【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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前書き

※本作では、公式で言及されていない設定について、一部独自解釈を含んでいます。

公式では「めいめい」と「渡辺」が同一人物であることは言及されていませんが、本作では「めいめい」を「渡辺」として扱っています。また、旧B小町7人目のメンバーにはオリジナルキャラクター「みーちゃん」を設定しています。


第十四話「元気すぎる患者」

 

翌日、星野アイが入院している病室。

 

朝の柔らかな日差しが病室へ差し込む中、扉が静かにノックされた。

 

コンコン。

 

「失礼します」

 

病室へ入ってきたのは、B小町のメンバー六人だった。

 

高峯こと、たかみー。

 

新野冬子こと、ニノ。

 

渡辺こと、めいめい。

 

そして、ありぴゃん、きゅんぱん、みーちゃん。

 

ニュースでアイが一命を取り留めたことを知り、仕事の合間を縫って全員でお見舞いにやって来たのだ。

 

「アイ!」

 

「大丈夫なの!?」

 

「本当に無事だったんだ……」

 

「ニュースを見た時、心臓止まるかと思ったよ」

 

「みんな仕事どころじゃなかったんだからね」

 

「本当に……良かった」

 

六人は一斉にベッドへ駆け寄る。

 

しかし、その直後だった。

 

「みんなー!」

 

「来てくれてありがとー!」

 

ベッドの上で満面の笑みを浮かべ、元気いっぱいに手を振るアイ。

 

その姿を見た六人は、ぴたりと足を止めた。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

全員が顔を見合わせる。

 

最初に口を開いたのは、たかみーだった。

 

「えっと……」

 

「元気すぎない?」

 

「私もそう思った」

 

ニノが苦笑する。

 

「ニュースでは重体って言ってたよね?」

 

めいめいも首を傾げた。

 

「もっと弱ってると思ってたんだけど……」

 

ありぴゃんがぽつりと呟く。

 

「いつものアイじゃん」

 

「お見舞いに来た意味ある?」

 

きゅんぱんが笑う。

 

みーちゃんも安心したように胸をなで下ろした。

 

「でも、その笑顔が見られて良かった」

 

アイは嬉しそうに笑った。

 

「もう大丈夫!」

 

「先生が助けてくれたから!」

 

「だから心配しなくていいよ!」

 

その笑顔は、いつもテレビで見せる笑顔と何一つ変わらなかった。

 

だからこそ、六人は少しだけ違和感を覚えていた。

 

本当に、大丈夫なのだろうか。

 

命を落としかけた人が、すぐにこんな笑顔を見せられるものなのだろうか......

 

しかし誰も、その違和感を口にはしなかった。

 

アイは昔から、弱音を吐かない人だった。

 

その時だった。

 

コンコン。

 

再び病室の扉がノックされる。

 

「失礼します」

 

朝の回診に訪れた悠真だった。

 

「おはようございます」

 

「おはよう、先生!」

 

アイは元気よく手を振る。

 

悠真も穏やかに笑みを返した。

 

「おはようございます」

 

そして病室を見回し、少し驚いたように目を細める。

 

「今日は賑やかですね」

 

「B小町のみんながお見舞いに来てくれたの!」

 

「なるほど」

 

悠真が頷くと、六人が自然と彼の方へ集まった。

 

「あの、先生」

 

たかみーが代表して尋ねる。

 

「はい」

 

「本当にアイ、この前まで重症だったんですか?」

 

「正直、信じられなくて……」

 

ニノも続ける。

 

「ニュースを見た時は、本当に危ない状態だって報道されてたんです」

 

「でも今は……」

 

「普通に元気すぎて」

 

めいめいも苦笑する。

 

悠真は六人の表情を見て、小さく笑った。

 

「皆さんが驚くのも無理はありません」

 

「搬送された時は、本当に命に関わる状態でした」

 

「あと少し処置が遅れていたら、助からなかった可能性もあります」

 

その一言で病室の空気が静まる。

 

六人の表情から笑みが消えた。

 

「そんなに……」

 

誰かが小さく呟く。

 

悠真はベッドのアイへ視線を向けた。

 

「私も驚いています」

 

「アイさんの回復力には」

 

「術後とは思えないほど順調です」

 

「ここまで早く元気になるとは、正直予想していませんでした」

 

「すごい生命力……」

 

「アイらしいね」

 

「昔から丈夫だったし」

 

その言葉に、アイは得意げに胸を張る。

 

「えへへ!」

 

「昔から丈夫なんだよ、私!」

 

すると悠真は真顔で言った。

 

「丈夫とか言う前に、刺されないのが一番ですね」

 

一瞬だけ病室が静まり返る。

 

そして...

 

「あはははは!」

 

真っ先に笑い出したのはアイだった。

 

「先生、それ正論!」

 

「その返しは反則ですよ!」

 

「アイが何も言い返せてない!」

 

「確かに!」

 

病室は笑い声に包まれる。

 

悠真も少し照れたように笑った。

 

「笑えるくらい元気なのは良いことです」

 

「ですが、傷口はまだ治療中です」

 

「急に体を動かしたり、無理をしたりしないでください」

 

「はーい!」

 

アイは子どものように元気よく返事をする。

 

悠真は小さくため息をついた。

 

「返事だけは満点ですね」

 

また笑いが起きる。

 

その笑顔を見ながら、六人は胸を撫で下ろした。

 

アイが生きていて、本当に良かった。

 

その気持ちに嘘はない。

 

けれど、誰もが同じことを感じていた。

 

アイは笑っている。

 

笑いすぎるくらい笑っている。

 

それなのに、どこか遠い。

 

昔からそうだった。

 

辛いことも、苦しいことも、誰にも話さず一人で抱え込む。

 

だからこそ、今も「大丈夫」という言葉を、そのまま信じ切ることができなかった。

 

「ねえ、みんな」

 

アイが笑顔で口を開く。

 

「私が休んでる間、B小町よろしくね!」

 

「……うん」

 

たかみーが静かに頷く。

 

「任せて」

 

「だから焦って戻ってこないで」

 

「ちゃんと治してからね」

 

「先生の言うこともちゃんと聞くんだよ」

 

「みんなまで先生みたいなこと言う~」

 

アイは頬を膨らませる。

 

その様子に、また小さな笑いが起きた。

 

けれど、その笑顔の奥にある本当の気持ちを知る者は、まだ誰もいなかった。

 

病室には温かな空気が流れていた。

 

それでも、アイと六人の間には、目には見えない小さな壁が残ったままだった。

 

その壁が取り払われるのは、もう少し先の話である。

 

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