ある朝、エルフィンが目を覚ますとベッドの周りでZファイティングが起きていた。
それだけでなく棚の上にあったはずのランプが床に吸い込まれるようにめり込んでいた。
「な、何よこれー!?」
驚きのあまりベッドから転げ落ちる。
爪先が床のZファイティングが起きた箇所に触れて──
「あばばばばば縺ー縺ー縺ー縺ー縺ー縺ー縺ー縺ー」
声は壊れたラジオのような音質になり、テクスチャが乱れたように体の表面に色とりどりの立方体が現れては消える。
「…………これはまずいですね」
「女王ッ様ァッ!」
そのときだった、叫び声を聞きつけたネルが現れてエルフィンに斧を投げつける。
斧は一直線にエルフィンに衝突して彼女の体を後ろへ、ベッドの上へと押し戻した。
「はぁ…はぁ…なんだったのあれ…」
「ていうか頭が…ふらふら〜…」
ベッドから降りようとしてまた同じ轍を踏み、エルフィンはまたネルに斧をぶつけられる。
「ちょっと!痛いじゃないの!」
「あの状態の人に直接触ったら私も“バグって”しまいますので」
「バグる…?」
エルフィンは正常な床に跳び移ると、ネルのそばまで駆け寄る。
そして“バグる”という言葉の意味を尋ねた。
「私にも馴染みのない言葉なのですが、エルフ達が作る機械には製造の過程で何らかの内部的なミスがあると正常に動作しなくなるそうで」
既にエルフィンは何も理解できないといった顔で外部からの情報を遮断するモードに移行した。
それでもネルの解説は続いていく。
「それをバグると言ったりするそうなんですが、今の状態と似たようなバグり方をする機械もあるようでそこから転じてエルフ達は今の状態をバグると呼んでいるそうです」
「ふーん、なんかよくわかんないけどエルフがまた何かやらかしたのね」
全く関係のない話だったにも関わらずエルフという単語に反応して、とりあえず責任の所在がエルフにあると誤った認識をした。
それだけネルの話を聞いていなかったのだった。
「そんなことは言っておりません!」
「…それに、どうにも違うようで…」
ネルは何やら難しそうな顔をしている。
今回の一件はエルフの仕業でないことが割れていた。
それは何故か?答えはモナティアム発行の新聞に載っていた。
「まずは安全な場所へ行きましょう…」
エルフィンはネルに連れられて比較的バグの少ない部屋で新聞を広げる。
そこにはこう書かれていた──
モナティアムを襲う『バグ』の脅威‼︎
今日未明、偉大なるエレナ市長はゲームの不具合により発生するバグと酷似した現象がエーリアス各地にて確認されたと発表。
被害はモナティアム全域でも確認されており、市長秘書のアメリア氏も──
「ここにもある通り、エルフ自身も被害を受けているようなんです」
「一体どうして…」
そのときだった、窓を突き破って2人の妖精が城内に侵入してきた。
2人は黒い煤を被っていて爆風にでも当たったかのような状態だった。
「う、上手くいった…!」
「背中が痛いっす…」
「でも行かないとっす」
マヨがマリーから爆薬を受け取って走り出した。
その様子を見てエルフィンとネルは唖然としていた。
「マリー!マヨ!どうして窓から入って来たの」
「そうですよ、呼び鈴鳴らしていただければ…」
「時間が無いです!早くお城を出ましょう」
「えぇ…」
エルフィンは切羽詰まった様子のマリーに手を引かれ、ネルもそれに続いて走った。
現在地からそれなりに離れた部屋ではマヨが予めマリーから渡されていた爆薬で壁に穴を開け、モナティアムで入手した自動車を待機させていた。
「早く乗るっす…!」
一行は慌てて自動車に乗り込み、何処かへ向かって急発進した。
「ちょっと!何が起きてるの?説明しなさい!」
「女王さん、外は見ましたか?」
「外?」
エルフィンは怪訝な顔をしながら窓の外を見る。
そこには先程のエルフィンと同じ様子の妖精達が歩いていた。
「私ってあんな感じになってたんだ…」
「……………!?」
「じょ、女王様…今の見えましたか…?」
「どうしたのよネル」
「……ってうわああああああ!?」
バグった妖精が正常な妖精を襲ってバグらせていた。
「新聞に書かれていたものより恐ろしい…」
「これが今のエーリアスです」
そう語るマリーの声は微かに震えていて、彼女もまた妖精王国の惨状に、或いはいずれ自分も同じくバグってしまう恐怖に怯えていた。
「どうにかする方法は無いのかしら…」
「それはわかりません…でもモナティアムに行けば!」
車内に重い空気が漂い始めていたそのとき、車体が大きく揺れて一同が天井に頭をぶつけた。
車を降りてみると、タイヤがバグを踏んで侵食されてしまっていた。
「まずいっすね、車なしで今の妖精王国を出るのは難しいっす」
「どうしよう…車はもう捨てて行かないとだよね…」
遥か遠くで轟音が鳴り響く。
その場でそれに気付く者は居ない。
音が近付く。
それでもまだ気付かれない。
更に音が近付く。
ここでようやくエルフィンが音に気が付いた。
「なに…あれ……」
その場にいた全員を覆うほどの大きな影ができる。
エルフィンが上を見上げると、そこには巨大なパンでできた恐竜の頭があった。
クロス以外で何か書いてみたいなという思い付きで書き始めたものですのであまり期待はしないで欲しいです…
Persona3 Eliasと並行して書くというよりはあちらで展開に行き詰まったときに書くといった形になるかと思われますのでペースも遅くなります。
何卒ご容赦を。