バンタンランジャン•フランケーン─表象モンスターとその弱点。彼らの日々は激務で埋まる─ 作:御幸己 ねぎみそ
往々にして新しい技術というものは初投入でいい功績を挙げられるものではない。
机上を離れ、現実の中で想定外に揉まれてこそ新しいものは実用性を得ることができる。
だからまぁ…………何かしらで問題が起きて失敗するのもツナグは想定済みであった。
ただ…………【アイズセンチネル】がバンタンの下に帰ってこれないという事態は想定外であった。
戻る力は〝フランケン〟の真髄。手足に指、内臓までも引き寄せ、道中の障害物容易く破壊して突き進む驚異的なパワーと貫通力を持つそれは、バンタンの強さを根本から支える異能だ。
ただどうやら、この〝戻る力〟の強さは切断面の断面積にもある程度依存しているらしく。視神経の細い断面では化質のこもった壁を、眼球もろとも一気に引き寄せることができないようだ。
1階に【センチネルアイズ】を放ったのは迂闊であった。最初から【自宅を操るモンスター】のいる2階に送っていればうえに上がる手間がはぶけていたというのに。
稀な事態だから多くの情報を取ろうと、戻ってこれるのか確かめもせずに行動したのは失態だ。
とにかく僕ら【フランケン】はコロニーを1回から探索するハメになってしまった。
「…………すぐに連れてくるって言っちゃったじゃないですか………………」
「ごめんごめん………………」
親御さんを安心させる為の言葉が、この失敗を経てツナグを恥ずかしめるものに移り変わる。家からデカい音が聞こえたと思ったら途端に余裕ありげなバンタン表情が焦慮に染まり…………ツナグはそこからモンスターの両親から顔を合わせられなくなってしまった。
すぐに眼球の回収とモンスター討伐の為に【フランケン】は家の中に突入。気化させたクレイは強い光を放つ………………透明な風船にそれを詰め、光源にして探索している。
「というか別に顔を隠さなくてもいいと思うんですけど……………」
「ヤダよヤダよ ! ヤダッ ! 可愛くないアタシなんて誰にも見られたくないし!!」
【アイズセンチネル】を使い出してから、コロニーに足を踏み入れている今も、バンタンは空いた目を手で覆い隠している。
バンタンの本体である頭は目がなければ物を視覚する事が出来ないが、それ以外の部位は5感以外の何かしらの感覚で周辺情報を得ている。
なので動きの手綱を胴体らに渡すことで、バンタンは頭で指示を出さなくとも一人でに行動することができる。目のない顔の全容を人に見せないようにしながら、彼女は今迷いなく歩けている。
「誰かに可愛くないとか思われるのも嫌だけどさ!!何よりアタシ自身が可愛くない自分でいるのも嫌なの!!だから何があってもこの手は離さない離さない!!」
迷惑をかけられている訳でもない。バンタンの矜持をわざわざ否定する理由はツナグにはなかった。
難航するかと思われた眼球探しだったが、それらが思いのほか早く見つかった。家に入ってからおよそ5分。運が良かったのもあるが、眼球2人奇跡的に合流できたのも大きい。
余程怖かったのだろう。【センチネルアイズ】の2人は細い腕で互いを抱き合いながらポロポロと涙を流している。
気持ち悪い造形の彼らだが、今のこの2人の振る舞いには愛嬌を感じる。
確かにバンタンの言う通りかわい………………かわ………………うーん………………………
「ツナグぅ!!目を入れてる所見ないでよね見ないでよね!!」
「はいはい………………」
ツナグに分かる日は来ないだろうが確かに自分の眼球を入れ直す様子は誰かに見られたいようなものではないだろう。
ツナグは絡んで眼球達を手に取るバンタンに背を向け、壁を手で触れる。
「どうどう?後戻りしたほうがいい感じいい感じ?」
「まぁまぁ奥まで来ましたからね。ここから階段まで行ったほうが早いと思います」
「おけおけ〜」
目を入れ終わったバンタンは、スマホを鏡代わりにして化粧の崩れ具合の確認と前髪直し。スパパッと迅速に顔を整えたバンタンは、ツナグの方にわざとらしくゆっくり大股で近づいていき、覗き込むよう上半身を傾け上目遣いでツナグの目を見つめた。
何を要求してるかくらいツナグにもわかるが、そういう事言うような気分でもないので無視して壁から離れる。
「ケチケチ〜!!」
欲しい言葉を意識的に避けるツナグの振る舞いには当然バンタンも不満げ。ツナグの後をついてもうワントライ!!
突如として、ツナグが触れていた壁が隆起する。
明確に【フランケン】の2人に向けられた、質量換算の殺意。内壁は槌のように【フランケン】めがけ、逆サイドの内壁ごと叩き潰した。
「いや〜わざわざ出口まで作ってくれるだなんて親切親切!!ありがたいありがたい!!」
前触れなく飛び出してきて、【フランケン】を潰したかに見えた部屋から、バンタンは何事もなかったかのように明るく扉を開け出てくる。
外に出たバンタンは出てすぐに出口の脇に立ち、上半身を眺めて上目遣い。三度目の正直を狙ったあざといポーズの再再現だ。
「………………………」
ツナグの対応は何度やっても変わらず、にべもないものであった。本当に何でもないようにバンタンを置いて先に行くツナグの背中を、彼女はペシッと叩く。
『でていケッッッ………………!!!』
これもまた3度目になるだろうか。【自宅を操るモンスター】の、屋内そのものが発する排外の一声。バンタンと同じように、大体の人は三度要求を突っぱねられると手を出したくもなってしまうもの。
1度目も2度目も、意思を暴力で伝えてきた
廊下の闇から無数の本が、弾丸のように撃ち出され【フランケン】に襲いかかる。
「僕らは家に入っておいて手土産も持参してこない礼儀のなさなのに。随分熱心にもてなしてくれますね。お行儀がいいです」
「ね〜。クッキー持ってくればよかったよかった!!」
冊数は増えた。心なしか弾速も上がっている。けどそのような変化も【フランケン】には瑣末事。2人の声色も余裕に満ちあふれたものであった。
さも当たり前のように、【フランケン】は厚い本達をメイスで、あるいは拳で軽々と次々に弾く。そして全弾の威力を殺しきり、背後に送り去る。
「おっ……!」
それは本の群れに紛れるように、床から這い上がり【フランケン】の首に巻き付く。打撃がダメならば絞め技。Tシャツを縄のようにし2人の首を1周、絞殺をはかる。
「なんかこーゆーみみっちい殺され方されるとやな気分になるねなるね」
輪をかたどっていたTシャツは、バンタンの首を離れた途端に結ばれる。役割を果たしたとでも見なされたのか、ただに結び目となったそれはバンタンの首の断面にのっかり動かなくなった。
それを軽く体を傾け落としながらバンタンはツナグを気にかける。
「ツナグ〜 ? どうどう?」
「派手だろうと何だろうと殺しに来られるのは隔てなく不快です」
「いや…………首首………」
「よい………ッしょ〜!!」
シャツに指を引っ掛けたバンタンは、もう片方の手でツナグを押さえつつ、掛け声とともに思いっきり手を引きシャツを引っ張る…………………と思いきや、バンタンはシャツに指を残しただけで、引く力をシャツには加えていない。それはこれからの事
「よいしょ〜ッ!!!」
〝フランケン〟の戻る力は距離を取る程に強くなる。ツナグが化質を込め弱らせているので、少し手を引いたくらいの距離で充分だ。
指を戻る力で引っ張り、ツナグの首にかかったシャツを引っこ抜く。
このシャツも、先ほどから飛んできた本などの物もそうだが。攻撃、即ち役割を終えた物はピクリとも動かなくなる性質がある。
恐らく与えられた命令をこなした物は、暫く操作を受け付けれなくなり動けなくなるのだろう。
「能力の概要は分かってきましたね。予想通り空間も拡張されているようですし」
「だねだね〜。とりあえず家具とか小物の物量で圧倒される事はないし…………戦闘力はそれほどでもないかも ? …………ほいっと」
軽く考察しながら【フランケン】は足元に現れ、たちまちに開いた扉を跳んでかわす。そして一応情報を集める為、ゆっくりと後を戻り扉の向こうを覗いて見る。
「わおわお。深い深い……………この地下室は元々あったものじゃないよね?」
「だとしたら深さにロマンがありすぎますよ……………………横に空間を広げられるのならまぁ縦に広げれてもおかしくはないですね」
扉の奥は先が見えないほどの真っ暗闇。不可解なのは地下深くまで続くこの穴にも、廊下同様扉が一定間隔で付いているということ。
「……………………………………」
モンスターの能力には得てして不完全性が存在する。人間1人による想像だけで、完璧と呼べる産物など生まれようがないからだ。
ツナグの左手につかまっているバンタンの左手が、人差し指でトントンとツナグに合図を送る。視線を送ってみると、バンタンの左手は少し体を起こし指を指した。
こちらに迫る包丁の雨あられを。
「バンタン。ちょっとそこのドアを開けて中見てもらえます?」
「うん、そだねそだね」
ここでバンタンを取り乱させたくない。たまたま手元にあった手ごろな違和感を目眩ましとして使い、目をそらしている間にツナグは拳銃を取り出し狙いをつけ、放つ。
ツナグの化質を込めた弾丸は光を纏いながら、迫りくる包丁に相対する。弾丸の弾頭が包丁の切っ先と触れ合い、弾き飛ばした。更に追随する他の包丁も、弾丸とすれ違った途端、軌道に巻き込まれるかのようにふき飛ばされ、一掃される。
「うっひゃあ!?…………ちょっとちょっとツナグぅ!!銃を撃つなら先に言って先に言って!!」
「ああ…………すみません」
突如として響く銃声にバンタンは驚き、前もって言わなかったツナグに怒り始める。バンタンのことを慮っての発砲であったからツナグとしてはいただけない心境であるが、銃声なんてほぼ誰もが聞きたくないものなので気持ちは分かる。
「………………やはり家具や物は生成されていませんね」
「うんうん……窓もないし変な家変な家って感じ」
バンタンに開けてもらった部屋の内装は物一つない酷くさみしいものであった。その上外光を取り入れる窓もなく、一層雰囲気が悪い。ただ照明は取り付けられていて、スイッチを押してみると普通に明かりがついた。
「一度命令を受けた物は少なくともすぐには行動できない………という制限がある上で攻撃が散発的過ぎた事を考えると、そりゃあ物の複製はできないですよね。………発砲失礼します」
「おけおけ」
ツナグが次に狙うのは隣接する部屋と共用される壁、両側の2つ。銃が放った弾丸は壁に大きな穴を開け、隣の部屋の内装と大きさ、そして壁の厚さを判然とさせる。
予想通り隣の部屋にも物はなく、時間があるわけじゃないので正確に確かめたわけじゃないが部屋の大きさも同じくらい。そして壁の厚さも揃っている。
「【自宅を操るモンスター】は自宅の空間を自在に広げれるけど、広げた空間は必ず部屋で埋めなければいけないってところかなところかな ? で、壁の厚さも、部屋の広さも均一って感じ ? 」
「壁の厚さは何となく変えられなさそうですけど、部屋の広さに関しては逐一決めていくのが面倒だからじゃないですかね ? コピペで一気に増やしてるみたいな」
部屋を離れ、また歩き始めながらツナグとバンタンは考察。情報はおおむね揃ったと見えるので後は真っ直ぐ2階に上がり【自宅を操るモンスター】を討伐しにいく。
大きな障害となるのは階段の位置が分からない、何ならそもそも階段があるのかすら不透明という点と、更には先ほど天井を攻撃した時、作った穴がたちどころに塞がってしまったという事。
しかしそれに関しては【フランケン】ならば、ツナグ•アマネクならば対象できる。
「………………この部屋の奥ですね」
【
物の繋がりを断ちバラバラにする、〝フランケンシュタイン〟の
例えば拳銃を解体するとして。銃本体と、残弾含むマガジンとで大雑把に分けるか。それとも銃のパーツそれぞれとで細かく分けるか。怖いのでやりたくはないが、物を原子レベルで分け実質的に消滅させることも恐らく無理筋ではない。
今行っているそれは、これの応用……………というより事前段階のみを切り出した運用だ。
ツナグは手のひらで触れ、物を解体するその前に、物の構造をイメージとして知覚することができる。
あくまでもイメージ、何気なく浮かんだ妄想のように曖昧なそれだが、能力の練度と根気強いイメージの掘り下げがあれば、この紋切り型のコピペ部屋ひしめくフロアに、ただ一つある階段を見つけることができる。
「長時間やると疲れるから嫌なんですけどね」
「あったあった〜!!」
バンタンに部屋を壊してもらって開けた景色、さっきまで歩いていた廊下とはまた別の廊下道すがらに、2階へ上がる階段はあった。
『クルなッ…………ッ!!でてイケッ…………ッ!!』
【自宅を操るモンスター】の声にこもる怒気もどんどん強くなっていく。階段を登っている間も妨害こそなかったがその怒りを声に変えて届けてくる。
2階に上がった。といっても風景にこそ違いはない。1階と同じように延々と廊下が続き、等間隔で部屋が並ぶ、ずっと見ていると気がおかしくなりそうな構造のままだ。
「ねぇねぇ。ホントにここが最上階なの ? 」
「はい……………確かにこのフロアに【自宅を操るモンスター】らしき姿があります」
「ふ~ん……………不可解不可解」
一人になりたい…………家にいる者、入ってくる物を追い出したい………………恐らくそれがこのモンスターが持つ大まかな願いだ。
そうであるならば、何故自室にたどり着けるような構造のままで、それを変えようとしない ?
合理的に考えるならば階層を増やすか、そもそも階段を作らないか、というか入口になりうる扉や窓を消失させれば新しく人が入ってくることはないだろう。
生活しやすい環境を維持するため………………なのだろうか ?
『でてケッッ!!でてケッッ!!!』
この端々まで殺意の生き渡った拒絶の言葉も、彼女に近づく程に高頻度になっていく。しかし、何故か2階に上がってからの道中、攻撃は一切来ていない。
頻繁に攻撃できる程の能力のキャパシティがないのだろうか?
レベル4モンスターでも攻撃と食い合わせの悪い願いで化けた場合、対した強さにならないこともままある。
けれど、家の中にいる人を追い出す……………という望みはまさしく加害性そのものであろう。
どういう制限が彼女にかかっている?レベル4モンスターの特性や能力は、一過性の感情がもたらす殴り書きのような歪なもの。一貫性や合理性がなかったとして、それの粗探しに意味などない。
それでも、レベル4モンスターの共通項に引っかかりを覚えたという事実。見過ごすには、何か大きなものが潜んでいるような気がしてくる。
その答えにたどり着く前に、【フランケン】は【自宅を操るモンスター】の部屋の前に来た。
考えに考えて、それでも解けなかった問題は、そもそも答えに必要なピースを持ち合わせていない場合が多
い。
これ以上手をこまねいてもいられない。ツナグは部屋の扉をノックし、呼びかける。
「失礼します。チーム【フランケン】です。貴方の討伐にきました」
「そんな第一声あるある………… ? 絶対開けてくれないでしょ……………」
「そうでもないですよ、ほら」
ツナグは足元に転がったドアノブを蹴飛ばしながら、扉を優しく押して開ける。というより倒した。
部屋の中は廊下同様電気がついておらず、PCの明かりだけが光源となり、側の床に座り込む一人の少女を照らしている。
聞いていた話から予想はついていたが、随分と荒れた様子だ。背中を隠し切るほどの長い髪はボサボサで、彼女が座る周囲には食べカスの残ったお菓子の袋が散乱している。今も何か食べているのだろうか ? ガツガツと咀嚼音をかき鳴らしながら無心で何かを口に放り込んでいる。
ただ【自宅を操るモンスター】から目を離し、周りを見渡した感じはそこまで不穏さはない。棚のあちこち壁の隅々にぬいぐるみやアニメか何かのポスターが綺麗に飾られており、少なくとも趣味に没頭できるくらいの心の余裕がありそうであった。
勿論、部屋の中が趣味一色というわけでもなく、家族写真がこれまた丁寧に並べられたスペースもあり
「……………!?」
感じていた違和感が別の違和感と混ざり合い、一つの可能性のもとに垂らされる。
「ねぇねぇ!!何食べてるの食べてるの〜?……………おお〜!!マッケンチーズマッケンチーズ!!アタシも好き好きおいし〜よねぇ〜!!………………親御さんが作ったの ? 」
少ないケースだが、ちょっとした会話と、欲望の解消だけでも、レベル4モンスターを討伐できることがある。【フランケン】の2人は戦いを好き好んでいるわけじゃない。拳を交えずに解決できるなら積極的にそうしようというのがツナグとバンタンのスタンスだ。
だからどのモンスターも、基本最初は友好的に接してみることから始めている。
大体は上手くいかない。話が通じるようなレベル4モンスターは極めて稀だからだ。
ただ、今回バンタンが崩した相好を戻したのは別の理由───
「オマエも…………………ジャマするのカ………………?」
【自宅を操るモンスター】は少しだけ頭をバンタンに向け、そうボソっと呟く。
「いやいやぁ!!まさかそんなそんな!!お話ししたかっただけだけ!!ゆっくり食べながらでも平気平───」
「ダマれッッッ!!!でてイケェェェェェェェェェェェェェェ!!!!」
陽気に接するバンタンを跳ね除けるように、突如として、【自宅を操るモンスター】は激昂する。
苛烈な怒りは彼女の片腕に駆け上る。憤りのままに上げたその腕の動きに呼応するように、室内の棚やフィギュア、ベッドにPC……………彼女の生活を囲う全てが主人を守り抜かんと浮かび上がり蜂起する。
一番手はデスクトップPC。思い出の詰まった自作品であるそれは、多彩な色を散らしながらバンタンの顔面めがけタックルを仕掛けた。
思い入れが強く、かつ【自宅を操るモンスター】が直視し従えた物であるためか、威力は道中までのそれの比にならない。
バンタンは両腕で受け止めたものの、受け続けるのは難しいと判断し、後ろに弾きつつ余った勢いはバク転で消費しきる。
「…………そーだねそーだね。悪いけどあなたの邪魔をしちゃうしちゃう!!」
会話で解決する道は閉ざされた。けれども問題はない。暴力で解決する方が得意だから。
バンタンは銃のハンドポーズ取った。かわいらしくウィンクし、【自宅を操るモンスター】のハートを射抜かんとばかりのキュートな笑みを向ける。
ただ一つ可愛らしくないのは、銃口に当たる人差し指にたっぷりと血が付着していて、直前に【自宅を操るモンスター】の心臓を貫いている事実があることだった。
肉体の欠損すらも治しきるモンスターの回復力でも、心臓の損壊は致命的なレベルの大ダメージ。
攻撃の手に緩みが生じ、浮かび上がりツナグにじっくりと迫ってきていた物達もその動作をやめる。
「アッ…………っ!!ガッ……………」
【自宅を操るモンスター】の細く弱々しい体が床に伏し、ひどく苦しそうに吐血をする。けれどまだ、莫大な量の化質が彼女の身体に残っている。如何にか弱く見え、哀れに思えても、追い討ちをかけなければならない。
「肉体強度はそれほどでもない!!加減して殴ってね殴ってね!!」
逡巡こそ最も彼女の為にならない。決意を固めてツナグとバンタンは足に力を込め、トドメを刺すべく【自宅を操るモンスター】に飛びかかる。
【フランケン】の最大の強みは
自動車との並走も苦ではないその瞬発力を持ってして、崩れ落ちた【自宅を操るモンスター】に迫る迫る───
迫る、迫る……………迫り…………そして遠のいていく。
『……………!?』
自分たちの脚力に見合わぬ遅遅とした進み。あまつさえ距離が離れ、【自宅を操るモンスター】を遠目する強烈な違和感。
それを起点とし、更に大きな異常事態に気がついた。
【自宅を操るモンスター】が立ち上がったのだ。よろけもせずスクッと……………胸元が血液で染まっている現実と相反する、余裕のある動き。
流血が止まっている。その上、化質の減退が見受けられない。
今攻撃したのは本体ではなかった ? ……………否、自身の肉体とは別の身体を生成し動くモンスターは多いが、どんなモンスターでも本来の肉体を手放すことはない。
新しく肉体を作って動く場合でも本来の肉体は心臓部のような役割を担い、突けば大ダメージを見込めるモンスターの急所となる。そして大怪我を負ったモンスターは、痛みによって自らが抱える望みを手放してしまい、結果的に化質量が減退……………モンスターである意味と所以を失い、その姿を保てなくなってしまう。
多量の出血、そして一瞬とはいえダメージの直後に怯み能力が途切れたこと………………あの身体が【自宅を操るモンスター】の本体、本来の身体に違いない。
残る可能性は一つ。迷ってはいられない。無線を口元に近づけツナグは叫ぶ。
『こちらチーム【フランケン】!!現在対応している【自宅を操るモンスター】の……………
モンスター討伐は速度が命。膨大な化質を抱え、長時間討伐されずそのままでいた場合……………
レベル4モンスターが
そして【自宅を操るモンスター】が化けてから現在までの経過時間は、56分。
彼女は、【自宅を操るモンスター】は………………異例な早さでの
【ラブイエ•ハックアロー: