全てを無くしてもダンジョンに行くのは間違っているだろうか? 作:赫星
これは世界のどこかにある小さな村の話である。
不幸な村の物語である。
大好きだった姉貴分に逃がされ必死に生きようとする少女。
それを守るために、自分の命を投げ打ってでも守ろうとする者の物語。
いつの日か交わる時までの別れである。
「モンスターども!ここから先は一体も通さん!」
その者は、絶望へとその身を進ませる。己を失ったとしても妹みたいな少女を逃すために。
森の中1人の少女が必死に走っていたまるで何かから逃げるように、
「うわぁ!?」
少女の顔の横を火が通り過ぎる。
「いつまで追ってくるの!?」
少女を追いかけていた者の正体は狼の体を持ち口から火を吐く生物モンスターと呼ばれる存在。
ヘルハウンドであった。
「グルォーーーーーーーーッ」
「ひいっ!?」
それもヘルハウンドは一体ではなかった。少女を囲むように8体で追いかけてきていたのだ。
少女はついに疲れて、足がもつれ倒れてしまった。
「いたたた、っ!?」
その時ようやく自分が囲まれていたことに気づく。少女はひどく怯えて縮こまってしまった。
「嫌だっ!こないでよぅ……」
その願いを否定するようにジリジリと距離を詰めるヘルハウンドたち、今にも飛びかかりそうな時。
森の奥から風を切るような音が聞こえる。その音が聞こえヘルハウンドのうちの一体が振り向いた瞬間。
その個体の首は宙を舞っていた。自分が切られたことに気が付かないまま死んだヘルハウンド。
死んだ個体以外の個体は急に現れた存在に強く警戒する。
現れたのは金髪に深い蒼の目身長は高くスラリとしているが出るとこ出てる女性だった。
その中でも特に特徴的なのが、その人物が持っている刀。
その刀の刀身は、白かったからである。
そして、その刀を持つ女性がゆっくりと残りのヘルハウンドへと顔を向ける。
少しの静寂が流れたのちに、二体のヘルハウンドが襲いかかる。それに対して現れた女性は、流れるように2体の首を刎ねた。そのまま残りのヘルハウンドにも刃を走らせる。2体の首を刎ねたが残りには避けられ距離を離された。そして、ヘルハウンドは離れたところから放火しようと口を開ける。それをみた女性が、刀の刃を水平に後ろに引き。
「伸刃!」
そう言い刀を勢いよく振り抜くと頭身が伸びたと錯覚したや否や、ヘルハウンドは横一列に切られその体を消滅させた。
そのまま刀を一振りし鞘に納め。少女の方を向く。
「ふぅ…、まったくいつも言ってるだろうが森の中に無闇に入るなって」
「だって…」
「だってじゃないだろう、''アイズ''」
アイズと呼ばれた少女は、口籠もりながら言った。
「だって…クリスお姉ちゃんの…いつも森に入って……モンスターを…狩ってるの……見たかったから」
「………………」
「それで追いかけてみたら、見失っちゃて。あの狼さんに見つかって追いかけられて。すごく…怖くて」
「そうか…………、もうわかっただろ森の中は危ないってことが」
「うん…」
「ならよしっ!一緒に帰るよ」
「怒ってないの?」
「怒らないよ、アイズが無事なだけでも私は嬉しいから」
「そうなの?」
「そうだよ、だからお怒ってないから。一緒に帰るよ、ほら」
そう言い、アイズに手を差し出して、それをアイズが掴んで一緒に村へと向かった。
その後、アイズは母親にこっぴどく怒られた。
そんな状況を少し離れたところから見ているクリス。
そして最後にはみんなで笑う。そんな日々がいつまでも続くと思っていた。
あの日まで、全てを無くしてしまうあの日まで。
⬜︎⬜︎⬜︎の王は今起き始める。