俺は万津 獏。仮面ライダーゼッツ エクスドリームに変身する普段は普通の好青年だ。カタストロフゴアの崩壊の力により心臓を蝕まれた千束ちゃんを救うため、病院に強襲を仕掛けてきた奴と俺は激しい戦いを繰り広げていた。
「うぉおおおおおおおお!!」
「いいぞ!いいぞ!もっと本気を出せぇ!」
「勝ってください、万津さん……」
俺を煽るように攻撃をわざとカタストロフゴアは喰らい続ける。攻撃のギアを上げ腹部に膝蹴りを入れ、拳で奴の顎をかち上げる。完全に決まったかと思いきや、カタストロフゴアは数歩後ろに後退するだけに収まり、殴られた顎をさすり笑い出す。
「こんなんじゃ俺は倒せないぜ?それにパンチってのはこうやるんだよぉっ!!」
「くっ?!ぐぁああああああ!!」
カタストロフゴアが崩壊の力を纏った拳を猛烈な速度で繰り出す。咄嗟に受け止めようとするも圧倒的なパワーに押されて回避に専念する。しかし、拳が皮一枚で体を擦ってしまいその衝撃で地面をバウンドしながら病院の壁に衝突してしまう。
「がはっ?!掠っただけだぞ?!何だこの力は?!」
「もっと力を惜しみなく出し尽くせ。出ないとお前は死ぬぞ?」
「万津さん!」
「来ちゃ……だめだ!うっ!」
壁に衝突した影響で背中を強打し、上手く立てない俺にたきなちゃんが駆け寄って来る。身体能力では向こうのほうが上だ。どうやって勝つ?
「立てますか、万津さん?」
「ありがとう。もう大丈夫」
俺はたきなちゃんに肩を貸してもらいようやく立ち上がる。まだふらふらと視界が揺れるが弱音を吐いている場合じゃない。こうしている間にも千束ちゃんの命は刻一刻も蝕まれている。俺が倒れれば誰が彼女を救える?しっかりしろ、拳を握りしめて死力を尽くせ。俺は仮面ライダーだ!
「うぉおおおおおおおおおお!!!」
【フルライズ!】
「あぁん?何して?……ッッッ?!!」
俺はエクスドリームライズカプセムの能力を行使。崩壊の力を纏った拳で殴られる瞬間まで夢を書き換え、奴の背後から飛びつく。そして、近距離からグラビティとインパクト、プラズマの3種の力を同時発動し最大出力の一撃を放つ。激しい閃光と爆発がカタストロフゴアを襲い、その隙にエクストリガムを連打する。
「グァアァアアアア!!!」
「これでトドメだ!」
【ライズ! グレートバニッシュ!ゼェッツ! ゼッツ!! ゼェーッツ!!!】
「やるじゃねえかぁ!ゼッツゥウウウゥウウウ!!!」
全身全霊のライダーパンチで奴の頬を殴り飛ばす。しかし、それも全く効いていないかのように奴は戦いを楽しみ狂喜乱舞する。
「今度はこっちの番だ!ウォオオオオオオオオオ!!!」
「不味い!まだ病院には避難できていない人たちが!」
カタストロフゴアが崩壊のエネルギーを身体中から放出する。その余波で奴を中心に地面がガリガリと削れていき崩壊に巻き込まれていく。大気を揺るがすほどのパワーが俺ごと背後にある病院を飲み込もうとする。俺はバリアの力を発動し病院全体を緑色のドームで包み込む。
「自分を守るのを忘れてるぞぉ!」
「万津さん、逃げて!」
「守ってみせる!千束ちゃんもこの病院にいる人たちも全員!」
「一緒にくたばれぇえええええ!」
カタストロフゴアが放つ崩壊の力と俺のバリアが衝突する。バリアの外側にいる俺は崩壊のエネルギーに耐えながらバリアの強度を更に強化する。
「負けてたまるかぁ!」
「万津さん、もういいです!逃げてください!」
「人を守って自分は死ぬ気かぁ?!」
崩壊のエネルギーを全身に浴び続け、全身から大量の火花が上がる。あまりの衝撃と激痛に意識が飛びかける。
「まだぁっ……くっ!まだだぁあああああ!!」
「万津さぁあああああん!!」
「そろそろ終わりだぁああああ!!!」
カタストロフゴアが崩壊のエネルギーを極限まで高め、一気に放射する。バリアにひびが入り、俺は全身から血のように火花を散らす。そして、視界全てが閃光に消えていくと俺の意識もそこで途絶えた。
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「うっ……うぅう……何が起きたの?」
たきなは目を覚ますと倒れていた体をゆっくり起こす。カタストロフが生み出した圧倒的なエネルギーに病院全体が包み込まれた瞬間、閃光に覆われた。あれからどれくらいの時間が経った?
「そう言えば万津さんは?!」
既にバリアは解除されているため、たきなは病院から外に出た。周囲は粉塵が舞っており、視界は良好ではない。たきなは必死に獏がいた辺りを探る。やがて、足元に何が落ちていた。
「これは?まさか?!」
たきなは粉塵を振り払い、足元の何かを手探りで触る。やがてそれを掴んだ瞬間、直感は確信に変わった。
「万津さん!!」
「た……きな……ちゃ、ん」
そこには変身が解除され、ボロボロになった万津 獏が倒れていた。たきなは獏を助け起こすと必死に呼びかける。
「万津さん、大丈夫ですか?!しっかりしてください!」
「病院を守って自分はこのザマか。ガッカリだぜ、ゼッツ」
カタストロフゴアは粉塵の中からゆっくりと歩いてくる。そして、獏たちの前で歩みを止めると失望したように肩を落とす。
「万津さんに近づくな!」
「威勢のいいお嬢ちゃんだ。ただこいつにはそろそろ起きてもらわないと俺が困るんでな。そらよ!」
「うぐうっ!」
「よ、万津さんを離せ!」
獏の胸ぐらを掴み上げたカタストロフゴアは獏の首を締め上げる。たきなは至近距離から銃を撃つも崩壊の力により、カタストロフゴアに直撃する前に銃弾がチリとなってしまう。
「なぁ、ゼッツゥ。俺はお前の中にいた頃からずっとこの時を待っていたんだ。人間の集合的無意識の夢がお前の中に眠るカプセムという悪夢を叶える力に自我を与え、俺が生まれた。そして、全部ぶっ壊したいっていう本能が自我を生み俺は俺として存在を確立できた。そして俺に夢ができた……何だと思う?それは俺の力の源であるゼッツ、お前を壊すことだ!」
「カタストロフ……そんな事のために無関係の人間を巻き込んだのか?!人の命を何だと思ってる!!」
「他の人間はただの餌だ!どうせ滅びる連中だ。どうこうしよが俺の勝手だ!」
獏はカタストロフゴアの身勝手な理由に激怒し、首を絞める腕を握り潰すほど力を込めて締め返す。
「許さない!お前だけはここで絶対倒すっ!!」
「ほう?なら、やってみろぉ!!」
「ぐぁあああああ!!!」
「万津さん!!」
カタストロフゴアが獏を投げ飛ばし、たきなが急いで獏の元へと走る。
「もう千束の心臓が完全に崩壊するまで10分を切りました!万津さんしか千束を助けられないんです!お願いします、負けないで!」
「あぁ、俺は絶対に負けない。みんなの夢は俺が守る!」
獏は荒い息を吐きながらたきなの手を借りて再び立ち上がった。そして、ベルトにエクスドリームライズカプセムを装填する。
【フルライズ!メツァメロ! メツァメロ!メツァメロ! メツァメロォ!!】
「I'm on It(さぁ、やろうか)。変身!」
【アブソリュート! ライダー!ゼッツ・ゼッツ・ゼッツ! ゼーッツ!エクスドリーム!】
仮面ライダーゼッツ エクスドリームに変身した獏は静かに激情を燃やし、カタストロフゴアを見据える。そして、一気に体をプラズマ化させ高速で懐に潜り込むと超至近距離でインファイトになる。
「俺の夢を叶えるために!俺は俺を超える!」
「そうだゼッツ!もっと力を求めろ!その分だけ俺も強くなれるぅううううう!」
お互いノーガードで殴り合い、肉を打つ重い打撃音が響く。衝撃は病院の窓を全て破り、木々や大気が揺れるほどのソニックウェーブを発生させた。
「どうした?!こんなもんかぁあ?!!」
「俺の夢は!まだ叶ってない!!」
身体能力で劣るゼッツだが、確かにカタストロフゴアに喰らい付いていた。しかし、殴り合いではゼッツは押されている。
「なら、こうするまでだ!」
【フルライズ!】
「どうした?!こんなもん!ッ?!ごはぁ?!」
ゼッツがカタストロフゴアの拳が届くより前まで夢を書き換え、その隙に強引に拳をねじ込む。まともに受けた拳の威力でカタストロフゴアの体が宙に浮く。
「お前、夢書き換えてんなぁ?!!」
「お前を倒せるなら何度だって!うっ、うぉおおおおおおおおおおお!!!」
【フルライズ!】
本来であれば現実世界で夢の書き換えは途轍もないほどの負担がかかる。ゼッツは能力を発動する度に体にノイズが走り、苦しみ出す。しかし、その苦しむも乗り越えて何度でも能力を発動させる。全てはカタストロフゴアを倒し、千束を救うために。
「ハァアアアアア!!!」
「ガァアアアアア!!!」
ゼッツが致命傷を負う度に何度でも夢を書き換える。何度も何度も何度も、その夢に背負った理想のために、命の限り何度でも。
【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】【フルライズ】
「ゼッツの力がどんどん上がってやがる?!俺の体が耐えきれねえ?!!」
ゼッツから生まれたカタストロフはゼッツと深層心理でリンクしているため、ゼッツが強くなればなるほどカタストロフゴアの力も強くなる。しかし、異常なほどのパワーの上がり方にカタストロフゴア自身の体がついていけず、身体中に赤い亀裂ができていた。
「夢は!悪夢を超える!!」
「グハァッ!!!」
超至近距離のノーガードの殴り合いを制したのはゼッツだった。ゼッツの前蹴りがカタストロフゴアをつき飛ばし、大きく後退させる。そして、ゼッツの体を走るノイズが虹色の光となり爆発した。
「これで最後だ!!!」
【ライズ! グレートバニッシュ!ゼェッツ! ゼッツ!! ゼェーッツ!!!】
「悪夢は終わらねえ!!」
ゼッツの光を纏った飛び蹴りとカタストロフの崩壊の力を纏った拳が激突する。両者、力が拮抗し激しくせめぎ合う。
「万津さん!勝てぇええええええええ!!!」
「うぉおおおおおおおおおお!!!」
「俺が負けるだと!!グァアァアアアア!!!」
その均衡は1人の少女の声援によって終わりを迎えた。守るものとただ破壊するもの。その背中に背負ったモノの重さが命運を分けたのだ。ゼッツの蹴りがカタストロフの拳を打ち砕く。想いを乗せたライダーキックはカタストロフゴアを倒し、空中に浮かぶ777がZZZへと変化する。
「mission complete(任務完了)」
「万津さんが勝った?……そうだ!千束は?!万津さん、千束の所に!」
「あぁ、今行く!」
たきなは変身を解除した獏に肩を貸し、共に千束が眠る病室へと駆けつける。病室のドアを開けるとそこには自分の胸をぺたぺたと触り、涙で喜んでいる少女がいた。
「私、生きてる!」
「千束!」
「千束ちゃん!」
ようやく長く激しい戦いが終わりを迎え、獏たちは千束の無事を祝い喜んだ。その時だった。
「俺、もう限界かも……うっ……」
「獏さ?!」「万津さん?!」
既に限界を超えていた獏は気を失い倒れた。
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「いやぁ、りんごうまいなぁ」
「でしょでしょ?もっと剥いてあげるからね」
「獏さん、次はメロンはどうですか?こっちも美味しいですよ」
俺はカタストロフゴアとの戦いの後、千束ちゃんの病室で気を失ってしまった。そして、そのまま病院に入院することになった。今は千束ちゃんたちがお見舞いに来ており、一緒にフルーツを食べている。
「そう言えば、クルミに頼んでおいたよ。病院と周りの監視カメラから獏さんがゼッツに変身したりするところ。これで正体はバレないね」
「ありがとう、本当に助かるよ」
「それにしてもいまだに信じられませんよね。まさか、万津さんがゼッツだなんて」
「ははは、だよね」
「獏さん、ほら、りんごあーん」
「あーん」
「むむむ……万津さん、私もメロンあーんします」
「あ、あーん」
俺は千束ちゃんとたきなちゃんに交互にあーんされながらフルーツを食べる。なぜかあーんをする千束ちゃんは顔を赤く染めて嬉しそうだし、たきなちゃんは負けじとフルーツをフォークで刺す手を止めない。そろそろお腹いっぱいなんだけど……俺のエクスドリームはまだまだ止まらないらしい。