もともとヴィルシーナはリアルでも好きな仔だったのですが、三姉妹でわちゃわちゃしているところとか見るともっとやってくれと思います。そこにはいるジェンティルドンナとかもう最高です!来て欲しかったなぁ。
ヴ姉妹の夢であり、ジェンティルドンナの夢でもある一粒で二度おいしいお話です(自画自賛)。
私は両親を尊敬している。だって、とっても可愛い妹を3人も生んでくれたから。だから家事の手伝いはもちろんだし(当たり前)、自分のことは自分でやってあまり負担をかけないようにしている(当たり前)。父の日と母の日の贈り物を欠かしたこともない。
「お姉さま。」
「マサ姉さん。」
「マサお姉ちゃん。」
3人の可愛い妹たちはウマ娘。上からヴィルシーナ、シュヴァルグラン、ヴィブロスという。普段は学校の寮で生活している。可愛いだけでなく中央と呼ばれるトレセンで日夜トレーニングに励むアスリートなのだ。
下の子はまだデビュー前だけど、テレビや雑誌は必ずチェックしているしレースはなるべく現地に行くようにしている。青い芝の上を走る妹たちの姿はかっこいい。本当に大切な存在だ。
目にいれても痛くないくらい。
でも、そう思っていても、思うだけでは夢がかなわないように妹たちとの距離は縮まない(泣)。なんか微妙に距離があいているような気がする(気のせいなのでしょうか)。確かに世代の壁はある。一つ下のヴィルシーナでも5つは離れているし、トレセンに入学してからは長期休みでしか会わない(絶望的ですね)。
この前の休日にこんなことがあった。
「ね!マサお姉ちゃん。美味しそうなケーキ屋さんがあるんだけど、一緒に行かない?」
リビングでテレビをみていたら、隣にヴィブロスがやってきた。この子は三姉妹の中で一番甘え上手で上の姉たちがトレセンに入ってから暫くはよくお世話をしていた。そのため、懐いてくれている。これは仲を深めるBIGチャーンス。いいよ、と車をとりに立とうとすると、
「お姉さまは疲れているのだから、私と一緒に行きましょう。」
とヴィルシーナが窘めた。
別に疲れていない、と言おうとすると、
「そうだったんだ。疲れているのにワガママ言ってごめんね。とびっきり美味しくてゴージャスなケーキを選んでくるから。」
とヴィブロスに申し訳なさそうな顔で謝られた。
グハァッ、ヒッ、その言葉は私にキく。
妹たちの優しい気づかいに私は、
「、、、お願い。」
としか言えなかった。
そして無理やりお小遣いを渡して自室に引っ込んだ(デキル女はクールに去るんだぜ)。
深呼吸を一つ。
何で!?別に疲れていないよ!むしろ可愛い妹たちと美味しいケーキが食べられるなら3轍明けでも這ってでも行くよ!(ただのエクソシスト。)でも、ヴィルシーナの気づかいは嬉しい。え、ヴィブロスが私のためにケーキを選んでくれるとか最高じゃん。それに私が付き添うよりヴィルシーナのほうが、服とかアクセサリーに詳しいから丁度よかったかも。私はそこまで興味ないから。
まだ続きがある。
気持ちを切り替えてレポートを片付けようとした私は、あ、そういえば本を借りてくるの忘れたと市立図書館にあるか調べていた(計画性×)。スマホをポチポチしながら廊下に出ると、ランニングからシュヴァルが帰ってきた。
「ただいま。」
「お帰り。」
「え、マサ姉さん。」
驚くシュヴァル。そうだよね。私はフル単で授業とっているしサークル活動もしているから普段家にいない。驚くよね(泣)。
「ヴィブロスとヴィルシーナはケーキを食べに行った。」
「うん、知ってるよ。僕もさっきそこですれ違ったから。」
「そうか。」
しかし、シュヴァルが帰ってきたなら昼食に何かつくるか。妹たちはそれはよく食べる。お米は一升二升、パンは一斤二斤と消費する食卓が普通だったから、幼いときは自分が少食なんじゃないかと思っていた。それに気づいた両親にすぐさとされたが、おそらく私の感覚はバグっている。
冷蔵庫の中を思い出そうとしていると、
「シャワー浴びたら遊びに行ってくるから。」
「そうか。じゃあ車で送ろう。」
「お姉ちゃんから聞いたよ。マサ姉さんはゆっくり休んで。夕飯も今日は僕たちがつくるよ。」
「、、、そっか。」
「いつも家のことをしてくれてありがとう。」
シュヴァルははにかむとそそくさと浴室に行った。
なんていい子たちなんだ!
父さん!母さん!あなた方の娘は最高です!!
扉越しにシュヴァルに帰りにスーパーによってくる用にと夕飯代を多めに渡して(押しつけたとも言う)、私はコーヒーを淹れるためにキッチンに行った。またまた一つ深呼吸。
何で!?別に疲れていないよ!!(本日二回目。)どれだけ忙しいと思われているの?そりゃあ、(妹たちと)ランニングに行ったら真っ先に脱落しますし?(妹たちと)キャッチボールでヒビはいったこともありますし?(妹たちと)ご飯食べたら量は一番少ないけれど。いたって正常だから!ヒトとしては健康だから!むしろ図太いから!
こういうときはコーヒーだ。コーヒーの香りだけが私を落ち着かせる(言い過ぎ)。スーハー。OK、COOLに行こうぜBaby(唐突な英語)。
ヴッ、そうはいっても、ヴぅ、やはり、ヴ、さみしいものはさみしい。いや、泣くんじゃない政子。涙は女のとっておきの武器なのよ。
うつむくな
肩を落とすな
立ち止まるな
花はいつか咲く
だからそれまでは
ゆるまず進め。
全力で挑め
おごらず戦え
そうすれば君は
いまに大輪となる
(心で)泣いた私はビワハヤヒデパイセンの言葉を思い出して冷静になった。
今でも思い出すだけで胸が痛む。嗚呼どうして。私はただ妹たちと仲良く過ごしたいだけなのです。神よ。私が何をしましたか。妹を慈しんでいるだけじゃないですか。それなのになぜこんな試練をお与えになるのです?
「この件についてどう思う?」
「素直に伝えればいいのではないかしら?」
「それができたら苦労はしないんだって。」
「努力しないものに神は微笑みませんわ。」
嘆く私の前で優雅にお茶を嗜む赤い貴婦人。
彼女の名前はジェンティルドンナ。ヴィルシーナのレースを観に行ったということは彼女の三つのレースにも立ち会ったというわけで。色々あって知り合いになった。このことは両親以外知らない。妹たちに隠しているわけではないのだけど、後ろめたくて素直に言えない私はチキンなのです(へたれ)。
「学校でのあの子たちはどんな感じなの?」
「そうですわね。学年が違うわりには仲良く一緒にいる姿をよくみます。」
はい、とスマホをこちらにみせてきた。画面に写っていたのは食堂でご飯を食べている三人の姿だった。
「か、かわ。」
ヴィブロスのあーんをしぶしぶ、でも頬を赤くして食べるシュヴァル。そして、二人を優しく見守るヴィルシーナ。天使の空間がそこにはあった。
「あああ、どうして私はこの場にいなかったんだ。」
「生徒ではありませんから。」
「なら今からでも生徒に。」
「職員のほうが現実味がありますわ。」
淡々と正論をぶっ放す貴婦人。キレッキレですね。私にささってます。はあ(クソでか溜息)。ポットにお湯を注いで二杯目に口をつけるとアールグレイのいい香りがする(現実逃避)。たまには紅茶もいいなあ(浮気ね政子さんby珈琲)。
「ヴィルシーナさんの過保護はきっとあなたに似たのね。」
「ええー、私は過保護じゃないよ。ただ仲良くしたいだけ。」
「外面ではなく中身の話ですわ。ヴィルシーナさんにとって姉とはこういうものだと貴女の姿から学んだのでしょう。よく慕われていますね。」
「ジェンティルちゃん。もしかして褒めてる?」
「さあ、お好きなように。」
すました顔からは揶揄っているようには感じない。もともと冗談を言わない子だから本心から言っているのだろう。そう思うと腰のあたりがムズムズしてきた。
「ありがとね。」
「なんのことでしょう。」
「野暮だけど、妹であるジェンティルちゃんに聞きたいんだけどさ。姉を真似るって、そのつまり、そういうこと?」
「本当に野暮ですね。だから避けられるのじゃなくて?」
「わかりました。なかったことにしてください。」
「ふふ、冗談ですわ。つまりそういうことです。」
前言撤回。ジェンティルちゃんも冗談を言うらしい。でも、それが可愛くみえるのはジェンティルちゃんも家庭は違っても妹だからかもしれない。
「さて、そろそろお開きにしようかな。」
「そうですわね。このぐらいにしましょう。」
会計を頼む前にいくつかケーキを包んでもらった。
「近くまで車で送るよ。」
「ありがとうございます。ではお礼に貴女の妹君へのお使いになりますわ。」
貴婦人はお見通しらしい。
「よろしく。私の名前は出さないでね。」
「そういうところですわよ。」
小言を流して店を出る。お日様は少し傾いているがまだまだ明るい。今頃あの子たちは何をしているだろうか。トレーニングか、ショッピングか、テストが近いと言っていたから勉強会でもしているかもしれない。物思いにふけっているとちょんと肩を小突かれた。
振り返るとジェンティルちゃんがむくれてる。
ヴィルシーナよりもシュヴァルよりもヴィブロスよりも身長が低い私からすればジェンティルちゃんは大きい。でも、その姿は幼くて可愛くて自然と甘やかしたくなる。
「どうしたの?」
「先に行くからですわ。」
「ジェンティルちゃんならすぐ追いつけるでしょ。」
「そうですが。」
どうやら貴婦人の機嫌を損ねたらしい。今度はサッサと駐車場のほうに行ってしまった。
「正門まででいい?」
「駅までで結構です。見られて面倒ごとになるのは御免ですわ。」
「優しいね。」
「ヘタレな貴女ですもの。」
「面目ない。」
「ふふ、本当に情けないこと。」
ジェンティルちゃんは助手席に座りながら外を眺めてる。
私はハンドルを握って前を見ている。
妹たちの様子が知りたくて始まった奇妙な関係の私達だけど一緒に過ごす時間は結構楽しい。次の不定期な会合はいつになるのか。今から楽しみである。
「ここまででいいわ。」
「わかった。」
駅のロータリーに止める。
ジェンティルちゃんの手には白い箱。さっき買ったケーキが入ってる。
「そういえば。」
「なんでしょう?」
会ってからずっと気になっていたことを聞く。
「耳飾りいつもと違うんだね。」
ジェンティルちゃんの耳にはいつもの赤いハートにレースがついた王冠のようなものではなく、真珠のアクセサリーがついていた。というか、今日の服装は全体的にシックで大人びている。
「、、、気づいていましたの。」
「うん。似合っているよ。普段からつけているの?」
「今日、初めてですわ。でも貴女が似合うと言ってくれたからこれからもつけようかしら。」
ジェンティルちゃんは不敵に微笑んで車を降りた。
「さようなら。寄り道しては駄目よ。」
「さようなら、ジェンティルちゃんも気を付けてね。」
貴婦人は颯爽と人混みの中に消えていった。私はそれを見届けると車を家へと走らせた。
「ねえ。」
トレセンについた私を呼び止める声がする。
「あら、ヴィルシーナさん。」
「ジェンティルドンナさん。お姉さまと会ってきたの?」
「私の姉はもう社会人ですので。残念ながらそうそう会えません。」
「私の姉のことよ。あなたから匂いがするの。」
睨む目は鋭い。匂いって。この子は犬なのかしら。でもウマ娘は嗅覚がいいからわかるのは不自然ではない。それに政子さんには悪いけど隠すことではないし。
「ええ、そうよ。はい、渡しておいてと頼まれたケーキ。」
箱を差し出すと顔は憎たらし気に、しかし手は恭しく受け取った。
面白い。
「お姉さまは私達の姉なのだからね。」
「存じておりますわ。」
あの姉にしてこの妹ありだ。
政子さんは知らないが、ヴィルシーナさんは下の妹に向けるものと同量の。いや、拗らせているものも含めると執着を向けている。私やシュヴァルグランさんやヴィブロスさんもそれを知っている。知らないのは当人だけだ。なんという悲劇。肝心の人に想いが届かないなんて。
「もっと素直になればいいのに。」
「それができたら苦労しないわよ!」
普段は淑女の手本のようなヴィルシーナさんは姉が話題になると途端に突っかかってくる。まるでキャンキャン吠える仔犬のように可愛らしい。でも、私は頭をなでてやることはしない。
「横から誰かに獲られるかもしれなくてよ。」
「え。」
ターフでも日常でも貴女に負けるつもりはありませんわ。
「あ、連絡来てる。」
自室でスマホをみると緑のランプがついていた。
「え、ヴィルシーナ!」
ディスプレイにうつっていたのはヴィルシーナ。珍しい。ヴィブロスからはよく来るのだが(当社比)。
「あちゃー。ジェンティルちゃんバラしちゃったか。」
内容はケーキに対しての御礼だった。礼儀正しいしっかり者だから言わずにはおけなかったのだろう。おっと、まだ追伸がある。
「、、、今度の休日に遊びませんか?」
フワッ。夢じゃないよね。ヴィルシーナからの遊びのお誘いだった、これはトレセンに入学してから初めてのことだ。
「ありがとう。ジェンティルちゃん。」