思えば何の責もなく若衆になってしまって……」
ため息交じりに言い、刀に視線を戻した。
「組長は今度の会談出席は《契約》のためだと言っていました。何のことか分かりませんが、大人しく出席すべきじゃないのですか?」
「……そうか、ついにその時が来たか」
良秀は傷だらけの手を撫でた。
ロボトミー社が突如崩壊して数日、剣契や図書館などL社の裏路地―もはや巣と境界は無いが―を取り巻く情勢がのっぴきならないころ、突如黒雲会の屋敷が襲撃された。
報告に来た若衆には深い傷が刻まれていた。
「組長、襲撃です。賊は一人ですが、手に負えません」
窓の下で部下と切り刻む少女の姿を見た。返り血を浴びた黒いジャージ、太刀、そして鬼気迫る赤い目。
忘れるはずもない、あの日に廊下で剣技を授けた少女だ。
「ああ、知り合いだ。連れてこい」
その言葉を聞いた若衆はすぐに立ち上がり、副組長が参戦する前に伝令した。
少女を不服そうに連れてきた副組長は、賊と組長が二人きりになるのを嫌がったが、最終的に折れざるをえなかった。
「久しぶりだな、ヨシヒデ。喧嘩した家族に一緒に謝りに行ってほしいのか?」
「黙れ。取引だ。」
「あんたをアンダーボスにしてやる。だから、一度だけ。俺のために戦力を全て差し出せ」
赤の目は選択の余地はないと告げる。
「悪くない条件だ、実現できれば、だが。」
先程のやりとりでカマをかけたが、やはり蜘蛛の巣の親方の誰かに斬りかかって逃げてきたのだろう。
「俺が断るとは思わなかったのか?」
「俺の買い被りじゃなきゃあ、あんたの野心の炎はまだ消えていないと思うが?」
少女の目は全てを見透かしていたのだろう。実際、組長は機会を伺い続けていた。しかし、決定的な戦力の不足を日々嘆いていた。
「俺の負けだ。その条件、飲んでやる。ただし、報酬は先払いだ。今の
組長は凶暴さの残る笑みで返事した。
「それでいい」
組長は副組長に命じて酒と盃を持ってこさせた。良秀は黙って飲み、懐に盃を収めた。
「契約成立だ。この盃に誓って裏切りは無しだ」
「ああ、そうだ、忘れるな。強から俺は
盃を交わしてすぐに組長は副組長を呼び、服や武器、強化施術の手配をするように告げた。
良秀が部屋を出る直前、組長は思い出したように尋ねた。
「ああ、そうだ。どうしてうちを選んだ?指の傘下組織など吐いて捨てるほどあるだろうに。」
「下らない仁義や芸術論、指令や義理に縛られてないあんたの剣が一番マシに見えただけだ。」
「蜘蛛の巣の刀にそう言ってもらえば剣士冥利に尽きるな」
「出席する。」
あの日の契約、置いてきた者、過去の因縁、それら全てを改めて意識した良秀は、親指の会談への出席を快諾した。
「ええ、そう言うと思って、親指の礼儀作法をまとめて……」
イシュメールは自信満々に紙束を取り出したが、既にそこに良秀はいなかった。
「どうしてうちの組はどいつもこいつも……」
これから待ち受けるマナー講座のことを考えると、イシュメールの胃は僅かに痛んだのであった。
アンダーボスに数人のカポ、大量のソルダート。先の図書館からの招待によりで南部親指の主たる戦力は失われ、裏路地に残っていた者も人差し指に敗れた。
幸い、図書館に行った者たちは戻ってきたものの、戦力は大きく減った。
今回の集会は他の指に対する示威行為でもあった。傘下組織の兵隊を集め、その強さを親指内外に示すことが目的だった。
「皆、親指の会談に参加してくれたことに感謝する」
「「「「「はい、アンダーボス」」」」」
威厳のある声が響く。会談が始まった。
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