ブラックサレナを使って、合法ロリと結婚する為にガンプラバトルをする男   作:GT(EW版)

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逆襲のメイジンとガンプラの自由

 

 メイジン・カワグチ――言わずと知れた、現役最強のビルドファイターだ。彼が残してきた戦いの伝説は数多く、僕達は幼少時代からその戦いに魅了され、心を奪われてきた。

 

 そんな彼がこの日、アクシズ落としの首謀者として僕達の前に立ち塞がったのだ。

 

 その絶望感と来たら、僕達はこんなムリゲーを持ち込んだ大会の運営を呪うしかなかった。

 

《メイジン! 我々にガンプラの楽しさを教えてくれた貴方が、何故地球潰しを!?》

《スーパーロボットをガンプラバトルに持ち込む連中は、バトルの秩序を乱すだけの、ロマンに魂を縛られた者達だ! ガンプラバトルはビルダーのエゴ全部を飲み込めはしない!》

《ビルダーの知恵は、そんなものだって乗り越えられる!》

《ならば、今すぐオタクども全てにオリジナリティーを授けてみせろ!!》

 

 メイジンのレッドウォーリアが登場するや否や、真っ先にキジマのジーベックガンダムが彼を相手取り、熱い逆シャアロール合戦を行った。

 そして始まる、三代目メイジン対四代目メイジン候補の戦い。

 キジマとしては自分の目標でもある相手が目の前に現れたことで戦闘意欲が抑えられなかったらしく、僕達の加勢を拒むように二人の世界へと没入していた。

 

 片や、メイジン相手なら出し惜しみ出来ないと初っ端からトランザムを発動し、超高速戦闘を仕掛けるキジマ。

 片や、そんなトランザムジーベックを相手に素の機体性能だけで互角に打ち合うアメイジングレッドウォーリア。

 

 ……いや、メイジンはあれと戦ってすらまだ余力を残していると言った様子だ。世界最強の実力……その壁は、キジマの実力を持ってしても遠く先にあるのかもしれない。

 苛烈極まる二人の超次元戦闘はその余波だけで周りのハイモックやファイター達の機体を爆散したり結晶体にしたりしていて、この僕ですら援護に入ることが出来なかった。

 

《キジマがメイジンを食い止めている間に手を打つぞ》

 

 しかしいち早く冷静な思考を取り戻したシャクヤクのソウシが、全回線を開いてこの場に居る全てのファイター達に伝令を与えた。

 いわく、シャクヤクをアクシズ内に侵入させ、内部から破砕手段を探るとのことだ。確かにアクシズには戦艦を侵入させるスペースなど幾らでもあり、それもあの大きさなら敵の防衛網さえ抜ければ入り込むことは簡単だろう。敵の大きさは最大の武器であると同時に弱点でもある、ということか。

 しかし侵入した後は具体的にどうするつもりだ? とソウシに訊ねてみると、彼は「内部でニヒトのフェンリルを使う」とか言い出した。

「出た! ソウシさんの間違った消耗戦だ!」とどこからか声が上がったが、つくづくあの人の愛機への厳しさはぶれない。って言うかニヒト、キュベレイから乗り換えてシャクヤクに積み込んでたのね。

 

 彼の言う「フェンリル」とは要するにすっごい自爆装置みたいなもので、選手権でも猛威を振るったあの威力なら、爆破ポイントさえ選べば上手く破砕することが出来るかもしれない。

 実際これまで結果を出してきたソウシだからか、周りのファイター達の反応も悪くなかった。彼らは頼まれるまでもなく自ら進んでシャクヤクを守ろうと動いてくれて、それを見れば僕も協力しないわけにはいかなかった。

 しかし、なまじっか敵の数が多くアクシズの防衛網は強固だ。シャクヤクのディストーションフィールドもまた強力な防御装置だが、ハイモック達の武装はまるで最初からナデシコ級と相対することが前提だったようにどいつもこいつもが実弾兵器ばかりを装備しており、非常にやりづらい。

 懸命に敵の数を減らしていく僕達だが、これではアクシズの落下どころかメイジンを相手にするキジマの限界にすら間に合わないのではないか――そんな不安が僕達を襲い始めた、その時だった。

 

 辺りまばらに点滅していくボソン反応と共に、強力な援軍が次々と現れたのだ。

 

《ジーグビーム!》

 

 先鋒は、磁石の力を持つ小型MS。

 そのツインアイから放たれたビームがハイモック達を数機纏めて串刺しにするように撃ち落としていくと、今度はその横から、尋常じゃない速さの戦闘機が三機の編隊で躍り出てきた。

 

《こちらスカル小隊! 援護します!》

 

 戦闘機――からMSに変形した三機が戦場に現れると、彼らはそれぞれ卓越したコンビネーションで敵のハイモック部隊を一機ずつハイペースに蹴散らしていく。

 あの連中は確か、私立バルキリー学園のチーム「頭蓋骨」だったか。選手権ではメンバーの一人が不慮の事故の為に入院したせいで勝ち上がれなかったみたいだが、三人のメンバーが揃った彼ら本来の実力は優勝候補にもなる強力なチームだ。これが頼もしくないわけがない。

 さらにそこへ、アクシズ破砕には願っても無いスーパーロボット軍団まで押し寄せてきた。

 

《バスタービィィィィーームッ!!》

《ミサイル全弾ぶち込め! グレンキャノンもだ! いけぇ!》

 

 特にどう見ても神様にしか見えないザクバスターとジムグレンキャノン。恐らく単純な火力ならここに居る全ガンプラの中でもぶっちぎりのトップだろう。その分燃費が悪すぎてプラフスキー粒子が一瞬で切れてしまうのが弱点だけど、稼働している間の鬼神の如き活躍には手が付けられそうになかった。

 

《待たせたなユウマ! 真打ち登場や!》

 

 そしてそこに加わる、サカイ・ミナトの新しいスーパーロボット。

 あらゆる脅威から人類を守る為に新生したファイティングメカノイド――その名は最強機動トラファイオン。正式名称は最強機動ファイティングトライオン。三機のサポートメカと合体することで生まれたトライオンとは違い、こちらはサカイ単独での運用を前提とした完全な一人乗り仕様だ。その分単純なパワーはトライオンより少し劣化しているかもしれないが、機体の安定性やコストパフォーマンスは遥かに向上している。

 見た目の違いは胸のライオンのところが灰色の鳥のくちばしみたいのに変わっている程度の違いで本来はトライオンとあんまり変わらない――らしいが、何故かこの時その機体は緑色に輝いていた。

 

《トラファイオンの、エヴォリュアル・ミノフスキーパワーを見せてやるぜ!》

 

 既にMAXハイテンションに出来上がっていたサカイが叫ぶとトラファイオンの右手が握るハイパービームサーベルの刀身にどこからともなく集まってきた光が注ぎ込まれ、機体全長を遥かに上回る超巨大ビームサーベルが形成されていく。

 そしてそのビームの光が、緑から金色に変化していくトラファイオンの装甲と同じように金色に輝いていった。なにそれ怖い。

 

《究極超咆剣! ゴルディオン・ミノフスキィィィ!!》

 

 ちょっ、お前っ……お前の方が越えちゃいけないライン踏み越えているじゃないか!

 そんな僕の突っ込みも間に合わず、トラファイオンの振り下ろした金色のサーベルがハイモック達を纏めてGの字に切り裂き、次々と光にしていった。

 

《今だ! J(ジュン)

《よくやったトラファイオン!》

 

 その攻撃の直後、僕達の前に再びボソンジャンプの反応が現れ、一機のMAが新たに出現した。

 それはまるで、戦艦と見間違うほどの巨大なMAだった。全体が白い装甲に覆われているその機体の名前は、後で「J(ジュン)アーク」と呼ぶことを知った。おい。

 

《メガ・フュージョン!》

 

 Jアークのファイター、ビルダートJ(その正体は謎に包まれている)が高らかにそう唱えると、戦艦のようなMAが分離、合体を行い、MS形態へと変形していく。

 

《キング! ジュンダァァァァッ!!》

 

 無駄に壮大なプラフスキー粒子のエフェクトを周囲に散りばめながら、イノセ・ジュンヤ最強のガンプラが姿を現した。あっ、本名書いちゃった。まあいっか。

 

我流次元覇王流鳳凰拳(ジュンクフォース)!!》

 

 そしてキングジュンダ―というビルダートJのガンプラが、その右腕からセカイやライトニングZの火の鳥アタックに似た――似たって言うよりモノホン感があるが――火の鳥を模した必殺武器、「ジュンクフォース」を放った。

 ……あの威力で遠隔操作も出来るとかもうね。案の定火の鳥がキングジュンダーのところへ帰ってきた頃には目の前の敵はほとんど居なくなっていた。

 これまでに火力の凄まじいスーパーロボットは幾つも出てきたが、こいつに関してはベースにした機体が選手権なら出撃制限の掛かるサイコガンダムを基にしているからか純粋な粒子貯蔵量が通常のガンプラより多く、その為他のスーパーロボット達よりも燃費が良いのがセコイところだった。

 しかしコイツら、サカイの話によれば木星エリアに居たようだがどうやってここへ来たのか。いや、ボソンジャンプを使ったのだということはさっきの反応からわかる。しかし彼らの機体にはそんなシステムは組み込まれていない筈だし、仮に組み込まれていたとしてもどうしてイメージの薄い初めて訪れるこの場所に揃って跳躍することが出来たのかが、僕には解せなかった。

 そんな僕が抱いた尤もな疑問に、サカイの奴がウザいどや顔を見せて答えた。

 

《知らないのか? 木星にはプラフスキー粒子版のザ・パワーがあるんだぜ?》

 

 知りたくもなかった衝撃の新事実である。KTBKこの野郎。

 木星エリアからスタートした彼らは、そこで起こった大きなイベントによって特殊なエネルギーを手に入れたのだそうだ。あまりにもあんまりな説明の仕方だったが、それだけで把握出来てしまう自分がなんか嫌だ。まあ木星は神秘の領域だからね、SF的に考えて。KTBKが何も起こさないわけがないか。

 尤もそのプラフスキー粒子版ザ・パワーとやらは木星エリアでの戦いで消失したらしいが、全部使い切る寸前のところでこれまたイベントで手に入れた「チューリップクリスタル」を使い、ザ・パワー強化のボソンジャンプによってここへ飛んでいたとのことだ。……なんだろう、木星で何があったのか凄い気になるんだけど。

 しかしここに来て、彼ら最強勇者バカ軍団の存在は願ってもない戦力だ。思わぬ事態の好転に、今度はシャクヤクのソウシから作戦の変更を告げる声が聴こえてきた。

 

《スーパーロボット隊の合流により、方針を変更します。各スーパーロボット隊はアクシズに最大火力を集中し、リアルロボット隊は彼らの支援を》

《なんだと?》

 

 シャクヤク先行によるニヒトの自爆ではなく、今しがた合流したスーパーロボット達の大火力に任せたゴリ押し作戦への変更。

 それは一見脳筋な指令にも思えるだろうが、確かにこれだけの戦力が居るのなら一番効率が良く確実性が高いかもしれないと僕も思った。

 しかしいかにスーパーロボットと言えど、この作戦には避けては通れない問題がある。それに対して、僕がソウシに問い掛けるよりも先に、スーパーロボットビルダーの一人である戦闘のプロっぽい人が回線を開いて訊ねた。

 

《しかし戦術指揮官殿、ぶっ放すのは構わんが、俺達の機体は一発撃ったらすぐにエネルギー切れになるぞ?》

 

 そう、彼らスーパーロボットはいずれも通常のガンプラを遥かに上回る大火力を持っているが、共通して燃費が悪いという致命的な弱点がある。

 彼らの火力を一点に集中すれば、アクシズを外から削ることも出来るだろう。しかし彼らが完全にアクシズを砕き切るよりも早く、機体のプラフスキー粒子が底をついてしまうのは火を見るよりも明らかだった。

 しかしそこは同じスーパーロボットビルダーのソウシだ。そういった懸念事項には、きっちりとカバー案を用意していた。

 

《このシャクヤクには、ガンプラに粒子を供給する補給機能があります》

 

 シャクヤク万能説、ここに誕生である。

 しかしそれもその筈、機体の補給も出来ずして何が戦艦かというところだろう。そしてその機能はシャクヤクだけに搭載されているわけではなく、この戦場に居る他の戦艦所有者達からも声が上がってきた。

 

《俺のサラミスにもあるぞ》

《俺のムサイにもな。どうやらそれは、ここで手に入れた戦艦ユニットには標準装備されている機能みたいだ》

 

 それは、まるでこの戦いのバランス調整の為に運営側が用意したとしたとしか思えない、ナイスな機能だった。そうだよな、あんなに苦労してエヴァを倒したんだから、このぐらいのサービスはあって当然というものだ。

 この戦場で僕達大会出場者が保有している戦艦は、ソウシのシャクヤクとさっき出てきたサラミスとムサイの三隻だ。これらの補給機能を上手く使っていけば、スーパーロボットのエネルギー問題は何とかなるかもしれないと意見が一致する。

 しかしこうしている間にもアクシズの落下は刻一刻と近づいている。既に迷っている時間は無かった。

 

《なら、戦艦を所有している者はエネルギー切れした機体の回収に専念し、迅速な補給をお願い致します。スーパーロボット隊は戦闘継続が困難になり次第、付近の戦艦へ着艦してください》

《補給が終わるまでの時間は、どのくらい掛かる?》

《五分もあれば》

《よし、乗ったぜその話! ブレスト・ファイヤー!》

《なら躊躇は要らないな。サンダー・ブレーク!》

《何をしているセイバー! アックス! ボルテッカだ!!》

《ボルテッカだと? 気は確かかランス! 相手はアクシズだぞ? 第一俺達の機体はスーパーロボットどころかロボットですらないぞ、原作的に考えて!》

《馬鹿! わからんのか! ガンプラを改造し、愛情を注ぎ込めば俺達も立派なガンプラなのだ! 地球を死の星に変えてたまるか! 宇宙の騎士(テッカマン)をなめるなよっ!》

 

 方針は決定した。後はやるだけだ。

 元々アクシズという巨大なターゲットを前に、スーパーロボットビルダー達は揃いも揃って自慢の火力を試したくてウズウズしていた様子だ。ソウシの指令に異議を唱える人間は居らず、みんなノリノリウッキウキで戦略兵器をぶっ放していた。

 

《全軍に通達! 直ちにここの指揮は僕が取る。これより全大会出場者が友軍となり、シャクヤク、ムサイ、サラミスの三隻が諸君らの母艦となる!》

 

 話がまとまったことで、ソウシが有無も言わせない勢いでこの場の指揮を買って出る。

 本来敵同士である僕達は、誰もが後ろから撃たれても文句を言えない関係にある。しかしこうして暫定的にでもリーダーが決まったことにより、僕達は今アクシズという共通の大敵に立ち向かう一つの軍隊となったのだ。

 

 いいよね、こういうのは。敵に回すととことん恐ろしい連中が、今は物凄く頼もしい。メイジンという恐るべき敵が居る中でも、この連中との結束があれば勝てるかもしれない希望が湧いてきた。

 

《意外に強引なのね、あの人》

《今度、私のチームでも真似してみようかしら》

 

 しかし、ソウシも見た目以上にリーダーシップのある男だ。クールな印象とは違う意外な一面にフミちゃんも驚いていたが、彼が指揮を行うことに異存はない様子だった。

 もちろん、僕も同じだ。

 

《各MS隊はスーパーロボットと母艦の支援に当たれ! これより、総数67機によるアクシズ破砕作戦を開始する!》

《了解!!》

 

 そんな感じに、僕達はノリの良い皆さんと一緒に作戦行動に入る。

 僕達リアルロボットのファイターに与えられた役割はスーパーロボット達がアクシズに大火力を叩き込んでいる間、隙だらけの体勢でいる彼らを敵機から守ることにある。

 スーパーロボット達を取り囲もうとするNPCハイモック部隊を迎撃しながら、僕は彼らの破砕作業をスクリーンの横目に映した。

 

《ストナァァァァ! サァァァン! シャアアイィィィィンッッ!!》

《マッハドリルもだ! 続けていくぜ! スピンストーム!!》

 

 大きな星がついたり消えたりするように、アクシズの表面にどでかい爆発が次々と連鎖していく。

 うっかり直視しすぎるとモニター全面が光に飲み込まれてしまう、恐ろしい必殺兵器の数々だった。

 僕の扱う機体はどれもリアルロボット寄りだけど、その光景を見れば彼らがスーパーロボットに拘る理由も物凄くわかる気がした。

 

《反応弾は木星で撃ち尽くした……》

《なら、俺達も援護に専念するぞ! 艦とスーパーロボットを守れ! 一機たりとも接近を許すな!》

《了解ッ!》

 

 リアルロボットと、リアルロボット寄りの部隊が持ち前の機動性と継戦能力を生かし、エネルギーを使い果たしたスーパーロボットとそれを収容する戦艦を守るべく厳重な防衛網を敷く。自分達の役割がはっきりしている以上、その対応は迅速かつ冷静だった。

 

《ゴルディオン・ミノフスキィィィ!!》

《十連メガ粒子砲、発射ァッ!!》

 

 スーパーロボットに区分されるサカイのトラファイオンとビルダートJのキングジュンダ―もまた続けざまに超兵器を繰り出し、襲い来るハイモック部隊ごとアクシズの外壁を撃ち抜いていく。

 この戦場では、間違いなく彼らが主役になるだろう。しかし、僕達リアルロボットの活躍が無くては彼らの躍動もまたあり得なかった。

 

《スパロボ共に負けるな! 俺達も続くぞ!》

《ガンプラバトルは……ガンプラのもんだあああっ!!》

 

 もちろん、リアルロボットの一部にもサテライトキャノンやツインバスターライフルと言った戦略兵器級の威力を誇る武器が積み込まれている。いかんせん目標物が大きいがそんな彼らの火力も決して無駄でなく、アクシズの進行を大きく阻害していた。

 

《こちらザクバスター、着艦します!》

《あいよ! はは、サイズ差がリアルだったら収容できなかったな……》

《この機体は、ザクをベースにしているから小さいんですよね》

《俺のグレンキャノンもだ!》

《お前のはどう見てもジムだろうが》

 

 大技を叩き込み、エネルギーを使い切ったスーパーロボット達がそれぞれ待機中の母艦に着艦し、戦艦の持つ「補給機能」によって粒子供給を受けた後、約五分後に再び戦場へ舞い戻り、大技を叩き込んでいく。それは単純だが極めて強力な、スーパーロボットが持つ大火力のループ戦術だった。

 

《私達も負けていられません!》

《リアルモードで殲滅するわ!》

 

 スーパーロボット達が戦艦に収められている間、敵軍の足止め以上の活躍を見せていたのはフミちゃんやギャン子達の実力派ファイターだ。もちろん、僕だって負けちゃいない。邪魔なハイモックを片付けながら、隙を見てアクシズへの攻撃に加わっていく。

 

 そんな攻勢を繰り返すこと数十分。気づけば、アクシズの外装は元のサイズから半分近くまで抉れていた。

 

《すげぇ……アクシズがどんどん砕かれていく……》

《これがスーパーロボットの力……いや、僕達の結束が生んだ威力か》

《その通り!》

《カリマ?》

 

 さらに事態は好転し、混沌の戦場に遅れて増援が駆けつけてくる。

 中でも目を引いたのはソウシと同じチームのメンバー、カリマ・ケイのジ・Oマークレゾンの姿だった。

 

《カリマ・ケイ、デスぺナからやっと帰ってきたぜ!》

《……レゾンに乗ったのか》

《お披露目予定のMA、アワクネに壊されちまってな。まあこの戦況なら、こっちのが使えるだろ!》

 

 スーパーロボットはその火力にばかり目が引かれるが、カリマのスーパーロボットが持つ「イージス装備」は戦艦や味方機を守るにはこれ以上ないほど役立つ防衛システムだ。

 選手権の決勝戦でも散々僕達を苦しめてきた彼のサポート能力は、ここに来て僕達のピンチを悉く救ってくれた。

 

《アクシズの破砕状況、50%に到達!》

《いいぞ! 勝てる……勝てるぞ!》

 

 破砕状況をこまめにチェックしてくれたシキ三兄弟の誰かの声に、多くのファイター達が喜色を込めて歓声を上げる。

 地道だがド派手な僕達の破砕作業により、アクシズの大きさは元の半分にまで削られた。これだけやってアクシズの軌道が変わらないのはゲーム上の仕様なのかもしれないが、その進行ペースもまた間違いなく緩んでいた。

 これならば勝てる。地球に衝突する前に、アクシズを砕き切ることが出来ると……しかし、作戦の成功が見え始めたその時だった。

 

《スーパーロボット共め……これ以上はやらせん!》

《メ、メイジン!?》

 

 それまでキジマのジーベックガンダムが食い止めてくれたアメイジングレッドウォーリアが、通常の三倍の速さで戦線に復帰してきた。

 これだけの時間を食い止めてくれただけでも充分すぎるが、あのキジマを持ってしてもメイジンの機体には傷一つ付いていなかった。

 恐ろしい化け物。恐ろしい彗星である。

 

《くっ……ここにきて……!》

《そう、貴方達を待つ未来は既に、絶望だけなのよ》

《レディーさん!?》

 

 そして、戦場に加わったのはメイジンだけではない。

 レディーカワグチを始めとしてそんな感じに、ハイモックの軍勢に全滅が見えた頃になってこの時を待っていたように次々と世界ランクのガンプラファイターが現れたのだ。

 

《ガンプラバトルをするには条件がある。一つは、全てのスーパーロボットを排除すること。そしてもう一つは、今一度原点に立ち返ることだ!》

《ウイングガンダム……フェニーチェだと……!?》

《アクシズを落とす! これ以外、ガンプラバトルの秩序を取り戻す方法は無い!》

 

 それは、オッドアイのツインアイを闇に輝かせながら現れるリカルド・フェリーニさんのウイングガンダムフェニーチェ(復刻版)であったり。

 

《うああああっ!?》

《柿崎ぃぃぃぃぃぃぃ!!》

《っ……サテライトキャノンやと……? つうことは……木星から追ってきたのか!》

《うちらの世界に栄光あれ、やミナト君。魔王と勇者の第二ラウンドといきましょうか》

 

 ノーチャージで放つサテライトキャノンの薙ぎ払いでリアルロボット隊に甚大なダメージを与えて参上する、ヤサカ・マオさんのガンダムX魔王(復刻版)であったり。

 

《ビルダートJと言いましたか。アシムレイトの力をガンプラに取り込んだ未知の技術、僕にもう一度見せていただけませんか?》

《戦国アストレイ……フッ、ここが戦士の死に場所か》

 

 そしてプラフスキー粒子のエキスパートであり、ガンプラ業界最高の天才科学者、ヤジマ・ニルスさんの戦国アストレイ(復刻版)であったりと。

 彼らが皆それぞれの旧愛機を使っていたのは、僕達に対するせめてものハンディのつもりだったのだろう。しかし残念ながら、それでも個々の力では僕達は彼らに勝てる気がしなかった。

 

 この時、これまでハイモック軍団&アクシズ対スパロボ&リアルロボ連合となっていた戦いの構図は、世界最強ビルドファイターズ対スパロボ&リアルロボ連合の戦いへと移り変わった。

 敵の数に対して質で圧倒していたのが、さっきまでの僕達だ。しかしこの時から、質の面でさえ圧倒的に敵の側に傾いてしまった。

 そして何よりの問題だったのは世界最強のメイジン・カワグチその人に、他の誰よりも容赦が無かったことだ。

 

《うわああああああっ!?》

《うぎゃあああああっ!?》

《ひいいいいいいいっ!?》

 

 紅の彗星、メイジン・カワグチがものっそい速さで擦れ違うと、本作戦の要であるスーパーロボット達を次々と真っ二つに切り裂いていく。

 そして彼はそのスピードを緩めることなく、こちらの旗艦シャクヤクに向かって一気に轟沈せんと突っ込んできた。真っ先に頭を潰そうとするその行動には、彼のアクシズ落としに掛ける本気さが窺えた。

 このライトニングZガンダムは、WWバリスほどではないが高い機動性を持っている。そこに彼を足止め出来る可能性を見出した僕は、無理は承知の上でシャクヤクを守るべく彼に挑んだ。

 以下がその時僕が行ったメイジンとの会話のやりとりである。

 

「コウサカ・ユウマか。スーパーロボットを操るファイターなどは、ガンプラバトルの異分子だということが何故わからんのだ! アドウ・サガに負ける前の純粋さを、存分に思い出せ!」

「僕は今でも純粋だ!」

「どこが!? 今の君こそ、その技術を無駄に消耗しているとなんで気がつかん!」

「貴方こそッ!」

 

 接近し、衝突していく激しい鍔迫り合いの中で、僕は少しだけ手ごたえを感じていた。

 合宿の時、彼に指導してもらった時は彼の影すら追えなかったものだが、僕も幾度とない戦いの中で間違いなく成長していた。メイジンと相対する中で、自分で自分が強くなったのが身体全体からわかるようだった。

 

 しかしそれでも、やっぱり本気を出したメイジンは僕の遥か先に行っていた。

 

 メイジンに食らいつこうとした僕の操縦の無茶が祟り、ライトニングZの関節部を甚大な負荷が襲う。そして消耗しすぎたエネルギーは機体性能の著しい低下にもつながり、逆シャアのサザビーの如くビームサーベルのパワーダウンを起こしてしまった。

 そうなればもはや足止めすら満足に出来ず、動きの鈍った僕のライトニングZの四肢をメイジンが達磨状態に切り裂き、一気に戦闘不能へと追い込まれた。

 すぐにとどめを刺そうとしなかったのは、彼なりの慈悲だったのかもしれない。

 

《私の勝ちだな! 今計算してみたが、アクシズはこのまま地球の重力に引かれて落ちる! スパロボビルダーの頑張りすぎだ!》

 

 あの……ロールプレイだよねメイジン? 本気でスーパーロボット憎んでいるわけじゃないよね? と疑ってしまうほど、彼の勝ち誇った台詞には鬼気が迫っていた。

 もちろん、それでも立ち向かう人も居た。

 

《ふざけるな! たかが石ころ一つ、鋼鉄ジーグで押し出してやる!》

《させん!》

《おっと、やられちまったぜ》

 

 残ったスーパーロボット達が枯渇寸前の粒子を押してまでアクシズに打って出ようとするが、レッドウォーリアの精密な射撃がそれを阻む。

 これまで上手く行っていた作戦はメイジン達の登場により台無しにされ、アクシズの進行スピードも元のペースを取り戻してしまった。

 このままではアクシズを砕くどころか、こちらの機体が全滅してしまう恐れすらあった。各所からスーパーロボットファイター達の断末魔が聴こえる度に、僕達の心を絶望が襲った。

 

《マズいぞ! スーパーロボットが次々とやられてる……!》

《こちらムサイ! 救援を! 救援をっ! うあああああああ!?》

 

 フェニーチェのバスターライフルがムサイを貫き、魔王のサテライトキャノンがサラミスを消し飛ばす。

 戦艦が墜ちれば艦内で補給を受けていたスーパーロボット達諸共、このバトルフィールドから弾き出されてしまい、一気に戦力が減っていく。

 

 そして気づけば、残る母艦はシャクヤク一隻だけとなっていた。そして戦場に出ている数少ないスーパーロボット達は皆リカルドさんやヤサカさん達の相手に手が一杯で、アクシズに向かうことが出来る機体は先ほどの磁力ロボットがバンバラバラにされたことで0機となった。

 

《もうだめだ……》

 

 どこからか、諦めの入ったそんな声が上がったのも無理もないだろう。

 どう見てもこの戦いに勝ち目は残されておらず、僕もまた戦闘能力を失ったライトニングZのメインカメラから地球が無くなるのを黙って見ていることしか出来なかった。

 

《……戦場に残った全機体に告げる。ただちにシャクヤクと共に、この宙域を撤退しろ》

《撤退だと!?》

 

 そして、暫定指揮官であるソウシもまた、作戦の成功を諦めたような撤退の指示を下した。

 ここまで来て……と当然のように異議を唱える声が上がる。気持ちとしては僕も同じだった。

 たとえガンプラバトルというゲームの中でも、地球を破壊されるわけにはいかない。この際ライトニングZを自爆させて、少しでもアクシズを止められれば……という思いで僕が操縦桿を握り直した、その時だった。

 

《カリマ、艦を頼む》

《おい、ソウシ!》

 

 シャクヤクの中から、唯一万全な状態のスーパーロボットであるキュベレイMark-Nichit(ニヒト)の姿が射出されていく。

 満を持しての出撃、と言ったところか。ソウシにそんな気は無かったのだろうが、最後の希望とばかりに艦を飛び出していった彼のガンプラは最高にカッコ良く見えた。

 

 しかし、いかにニヒトと言えど、一機の力だけではあのアクシズを砕き切ることは出来ない。

 

 ならばどうするのか――僕はすぐに察した。ソウシはこの時、自分が最初に考えた策を実行しようとしていたのだ。

 

《内部に突入し、フェンリルを起動する!》

 

 そう言って、ソウシのニヒトはスタビライザーをオレンジ色に輝かせながら全速力でアクシズに向かっていく。あれは機体の全リミッターを解除し、玉砕を覚悟した姿だ。

 猛スピードでアクシズの内部に侵入していくニヒトに、僕は彼の本気を見る。

 しかしメイジンのレッドウォーリアもまたそんな彼の動向を放っておく筈もなく、彼は他の機体には目もくれずにニヒトを追ってアクシズの内部へと飛び込んでいった。

 

 戦場の舞台をアクシズの内部に移した二人はその場で最後の決戦を繰り広げる――のだが、当然ながら達磨状態のライトニングZでは彼らの機体を追い掛けることが出来ず、悔しながら僕には彼らの戦いを見守ることすら出来なかった。

 

 しかしソウシが切り忘れたのか、僕との通信回線は開いたままだったので、戦闘中の二人の会話は全てコクピットの中で聞き取ることが出来た。

 以下が、その会話の内容だ。

 

《最後の手段が自爆とはな! 選手権での戦いもそうだったが、君は何故そこまで自分の機体を粗末に扱う?》

《粗末か……そう見えても仕方ないが、僕は一度としてそんな扱いをしたつもりはない》

《なに?》

《僕らスーパーロボットビルダーはいつ如何なる時も過酷な道を選び、決して後悔はしない。それは自分が信じた道の過酷さこそを望んでいるからだ。たとえそれが邪道であったとしても、僕らは目指す。自分自身で選んだガンプラ道、あなたの言うガンプラの自由を!》

《自由と言う言葉を履き違えるな! モラル無き力はただの暴走と変わらん! 決められたルールの中で思考錯誤を重ねて高みを目指す、自由とはそういうものの筈だ!》

《僕達は決してルール違反を犯していない! スーパーロボットも、新たな世代が見出したガンプラの可能性の一部の筈だ! 今ここにあるガンプラバトルを信じてください!》

《若いな少年! だが、私は……》

 

 ごめんソウシ、聞き取ることは出来たんだけど、ちょっと何言ってるのかわからないや。あれだ、ガンダムシリーズ特有の論点がわからなくなる会話である。

 しかしそんな言い回しでも彼の意図はメイジンに伝わったらしく、メイジンは少々間を置いた後でこう言った。

 

《……私はガンプラバトルにおいて、ガンプラの自由さ以上に大切だと思っていることがある》

 

 彼は逆シャアロールをやめると、神妙な口調で語り出した。

 その言葉はメイジン・カワグチとしてと言うよりも、一人のガンプラファンであるユウキ・タツヤとしての言葉のように僕には聴こえた。

 

《互いのファイターを称え合い、互いのガンプラに敬意と愛情を捧げることだ。自分と相手の扱う機体がどのような成り形、性能であったとしても全てを愛し、認めていく心……ガンプラバトルは、決して勝利だけが全てではないのだ。キジマ・ウィルフリッドとも行った問答だが、あえて君にも聞こう。

 君は今、君自身が扱っているその機体をどう思っている?》

《もう一人の僕自身だと思っています》

《……ならば、これからは自分自身のことも、ガンプラのことも大切にするといい。愛故の虐待ほど、性質の悪いものは無いからな》

 

 それはどこか、ソウシ以外の誰かにも向けているような言葉に聴こえて、僕の心にも深く染み渡っていく言葉だった。

 もしかしたら彼は、メイジンは僕達にガンプラへの情熱を試したかったのかもしれない。しんみりとした空気の中で、僕はそんな気がした。

 

《君達は純粋すぎる。ガンプラに限界が無いことを、自分達の発想だけで知りすぎてしまった……しかし、そうでなければガンプラバトルを楽しむ資格も無いということか》

 

 そしてメイジンは、いつものメイジンに戻る。

 

《ならば私は、あえて言おう!》

 

 通信回線越しに聴こえてくる、ガンプラの駆動音。

 それは彼のレッドウォーリアがソウシのニヒトを突き飛ばし、メイジンの機体が自らアクシズの重要機関へと飛び込んでいく音だった。

 

《ガンプラは――――自由だッ!!》

 

 全チャンネルを解放し、メイジンが声高らかに叫ぶ。

 その直後だった。

 

《世界の舞台でまた会おう! 若き星たちよッ!!》

 

 アクシズの内部から全体へと亀裂が走り、轟音と共に大爆発が巻き起こる。

 

《メイジーーン!!》

 

 爆発に吹き飛ばされながらアクシズを脱出するニヒトの中で、ソウシが光の中に消えていったであろうレッドウォーリアの姿に叫ぶ。

 今、この時――世界の全てのガンプラを愛する最強最高のガンプラビルダーはアクシズに散ったのだ。

 

 冷静に考えると酷いマッチポンプなんだけど、そんなの関係ねぇ。僕も思わず彼の名を叫んでいた。

 

《アクシズが……崩壊していく……》

《これで、終わりか……》

 

 ソウシのニヒトに代わって弾けていったメイジンの特攻によって、アクシズは粉々に砕け散っていく。

 地球は救われたのだ。リカルドさん達もいつの間にか姿をくらましており、これでようやく長い戦いは終わったのだと皆が胸を撫で下ろしていた。

 

 ――だが、最後の最後で満身創痍の僕達を事件が襲った。

 

《これは……!》

《どうした、シキの末っ子》

《次男です……いや、そんなことよりも大変だ!》

 

 破砕状況をチェックしていた解析班のシキが、砕かれた筈のアクシズを見て驚愕の声を上げる。

 メイジンの特攻によって完全に破壊されたと思っていたアクシズだが――未だ、地球に降り注ぐ脅威は去っていなかったのだ。

 

《砕かれた破片の一部が、尚も地球に向かって降下中! それも……大きいのが三つ!》

《何だと!?》

 

 爆風に隠れて見えなかったアクシズの破片の一部が、物凄い速さで地球の引力に引かれて落下している。

 その破片は三つとも元のサイズから考えればかなり縮んでいるが、それでも一つでも地球に落ちればどれほどの被害をもたらすかわからない大きさだった。

 僕のライトニングZは動けない。アクシズの爆発に巻き込まれた、ソウシのニヒトも同じだ。

 他のMS隊も新艦長カリマのシャクヤクと共に急いでアクシズの破片へと向かっているが、既に破片は大気圏突入の段階を迎えていた。

 

《ヒイロー!! はやく来てくれー!!》

 

 間に合わない……苦々しい思いでそう叫んだ誰かの言葉は、まさに僕の心境と同じだった。

 こんな時、ガンダム作品の主人公ならなんとか出来るのかもしれない。しかし僕達には、そんな奇跡を起こす力は無い。

 

 ――しかし奇跡は無くても、必然は起こる。

 

 それを証明するように、落下していく破片の元へ複数の機影が集まっていくのをレーダーに確認した。

 

《こわします》

 

 そして数秒後、感覚の短いボソン反応と同時に現れた一機のMS――アワクネ・ユリちゃんの扱う白いガンプラが破片の一つを微塵に斬り刻み、跡形も残さず消滅させていった。その剣技は遠目であった為によく見えなかったが、通信で聴こえてきた一言から彼女がやってくれたことだけははっきりとわかった。

 はっと息を呑む僕達。しかしアクシズの破片は後二つ残っており、そちらも既に大気圏に突入していた。

 

《神樹ガンプラ流! 鳳凰覇王拳っっ!!》

 

 だが、救世主は地球にも待ち構えていたのだ。

 残りの破片の一つを、大気圏内から現れたガンプラ――セカイのカミキバーニングが放った火の鳥が焼き払い、豪快に消し飛ばす。……まったく、やっぱり美味しいところを持っていくなアイツは。出来ればもっと早く来てほしかったが、この際贅沢は言えない。

 

 そして残る破片は一つ……だったが、こちらの心配も既に必要無かった。

 

 このイベントに出遅れた鬱憤を晴らすように、地球エリアに待機していたファイター達が次々と破片を迎撃しに向かってきたのだ。

 

《ダイターンでアクシズの破片を押すんだよ!》

《やるぞアスカ! この光は、俺達だけが生み出しているものじゃない!》

《これがマークデスティニーの力だ!》

《ゲキガンソォォォド!!》

《カンタムパーンチ!》

《やあああってやるぜえええっ!!》

 

 

 ――とまあ、そんな感じに一つの破片に次々と色物達が殺到していく様子は、一見みんなで協力し合っていて感動する光景なんだけどとてもカオスだった。

 

 そんな彼らが最後の破片を破壊し終えると、今度こそアクシズの破砕作戦は全て完了した。 

 

 

《動けるか、ユウマ?》

 

 こんなことなら僕もWWバリスで出るんだったな、と出し惜しんだことを悔やみながら宇宙を漂っていると、ソウシがボロボロのニヒトで迎えに来てくれた。機体ダメージを見るに、あれはアクシズの爆発と言うよりもメイジンとの戦いで負ったものと見た方がいいだろう。彼もまたメイジンにこっぴどくやられたようで、なんかこの戦いもあの人が最後までやりたい放題だったなと振り返る。

 

 ……だけど、すごく楽しかったと思う。そんな小学生並の感想を抱く僕だが、ここまで来たら感想を多く語る必要も無かった。

 ライトニングZを抱えてもらいながら、ニヒトがこちらに信号を発しているシャクヤクの元へと帰還していく。

 その時、ソウシが言った。

 

《帰ろう、メイジンと僕らが愛した地球へ》

 

 

 イイハナシダナー……。

 

 イイハナシカナー? と思いながら、僕は意味ありげだが実際特に意味の無い微笑みを彼に返した。映画だったら、ここでエンディングテーマが流れて物語を締めている頃だろう。それぐらいの疲れと言うか、達成感が僕達にあった。

 

 

 そうしてシャクヤクに着艦するとほどなくして場内にアナウンスが流れ、大会の二日目が終了した。

 

 

 

 





 あっ、メイジンの台詞は半分ぐらい演技です。
 無印ビルドファイターズの(復刻版)ガンプラは、それぞれのファイターが当時の機体を再現した模造品みたいなものです。

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