ブラックサレナを使って、合法ロリと結婚する為にガンプラバトルをする男   作:GT(EW版)

13 / 19
残酷な天使と降り立つ堕天使

 

 

 僕の名前はミナキ・ソウシ。極めて平凡なガンプラファイターだ。

 

 KTBKガンプラバトルアイランド――ガイドに招かれて、僕らは漆黒の四機のガンプラが向かった側へと進路を取った。

 その先に僕らを待ち受けていたのは、東京ドームよりも巨大なアリーナの姿だった。

 アリーナの中に入ってすぐ見える位置には巨大なモニタースクリーンが広がっており、その下にはガンプラバトルに使用される操作スペースと思われしき設備がまばらに並んでいた。

 

《ようこそガンプラバトルアイランドへ。私はキンジョウ・ナガレ。君達をこの島の最初の客人として歓迎しよう》

 

 僕らの到着からほどなくしてモニタースクリーンが作動し、KTBK社会長キンジョウ・ナガレの薄く笑んだ映像がそこに映し出される。

 彼は今このアリーナの中には居ないようだが、リアルタイムで通信しているらしく、どこからかこちらの様子を見ている様子だった。そんな彼は開会の挨拶もほどほどに、立ち尽くす僕らに次なる指示を与えた。

 

《さて、まずは役員の指示に従って所定の位置についてくれたまえ》

 

 僕らはその指示に従い、運営側から事前に割り当てられていた各々の操作スペースへと向かった。

 操作スペースは概ね普段使っているガンプラバトルの物と同じ形であったが、見慣れた操縦桿の前には普段とは異なる形の小さな台座があった。

 それが何に使用されるものか想像している間に、キンジョウ会長直々の指示が聴こえてきた。

 

《今君達の目の前には、いつものと違う形の台座があるだろう? そこにGPベースを差し込んで、ガンプラをセットするんだ》

 

 いつもとは違う奇妙な雰囲気に包まれる中、僕らは小さく息を呑み込みながら彼の指示に従っていく。

 そして台座の上にガンプラを置いた――その時だった。

 

「お、おいこれ!」

「ガンプラが消えたぞ……!」

 

 僕らは驚愕に目を見開き、多くの者が狼狽えた。

 ざわめきに覆われたアリーナの中で、その様子を眺めていたキンジョウ会長が僕らに落ち着きを促すように言った。

 

《安心したまえ。君達のガンプラは今、システムによって安全に転送されただけだ。この世界で一番広く精巧な、最高のバトルフィールドへとね》

 

 転送――生のガンプラが一瞬にして、この場所ではないどこかへと送られたのだ。その転送先を、僕らは彼の言葉によって察した。

 僕らのガンプラが飛ばされたのは、このアリーナに入る前にアワクネ・オチカ達のガンプラが優雅に飛んでいた空間――即ち屋外に広がっている、バトルフィールド化されたこの島そのものなのだということを。

 

《不安だったら操縦桿を握り、いつものようにモニターを開きたまえ。君達のガンプラは、ちゃんと待機状態になっているだろう?》

「ほ、本当だ……」

「……焦ったぜ」

 

 操縦桿を握り、モニターを開くと。そこには普段のガンプラバトルと同様、カタパルトに接続され、発進待機状態のガンプラから広がっているメインカメラの映像がそこにあった。

 ここだけを見れば、普段のガンプラバトルと何ら変わりはないだろう。しかしガンプラは今屋外にあり、屋外にあるガンプラを室内であるこの場所から操縦するということは、今までのガンプラバトルとは違う操作感覚であった。

 ガンプラを屋外で動かすことの意味だが――それはガンプラの動くフィールドが従来のガンプラバトルの比ではないほどにとてつもなく広いということであり、それに伴って桁違いのスケールによる大規模なバトルロワイヤルを行うことを僕は予想していた。

 今にでも発進してみたいと逸る気持ちを抑えながら、皆がキンジョウ会長の説明を聞いていた。

 

《今日、君達に行ってもらうのは他でもない。この世界最大のバトルフィールドを使った、「サバイバルレース」だ》

 

 そう、僕はこれだけ大勢の参加人数の中から一定数のファイターを振るい落とす為に、まずはこの広大なフィールドを生かしたバトルロワイヤル形式の試合をするのだろうと予想していた。

 しかしその予想に反してキンジョウ会長が告げたのは、「サバイバルレース」というロワイヤルとは似て非なる戦いの形式だった。

 

《転送された君達のガンプラは、個人戦のロワイヤルのようにそれぞれランダムの場所から発進することになる。砂漠のフィールドだったり海のフィールドだったり、宇宙のフィールドだったり。尤もこの島の場合は、地球圏どころか木星とかとんでもない場所からスタートしてしまうこともあるかもしれないけどねぇ》

 

 ロワイヤル形式の場合、選手権の世界大会のようにガンプラの発進地点はファイターそれぞれ別の場所に設定されているのが一般的であるが、今回の試合に関しても同じらしい。しかし、サバイバル「レース」という言葉の響きからして、僕にはそのルールが腑に落ちなかった。

 

《とまあ、そんな感じに君達のスタート地点は別々に用意されている。そして君達には発進地点からゴールを目指してガンプラを走らせることになるのだが……さて、ここが問題だ》

 

 「レース」と名が着いた競技でありながら、ファイターのスタート地点がバラバラ。それでは、スタート地点の違いによってゴールまでの距離に差が開きすぎてしまうのではないかと――誰もが抱いていたその疑問に対する答えとして、キンジョウ会長は聞き逃せない情報を言い放った。

 

《実はそのゴール、どの場所にあるのかは僕にもわからない》

「え?」

《そう、わからないんだ。だから君達はまず、フィールド上から自分自身の手で情報を集めて手掛かりを探し出し、ゴールの場所を見つけるところから始めなくてはならない。そして、時間内までにゴールへたどり着くことが出来た者だけが、次のステージに進出出来るというわけだ。

 君達にはこれを、今日から三日間掛けてやってもらうことになるんだけど……泊まりの用意は出来ているよね? パンフレットにはそう書いてあった筈だけど》

 

 ゴールの場所を探すことから始めるガンプラのレース。それが、大まかに言ったこの試合の概要だった。

 それはまさに、サバイバルレースの名に相応しい戦場であろう。

 しかし、なまじフィールドは島全体と言う異常な広さだ。スタート地点にもよるが、ゴールまでの道のりは極めて長い筈だ。

 それだけ広いとゴールへたどり着くどころか、出場者のガンプラを見つけるのも一苦労になるのではないかと少なくない人数の者が疑問を抱いたことだろう。

 そんな僕らに向かって、キンジョウ会長は重要事項を告げた。

 

《そうそう、フィールドの中には君達の他にもNPC操作のガンプラ軍団や、僕の送り込んだ強力な刺客達が待っている。運が良ければアワクネ、ゼロ、ショクツ、クロキシと言った、君達の知っているファイターと戦うこともあるだろう》

「四天王も居るのか!?」

「まじかよ……小学生も居るのに」

「くくっ、面白ぇじゃねぇか!」

 

 それは、キンジョウ会長が行った説明の中で最もざわつきの多かった言葉だった。

 これだけの大人数と巨大ステージで競い合う上に、KTBK四天王までもが自分達の敵に回る。その話に、ある者は戦慄し、ある者は高揚を露わにする。しかしここに居るファイター達は皆日本中から集められた選りすぐりの実力者であり、後者の反応の方が圧倒的に多いだろう。

 ……僕の場合はどちらかと言えば、前者の方だったが。

 

《腕試しのつもりで彼らに挑むのも、無理に挑まないのもありだ。それと、ガンプラがやられた場合は、壊れた姿のまま君達の元へちゃんと転送されるから安心してくれたまえ。デスペナルティもあるにはあるけど、修理したり別の機体を用意すれば、一定時間後にまた再チャレンジすることが出来る。選手権みたいにやられた時点で脱落になったりはしないから、仮に始まって早々にやられることがあっても三日間は楽しんでいけると思うよ。

 それとエリアによっては色んなイベントを用意してあるから、こちらとしては選手権とは違ってMMORPGを遊ぶような気持ちで楽しんでもらえると嬉しいね》

 

 アミューズメント施設としてオープンされる予定のこのKTBKガンプラバトルアイランドは、あくまで利用者にガンプラバトルを楽しんでもらう為にあるのだと……彼はそれまでの飄々とした態度とは違い、会長の立場として相応しい表情を持って僕らに告げた。

 元々、僕はそのつもりでここに来ていた。無論、勝ちには拘るつもりだが、選手権の時ほど張りつめた感情は無かったのだ。

 しかし、そんな気楽なことも発進後にはすぐに言えない状況になるだろうと、この時僕は予感していた。

 

《さて、ルールの説明はこんなものでいいかな? では、行こうか》

 

 ファイター達から溢れる空気の流れが選手権の時と同じそれになり、僕らは身を引き締めながら操縦桿を握った。

 そしてとうとう、開始の鐘が鳴り響いた。

 

《第一回KTBKガンプラバトルアイランド杯――開幕!》

 

 キンジョウ会長の宣言と同時に、僕らは動いた。

 そしてリアルタイムでテレビに中継されている巨大モニタースクリーンの映像は、会長の姿から一変して各ファイター達が駆る数百機ものガンプラの姿へと切り替わっていく。

 その時主に焦点を当てられていたのは、恐らくは選手権でも結果を出していたエースファイター達のガンプラであろう。

 

「コウサカ・ユウマ、ライトニングZガンダム――出ます!」

「ホシノ・フミナ、スターウイニングガンダム――行きます!」

「イズナ・シモン、デスティニーインパルスガンダム――ボックス!」

「カミキ・セカイ、カミキバーニング――行くぜ!」

「キジマ・シア、ポータント――行きます」

「サカイ・ミナト、トラファイオン――行くぜぇ!」

「発進っ! J(ジュン)アーク!」

「ガンプラめ! 鋼鉄ジーグが相手だ!」

「ゲキ・ガンガーV、レッツ・ゲキガイン!」

「ジムグレンキャノン、行くぜ!」

「ザクバスター、行きます!」

「ノビノ・ビタ、百式(ザンダグロス)、行くよ!」

 

 こうして、僕らはプラフスキー粒子の蔵から旅立った。

 新天地へ。

 希望(ガンプラ)代償(しゅうりひ)も知らず、進み行く者達を守れると信じて。

 何もかもを犠牲にする旅が、始まった。

 

「ミナキ・ソウシ、マークキュベレイ――出る!」

 

 僕はこの大会用に調整した汎用性の高い、新しいガンプラを出撃させた。

 機体名はマークキュベレイ――ベースはニヒトと同じキュベレイだが、今まで僕が扱ってきたガンプラとは違い、こちらは極めて平凡な改造機体だ。

 武装はビームガンにビームサーベル、ファンネルと言い、こちらも通常のキュベレイと何ら変わりはない。

 見た目も量産型キュベレイの機体の胸部や肩、膝と言った各所に結晶体を模したクリアパーツを装備しているだけの姿であり、ニヒトと比べれば地味な印象は拭えないだろう。

 その見た目通り、このガンプラはザルヴァ―トルプラモデルほどのパワーは無い。しかし、それぞれのステータスがバランス良く高いレベルでまとまっている安定した機体だ。

 燃費も良い為継戦能力に優れ、長時間の行動が想定されるこのレースにおいては最も適しているガンプラだった。

 

 

 蔵から飛び出した僕の視界に飛び込んできたのは、漆黒の闇に煌く無数の星々――そして、機体の下に広がっている凸凹に塗れた岩の世界だった。

 月面――僕のスタート地点は、多くのガンダム作品で舞台となったことのある有名なステージだった。

 

 ゴール地点の場所はどこにあるのかわからない。しかし、その手掛かりはこの戦いの中にあると会長は言っていた。

 僕はその手掛かりを探す為、ガンプラを真っ直ぐに前進させた。

 

 月面上を飛行すること数十秒後、程なくして僕のガンプラが出くわしたのは、この大会に出場しているファイターのガンプラではなく――ハイモックの軍勢だった。

 ハイモックとは、ガンプラバトル用に使用される対コンピュータ戦用無人機のことだ。今の時代、誰もがその機体の世話になったことはあるだろう。

 この大会の主催者であるキンジョウ会長は、このフィールドにはNPC操作のガンプラも配置してあると言っていた。これがそういうことなのだろうとすぐに察した僕は落ち着いてファンネルを展開し、襲い来るハイモックの群れへと挑んだ。

 KTBKが実力者と見込んだ出場者の相手をするからか、ハイモックの機体ステータスは割合高く設定されているようではあった。しかし、所詮動かす者がNPCでは大した張り合いも無かった。

 僕は前方のハイモック達をファンネルと右手のビームガンによるテクニカルな射撃で一機ずつ撃ち落としていくと、一機だけ後ろから回り込んできたハイモックに対して左手に携えていたビームサーベルを振り向き様に一閃し、爆散させる。

 そう少なくない時の間にハイモックの軍勢は残り三機程度にまで減っていき、全滅も時間の問題というところまで追いつめた。

 

 ハイモックの熱源とは違う遠くの場所に、機体のレーダーの感知領域に見慣れない反応が点滅したことに気づいたのは、その時だった。

 

「この反応……ガンプラではないな」

 

 突如レーダーの上に点滅してきた光の信号は、僕が七機目のハイモックを撃破した直後に発生したものだった。

 ガンプラの熱源とは明らかに違うレーダーの反応――その下には丁寧にも「NEXT」と表示されており、普段のガンプラバトルでは決して起こり得ない現象だった。

 そこで、僕はキンジョウ会長が言っていた競技の説明を思い出した。

 「ゴールの手掛かりは戦いの中にある」――その言葉から推理して、恐らくこの反応こそがその手掛かりだと見て間違いはないのだろう。

 

「ここへ行けと言うのか」

 

 敵を倒すことで浮かび上がってきたのはレースの終着点であるゴールへの手掛かり――一連の流れはまるでありふれたロールプレイングゲームのようで、ガンプラバトルにおいては今までありそうでなかった要素だった。

 僕は残りのハイモックを撃破した後で、すぐにその反応の元へ向かうことを決めていた。

 しかし残り三機のハイモックを葬ったのは僕のガンプラではなく――Zガンダムに似たシルエットを持った、トリコロールカラーのガンプラによる砲撃の光だった。

 

「相当、作り込んでいる機体だが……」

《その声……ソウシさんか。普通のガンプラだったから気付きませんでした》

「……そういうお前は、コウサカ・ユウマ。エステバリスではないのか」

《とっておきは残しておこうと思って。そちらこそ、ニヒトじゃないですね》

「この機体はマークキュベレイ。ニヒトよりも汎用性に長けた実戦向きな機体だ」

《僕の機体はライトニングZガンダム。Zガンダムをベースにした、正統派のMSです》

 

 ライトニングZガンダム――こちらの元へ駆けつけてきたのは、コウサカ・ユウマの新機体だった。

 彼の愛機はかの「機動戦艦ナデシコ」に登場するロボットを改造したガンプラとナデプラの融合体だった筈だが……彼も僕と同じで、今は出し惜しみをしているのだろうか。

 尤も、彼の新しいガンプラはスーパーエステバリスの前座と言うには豪華すぎるガンプラであったが。

 

「ガンプラ同士、目が合った。戦う必要があるな」

《いや、今は御免こうむりたいですね。そちらも、レースの勝手がよくわかっていない内に消耗したくないでしょう?》

「同感だな」

《話が早くて助かります。ここは一時休戦して、しばらく僕と手を組むのはどうでしょう?》

「共闘か……僕も同じことを考えていた」

 

 フィールド上でガンプラ同士が出くわしたからと言って、必ずしも戦わなければならないという決まりはない。

 これは多人数参加型の勝負だ。状況によっては複数のファイターを一人で同時に相手をしなければならないこともあり、それを踏まえれば味方は一人でも多いに越したことはなく、彼ほどの実力者ならば尚更だった。

 共闘――その場合、最も警戒すべきなのは味方と思っていた者に後ろから撃たれることだが……恐らく、このコウサカ・ユウマに限ってはそんな手は使ってこないだろうと考えていた。

 根拠は今まで見てきた彼の人柄と……これまで培ってきたファイターとしての勘か。

 そして彼のガンプラであるライトニングZガンダムが今、こちらに対してあまりにも無防備な隙を晒しているということも根拠の一つだった。

 そう信じこませるのもまた彼の狙いなのかもしれないが……疑心暗鬼に浸ればキリが無い。リスクを引き受けた上で、僕は彼に至っては信じるに値すると思ったのだ。

 

「了解。こちらとしてはゴールの位置が判明するまで協力を頼みたい」

《こっちもそのつもりです。ではよろしくお願いします》

 

 端的に言うと、僕は彼のことを良きライバルとして気に入っていたのだ。共闘を受け入れることに、異存は無かった。

 

 

 ――こうして、僕ら二人のガンプラは目的地へと向かった。

 

 向かう先は、勿論レーダーの端に点滅しているNEXTと書かれた光だ。

 この反応はユウマの方からも同じものが見えているようで、彼もまた一定数のハイモックを撃ち落とした後でこうなったと言っていた。

 やはり、これはゴール地点への何らかの手掛かりと見るべきか。これ自体がゴール地点だという可能性も無くはないが、ゲームはまだ始まったばかりだ。良きにしろ悪しきにしろ、エンターテイメント性を重視するキンジョウ・ナガレという主催者がファイターに対して簡単すぎる条件を設けてくるとは考え難かった。

 

 

 道中、散発的に現れたNPC操作のハイモックを危なげなく撃ち落としながら、数分後に僕らのガンプラは目的地であるレーダーの反応地点へとたどり着いた。

 そして僕らはそこにある物をレーダーではなく、モニターから自らの目で確認した。

 

「この場所は……」

《これは……月のD.O.M.E(ドーム)!》

 

 「D.O.M.E」――正式名称「Depths Of Mind Elevating」。

 ガンダム作品においては「機動新世紀ガンダムX」の最終局面に登場した施設の名だ。

 かの強力兵器として名高いサテライトキャノンにマイクロウェーブを送信するシステムの制御もこの施設によって行われており、「ガンダムX」作中でも重要な役割を果たしていたものだ。

 しかし、その実態は一人のニュータイプの男を遺伝子レベルまで分解し、部品としてシステム化した恐るべき施設である。ファーストニュータイプと呼ばれている彼の能力はシステム化されてもなお健在であり、意識を持った上で他のニュータイプと通じ合ったり、フラッシュシステムを介してビットMSを起動したりと言った具合に「ガンダムX」作中での活躍の幅は大きかった。

 僕らがたどり着いたその場所は、まさにその「D.O.M.E」を再現した基地施設だったのだ。

 

《これは……ゴールの場所をD.O.M.Eに聞いてみろってことか?》

「……既に、先客が居るな」

《先を越されたか……ん? なんだあれは……!?》

 

 モニターに映る景色には既に、僕らよりも先にこの場所に到着していたファイター達のガンプラの姿が何機かあった。

 しかし彼らのガンプラは、見慣れぬシルエットを持った一機のガンプラと交戦している最中だった。

 そのことに気づいた僕はメインカメラのズーム機能によってモニターを拡大し、基地の状況を調べ――目を見開いた。

 ユウマもまた、同じことをしていたのだろう。彼の姿が映る通信回線からは、驚愕に染まった声が聴こえてきた。

 

《そんな馬鹿な……っ、あれは……あの機体は!》

 

 複数のガンプラと対峙しながら、なお圧倒している巨大なガンプラが一機。

 

 細身ながらも威圧的な風貌を持ち、紫色の装甲に覆われているガンプラはその巨体からは考えられないほど軽やかな動きで、群がるファイター達のガンプラを次々と蹴散らしていた。

 ファイター達のガンプラの爆発によって巻き上がっていく硝煙の中で怪しく光る二つの眼光は禍々しく、対峙する者全てに恐怖感を植え付けるものだった。

 それは間違いなく、MSでもMAでもなかった。 

 それはガンダム作品ですらなく、ガンダム作品に非ずともガンダム作品に劣らぬ知名度を誇り……放送以来、後の爆発的アニメブームを引き起こし、後世のロボットアニメに多大な影響を及ぼしていった怪物的な作品に登場する機体だった。

 僕の人生の起点となった「蒼穹のファフナー」も、コウサカ・ユウマの未来を導いたという「機動戦艦ナデシコ」の制作にもまた、かの作品の影響が含まれていたという噂もある。

 

 故に、僕らはその機体の名前を知っていた。

 

「エヴァンゲリオンだと……!!」

 

 ――作品の名は「新世紀エヴァンゲリオン」、機体の名はEVA初号機。

 

 モニターに映っているあの機体は、ファーストガンダムよりも先に生まれた世界初のPG(パーフェクトグレード)モデルであった。

 

 先客のファイター達を全滅させた紫の巨人は、戦慄する僕らに対しておぞましい咆哮を上げた。

 

 

 ――それが、一つ目の関門だった。

 

 

《そう言えば、ファフナー序盤のノリってエヴァのパクr……》

「そこから先を言ってみろ。コクピットから叩き出すぞ……!」

《すみませんでした》

 

 ――君は知るだろう。ガンプラバトルも人生にも、人の価値観(コンプレックス)は付きまとう。

 

 それが世界の変わらぬ問いかけであり、答えは僕らの戦い――そのものなのだという事を。

 





 ポエム万能説。
 KTBKの刺客には四天王の他にもラルさん他前作の大物ファイターも何人か紛れ込んでいるので、学生達には笑えない難易度になっていたり。
 次回は再びユウマもといUMA視点です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。