理想郷でぬくぬく生活〜将来安泰の快適ライフ〜 作:新紀元史
『第1世代・英雄生体フィルターの減耗に伴う、一般市民を対象とした“擬似不老不死モデル”へのシステム転用に関する報告書』
本報告書は、当都市の存立基盤である「龍脈エネルギー浄化プラント」の現状における構造的限界を指摘し、次期運用フェーズへの速やかな移行を提唱するものである。
第1世代(英雄)生体フィルターの減耗と限界について
大破局以降、我々は汚染された龍脈エネルギーの毒を無効化するため、特異適合者―いわゆる「第1世代・英雄」たちの肉体に霊鉄の杭を直結させ、これを生体フィルターとして運用してきた。
霊鉄の持つ魔力吸着および生体磁場固定の性質により、彼らの肉体は死の淵に固定され、細胞の崩壊と再生が強制的にループする「擬似的な不老不死」の状態に置かれる。
この生体フィルターのおかげで、実に100年もの間、我々は防壁建造から今日までドーム内の完全な平穏を維持できている。
しかしながら、多大なる精神的・肉体的負荷を強いられた第1世代の個体維持能力は、すでに物理的な限界を迎えている。
直近のモニタリングデータによれば、初期より接続されている個体のうち、すでに七割が処理能力の減退を起こしており、残る個体も今後十年前後で完全な機能停止―すなわち、浄化プロセスの不可逆的な破綻を迎えることが確実視されている。
一般市民を用いた“擬似不老不死モデル”への転用
第1世代のような「強靭な意志や特異体質を持つ英雄」を新たに自然発生的に調達することは、現在の閉鎖された都市環境において不可能に近い。
したがって、我々はシステム維持のパラダイムシフトを行わなければならない。
すなわち、「一般市民を用いた、量産型の霊鉄・生体フィルター転用モデル」への完全移行である。
霊鉄による細胞の固定化および不老不死化の技術は、被験者が英雄である必要はない。
霊鉄の導通性とシステムの制御パラメータさえ合致していれば、生体そのものを「消耗品のパーツ」として組み込むことは技術的に完全に可能である。
この転用にあたって、以下の運用プロセスを推奨する。
1. 不確定要素(潜在的叛意者)の優先選出
都市システムに対し、過度な疑問や不満、あるいは構造的な不信感を抱く傾向にある個体は、将来的に治安の最大リスクとなる。都市内の監視網で警戒リスト入りを優先的にマークし、処理対象としてストックする。
2. 記憶の調整
対象 警戒リスト入りの人間
生体フィルターとしての肉体と脳波が適齢期・適正状態に達するまでの間、日常的な「物忘れ」や「軽度の記憶障害」を装ったメモリ書き換えを実施する。これにより、恐怖心や離反の芽を事前に完全に摘み取り、被験者を無自覚な「従順な部品」として育成する。
なお、反応には個人差があると想定されるため、一度調整した後の経過観察の結果を以て対応とする。
3. 審判適性による大聖堂への直結
最終的に、市民権を持つ一般成人の成長タイミングに合わせ、「大聖堂・中枢プラントへの特別配属」という名目で地下最深部へ誘導する。肉体を生体フィルターとして直接システムにロックし、霊鉄を介した半永久的な生体フィルターへと昇華させる。
この転用計画は、倫理的観点においては確かに極秘裏に処理されるべき性質のものである。
しかし、ひとたびプラントが停止すれば、外の厄災の霧が数時間でドーム内へ流入し、全市民が全滅することは火を見るより明らかである。
「少数の最適化された犠牲」によって、
「大多数の市民の永遠の平穏」を維持し続けることこそが、我々管理者の果たすべき絶対の義務であると確信する。
本提唱の速やかな承認と、次期適性審判プロセスへの改定をここに強く求める。