貞操逆転世界における王子様系女子の百合事情 作:あまり強い言葉を使うなよ、マゾに見えるぞ
「私は死んだはずじゃ……夢オチ……では無さそうだね。こんな都合良く別の世界に転移しました、みたいなニュースが流れてるくらいだし」
どれだけ異常な努力を重ねて勉強をしたところで、素の自分の頭の回転速度は変わらない──が!! 中学生時代に無限にラノベを読んでいた私にかかれば、今の状況を推測することなど容易い。
「ふ、ふふ……アバババ……マジでどゆことこれ」
ダメだった。脳内が一般人だった。
体の震えが止まらないし心臓バックバクなんだけど。
「ふぅ、落ち着け。ビークールだ私。ユニコーン百合ガチ勢とかいう異常性癖だけが行動原理な私が動揺することなどあってたまるものか」
……よしよし、段々と落ち着いてきた。
一旦状況を整理しよう。
「夢だった宝龍院大学に特待生として合格。ルンルン気分で青信号を渡ったらトラックに轢殺。だけど無傷で新品の制服に身を包まれてリビングにいる、と……」
そんでもってテレビからは聞き慣れない文章が流れている……と。字面にしたほうが訳わからんことになってる気がするんだけど私の気の所為かな。
「──ハッ!? てか、宝龍院大学は!?」
ふと嫌な予感に襲われた私は、急いで洗面所に駆け込んで鏡越しに自分を覗く。
「──ガッデム……!!」
そこにいたのは、まだあどけない顔立ちをした私だった。
はい、どう考えても中学三年の頃の私ですね。
「くっ……まあ良いか……」
ペタペタと自分の顔を触りながらため息を吐いた。
……ふぅ、にしても我ながら女っ気の無い顔だなぁ。
顔立ちは自分でも整っていると思う。
キリっとした眉に二重まぶた。
鼻筋は整っていて、目の下には小さなホクロがある。
「どっちかというとカッコいい系の顔だよねぇ……。ちょちょいと髪型整えたら完全に王子様系女子だなコレ」
うわーん!!
可愛い女の子と可愛い女の子の百合が性癖なのに!!
いやまあ私が主導になる分には構わないし、自分の姿を客観的に見なければ別に平気なんだけどさぁ……!
「やれやれ。自分の顔を見てたら落ち着いてきた」
リビングに戻って再びテレビに聴覚を集中させると、相変わらず男性の出生率の低下について触れていた。
取り乱すことなくしばらく聞いていると、どうやらこの世界は男女比が驚異の1:100で構成された世界だそうだ。
「貞操逆転世界ってやつだよねぇ、コレ」
続けてニュースを聞いて、女性が男性に性的暴行を加えたというトピックが流れた私は貞操逆転世界──男女比や性的価値観が男女で逆転した世界であることを悟る。
貞操逆転世界では男は貴重で持て囃される。
だが性欲が逆転した世界だと、男は草食系になり女は肉食系になり──ガツガツした女性を男性は嫌う……みたいなのがオーソドックスな世界観かな。
ニュースを聞いてる限りそっち方面で合ってそう。
「う、うがががが……貞操逆転世界なんてノンケだらけの世界じゃんか……!! 男に都合良く作られてる設定なだけに私の性癖を邪魔してくる……!!!」
もはや私の中では貞操逆転世界に転移か転生か知らんけど、移動してしまったことはすでにどうでも良いことだった。
舐めないでほしい。こちとら男を知らない女の子を手籠めにするために高校生活の三年間を受験勉強に捧げた化け物ゾ。
前の世界で死んでしまったのなら仕方ない。
だが、百合だけは諦めるわけにはいかない──!!
「あかん……男に寝取られるのだけは嫌じゃあ……!! NTRだけは嫌じゃあ!! わ、私以外に転生者がいないなんて希望的観測はできないし……!!」
もしもこの世界で男として転生を果たしたヤツがいたら最悪だ。前の世界の価値観と性欲を引き継いだままだと特に。
なぜなら十中八九ハーレムを作るに決まっているから。
そして、性欲の強い女子が、ヤれる男に流れるのは至極当然の流れだから。
「う、うごごこごご……それだけは許せない。百合の間に挟まる男なんてこの世からなくなればいいんだ……しねしねしね……」
どうすればいい!?
どうすればこの世界でノンケを堕とすことができる!?
百合百合ハーレムで幸せな日常を過ごすことができる!?
「……なるほど。一つだけ方法がある」
──刹那、私は妙案を思い浮かぶ。
自身のコンプレックスをフルに使うという妙案を。
「──王子様系女子になってガチ恋を増やしまくる。自分が男性的に振る舞うことができれば、ノンケをも堕とすことができるはずだ。本物の男に靡かないレベルまでガチ恋させることができれば──!!!」
やるしかない。やるしかないんだ。
百合界隈では学生時代しか効力が発揮されないと噂の王子様系女子だが、貞操逆転世界であるならば無限の可能性を秘めていると私は思う。
「やってやる。やってやるんだ」
全員百合に──堕としてやる。
そのためなら、手段は選ばない。