【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜 作:ペンギンって可愛いですよね
翌日の朝、悠真はいつものように白衣を羽織り、星野アイの病室へ向かった。
昨日の診察では術後の経過は極めて良好。
一晩経った今日の状態を確認するためだった。
コンコン。
軽くノックをする。
「失礼します」
そう言って扉を開けた瞬間...
「おはよう、先生!」
病室いっぱいに明るい声が響く。
ベッドの上には、この前まで重傷患者だったとは思えないほど元気そうなアイが、満点の笑顔で手を振っていた。
その笑顔を見た悠真は思わず苦笑する。
「おはようございます」
「元気そうですね」
「うん!」
アイは大きく頷く。
「こうやって入院生活するの、アクアとルビーを妊娠して以来だよ」
懐かしそうに天井を見上げるアイ。
悠真は肩をすくめた。
「笑い事じゃないんですけどね。あと数センチずれていたら、本当に危なかったんですよ」
医師として、冗談では済まされない状況だった。
しかしアイは笑顔を崩さない。
「でもさ、助かったんだから、笑い事にした方が落ち込まなくて済むでしょ?」
どこか得意げな表情で、自分なりの持論を語る。
悠真は数秒黙り込んだ。
「……よく分からない理論ですね」
思わず本音が漏れる。
その言葉にアイは吹き出した。
「あははっ!よく言われる!」
病室に明るい笑い声が響く。
悠真もつられて小さく笑った。
「まぁ、そのくらい元気なら安心しました」
カルテを開きながらアイの状態を確認する。
顔色は良い。
熱もない。
傷口も順調に回復している。
経過としては理想的だった。
診察を終えた悠真はカルテを閉じる。
そして、ふと気になっていたことを口にした。
「そういえば、一つ疑問だったんですが」
「はい?」
「私には隠さなくていいんですか?」
アイは首を傾げる。
「何を?」
悠真は苦笑しながら答えた。
「アクア君とルビーちゃんのことです。二人があなたのお子さんだということを」
その言葉に、アイは「ああ」と納得したように笑った。
「もう先生にはばれちゃってるし、いいかなって」
「あの時、全部見られちゃったしね」
まるで秘密でも何でもないかのように笑う。
悠真は苦笑しながら頷いた。
「まぁ……助ける時にアクア君から『お母さんをお願いします』と言われましたから…その時点でもう分かっていましたけどね」
「やっぱり!」
アイは笑いながら肩を揺らす。
悠真は思い出したように続けた。
「ちなみに、他の病院スタッフには、斎藤社長が『俺たちの子なんです』と説明して回っていましたよ」
その一言でアイは目を丸くする。
「えっ、本当に?」
「ええ」
悠真は笑いを堪えながら頷く。
「『余計な詮索はしないでください』って何度も頭を下げながら説明されていました」
「おかげで病院内でも情報が漏れることはありませんでした」
アイは思わず吹き出した。
「あははは!社長らしい!」
「あとでちゃんとお礼言わなきゃ」
悠真も小さく笑う。
「あの必死さを見たら、誰も詮索しようとは思いませんでしたよ」
「大切な家族を守ろうとしているのが伝わってきましたから」
その言葉を聞いたアイの笑顔が少しだけ優しくなる。
「……そっか」
「社長、本当に頑張ってくれたんだ」
病室には穏やかな朝の陽射しが差し込んでいた。
この前まで死と隣り合わせだったとは思えないほど、そこには静かで温かな時間が流れていた。