運命の巻戻士✖️エルデンリング ナイトレイン 作:ランドしま
1回目
霊鷹に掴まって、クロノ・守護者・隠者たちは、リムベルドへと向かっていた。眼下には曇り空で暗く広がる海が波を立てていた。クロノの前にいた守護者も、霊鷹に掴まりながら周囲に目を配っていた。
クロノは守護者の背中に目を向ける。これを聞いて良いのかどうか分からないけど、どうしても気になる…。クロノは思い切って声をかけた。
「ねえ…、守護者さんって自分で飛べないの?」
「……。」
彼は鳥人だから、背中に翼がある。その片方は立派な形をしているが、もう片方は弱々しく見えた。それが病気や生まれつきのものなら、聞くのは野暮だとは思う。でも、背中を預けあって戦うのに全く事情を知らないのは、やはり良くないと思った。
「…夜渡りになる前の戦いで、呪いを受けてしまってな。飛ぶことは叶わない。」
「呪い…?!」
思っていなかった答えが守護者から帰ってきた。
「私が祖国の騎士だった頃にな…。だが、これでも以前よりは回復しているのだ。心配は要らない。」
守護者は毅然としており、クロノに対して誤魔化しや隠し事をしている様子は無かった。
「……。」
クロノは静かに彼の背中を見つめ、隠者は少し目を伏せていた。
「それよりも、気を引き締めろ。見えてきたぞ。」
ついにリムベルドの目前まで辿り着いた。スマホンはクロノの胸ポケットから顔を出した。そして、上空からリムベルド全体をカメラに収める。
「さあ、ついにボクの新アプリの出番です!」
スマホンはカメラに収めた上空写真のデータをアプリに入力し、大きな声で成果を伝えた。
「この先の上陸地点に、荒れた陣地が見えました!ネズミや亜人が5体、武器の箱も見えます!北上した先には教会も見えます!」
あっという間に有益な情報を教えてくれた。
「スマホン、一体そのアプリって!?」
クロノに聞かれて自信満々に答えるスマホン。
「ハイッ!これが皆さんの協力を得て作り上げた、『リムベルドマップ』です!」
つまり地図アプリだ。上空から見た地形や建物の配置から、リムベルド全体の土地情報や現在地を把握できる。これがあれば、皆が望む場所へスムーズに案内することができる。
「リムベルドは、訪れる度に施設や敵の配置が変わるそうですが、ある程度の法則があるそうです。」
だから一昨日、スマホンは執行者と素材集めをしながら上空からのデータを記録して回った。そして夜渡り達の経験や召使い人形からの情報、敵配置の規則性などのデータをまとめ、遂にアプリを完成させたのだ。リムベルドに辿り着いてすぐに上空写真を撮れば、リムベルド全体のデータが割り出せる。
「これがあれば、皆さんに最適なルートを案内できます!」
スマホンは自信に溢れており、皆の役に立てることを誇らしく思っているようだ。
「おお!凄いじゃないかスマホン!」
「ありがとう。とっても助かる。」
クロノも隠者も喜んでいるようだ。
「準備は万全のようだな。なら、まずは眼前の敵からだ。いくぞ!」
クロノ達は地上へ接近して、霊鷹から手を離す。そして勢いよく敵の陣地へ向かう。
陣地にはスマホンの情報通り、ネズミや亜人の敵、計5体が待ち構えていた。
(よし、初陣だ。やってやるぞ!)
クロノは意気込んでいたが、真っ先に仕掛けたのは守護者だった。
「フンッ!」
片翼を大きく広げて思い切り羽ばたかせると、強力な風が渦巻き、亜人達は宙へ舞い上がった。
「AAGGGIIYYYA!」
敵は体勢を崩して地面に倒れ込む。これが守護者の持つ技『つむじ風』だ。
「一気に片付けるぞ!」
「う、うん!」
「わかった。」
クロノと守護者は、そのまま倒れた敵に攻撃を加える。隠者も魔法で難なく撃破していった。
「凄い…。あっという間に終わった。」
夜渡り達がスムーズに倒してしまう様に呆然とするクロノ。
「ゆっくりしている時間はない。武器や道具を回収するぞ。」
そう言われてクロノも武器を探した。近くの箱に入っていたのは、『シミター』という曲剣だった。使ったことの無い武器だが、流石に素手よりはマシだ。
武器を確認したのちに、守護者はクロノのポケットから出てきたスマホンに話す。
「では、次は教会だな。ここから北と言ったな。」
「ハイ!すぐ近くですよ!」
スマホンはハキハキと答え、守護者と隠者はすぐに駆けて行った。
「遅れないでね。」
「あっ!うん!」
慌ててクロノは後をついて行った。
3人はすぐ近くの教会にたどり着く。教会の中には古びた女神の像があり、その前に祭壇が置いてあった。
「この祭壇に、聖杯瓶を置いて。」
隠者に言われて聖杯瓶を置くと、まるで赤い果物が更に果汁で満たされていくように膨らんだ。
「教会ではこうして、聖杯瓶の中身を増やすことができる。空になった中身も満タンに満たせるのだ。」
「へー…、じゃあ教会は必ず寄ったほうが良いんだね。」
円卓から持ってきていた聖杯瓶が大きくなるのを確認して、クロノは上着の内に収納した。円卓の武器は持っていけなくても、黄金樹の祝福を受けた聖杯瓶は別のようだ。
「さて、次の方針だが…。スマホン、マップを見せてくれ。」
守護者に言われて、スマホンはマップを表示した。自分たちはリムベルドの南側の街道沿いにある教会にいる。
「ここから東に行けば、すぐに大教会に着く。まずはそこを制圧して、次は北の小砦だな。」
「うん、それで良いと思う。」
夜渡り二人が決めた通りに進み、近くにある大教会まで向かった。二人のペースについて行きながら、クロノは尋ねる。
「大教会ってことは、教会よりも凄いお助けアイテムとか手に入るのかな?」
隠者は首を横に振る。
「ううん、敵がいるよ。まずは弱い敵から倒してルーンを手に入れるの。」
守護者は走りながらクロノに教唆する。
「敵拠点に攻め込む際は、まず基本通りに仲間と連携できる並びで戦う。」
つまり、『前衛』と『後衛』に分かれる。
『前衛』は敵の正面に近づき、打撃を加えながら注意を引きつける。
『後衛』は、離れたところから効率よく攻撃していく役目だ。
「私とクロノが前衛、せん…隠者殿が後衛だ。味方同士の配置や距離を意識しろ。」
守護者は真面目に話していたが故に、隠者を親しげに呼ぶのを躊躇っていた。隠者は彼の生真面目さが可愛らしく、クスッと微笑む。
大教会にたどり着くと、先ずは亜人達の掃討から始めた。敵はすばしっこいため、クロノは後衛をやられないようにカバーしながら戦った。
「行かせるか!」
シミターの袈裟斬りで亜人を蹴散らす。
守護者の盾で敵の武器を受け止め、斧槍で反撃すれば、もう亜人達は全滅した。
「よし、では奥へ行くぞ。巨兵がお待ちかねだ。」
「えっ?巨兵って?」
奥の方に広間があるが、見えるのは積み重なった瓦礫だけで、敵は見えない。
「目の前の、それだよ。」
隠者はそう言って、輝石のつぶてを瓦礫に撃った。すると、
ゴゴゴゴゴ…
瓦礫が動き出して立ち上がった!全長は6、いや8メートルはあるだろうか。巨大な石像は同じ大きさほどの斧槍を持っている。
「で、デカい…!」
「これ、本当に弱い敵なんですか!?」
立ちはだかる敵『ガーディアンゴーレム』を前にして口が開きっぱなしになるクロノとスマホン。
「戦い方さえ分かっていれば、今の我々でも勝てる。足に攻撃を集中して転倒させるのだ。」
「危ないと思ったら、すぐに下がって。」
夜渡り達は自信を持ってアドバイスをしてくれる。二人がやれるというのなら、自分が怖気付く訳にはいかない。クロノはシミターを強く握りしめる。
「うん…、分かった!」
クロノと守護者が前に出る。シミターと斧槍で敵の右足に攻撃を集中する。しかし、
ガキンッ!
「か…硬いっ!」
曲剣のような鋭利な武器では、岩石の体にダメージを与えるのは厳しい。
「厳しくても構わないッ!とにかく手を加えるのだ!」
守護者は斧槍の石突の部分で叩き続けていた。後ろから魔法で攻撃している隠者が叫ぶ。
「向こう側に避けて!」
巨兵が石突で床を叩き、衝撃で吹き飛ばそうとする。クロノは間一髪で避け、守護者は大盾でしっかりガードした。続けて巨兵は斧槍を床に押し当てながら、守護者に突進していった。
「ヌンッ!」
大盾でガッチリと受け止め、びくともせず、ガーディアンゴーレムは勢い余って守護者の後ろの方まで通り過ぎていく。
巨大な敵の攻撃であろうと防ぐ防御術、『ハイガード』。守護者の名に相応しい技である。
「凄い…!あんなにデカい敵なのに防いでる!」
クロノは巨兵が突進した後、背後が隙だらけになっているのを見て、前進した。
「よし、今のうちに!」
駆け出していくクロノを見て、守護者は慌てる。
「待て!近づくなッ!」
ガーディアンは振り向きながら、巨大な斧槍で周囲の瓦礫を掬い上げて、打ち水のようにばら撒いてきた。
「グゥッ!!」
巨大な礫に吹き飛ばされるクロノ。仰向けに倒れて頭から血を流し、夜の闇に覆われる。
(うう…、油断した…。ここは一先ず…。)
クロノは眼帯に手を掛ける。
「クロノ待て!いま先生が……
「巻き戻し(リトライ)!」
2回目
クロノ達は最初に降り立った荒れた陣地に戻ってきた。周囲の敵を掃討し、武器集めを終えた後だ。
「ふぅ…。危なかった…。」
「あの巨大さだと、攻撃範囲の予測が付きませんね。」
クロノとスマホンがそう話していると、守護者が前に近づいた。
「クロノ。ちょっといいか。」
「えっ…?」
守護者の面持ちは、厳格なものだった。
「リトライすれば、確かに安全を確保できるだろう。しかしあの状況なら、私が攻撃を引きつけている間に、隠者殿が魔法で夜を払えば済んでいた。」
瀕死に追いやられて夜に覆われても、誰かが攻撃を加えて夜を払えば救出できる。クロノも追跡者がレディを助けるところを見ていた。
「安全第一なのは良いが、こうして巻き戻したら敵も無傷の状態に戻る。まだ助かるうちにリトライすることは無かった筈だ。」
守護者の説教で、クロノは縮こまった。
「ご…ごめん。つい、いつもの癖で…。」
やられても助けてもらえるなら、リトライすることは無かった。自分は何度やり直しても平気だけど、他の人はそうでは無い。反省しなくては…。
「いいんだよ、謝らなくて…。クロノを責めているわけじゃないから…。」
隠者は優しく慰めてくれるが、今は落ち込む気持ちの方が勝る。見かねたスマホンは、
「と、取り敢えず、気を取り直して行きましょう!」
と言ってくれた。
教会に寄った後に、大教会の雑魚狩りをして、巨兵に再戦。クロノは敵の動きをよく見ていたつもりだったが、
「ゴフッ!」
巨兵の足で蹴飛ばされてしまった。
「クロノ!」
隠者は慌てていたが、クロノはすぐに立ち上がって聖杯瓶を飲んだ。
「大丈夫!まだいける!」
「違う!後ろに…!」
木箱の裏から亜人が飛び出し、クロノの背後からしがみついた。
(しまった…!まだいたのか!)
隠者の魔法が亜人を仕留めると同時に、クロノの喉は鉈で切り裂かれた。
血を流しながら、夜に覆われるクロノ。
「待ってて!今助けに…!」
隠者が魔法をクロノに撃とうとすると、ガーディアンの巨体に射線を遮られた。
(しまった…!)
隠者の焦りがクロノにも見えたが、まだ守護者がいる。彼を信じるんだ。怯えてすぐにリトライしては…。
「クロノ!いま行くぞ!」
仰向けに倒れていたクロノは、上空高く飛び立つ鳥人を見た。その姿がガーディアンに遮られたかと思った瞬間、守護者は巨兵の頭を貫きながら急降下した。
彼の武器が床に突き立てられると、周囲は輝くオーラに包まれる。クロノの夜も、そのオーラに吹き飛ばされた。上空からの攻撃と、オーラによる守護を同時に行う、『救世の翼』と呼ばれる技だ。
「あ、ありがとう!」
「礼はいい、今がチャンスだ!」
足のダメージと頭部への衝撃で、ガーディアンゴーレムは真横に倒れた。その胸には炉のような炎が灯っていた。
守護者はそこに、致命の一撃を加える。
「フンッ!!」
深々と突き立てた斧槍を、勢いよく引き抜く。そのまま巨兵は転がり、光となって消滅した。
(凄い…。救出も撃破も、一人でこなしてた…。)
手際の良さと冷静さ、堅実な戦い方を前にして、クロノは尊敬の念と、未熟さによる悔しさを感じていた。
ガーディアンゴーレムがいたところには、青い光が残っていた。
「クロノ。これは敵が持っていた『潜在する力』だ。ここから新たな武器を手に入れられる。手をかざしてみろ。」
言われた通りにすると、確かに光の奥に武器が見える。そこから槌らしき影が見えたので、掴んで取り出した。
『グレイブ カテゴリー:斧槍 戦技:霧の猛禽』
「こうして、強敵からルーンと装備を手に入れて、夜の王に備えるのだ。強敵の側には祝福も現れるから、すぐに力を身につけられる。」
守護者はそう説明してくれたが、さっきまで持っていたシミターが見当たらず、クロノはキョロキョロした。
「…、装備はある程度の数なら、自分の力としてその身の内に収納できる。念じればいつでも持ち替えられる。」
そう言われてやってみると、ちゃんとシミターと交換できた。
「へぇ、便利なもんだな。」
感心しているクロノに、守護者は今手に入れたばかりの中盾『カイトシールド』を差し出した。
「手に入れたものは、仲間とも受け渡しできる。持っておけ。」
「え、でも…、せっかく守護者さんが手に入れたのに…。」
「私には、この大盾があればいい。気にするな。」
そう言われて、クロノは申し訳なさそうに受け取った。
「いいのがあった…♪」
隠者は『結晶杖』という物を手に入れて喜んでいた。更に隠者は大教会の祭壇から『指の聖印』も手に入れていた。
「あれ?聖印は祈祷の道具だから、魔法とは違うんじゃ…。」
クロノは魔法の専門家に聞いた。隠者はフフッと笑って自信ありげにしていた。
「私、魔法だけじゃなくて、祈祷も得意なんだ。」
守護者も腕組みをしながら頷く。
「うむ、魔法も祈祷も比べようが無いほどの達人振りだ。」
「へぇー。隠者さん凄いんですね!」
スマホンが感心してると、
(あれ…?魔法も祈祷も達人ってことは、祈祷だけが得意な復讐者って…。)
クロノはそんなふうに思ってしまう。
(いちいち比べるな腑抜けがっ!!)
「うわっ!ごめんなさい!」
「…?何を謝っているんですか?」
急に謝るクロノに戸惑うスマホン。
「えっ?!いや、いま誰かに怒られたような気がして…。」
「ううん?だれも怒ってないよ?」
隠者も首を傾げていた。
あれ…?じゃあ何だったんだろう?今の声?復讐者はテレパシーでも使えるのだろうか?
「あ!それよりも、夜の雨が近づいてきました!そろそろ次に行かないと!」
「無論、そのつもりだ。行くぞ。」
守護者とスマホンに促されて、クロノ達は次の敵拠点に向かった。
その道中、守護者がクロノに話しかける。
「初めて戦う敵、慣れない場所、道すがら拾った武器、いずれもお前にとってやりづらいものだろう。」
しかし、恐れは更に先行きを暗いものにしてしまう。その恐怖に打ち勝たなくてはいけない。
「相手が大きくて恐ろしくても、盾を構えてみるのだ。勝機への道筋が見えてくるはずだ。」
騎士の教えを伝授され、クロノは左手に持ったカイトシールドをグッと握りしめる。
「うん…、やってみるよ!」
そこからクロノ達は、武器の強化素材が手に入る坑道や、魔術師達がいる遺跡などを攻略していった。坑道にいたトロルの蹴りや、魔術師達の輝石の魔法も、シールドを構えることでしっかり防ぐことができた。勿論、守護者のようにとはいかず、クロノ自身はガードの衝撃で腕を痛めていたが、負傷は格段に減った。片手持ちにしたグレイブの扱いにも慣れていき、盾でガードしてからのカウンターがとても役に立った。
なにより、ガーディアンゴーレムにやられて以降、まだリトライせずに済んでいる。魔術師の繰り出した魔法のハンマーに潰された時は、危うく夜の霧に飲まれそうだったが、守護者の『救世の翼』によって事なきを得た。先輩のアドバイスと卓越した技術のおかげで、順調に進んでいる。
クロノ達は教会に立ち寄って小休止していた。
「それにしても、守護者さんのあの技って凄いよね。仲間を復活できるし、あんなに高いところまで飛べるし。」
そう言われて守護者は、目を閉じながら答える。
「…あれは飛んでいるわけではない。高くジャンプしているに過ぎない。そして、片翼でもそれが可能になったのは、先生のお陰だ。」
『隠者殿』と言い換えることもなく、そう伝えた。先生が自分の羽を治療してくれたお陰で、ここまでの力を取り戻すことができたのだ。元通りとは行かずとも、魔法と知識は確かに私を救ってくれた、皆を救えるようにしてくれた、と。
「私だけの力じゃ無いよ。あなたが強くて、諦めなかったから取り戻せた。」
隠者は謙遜ではなく、ありのままの事実を話す。
「知識そのものは、力を持たない。持つ人、使う人、受けてくれる人次第だから。」
そう言って、クロノの方に笑顔を向ける。
「クロノも、盾の使い方、教えてもらえて良かったでしょ?」
「うん、守護者さんに教えてもらえたお陰で、戦いやすくなったよ!」
そう言われて守護者は、何やらくすぐったい気持ちになり、顔を逸らしてしまった。
「そ…それよりも、もう夜が近いだろう。スマホン、『霊樹』は確認できたか?」
話を変えようとスマホンに促した。
「えっと、今はまだ…。」
スマホンがそう言うとすぐに、
ゴゴゴゴ…
遠くに雷鳴。雨の気配が近づいてきたのが分かった。
「あっ!いま出ました!北西の遺跡近くに霊樹を確認!」
「いよいよ1日目の締めだ。気を引き締めていくぞ!」
スマホンのナビに従って霊樹へ向かう。そのルートを辿っていくと、目の前には切り立った崖がそびえ立ち、行く手を阻んでいた。
「このまま進んでも行き止まりだよ!本当にこっちでいいの?」
クロノは走り回りながら夜渡り達に尋ねる。
「ああ、崖の下にある『霊気流』を使えば行ける。」
守護者の指差す先に、青いオーラを纏った上昇気流が見えた。
「あそこで思いっきり飛び越えるの。スマホンは飛ぶ前に、クロノのポケットに入ってね。」
隠者もそう言い、霊気流に向かって一直線。
(飛ぶって言ったって、どうやって…。)
クロノはそう言いたかったが、もう霊気流は目の前だ。二人の言う通りにするしかない。
前を走る二人が霊気流の上でしゃがんだかと思うと、
ブオォン!!と、空高く飛び上がっていった。
「おお!凄い!よーし俺だって!」
クロノもグッと足に力を入れて、勢いよく飛び上がった。
「うおおお!すげぇー…って痛ッタァッ!!」
崖を飛び越えるはずが、岸壁の出っ張りに頭を打ちつけてしまった。クロノはそのままヒューっと落下してしまった。スマホンが慌てて飛び出す。
「クロノさん何やってるんですかぁ!」
「こ、こんなはずじゃあ…。」
「皆さんが飛んで行った位置はおおよそ判別がつきますから、急いで追いつきましょう!」
スマホンに怒られてやり直すことに。今度はちゃんと飛び越えることができた。飛び越えた先で、夜渡り二人は立ち止まって待っててくれた。
「大丈夫だった?」「もう雨が迫っているのだ。急ぐぞ。」
それぞれクロノに声をかける。大丈夫だと答えてから皆と駆け出していった。
(ううう…、足引っ張ってばっかり…。気まずいなぁ…。)
昔遊んだゲームで、こんな感じのものを見た覚えがある。一人の宇宙飛行士に現地の生命体の群れがついてくるゲームだ。群れは懸命に主人についていくが、つい落っこちたり溺れたり食べられたり…。今の自分はまさにその生命体のように、主人の後を付いていくしか無い状態だ。取り柄であるリトライの能力も、先輩にやり直しを強いることになるから無闇に使えない。自信が無くなりそうだ…。
しかし、落ち込んでいても仕方ない。目標はすぐ目の前だ。気を取り直して戦いに集中だ。
辿り着いた霊樹の麓。霊樹は白く巨大な枝葉を空高く広げていた。それでいて、幹の部分は地上にはないという不可思議な存在だった。
この霊樹の麓ならば、夜の雨には晒されない。しかし、夜の脅威はここに逃げ込んだ夜渡りに強敵を送り込む。この敵を倒さない限り、2日目の朝は訪れないのだ。
夜の怪しげなモヤが現れ、その中に敵の影が見える。
「来るぞ、構えよ!」
現れたのは2体の敵。大きな体で杖を装備した『亜人の女王』と、小柄で剣を装備した『亜人の剣聖』だった。
「私が剣聖を抑える、二人は女王を頼む!」
「ええ!」
「分かった!」
クロノは前衛として女王の前に出る。後衛の隠者は結晶杖を構える。
「WGGGOO!」
女王が長い腕で叩きつけ、杖を横なぎに振り付ける。クロノは懸命にガードするが、連続攻撃で構えを崩される。
(ぐぅっ!堪えが効かない…!)
そこへ…、
「下がって!」
隠者の声に反応し、クロノは横へ避ける。
隠者の杖から『砕け散る結晶』が放たれる。
幾重にも拡散する魔法の結晶が女王を圧倒する。
「gyggaaayy!」
剣聖が女王の援護に駆けつけようとするが、大盾が立ち塞がる。
「行かせるか!」
守護者のつむじ風が剣聖を宙に舞い上げる。その隙を隠者は見逃さなかった。左手に持った聖印から、『雷の槍』を構える。
「当たって…!」
放たれた雷が、剣聖を貫いた。感電して怯んだところへ、守護者の新たな武器『ツリースピア』が向かう。
「トドメだ!」
貫き、絶命の悲鳴がこだまする。
「kkyyeeeaa!!」
剣聖は大槍の穂先から崩れ落ち、消滅した。
「やった!これであと1体だ!」
クロノは優勢で勢いを増していたが…、
「違う、ここからだよ!」
隠者が気を引き締めるよう声掛けする。
「RRROOGGGOOAA!!」
亜人の女王が怒り狂い、杖を投げつけてくる。守護者は盾で弾き返すが、辺り一面に彼らが出現した時と同じモヤが広がった。
「な、なんだよコレ!」
モヤの中から、何体もの亜人が出現した。中には大柄な体格の者もいる。
「女王の怒りに呼応して、仲間が大勢来るの。」
「私が隠者殿を守りながら、女王を仕留める!クロノは周囲の亜人どもを撹乱し、注意を引きつけるのだ!」
「や、やってみる!」
「ボクも上空から警戒します!」
クロノもスマホンも、大勢を相手に怯むまいと、自身を鼓舞した。
クロノは走り回りながら周囲の亜人たちを誘き寄せようとするが…、
ダダダダッ! ババっ! シュタタタタ!
亜人たちは見たことの無いスピードで駆け回り、逆に先回りされるほどだった。
「な、なんだ!?こいつらこんなに早かったのか!?」
「クロノさん!どうやら女王の叫びに呼応して、全ての亜人の身体能力が上昇しているようです!」
スマホンは円卓内や夜渡り達から得られたデータを記録していた。亜人のデータにも群れで行動し、リーダーの力によって子分も強くなると書かれている。
3体の亜人が棍棒や小刀を振りかざして飛びかかる。
「この…、こいつら!」
クロノは盾で凌ごうとしても避けきれず、背中や足に傷を負う。防戦一方で敵の数は減らせていない。でも、こうして敵を引きつければ、その隙に守護者と隠者が女王を倒してくれるはず…。
しかし、女王はいきなり近くの亜人を掴み、隠者に投げつけてきた!
「あぁっ!」
守護者の大盾より高い射線から投げつけられては防ぎようがなく、隠者は地面に倒れて頭を打ちつけ、意識が混濁する。夜の闇に覆われるほどのダメージでは無かったが、無防備になった彼女に狙いをつけ、他の亜人達が向かってくる。
「先生ーッ!!」
守護者は猛スピードで駆けつけ、隠者の上に立つ。迫り来る亜人達の猛攻をハイガードで受け止めるが、敵の数が多すぎる。完全に袋叩きに遭い、守護者の体力も限界、聖杯瓶を飲む暇もない。クロノもすぐに助けに行きたいが、大型の亜人に迫られて埒が明かない。
「クソォ!こんなやつらに!」
盾とグレイブで迎え撃ち、反撃している間にも仲間がやられてしまう…!
「クロノさん逃げて!女王がそっちに!」
スマホンの声で振り向いて盾を構えたが、盾ではダメだった。女王の大きな顎で盾ごとガブリと咥えられ、肋骨を噛み砕かれてしまう。
バキッ!ゴリゴリッ!!
「ゴフッ!ぐあっ…!!」
噛まれたままブンブンと振り回されて、地面に放り出される。クロノの周りに夜が覆い被さる。
「クロノ!おのれ…このままでは…!」
守護者が駆けつけてしまえば、先生が…、
先生を守っていても、クロノが…、
(ならば…、『救世の翼』でこの周りの敵を一掃しつつ先生を守る!そしてクロノを助け出す…!)
意を決した守護者は、空高く舞い上がろうとして…、
ガシッ!と、背中に亜人がしがみつき、片翼が羽ばたくのを邪魔してくる!
「しまった!」
ジャンプ出来ずに体勢を崩してしまう。そこへ敵が一斉に襲いかかる!
「うおおおっ…!!」
(こんなはずでは…、不覚っ……!!)
何としても、先生だけは守らなくてはと、そう思った時だった。
「巻き戻し(リトライ)!!」
3回目
クロノ達は、霊樹の下に辿り着いた時点まで巻き戻っていた。
「ごめんっ!またリトライして…。」
クロノは自己判断でリトライしたことを守護者に謝る。それに対して、守護者は逆に自分の不覚を詫びた。
「いや…、こっちこそ悪かった。私があのまま一人で救出しようとしていては、逆に全滅していた…。済まない……。」
互いに謝る重々しい空気に、スマホンが割って入る。
「まあまあ…、無事だったんだからいいじゃ無いですか。幸いリトライも朝まで戻らずに済んでいるみたいですし。」
隠者も優しく口調で二人を宥めた。
「そうだよ。二人とも、何も間違ったことはしてないから。」
そう言っている間にも、夜のモヤが浮かび出した。作戦会議の暇もなく、もう女王と剣聖が現れそうだ。
「騎士さん。女王が子分を呼んだら、私の身は自分で守る。背中を気にせず、女王に集中して。」
「しかし、それでは…。」
近接戦が苦手な先生を守らずに戦うのは気が引ける。だが、隠者は道中で手に入れた『輝石の杖』を見せながら答える。
「実は、近距離用の魔法を手に入れてたの。さっきは使い損ねたけど、次は近づかれても、子分を投げられても、大丈夫だから。」
隠者は守護者の後ろに立つ。
「背中を、預けて。」
「……!…はい!」
守護者は大槍と大盾をグッと握りしめた。
「おれやるよ!群れが相手でも負けるもんか!」
「ボクも上空からしっかりサポートします!」
クロノとスマホンも気合を入れ直した。
そして、先程と同じように剣聖を倒して、女王が子分を大量に召喚するところまで到達した。守護者は女王を完全にマークし、その背後には隠者がいる。その隠者に目掛けて女王は子分を投げつける。それを待ち構えるように、隠者は輝石の杖を構える。
「はぁっ!」
魔力で形成された大剣が杖から出現し、飛んでくる子分を切り払った。『カーリアの大剣』という近距離用の魔法だ。さらに、敵の体に残っている魔力の痕跡に手を差し伸べて回収する。『元素制御』と呼ばれる技術であり、消費した魔力を回収、再利用できる。そして、その手には、魔力と雷の属性痕があった。
(あとは、タイミング次第…。敵に邪魔されず、味方を巻き込まない時…。)
隠者の用意した秘策は、守護者とクロノに掛かっていた。
クロノは駆け回りながら盾で敵の攻撃を凌いでいた。隙を見てガード後のカウンターで敵の数を減らしていたが、ガードに気を取られると背後が疎かになる。
「クロノさん!後ろ!」
「ああもう!キリがない!」
スマホンが声掛けしてくれるお陰で背後の奇襲を逃れているが、こうして防御したり避けたりばかりいると、スタミナの消耗が激しい。敵の注意を引きつけるという役目は果たしているが、防戦一方のままではいつかやられる。そしてまたリトライすると、みんなの足を引っ張ってしまう。盾で守り、避け、傷付けば聖杯瓶で回復して持久戦に持ち込む戦法…、自分にそれをこなせるのか…。クロノは肩で息をしながら、自分の戦い方を疑っていた。
(でも…、守護者さんも言ってたじゃないか。『相手が大きくて恐ろしくても、盾を構えてみるのだ。勝機への道筋が見えてくるはずだ。』って。守護者さんのアドバイスを信じるんだ…。)
息が荒くなり、ぼーっとしている頭の中に、自分の内なる声が響く。
しかし、その声の中に別人の声が混じってきた。
(なんじゃあ、相変わらずノロマじゃのうクロノ!教えられた事ばっかり考えとらんで、サッサと動かんかい!)
巻戻士の仲間、アカバの声が脳内で喝を入れてきた。スピード解決がモットーのアカバなら、盾を構えて待ったりしないだろう。
(いや…、でも素人の俺が先輩からのアドバイスを無視するようなことは…。)
そう脳内で会話をしていると、おじさん…シライも割り込んできた。
(『はじ』めての出撃で失敗したくない気持ちは分かるがな、堅苦しく考えてちゃあ、また『恥』をかくぞ。『はじ』めて、だけに。)
脳内会議でもシラける駄洒落をかましてくる。いやいや、こんなこと考えてる場合じゃ無いのに…。
(普段のクロノは、もっと色んなことを試すと思うわよ。)
レモンも頭の中に現れてきた。何でこんな時にみんな湧いてくるんだ…。
でも、「色んなことを試す」という言葉には、少し思うところがあった。
(あなたの手にあるのは、盾だけじゃ無いでしょ。)
(盾でも武器でも、防御でも回避でも、何でも使ってこそじゃろう!)
(そんなに自信がないなら、他の先輩のアドバイスも活用したらどうだ?)
3人に言われて、頭に色んなものがよぎる。
自分が持つもの…防御以外…他の先輩のアドバイス…。
忌み鬼と戦った時は、追跡者さんがアドバイスしてくれた。雑魚敵相手に攻め手がなかった時、彼が言ったのは……、
(戦技は用いたか…?)
そうだ、戦技…!
そう思った時、スマホンの声が響いた。
「クロノさん!また後ろから…!」
背後から大型の亜人が迫ってくる。しかし、振り返れば正面にいる敵から襲われる。
(なら…、これで…!)
クロノはその場でしゃがみ込んだ。隙だらけだと思い込んだ亜人が、背中へとナイフを突き刺してくる!
すると、一瞬でクロノの姿が消え、風が舞い上がる。敵を見失った亜人たちの上空にクロノがいる!
「これで、どうだ!!」
落下しながら、周囲の敵をグレイブで薙ぎ払った!
「bvvgyyyy!!」
近くの敵を一掃することに成功した。敵の攻撃に合わせて上空へ舞い上がり、カウンターを繰り出す戦技『霧の猛禽』の力だ。
「やるな、クロノ!」
味方の活躍で士気が向上する守護者。後方にいる隠者は、敵の総数が減っているのを確認した。隙ができた今なら、女王にトドメをさせる!
「騎士さん、下がって!」
守護者が飛び退き、女王への射線を空ける。隠者は魔力と雷の属性痕を利用した『混成魔法』、魔力を帯びた雷の斬撃を飛ばした!
「ZZYYUGGRRRA!!」
女王は感電して大ダメージを受ける。全身が痙攣し、ノーガードだ。
「「そこだぁぁーー!!」」
守護者の大槍とクロノの斧槍が、双方から女王を突き刺した!貫いた穂先、そこから伸びる長い柄は十字を形作っていた。
「O…OOO…。」
女王は血飛沫を出しながら絶命し、塵となって消え果てた。周りの子分たちも、同時に消え去った。
「やった!終わった…!」
「ああ、第一関門は突破だ。」
「お疲れ様です、皆さん!」
「上手くいったね。」
皆が健闘を讃えた。敵を倒した後に祝福の光が現れたが、霊樹の外はまだ夜の雨で囲まれていた。守護者は武器を下ろして息をついた。
「しばらくすれば2日目に突入する。それまで休憩だ。」
そうして、皆が祝福の光を焚き火のように囲んで座った。リムベルドの戦いは3日に渡って行われる。2日目は1日目と同じような流れになり、その夜の強敵を倒せば、3日目に待ち構える夜の王との決戦だ。
「2日目は、より一層の強敵と戦って多くのルーンを集める。朝が来たら、気を引き締めるのだぞ。」
守護者に言われて、クロノは深く頷いた。そして、夜渡り二人に頭を下げる。
「うん、できるだけリトライしないように気をつけながら頑張るよ。」
クロノの言葉に、守護者と隠者は首を傾げて問いかける。
「できるだけ…リトライしない?」
「クロノ、それはどういう意味だ…?」
クロノは申し訳なさそうにして答える。
「二人とも、本当にすごいなって…。ここに来るまで2回しかリトライしていない。たぶん、自分の力だけじゃ何百回もリトライしていたと思う。」
亜人の女王達を倒したのも、ほとんど二人の力だ。自分は雑魚相手で精一杯だったのだから。
「だから…無闇にリトライして、二人の足を引っ張らないようにしようって…。」
クロノは思っていたことを、申し訳無さと迷惑をかけたことを正直に謝った。
「……??いや…、分からないな…。なぜリトライすることが足を引っ張ることになるのだ…?」
守護者は眉をしかめて問い返す。
「えっ…?いやホラ、ガーディアンゴーレムにやられてリトライした時に言ってたじゃないか…。『まだ助かるうちにリトライすることは無かった筈だ』って…。俺が命大事さにリトライしたせいで、二人にやり直しをさせるのは迷惑だと…。」
「……。」
守護者は嘴を開けたまま、自分の言っていたことを、その時の場面を思い出していた。
「いや、いいや違う!違うぞクロノ!!私はそんな意味で言ってなどいないぞ!決して!」
守護者は慌ててクロノにツッコんできた。
「やり直すことを責めたり、足手纏いなどと思ったりするなど、欠片も無い!それに、女王との戦いでリトライしてもらえなかったら大惨事だったのだ!出来るだけリトライするな等と誰が言うものか!」
ひどく饒舌になっており、なんだか可笑しくて…。隠者はついニコニコしていた。
「つまり…、貴方はなんて言いたかったのかな?」
隠者に促され、守護者は申し訳なさそうに答える。
「つまり、その…。もっと、我々の助けを信じて欲しかったと…。何があっても助けるからと、そう…騎士としての意思を、後輩である君に伝えたいと…。だから怯えることなく、安心していいと…。」
ポカーンと、クロノは開いた口が塞がらなかった。
「お、おれ…、てっきり無駄にやり直すなって言われてるものだとばっかり…。」
守護者は更に付け足した。
「それに、リトライは精神的なダメージを負うのだろう?我々は幾らやり直しても平気だが、君のリトライの能力に任せて、辛い目に何度も遭わせるような真似はしたくないと…。」
それを聞いてクロノも慌ててツッコむ。
「いやいや!こっちこそ、リトライなら何度やっても大丈夫だから!そっちこそ何度もやり直させて面倒な目に遭わせたくないから…!」
お互い、そのように言い合っているのを見て、スマホンがまとめる。
「つまり、お互いに相手を思いやっていただけなんですね。」
隠者はフフッと笑って、堅苦しい二人を宥めた。
「二人とも、気を遣い過ぎなくて良かったんだよ。」
何だか、余計にムズムズとした気持ちになるクロノと守護者。
「と、とにかく!リトライを控える必要など無いからな!其方や味方の安全が大事なのだから!」
「う、うん…。分かったよ…。」
お互いの誤解やすれ違いが解消され、皆は一安心したようだった。
「そ、それにしてもだ。スマホンのマップは本当に役に立ってくれた。今までは霊鷹で上空から地形や拠点を把握しようとしていたが、なにぶん遠目でしか判断できなかったからな。曖昧な覚え方をして痛い目にも遭ったものだ。」
リトライをあまりせずに済んだのは、マップで方針を決めて、効率よくルーンを回収できたお陰だと、守護者は言った。
「ハイッ!お役に立てて何よりです!」
スマホンも、努力の甲斐あって嬉しそうだ。それを見ているクロノも誇らしげだ。
「良かったなスマホン!これからは、他の夜渡りのみんなの出撃にもついて行って、もっと活躍できそうだな!」
そう言われて、えっと…、と声を漏らすスマホン。
「いえ、僕が出撃してアプリを活かせるのは、クロノさんと一緒の時だけです。出撃メンバーにクロノさんがいない時は、僕も行けません。」
「えっ?何でなのさ?俺がいなくてもみんなに付いていけばいいじゃないか?」
疑問を持つクロノに、スマホンが説明した。
「仮に、夜渡りメンバーだけの時について行って、無事生還できるのなら問題ありません。でももし、夜渡りの皆さんが全滅しまったら、皆さんは祝福の力で円卓に戻れますが、僕は夜渡りでは無いので戻れません。その場に取り残されてしまうんです。」
それに対して、クロノがいればクリアするまで何度もリトライできるから、スマホンが必ず帰還するためにはクロノが不可欠なのだ。そこへ、隠者も付け加える。
「スマホンが敵に壊された時も同じだね。クロノがその場にいればリトライして故障を無かったことにできるけど、クロノが居なかったらスマホンを失ってしまう。」
壊れたスマホンを持ち帰ることができたとしても、スマホンの修理など、この世界では誰もできないだろう。
「そっか…。万が一に備えて俺たちはセットで出撃ってことか。」
「そういうことですね。ですからクロノさん、これからもよろしくお願いしますね!」
ああ、任せてくれと、クロノは相棒に答えた。
祝福の光を囲んで、互いの信頼を確かめ合うクロノ達。その結束は、より確かなものになっていた。
そして、少しずつ夜が明ける。2日目の戦いが始まろうとしていた。
スマホンtips
『霧の猛禽』
体を沈め、瞬間的に姿を消す戦技
攻撃を受けると、猛禽の羽を生じ
一瞬に空に飛ぶ
その羽は、攻守を兼ねる