【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第十二話「救世主」

 

翌日の朝、テレビをつけた全国の人々は、一つのニュースに目を奪われた。

 

いつもの朝の情報番組は予定を変更し、各局ともトップニュースとして速報を伝えていた。

 

画面には大きくテロップが映し出される。

 

『人気アイドルグループB小町・アイさん、自宅で刺される』

 

『緊急手術の末、一命を取り留める』

 

病院前には多くの報道陣が集まり、中継車やカメラが並んでいる。

 

アナウンサーが落ち着いた口調で伝えた。

 

「昨日早朝、人気アイドルグループB小町のアイさんが、自宅玄関前で男に刃物で刺され、都立大学病院へ緊急搬送されました」

 

「搬送当初は大量出血による重篤な状態で、一時は命に危険が及ぶ状況でした」

 

「しかし、病院で緊急手術が行われ、一命を取り留めました」

 

「現在は意識も回復し、容体は安定しています」

 

「病院関係者によりますと、経過は非常に良好で、順調に回復へ向かっているとのことです」

 

画面には病院の外観や、救急車が搬送された際の映像が映し出される。

 

スタジオでは出演者たちも安堵した表情を浮かべていた。

 

「本当に助かってよかったですね」

 

「日本中が安心したと思います」

 

「まだ若いですし、まずはゆっくり療養していただきたいですね」

 

そのニュースは瞬く間に日本中へ広がった。

 

電車の中でも。

 

会社の休憩室でも。

 

学校の教室でも。

 

多くの人がスマートフォンでニュースを確認していた。

 

SNSには、

 

『助かって本当によかった』

 

『朝から泣いた』

 

『ニュース見て安心した』

 

『ライブはまたできる』

 

『まずはゆっくり休んでほしい』

 

『アイちゃん、生きていてくれてありがとう』

 

『どうか無理せず回復してください』

 

そんな投稿が数え切れないほど並び続ける。

 

「#アイちゃん」

 

「#B小町」

 

「#助かってよかった」

 

といったハッシュタグは、瞬く間にトレンド上位を埋め尽くした。

 

全国民が衝撃を受けると同時に、アイが助かったという事実に胸をなで下ろしていた。

 

一方、病院前では朝から報道陣による取材が続いていた。

 

その後、苺プロダクション社長・斎藤壱護が報道陣の前へ姿を現す。

 

無数のカメラが一斉に向けられた。

 

「社長!」

 

「アイさんの容体はいかがですか!」

 

「意識は戻られたのでしょうか!」

 

矢継ぎ早に質問が飛ぶ。

 

斎藤は一度深呼吸すると、静かに口を開いた。

 

「現在、容体は安定しています」

 

「医師からも順調に回復していると聞いています」

 

その言葉に、その場の空気が少し和らいだ。

 

続けて記者が質問する。

 

「アイさんを助けた先生について教えてください」

 

斎藤は静かに頷いた。

 

「聞いた話ですが、たまたま隣に住んでいた医師が、すぐに応急処置をしてくださいました」

 

「そのまま救急車にも同乗し、病院へ搬送されたあとも、緊急手術を担当してくださいました」

 

少しだけ言葉を詰まらせる。

 

「…その先生がいなければ…アイは助からなかったかもしれません」

 

「私たちは、本当に感謝しています」

 

そう言って深く頭を下げた。

 

その映像が全国へ生中継される。

 

各局は一斉に、その医師について報じ始めた。

 

『アイドル・アイを救った天才外科医』

 

『都立大学病院外科・神崎悠真医師』

 

『現場で応急処置、そのまま緊急手術を執刀』

 

『迅速な判断が命を救う』

 

『アイの命を救った救世主』

 

テレビだけではない...新聞各紙やネットニュースも一斉に特集記事を掲載した。

 

「現場での冷静な止血処置」

 

「搬送中の適切な判断」

 

「手術開始までの迅速な対応」

 

医療関係者からも、

 

「極めて的確な救命活動だった」

 

「現場から手術まで一人で担当するのは非常に珍しい」

 

と高く評価される。

 

神崎悠真という名前は、一夜にして全国へ知れ渡っていった。

 

しかし、当の本人は、都立大学病院の医局で、いつもと変わらない朝を迎えていた。

 

コーヒーを片手にテレビを見つめる。

 

画面には自分の写真と名前が映っていた。

 

悠真は思わず苦笑する。

 

「これは……完全に予想外だな」

 

その様子を見ていた同僚医師が笑う。

 

「先生、一躍ヒーローじゃないですか」

 

「今日からサインの練習でもします?」

 

別の医師も冗談交じりに言う。

 

「病院にファンが押しかけるんじゃないですか?」

 

看護師たちも笑いながら集まってきた。

 

「神崎先生!」

 

「ニュース見ました!」

 

「救世主なんて呼ばれてますよ!」

 

「病院のヒーローですね!」

 

「私たちまで誇らしくなりました!」

 

普段は静かな医局も、この日ばかりは明るい笑い声に包まれていた。

 

悠真は照れくさそうに頭をかく。

 

「勘弁してください。私は医者です」

 

「患者さんを助けるのが仕事ですから」

 

「特別なことをしたつもりはありません」

 

その言葉に、同僚たちは顔を見合わせて笑う。

 

「そういうところが先生らしいですね」

 

 

数日後、悠真のもとへ一本の電話が入る。

 

相手は警察だった。

 

「神崎先生、このたびは迅速な救命活動により尊い命を救われました」

 

「人命救助への多大な貢献を称え、感謝状を贈呈したいと考えております」

 

悠真は少し困ったような表情になる。

 

「お気持ちはありがたいのですが……」

 

「私は医師として当然のことをしただけですので」

 

辞退しようとした。

 

しかし病院長や同僚たちは笑顔で背中を押した。

 

「これは先生個人だけじゃない」

 

「医療従事者全体への評価にもつながる」

 

「受け取ってきてください」

 

そこまで言われ、悠真も断り切れなかった。

 

「……分かりました」

 

後日、警察署で感謝状贈呈式が行われた。

 

式典は多くの報道陣が見守る中で進められた。

 

警察署長から感謝状を受け取る。

 

会場には拍手が響いた。

 

式が終わると、待ち構えていた報道陣が一斉に集まる。

 

「神崎先生!」

 

「今のお気持ちは!」

 

「アイさんを救ったことについて一言お願いします!」

 

「全国から称賛の声が寄せられていますが!」

 

何本ものマイクが向けられる。

 

フラッシュが何度も光った。

 

しかし悠真は騒がず、ゆっくりと立ち止まる。

 

そして静かに口を開いた。

 

「私は、たまたまその場に居合わせて、医師として仕事をしただけです」

 

「現場に医師がいたなら、誰でも同じことをしたと思います」

 

少し間を置いて続ける。

 

「本当に頑張ったのはアイさんです」

 

「重傷を負いながらも、生きようと最後まで頑張ってくれました」

 

「私は、その力を少しお手伝いしただけです」

 

「これからも一人でも多くの患者さんを救えるよう、医師として努力を続けていきます」

 

それだけ話すと、深く一礼する。

 

それ以上は何も語らず、その場をあとにした。

 

翌日の新聞やニュースでは、そのコメントが大きく取り上げられる。

 

『神崎医師「頑張ったのはアイさん」』

 

『救世主の謙虚すぎるコメント』

 

『患者を称え、自らを語らない天才外科医』

 

『医師として当然のことをしただけ』

 

SNSでも、

 

『かっこよすぎる』

 

『本物の医者だ』

 

『こんな先生に診てもらいたい』

 

『技術だけじゃなく人格まで一流』

 

『だから患者さんから信頼されるんだろうな』

 

『こういう人が本当のヒーローなんだ』

 

と称賛の声が相次いだ。

 

都立大学病院にも、

 

「神崎先生にお礼を伝えたい」

 

「応援しています」

 

「先生に診てもらいたい」

 

という手紙やメッセージが全国から届くようになる。

 

だが、悠真はそれらにも特別な反応を示さなかった。

 

いつもと変わらず白衣に袖を通し、外来へ向かう。

 

目の前にいる患者を診ること...

 

それが自分にできる唯一のことだと信じていたからである。

 

こうして神崎悠真は、一夜にして全国が知る天才外科医となった。

 

しかし本人は最後まで、自分を英雄だと思うことは一度もなかった。

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