なるようになるの   作:kintama

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CHR-0004 咬郷 兎

閲覧制限:一部を除き、一般公開可
分類:人物資料

氏名:咬郷 兎 (こうごう うさぎ)
戸籍名:咬郷 兎 (こうごう うさぎ)
生年月日:奏元2年5月13日
性別:女性
年齢:16歳
身長:166cm
体重:57kg

能力登録:
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能力名称:
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能力概要:
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危険度評価:
▬閲覧制限▬
転化可能性:
0%

観察記録(抜粋):
対象は偶数を選好する傾向を示す。
また、日常生活の様々な事象に独自の判断基準を設けることが確認されている。
当該基準は対象にとって極めて重要なものであると推測されるが、一定期間経過後、何ら前兆なく消失する事例が複数確認されている。
基準の発生条件及び消失条件は不明。
観察対象本人への質問についても、一貫した回答は得られていない。
            記録者:
            主幹研究員 餅染 渚

研究員所見:
初期接触時における対象の行動予測は困難。
しかし観察を継続すると対象の判断基準には一貫性が存在することが分かる。
信頼に値する人物である。
なお、本人の前で奇数に関する話題を長時間続けることは推奨しない。
            記録者:
            主任研究員 伊織《いおり》 神楽《かぐら》

追記:
対象は夜明 凪乃及び舞鼓《まいこ》 碧《たま》との交友関係を約10年間継続中。
しかし記録時点においても、当該人物らは対象の能力保有を認識していない。
対象は能力を隠しているのではなく、能力を知られることを避けている。
両者は似て非なるものである。
理由は不明だが、その行動は徹底したものと判断される。
現時点において能力露見に起因する重大事例は確認されていない。
            記録者:
            主任研究員 伊織《いおり》神楽《かぐら》

            承認者:
            所長 百目鬼 祀
    
            資料状態:
            有効

            最終更新:
            奏元18年7月6日


四天、好天

 7月7日 時刻は20時。

 日は落ち、夜の帳が鹿々桜《かがくら》を包み込む時間帯。東の空には無数の星々が列を成し、天ノ川を形作っている。

 天気がいいからか、月明かりで夜道も優しい明るさを保っている。

 

 帰りが随分と遅くなってしまった。

 餅染《もちぞめ》先輩にも手伝ってもらったは良いものの、所長の愚痴を聞かされたお陰で余計に時間を食ってしまった。

 

 錆び付いた手すりの付いた、幅の狭い階段を上る。

 扉の前で鍵を回し、ノブを捻る。だけでは開かない。安アパートらしい建付けの悪さだ。

 ノブを持ち、扉ごと持ち上げて引く。これで開く。相変わらず、この扉は開ける時が一番体力を使う。

 部屋に入り、扉を閉める。

 がこん、と大きな音が鳴る。

 

「ただいま」

 

 返事はない。なくても、これは私のルーティーン。

 帰りを知らせる、自分自身に。それだけ。

 カーテンの閉まった暗い部屋、すぐに電気を付ける。スイッチから1拍遅れて、部屋が明るさを取り戻す。…電気、買い替え時かな。

 

 20時13分、か。先に腹ごしらえをしてしまおう。

 冷蔵庫からカレーを、冷凍庫から冷凍白米を取り出す。カレーは1日寝かせたものの方が美味しい、それだけ。

 

 温めている間に着替えを済ませ、課題を机に広げる。今日の分は…20分もあれば終わるだろう。

 一段落つき、レンジに目を見遣る。タイマーは残り4分と表示されている。

 

「……」

 

 通知、見とくか。

 スマホを開く。93件、【うさたまめぐなの】。

 液晶をスライドして履歴を追う。

 昼間のうちに廻琉《めぐる》がグループに加入している。

 どうやら3人で最近出来たという駅前のカフェに行ったようだった。碧《たま》がケーキを頬張っている写真が5枚ほど送られてきている。

 廻琉《めぐる》の写真は…お、あった。

 美味しそうにパンケーキを食べている。

 ふかふかのスフレパンケーキが2段、その上にホイップクリーム、周りに大きな苺が5つ切り分けられている。

 …本当に美味しそうに食べている、頬にクリームまで付けて。私も今度行こうかな。

 

 ピピピッ──ピピピピッ───

 

「…!」

 

 すっかり忘れていたタイマーの音に驚かされてしまった。

 レンジから取り出した2日目のカレーと白米を大皿に移し、口へ運ぶ。

 

「…ん」

 

 温めるの、もう少し長くても良かったかな。

 白米の中はほんの少し、まだ冷たかった。

 

 ***

 

 午後23時。

 既にシャワーを浴びて課題を済ませ、予習まで終えた頃。睡魔に襲われる時間帯。

 鞄に明日使うものを詰め込んで支度を終え、ベッドに身体を投げ出す。

 だんだんと体温が移り、掛布団が心地良い温度を帯びていく。

 瞼が落ち、視界が閉じる。

 いつも通り、部屋の明かりはつけたまま。

 白い天井が瞼の裏にぼんやり映り込む。意識だけが、ゆるやかに暗闇へと落ちていく。

 

 ***

 

 翌日。いつも通りの昼休み。

 青空のいちばん高い場所で燦々と燃える太陽が、今日もかわらず私たちを照らしている。

 遠くに見える彫りの深い入道雲が夏の始まりを感じさせる。

 中庭からは生徒の声に紛れて月炉の断末魔らしきものが聞こえてきた。元気なものだ。

 

「凪乃《なの》ぉ、グループ見てくれた!?」

 

「ん、美味しそうだったね。私も今度行ってみるよ」

 

 特に廻琉《めぐる》の食べていたあのパンケーキ、カスタマイズはできるのだろうか。

 苺が乗ってたっけ、私もそれにしよう。ホイップは多めで、バニラアイスも付けてもらえるかな。3段にしてもらっても…。

 

「ちょっとぉ!みんなで!行くんでしょお!」

 

 ぐいっと右腕を引っ張られる。

 同時に、意識が引き戻される。

 

「ん。…ん? そういう話?」

 

「注文でも決めてたか?カスタム決めてたりしないよな。3段か?4段か?アイスの味変まで〜、なんてな。1人で食うつもりか?それ」

 

 …なんでわかるの?

 

「……そこまで言ってないし」

 

 声には…出してないし?

 

「オイオイ考えてはいたって事じゃねーか。

 薄情だぜ、なぁ?碧《たま》、廻琉《めぐる》?」

 

 相変わらず悪い顔をしている。

 どっかり足を組んで座る兎の後ろから、子悪党のような笑みを浮かべた廻琉《めぐる》が顔を覗かせる。似てきたね、あんた達も。

 

「へへ、まったくひどいなぁ凪乃ちゃんも。

 ねぇ碧《たま》ちゃん。どうしちゃおっか、ね」

 

 反対側から、碧が顔を出す。

 左肩に顎を乗せ、これまた子悪党のような笑みを浮かべている。

 

「えへへぇ。これはアレだねぇ。

 有罪判決、2泊3日の監禁刑だねぇ」

 

 碧《たま》と廻琉《めぐる》が顔を見合せ、「へへへへ」と笑う。

 なにそれ。オードリーじゃないんだからさ。

 

「あれ冗談じゃなかったのか?」

 

 間に挟まれた兎が両端の2人に疑問を飛ばす。

 大丈夫?家主に話通ってなさそうだけど。

 

「本気と書いてガチ、だよ。兎ちゃん!」

 

「相場は″マジ″だろ」

 

 またしても廻琉《めぐる》と碧《たま》が顔を見合せ「へへへ」と笑い始め、遂には組体操を始めた。

 ふざけ始めた2人を置いて、兎が私の方に身体を向ける。

 

「昨日出掛けた時にな、ちょっと片付けたら2部屋空いたって話したんだ。そしたらアレだよ」

 

 兎が後ろを指す。

 

「みてぇ!補助倒立!」

「倒立側だけ負担すごいよね、これ!」

 

 全然わかんないけど。

 何事もなかったように兎が話を続ける。

 

「こないだウチで飯食ったろ。

 碧がもう1回やりたいって言い出してな。

 そしたら廻琉《めぐる》がアレだよ」

 

 また兎が後ろを指す。

 

「みてぇ!しゃちほこ!」

「支えられる側の体幹に依存しすぎだよね、これ!」

 

 全然わかんないけど。

 

「んで2人とも今週末がいいってゴネてな。

 適当に流してたんだ、いつものワガママだと思ってさ。したらあの調子だよ」

 

 またしても、兎が後ろを指す。

 

「みてぇ!バベル!」

「ちゃんと負担が半々だね、これ!」

 

 おお、すごいすごい。バベルは初めて見た。

 …まぁ、要するに、

 

「お泊まり会ってこと?碧《たま》と兎の家で」

 

 「ご名答」と言わんばかりの顔をしている兎の後ろで、アホのバベルが崩れ落ちていた。

 最初からそう言ってくれ、と言うのは野暮だろうか。まぁ、後ろの2人の笑顔を見るに、

 

「…断れないね」

 

 それを聞くことすら、野暮というものだろう。

 

「じゃ決定。放課後買い出しな。

 夕飯リクエストあるか?」

 

 兎が小さく笑って「作るのは碧《たま》だけどな」と付け加える。

 夕飯か。夕飯、ね。

 その時、たまたま、偶然にも。

 …昨晩食べたカレーを思い出した。

 温め損ねた、中の冷たい白米。少しだけもさついたルーの食感。

 

「カレーがいい。春巻きもあったら…嬉しい」

 

 口直し、なんてつもりではないけれど。

 

「了解。聞いたか?シェフ」

 

「任せてぇ!作りたてほやほやアツアツ!外はぱりぱり中はとろあまをご提供ぉ〜っ!」

 

 碧《たま》が大きな声で中庭を駆け回る。

 後ろに廻琉《めぐる》が続く。

 それを兎と私が見守って。

 7月8日 午後13時。

 夏の陽は高く、包む空気は暖かい。




CHR-0003 舞鼓 碧

閲覧制限:一部を除き、一般公開可
分類:人物資料

氏名:舞鼓 碧 (まいこ たま)
戸籍名:舞鼓 碧 (まいこ たま)
生年月日:奏元3年 2月16日
性別:女性
年齢:15歳
身長:138cm
体重:40kg

能力登録:
登録済
能力名称:
″ほんのすこし うまくできる″
能力概要:
▬閲覧制限▬
危険度評価:
▬閲覧制限▬
転化可能性:
▬閲覧制限▬

観察記録(抜粋):
極めて高い対人コミュニケーション能力を有する。
周囲との関係構築速度が速く、初対面の人物とも短時間で打ち解ける傾向が確認されている。
友人関係の維持能力も優れる。
一方で、特定対象への執着傾向が確認されている。
            記録者:
            研究員 丹蓯《にかぶら》 楠莉《くすり》

研究員所見:
観察対象は非常に活発で極めて世話焼き。
本人は無自覚と思われるが、他者への保護行動が非常に強い。
放置すると周囲の人間全員の面倒を見始める。
観察対象としては非常に扱い易いが、近しい人物に対しては驚くほど頑固になる。
            記録者:
            主幹研究員 餅染 渚

追記:
対象は夜明凪乃及び咬郷兎との交流を継続中。
記録時点で関係は良好。経過観察を推奨。
            記録者:
            主幹研究員 餅染 渚

            承認者:
            所長 百目鬼 祀
    
            資料状態:
            有効

            最終更新:
            奏元18年7月1日
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