「で、どうすんだ? 何かうまい作戦でもあんのか」
放課後ルイスが言う。
「んなもんあるわけねえだろが! 適当に散らばって適当に攻撃......」
「よもや一軍の長ともあろうものが、場当たりの策でわらわの兵卒を死なせるつもりではなかろうな?」
げっ,この声は!
「......などとそこの神父がほざいておりまして! まったくとんでもない輩でありますな!」
「おい!」
裳裾御前のお成りである。
「クラスのもの皆を集めて軍議と参ろうか。今年の競技内容も聞いてきたぞ!」
御前がパンパンと両手を鳴らすと、ネイピア、エミリア、ソメカン、御筒委員長らクラスの面々が現れた。
「みんないるようだな。では私から説明を......」
「どれ、わらわが稚児にも分かるように教えてしんぜよう!」
御筒が軽く手を挙げて口火を切ろうとするも、それに覆いかぶさる別の声。
「ルールは簡単。会場内にホムンクルスを放ち、これを捕らえて自クラスのバスケットに入れた側の勝ち。攻撃・妨害なんでもあり。実に分かりやすかろう?」
まったく、分かりやすすぎて涙が出るね。
御前にさえぎられた御筒がそのまま気まずそうに口を閉ざしたあたりに、象徴と委員長の力関係が垣間見える。
「ていうかそもそもカルニヴァーレってなんぞ?」
クラスの男子が質問する。
「なんじゃ、そんなことも知らんのか。学のない奴じゃのう。カルニヴァーレとはすなわち船来の言葉で祭りの意。謝肉祭じゃな」
「はいはーい! しゃにくさいってなにー?」
「よう聞いてくれた、甘納豆! 勉強熱心であることよ、わらわの説明が悪かったのう。謝肉祭とはな、収穫した動物の肉、すなわち鶏や牛の命に感謝する祭りじゃよ」
「なんで謝肉祭でホムンクルスをバスケットに入れにゃならんのだ」
「ええいそんなことも知らんのか腐った豆腐めが‼ ええとのう、それはつまり......」
おいこら十二単。てめーも分かってねえじゃねえか!
「これ、鶯! 説明してやれ!」
「はいっ!? わ、私ですかあ......」
御前の指名でひょっこりと十二単の後ろから姿を現したのは、鳶色の髪と浅葱色の小袖に身を包んだ女性。御前の式神、鶯姫である。もともとは平安時代の歌人だったそうだが、何の因果か御前の使いに身を落としたのである。
「鶯というて他に誰がおるか。ほれ説明してやらんかい。歌人じゃろ」
「は、はい。御前さまあ......」
蚊の鳴くような声で返事をする鶯姫。歌人とホムンクルスって何の関係もないような。
「ええとですねえ......西洋の魔術師の間では謝肉祭の時にみなさん明け方まで踊りあかすのですねえ。でえー、その時問題になるのが赤ちゃんでえー」
赤ちゃん?
「明け方までどんちゃん騒ぎするのに一番厄介なのは赤ちゃんをどうやって寝かしつけるかですよねえ......それで昔は夕方までは親が子を背負い、日が暮れるとバスケットに寝かしつけて飲み騒いだという......」
「左様。それで優れた魔術師たるもの、赤子をバスケットに寝かしつける達人でなければならぬ、ということになり現代ではホムンクルスを使った競技になっているのだ」
鶯姫の後を継いだ御筒委員長の説明に、うむ! と頷く裳裾御前。
「ただの酒飲みの論理じゃねえか! 何が魔術だ、何が謝肉祭だ! 二次会三次会で飲み屋はしごする飲んだくれの集まりかっ!」
くだらねー!
「では木枯、貴様の作戦を楽しみにしているぞ」
学帽を少し持ち上げて挨拶をし、踵を返す委員長。
「そ、その木枯さん......頼りにしてますねえ......ちゃんとあやさないと二次会に行けなくなっちゃいますからあ......」
鶯姫はやや後ろめたそうな卑屈な笑みを浮かべて裳裾御前の懐に消えた。あの式神が1LDKの部屋に発泡酒の缶散らかしたダメOLに見えてきたっ!
「なるほど、そういう由来があったのですね......」
エミリアさん、そんな神妙な顔するようなとこじゃないよ?
「このエミリア、グリーン家当主、8代目・庭園の魔女として、カルニヴァーレに参戦いたしますっ!」
やめて! 酔っ払いの祭りにそんなにハッスルしないで!
「お話はしかと承りました。このオリヴィアも陰ながら応援させて頂きます」
「ああ勇ましのお嬢様! このオリバー、感激いたしました......!」
オースティン姉弟! いつの間に湧いて出た!?
「じゃあ話は決まりだね! 1-Cみんなで頑張ってホムンクルスを寝かしつけようね!」
「えいえいおおー!」
俺はこんなくだらん争いの大将になったの?