マーマレードの魔女   作:へきいさむ

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一気に第6話まで投稿しました。

少しは楽しんで頂けておりますでしょうか?

ご感想やコメントも大歓迎です!

ネイピアとエミリアはどっちがお好きでしょうか?

皆様のご意見、どうかお聞かせください!


第6話 ゆえにルイスの懐について思い煩うな

「はい、メロンパンとオレンジジュース、チョコチップクッキー.......合計670円になります」

「ああ、ルイスにつけといてください」

「え......よろしいので?」

 購買のお姉さんが確認する。

「うん!」

 主は明日、炉にくべられる野の花にすら憐みをかけ、装いを与えてくださる、まして俺やネイピアにはなおさらのことである。ゆえに、何を食べようか、何を飲もうか、何を着ようかなどと言って思い煩うな。

「東風ー! このマフラーもルイスにつけていい!?」

「おう、いいぞ」

 ルイス神父はメロンパンやチョコチップクッキーが我ら人の子に必要なことをみなご存じである。あとネイピアのマフラーも。ついでに俺のアゾマン・プライムも。

「そ、その......神父様のお許しは頂いたので?」

「ゆえに、ルイスの懐について思い煩うな。ルイスのことはルイス自身が思い悩む......」

「と、ルイス神父は仰いましたー!」

「はあ......」

 

 ルイスの金で食う飯はうまい。購買を後にし、春風うららかな校庭に出るや、ネイピアはメロンパンを、大蛇が卵を丸呑みするようにぺろりと平らげた。気づかぬ風を装っていたが、正直、一瞬わが目を疑った。え? ネイピアってちっこいのにあんなに一瞬でメロンパン食べちゃうの? 子どもの頃、ハムスターが共食いする動物番組を見て泣いた記憶を思い出す。いや、ネイピアはクラゲの仲間だからメロンパンで共食いにはならんけども。

 

「おいしーい!」

 そういってそそくさと取り出したるは2つ目のメロンパン。開いた口が塞がらない。食道に入り損ねたオレンジジュースが口元を零れていった。

 今度はさすがに丸呑みとはいかなかったが、あたかも数学の授業で教師が書いた大きな円が、チャイムの音と同時に日直にかき消されるように、メロンパンの姿はあわれ風の前の塵のように消滅した。

「ふうー」

 さすがに3つ目は食うまい。もし3つ目も食えるならこいつはコモドオオトカゲか何かの親類である。俺だっていつネイピアの腹の中に納まるか分かったものではない。メロンパン諸氏の末路は、明日の我が身である。

 びりっ!

 封を破る音がした。

 いずれ我が身もとかねて覚悟はしていたが、昨日今日とは思わざりしを。

「なに東風......そんなにたくさん食べないよ......ボク女の子だよ?」

 人がオレンジジュースを半分飲み終わる前にメロンパン2つを屠った古強者が、不服そうに頬を膨らましている。今、チョコチップクッキーがダース単位で消えたように見えたが気のせいか?

 

「東風ってば食べるの遅いねー」

 てめえが早すぎるだけじゃ、と喉まで出かかった言葉をオレンジジュースとともに飲み込む。

 脇道の花壇にはツツジやアネモネが所狭しと植えられ、赤や黄色の極彩色が錦の絨毯をなしている。その縁に腰かけ、んんーっと伸びをするマーマレードの魔女。

 俺はというとようやくオレンジジュースを飲み終えたばかり。

 その刹那。

 

 地面と空を等しく揺すぶるような低い鐘の音が辺りに響き渡った。チャイム? いや、昼休みはまだ終わっていない。

 

 音源は時計台。付近で鐘のある場所などそこしかない。

 ネイピアも立ち上がり、時計台のほうへ駆けてゆく。その時、スピーカーが鳴って、聞き覚えのある男の声がした。

 

「背教者に災いあれ! 主の名を妄りに語る者に裁きあれ!」

 ルイスの声だ。

「俺の金勝手に使ったやつ! 今なら逆さ十字で許してやるから出てこい! つうかもう当たりはついてるけどな!」

 おいおい。そりゃ勝手にルイスにつけたのは悪かったけどさ、聖職者たるもの清貧を尊び、喜捨行を積むことこそ喜びなんじゃねえの?

「異教徒どもよ! 主の御名を讃えよ!」

 ルイスが暴走している。あいつってあんなに仕事熱心だったっけ?

「そして俺の名を讃えよ! 銀貨の魔術師ルイス・マーティスの名を!」

 あれ?

 何かがおかしい。俺とネイピアは顔を見合わせた。

 

ーー汝迷える子羊どもよ。天にまします主の御名を讃えよ。そして銀貨の魔術師を讃え、崇めなさい。彼は地上の王なればなり

 

「ねえ......これって......」

 ネイピアは何か嫌な予感がしたようだ。奇遇だね、俺も嫌な予感がするんだよね。

 

ーー汝罪深き兄弟よ、チャージカードと預金通帳を銀貨の魔術師に捧げよ。これが免罪符となりあなた方の罪を洗うであろう......

 

「適当言わないでよ! そんなのどこに書いてあるの!?」

 ネイピアが叫ぶ。まあ正論だが、いささか良心が痛むのは、俺もまた適当に主の御名を語った罪人だからである。

 

ーー魔導書に書いてあんだろうがアアーーっ!

 

 ルイスの金切り声が校庭に木霊する。疑念は確信に変わった。

 

「悪魔耐性はどうした、神父ウウウウウ!?」

 

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